- 私たちの国は、本当に豊かで幸せな人生が保証されているでしょうか!?
- 実は、日本は先進国でワースト4位の貧困国です。
- なぜなら、相対的な所得でも、人のつながりという観点でも、とても貧しい国であるからです。
- 本書は、日本の貧困のリアルを暴きます。
- 本書を通じて、日本社会が抱える問題に触れることができるでしょう。

日本はワースト4位!?
実は、日本は先進国中ワースト4位の貧困率になっています。世界第3位のGDP(国内総生産)の国が、貧困であるとはどういうことか・・貧困とはなにかという論点から始めてみましょう。
途上国の貧困は、通常「絶対的貧困」という基準で示されます。世界銀行が定めたもので、1日あたり1.9ドル以下で暮らしている状態を示します。絶対的貧困は、人間がなんとか生存していけるレベル、あるいはそれ以下です。1日に2食以下で、貯蓄はほぼなく、医療にアクセスするのも困難で、安全に寝起きできる場所がないような暮らしです。
一方で、先進国では、貧困は、「相対的貧困」という基準によって示されます。
これは、等価可処分所得(1世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割った数値)が全人口の中央値の半分未満とされているスコアです。
等価可処分所得とは、世帯ごとに異なる世帯員数の差を調整するため、「世帯所得」を世帯員数の平方根で割ったものです。 等価世帯(可処分)所得とも呼ばれます。 世帯の可処分所得とは、世帯収入から税金・社会保険料等を除いた手取り収入です。 生活水準を考えた場合、世帯人員数が少ない方が、生活コストが割高になることを考慮したものです。等価可処分所得は、所得のない子ども等を含め、すべての世帯員に割り当てられます。 貧困線とは、等価可処分所得の中央値の半分の額をいいます。 2021年の貧困線は127万円で、貧困線に満たない世帯員の割合を示す「相対的貧困率」は15.4%でした。(Google Generative AIより)
なぜ、平方根で調整するかは以下をご参照ください。
(問2)世帯の可処分所得を「世帯人員の平方根」で割って、わざわざ「等価可処分所得」を算出するのはなぜですか。
(答2)世帯の可処分所得はその世帯の世帯人員に影響されるので、世帯人員で調整する必要があります。最も簡単なのは「世帯の可処分所得÷世帯人員」とすることですが、生活水準を考えた場合、世帯人員が少ない方が生活コストが割高になることを考慮する必要があります。 このため、世帯人員の違いを調整するにあたって「世帯人員の平方根」を用いています。 【例】年収800万円の4人世帯と、年収200万円の1人世帯では、どちらも1人当たりの年収は200万円となりますが、両者の生活水準が同じ程度とは言えません。光熱水費等の世帯人員共通の生活コストは、世帯人員が多くなるにつれて割安になる傾向があるためです。出典:国民生活基礎調査よくあるご質問
現在の日本では、単身所得年収が127万円以下です。日本で相対的貧困にあたる人の数は、約2000万人。国民の15.7%(6人に1人)が貧困層と言えます。子供だけに絞れば、7人に1人が貧困であると言えます。片親家庭では2人に1人にあたります。
貧困という言葉は同一であっても、日本の貧困は途上国のそれとはまったく形態が異なるのだ。
はじめに
日本の相対的貧困率は、イスラエル、アメリカ、韓国についで4番にあたります。格差が広がる中で、実は相対的に貧困である人の割合は少なくないのです。
混在型都市に潜む貧困とは!?
途上国で貧困層といえば、都市の特定のエリア(いわゆるスラムと呼ばれる)に固まって住んでいることが多いです。しかし、日本ではこの状況が異なります。日本では、東京でも大阪でも、貧富が混じり合って同じ都市の中で混ざり合っています。
また、特に都市部においては、日本各地から同質性の高いコミュニティは消えていきました。貧困に苦しむ人は、つながりを失う中で、頼りにできるものは、国の福祉制度です。
人と人との濃厚なネットワークを失ったことで、生活困窮者たちは「孤立・孤独」の問題に直面する事となったのである。
第1章 住居 コミュニティー化するスラム、孤立化する生活保護世帯
人と人のつながりに頼って生きるのではなく、国が提供する生活保護や、児童手当や、介護保険制度といったセイフティネットに依存している状況です。国のセイフティネットが、唯一のつながりと言ってもいいかもしれません。
貧困に苦しむ人が顕在化しないのは、低所得で苦しむ人のパーソナリティの問題も1つにあります。生活に困窮する人たちは、特殊な事情を抱えていることが少なくありません。例えば、アルコール依存症や精神疾患、長年の生活苦により人間不信など、心身不健康状態により、人とのつながりを拒絶します。
また、日本のカルチャーも彼らを断絶に追いやります。とくに日本は「世間」という意識を持ち、低所得であることは、劣っているとか、恥であるという気持ちを抱きます。また、自己責任の論もこうした意識を助長させるでしょう。
個人の能力や、努力がなかったことを過剰に指摘し、分断に追いやる文化による無言の圧力も、少なからず存在していることは事実です。

人にとって最大の貧困とは!?
お金がないことだけが貧困ではありません。人として豊かな生活をしていくためには、社会とのつながりは欠かせないものです。なぜなら、人は一人だけでは、幸福を感じ続けることは困難であるからです。
社会に希望を持つためには、自分の家庭や職場、仲間、友人と共に、よりよい生活を目指していこう!という意志と希望が欠かせないのです。しかし、過剰に張り巡らされたセイフティネットの存在と、貧困に対する自己責任論が、無意識のうちに、日本の貧困層から繋がりを奪っている状況です。
いま、本当に必要なのは、日本に確実に存在する貧困層に対する解像度の高い実態把握です。また、その上で、社会からこぼれ落ちた人に対する本質的な支援策ではないかと考えます。
現在、国が取り組んでいる貧困対策は、物理的な支援に主眼が置かれている。だが、いくら税金を投入して制度を手厚いものにしても、心が満たされるとは限らない。
おわりに
いまから、40年ほども前に日本を訪れたマザー・テレサがバブル経済に受けれていた、日本人に投げかけた言葉があります。
飢えとは食物がない、ということではありません。 愛に飢えるのも、飢えです。 老人や身体障害者や精神障害者やたくさんの人が誰からも愛されないでいます。 この人たちは、愛に飢えています。このような飢えはあなたの家庭にもあるかもしれません。 家庭に老人がいるかもしれません。病人がいるかもしれません。 この人たちにほほえみかけたり、一杯の水をあげたり、いっしょに座ってしばらく話をしたりすることで、あなたは神への愛を示すことができるのです。 日本のような豊かな国にも、このような飢えを感じている人がたくさんいます。 人間の愛とはどんなものか忘れてしまった人たちがたくさんいます。 誰も愛してくれる人がいないからです。 ですから、さっそく実行しましょう。愛の喜びを周囲の人々にあげるように。 まず家庭で、それから隣近所の人々へ。
中井俊已『マザー・テレサ愛の花束』 PH P文庫
格差にどう立ち向かうか考えるためには、こちらの1冊「【格差にどう立ち向かいますか?】あなたが世界のためにできるたったひとつのこと|ピーター・シンガー」もぜひお手にとって見てください。

まとめ
- 日本はワースト4位!?――相対的貧困という指標を知りましょう。
- 混在型都市に潜む貧困とは!?――貧困は、とても身近な問題なのです。
- 人にとって最大の貧困とは!?――つながりを失い、人生への希望をなくすことです。
