- これからの時代において、どのような働き方がよりよい状況をもたらすでしょうか?
- 実は、越境というキーワードでそれが見えてくるかも。
- なぜなら、変化とは、際(キワ)から始まっていくから。
- 本書は、そんな変化の時代をうまく乗りこなしていくための1冊です。
- 本書を通じて、自らも変化を続ける流れを作ることができるでしょう。

越境はバランシング?
沢渡あまねさんは、企業変革や働き方改革の現場を支援する実務家であり、組織変革の専門家です。
業種横断的な支援を行う「なぜなぜ分析」の達人として知られ、企業の風土改革、業務改善、ナレッジマネジメントに精通しています。
著書多数であり、『職場の問題地図』『業務改善の問題地図』などのシリーズを通じて、「組織の見える化」や「属人化の打破」といったテーマに一貫して取り組んできました。
過去にも沢渡あまねさんの1冊はレビューさせていただいておりまして、こちら「大切を見極めよ!?『「すぐに」をやめる ~ネガティブ・ケイパビリティの思考習慣~』沢渡あまね」もぜひご覧ください。

今回取り上げさせていただく本書『新時代を生き抜く越境思考 ~組織、肩書、場所、時間から自由になって成長する』では、彼自身の越境的なキャリア――IT企業、国家機関、外資系企業、フリーランスなど、異なる立場を横断してきた経験が随所に活かされ、単なる理論にとどまらない「現場からの提言」として、リアルな説得力を持っています。
越境の意味を、沢渡さんは次のように説きます。
場所のハイブリッド、顔のハイブリッド、組織のハイブリッドです。
たとえば「場所のハイブリッド」とは、オフィスだけでなく、コワーキングスペースや自宅、地域コミュニティなど、多様な場を自分の活動拠点として自在に行き来すること。
「顔のハイブリッド」とは、一人の人間が職業人としての顔、地域の住民としての顔、趣味人としての顔など、複数の“顔”を持ち、それらを分断せずに統合しながら生きること。
そして「組織のハイブリッド」とは、一社に属するだけでなく、プロボノ、副業、NPOなど、複数の組織に関わりながら価値を生み出していく働き方を指します。
実は、いくつかの側面を自分の中に育てるということは、バランスを保つうえでもとても大切です。変化の大きな時代において、何かに過度に揺れ動くのではなく、リスクを分散させながら、両立を目指していく思考を続けていくということが、よりよい人生やそのための生存を約束してくれる可能性を高めることになります。
これは例えば、組織人としても、個人として自分の人生を運営する主体としても、どちらの意味でも大切な論点です。
例えば組織人であったら、例えばプロジェクトの担当者という人格を持ちながらも、実はプロジェクトリーダーとして、マネジャーとして、その企業の社長として、今自分が関わる状況はどのような意味や意義があるのか、を絶えず検討していくことは、“人とともに”仕事を作っていくためには、実は不可欠な視点となります。
チームをマネジメントする立場の人であれば、なおのことそうした視点の行き来というのは、欠かせないものになるでしょう。
プレーヤーであっても「両利きの経営」のマインドが必要
統制型オンリーのマネジメントだけだとリスクが増えてしまうでしょう。予測不可能な、世界において、ものごとを進めながら新しい発想を組み込みながら、ものごとを発展させてみることが重要です。
越境はメリット盛りだくさん!?
特に、新規事業開発を行っていくことを検討してみると、さらに統制型ではない方法を検討することは重要になります。
スタンドアローンから、クロスファンクション(組織横断)/クロスボーダー(越境)で答えを出せるやり方に、組織もそこで働く人もトランジション(変化)を志向していくことがキーになります。
自らもいくつもの人格を持ちながら、ものごとを多面的に見つめていくことを検討することで、可能性を閉ざさない進め方が可能になりそうです。
越境的な視点を持ちながら、組織のマネジメントを行ったり、あるいは、越境を推進するような組織自体に変化していくことでさまざまなメリットを享受できることを沢渡さんは強調します。
① 社員のエンゲージメント維持・向上
② 人材育成
③ 組織のアップデート
④ エンプロイアビリティの向上(特殊性、ガラパゴス性の排除)
⑤ (中小企業やスタートアップにとって)人材不足の解消
⑥ (中小企業やスタートアップにとって)大企業とのコラボ促進、リレーション構築
エンプロイアビリティとは雇われる力のこと。
人生100年時代、いくつになっても仕事に身をおいていることは、人生を確実に豊かにします。
いま所属している組織や、関与している組織だけではなく、今後も世界が変化していく中で新しいご縁を得ることも多々あるでしょう。
どんな状況になっても、自分のスキルを持ち、そして軸足をバランシングしながら、業務を進めていくことも重要になるでしょう。
上記のようなメリットを享受できることはとても大きい意味を持ちます。
というのもこれから(今も)の時代において、以下のような事象が課題になるからです。
1)労働人口が確実に減少していく
2)答えやヒントを持つ人が中にいない
3)とはいえ、正社員、フルタイム雇用はハードルが高い
越境と言うと、確かに副業や複業のようなニュアンスでも上記の課題を解決していく視点として見ることもできるのですが、でも実は重要なのが今ある人材をさらに活用していくという論点です。
そのうえで、越境を促すような仕組みを持ち、そしてそういうマインドセットを備えているリーダー(マネージャー)を育てていくというのも重要な考え方となります。

越境とは最強の学びである!?
越境とは、実は葛藤と向き合うことでもあります。
それが、人を育てるのです。
異なる価値観、異なるルール、異なる期待にさらされたとき、私たちは初めて「自分らしさ」や「当たり前の限界」に気づきます。ある環境では歓迎されたやり方が、別の場では通用しない。
得意だったはずのスキルが、まったく評価されない。そんなギャップや違和感に直面したとき、人は自らを問い直し、アップデートする機会を得るのです。
本書では、そうした越境経験を単なる「辛さ」や「試練」としてではなく、「学習」として捉える視点が繰り返し提示されます。組織をまたぐ経験、世代や職種を越える対話、さらには地方と都市をつなぐような行き来まで。
そこには、予定調和では得られない「ズレ」や「戸惑い」があります。
しかしそのズレこそが、人の視野を広げ、柔軟性を育て、次の挑戦に向かう力になるのです。
越境に向いているのは、以下のような人です。
1)越境を武器にトランスフォーメーションやイノベーションを牽引できる人
2)性格的に越境が向いている人
2については、想像に容易いでしょう。
大切なのは、1の人材像です。
この人は、一言でいうとエンゲージメントの高い人です。そのような人が越境をすることによって組織のトランスフォーメーションやイノベーションを積極的に進める人材として活躍する可能性があります。
そこには、外側と内側とのバランス感覚を取るための視点があるのです。
エンゲージメントとは、その組織や仕事に対する、帰属意識やロイヤリティの高さをいいます。エンゲージメントの高い人であれば、越境しても軸をぶらさず(揺らぎはあるとしても)、自分に期待されたミッションをやりぬくことができるでしょう。
これからの時代においてエンゲージメントの高い人というのは、以下の要件で語られるかもしれません。
- (組織・仕事・人への)興味・関心が強い人
- (ビジョンやミッションやバリューへの)共感度が高い人
- 改善意欲のある人/変化を愉しむ人
思わぬ変化が組織のカルチャーや内実をポジティブに変えていくヒントになることは多々あります。
そして、そうした変化の兆しは外部環境と接している人からもたらされることは、大きいのです。
越境は思わぬ変化をあなたの組織にもたらすためのプロセスである――私はそう確信しています。
越境については、こちらの1冊「【経産省も注目する人材開発法とは!?】「越境企業」のはじめ方|瀬戸口航」やこちらの1冊「【飛び出す、可能性!?】出島組織というやり方 はみ出して、新しい価値を生む|倉成英俊,鳥巣智行,中村直史」もぜひご覧ください。


まとめ
- 越境はバランシング?――越境によって、バランス感覚を絶えずケアする軸を持つことができます。
- 越境はメリット盛りだくさん!?――自らの思想と活動をアップデートし続けられます。
- 越境とは最強の学びである!?――既存の当たり前を疑い、本質的な変化をもたらします。
