本当の可能性とは!?『HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学』アダム・グラント,楠木建

『HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学』アダム・グラント,楠木建の書影と手描きアイキャッチ
  • あなたは自分の限界を、どこに設定していますか?
  • 実は、私たちの多くが「才能の壁」という見えない檻の中で、自分の可能性を過小評価しているんです。
  • なぜなら、「才能は生まれつき決まっている」「努力しても才能には敵わない」という神話が、社会に深く根を下ろしているからなんですね。
  • 本書は、組織心理学の第一人者アダム・グラントが、膨大な科学的研究をもとに「隠れた可能性」の正体を明らかにする一冊です。
  • 本書を通じて、才能という幻想から解放され、真の成長への道筋が見えてくるはずです。
アダム・グラント,楠木建
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アダム・グラントは、ペンシルベニア大学ウォートン校の組織心理学教授であり、世界で最も影響力のある経営思想家の一人です。『GIVE & TAKE』『ORIGINALS』など、人間の可能性と創造性をテーマにした著作で知られています。

彼の研究の特徴は、科学的エビデンスに基づきながらも、実践的で人間味あふれる洞察を提供する点にあります。

今回の『HIDDEN POTENTIAL』でも、ノーベル経済学者ジェームズ・ヘックマンの幼児教育研究から、数十万人規模の追跡調査まで、多様な研究成果を統合しながら、私たちの「隠れた可能性」を科学的に解き明かしています。

本書では、経営学者の楠木建氏が「ともに本書を読む人」として参加し、日本の読者に向けた視点を加えています。グラントの普遍的な洞察と、楠木氏の日本社会への理解が融合することで、より深い読書体験が生まれているのです。

アダム・グラントの著書は、こちら「【正しく、“ギバー(Giver)”になるには!?】GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代|アダム・グラント,楠木建」や「【正しい自信と、実験マインドを!!】THINK AGAIN|アダム・グラント,楠木建」でもレビューをしておりますので、ぜひご覧くださいね。

才能という幻想――なぜ私たちは「生まれつき」を信じるのか

私たちは無意識のうちに、世界を「才能がある人」と「ない人」に2分して見ています。

スポーツで活躍する人、ビジネスで成功する人、芸術で傑作を生み出す人――彼らを見るとき、「やっぱり才能があるんだな」と思ってしまうんですね。そして同時に、「自分にはその才能がないから」と、挑戦する前から可能性を諦めてしまう。

でも本書が明らかにするのは、この「才能神話」こそが、私たちの成長を阻む最大の障壁だということなんです。

世の中には、「才能とは生まれながらにして与えられるものであり、努力によって開花されるものではない」と信じている人が非常に多い。

グラントはこの根深い思い込みに、科学的なメスを入れていきます。

ノーベル経済学者ジェームズ・ヘックマンをはじめとする多くの研究者が積み重ねてきた研究は、明確な結論を示しているんです。それは、

「才能」よりも、「どれほど進歩できるか」

という視点の転換なんですね。

私たちが「才能」と呼んでいるものの多くは、実は後天的に獲得された能力の積み重ねです。確かに出発点には個人差があるかもしれません。でも重要なのは、「どこから始まったか」ではなく、「どれほど進歩し得るか」という点なんです。

潜在能力を判断する際に真に重要なのは、持って生まれた明白な才能の有無ではなく、その人がどれほど進歩し得るか、という点なのである。

この視点の転換は、革命的です。

なぜなら、「才能がないから無理」という諦めから、「どうすれば進歩できるか」という建設的な問いへと、思考の方向性が180度変わるからなんですね。

グラントが特に強調するのが、「アンビション」と「アスピレーション」の違いです。

多くの人は「野心(アンビション)」――つまり名声や権力への欲求――を成功の原動力だと考えます。でも本当に人を成長させるのは、「アスピレーション」――成し遂げたいことそのものへの強い願望や向上心――なんです。

本書の主題は、「アンビション」(名声や権力への野心)ではない。「アスピレーション」(成し遂げたいことそのものに対する強い願望や向上心)である。

この違いは微妙に見えて、決定的なんですね。

アンビションは外的な報酬に向かいますが、アスピレーションは内発的な成長への渇望です。前者は他者との比較で満足を得ようとしますが、後者は昨日の自分を超えることに喜びを見出します。

そして、真に隠れた可能性を解放するのは、後者のアスピレーション――自分自身の成長への純粋な願望――なんです。

性格スキルという可能性――幼児期から育まれる力

では、その「隠れた可能性」を引き出すものは何なのか。

グラントが注目するのが「性格スキル」という概念です。これは従来の「才能」とは全く異なる、後天的に獲得可能な能力なんですね。

人間性とは「習得可能なスキル」である

この主張は、一見当たり前に聞こえるかもしれません。でも私たちの多くは、性格や人間性を「変えられない個性」として捉えています。「自分は内向的だから」「もともと粘り強くないから」――そんな風に、性格を固定的なものと見なしてしまうんです。

でも研究が示すのは、まったく逆の事実なんですね。

人格や性格というものは、単に遺伝的な信条を持っているか否かだけで決まるものではない。むしろ、後天的に獲得される一連の「能力」であり、自らが信じる価値観を実現させるために、学び、そして磨き上げていくものなのである。

特に重要なのが、幼児期の経験です。

グラントが紹介する研究では、幼稚園時代に「経験豊かな先生」のもとで学んだ子どもたちは、そうでない子どもたちに比べて、数十年後の人生で明確な違いを示したんです。

それは単なる学力の差ではありません。粘り強さ、他者と協力する力、自己を律する力、困難に立ち向かう意志の強さ――これらの「性格特性」において、顕著な差が現れたんですね。

幼稚園時代に経験豊かな先生のもとで学んだ子どもたちは、小学校入学時点での性格特性(粘り強さ、他者と協力する力、自己を律する力、困難に立ち向かう意志の強さ)について、担任教師から、より高い評価を得た。

さらに驚くべきことに、この評価は「同様の性格や技能を持つ一般的には長い期間にわたり、そして結果としてより深く、子どもたちの内に定着していた」んです。

つまり、幼児期に育まれた性格スキルは、一時的なものではなく、その後の人生を通じて持続する力になるということなんですね。

では、その「性格スキル」とは具体的に何なのか。

グラントは「困難な局面を乗り越える力」として、3つの要素を挙げています。

1つ目は、不快感を受け入れ、挫折を求め、さらには意図的に増幅させる勇気です。

多くの人は、不快感や困難を避けようとします。でも成長は、まさにその不快な領域でしか起こらないんです。自分にとって快適な範囲にとどまっている限り、新しい能力は獲得できません。

2つ目は、自分の心の準備が整う前に、挑戦の場に飛び込む勇気です。

「準備が整ったら始めよう」と考えていると、永遠に準備は整いません。完璧な準備を待つのではなく、不完全なまま飛び込む――その勇気が、実は最も重要な準備なんですね。

3つ目は、誰よりも多くの失敗を経験する勇気です。

本当の意味での成功とは、目標を達成したという事実そのものよりも、むしろ、自分の価値観を貫いて生きることにある。日々、昨日よりも少しでも成長しようと、ひたむきに努力し続けること、その情熱こそが、何よりも尊い。

失敗は成長の証なんです。

失敗を避けて安全圏にとどまることは、成長を拒否することと同じなんですね。

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不快感を超えて――実践と失敗から真の成長へ

ここまで読んで、「理屈はわかったけど、実際にどうすればいいのか」と思う方も多いでしょう。

グラントが示す成長のプロセスは、シンプルですが深い洞察に満ちています。

多くの人が陥る間違いは、「知識→安心感」という直線的な道のりを想像してしまうことなんです。本を読めば、セミナーに参加すれば、知識を得れば――それで自信がつき、行動できるようになる、と。

でも実際の成長プロセスは、全く異なるんですね。

実践 → 不快感 → さらなる実践 → 進歩 → 安心感

この順序が重要なんです。

まず実践があり、そこで必ず不快感や困難に直面します。その不快感から逃げずに、さらに実践を重ねる。
すると少しずつ進歩が見え始め、やがて真の安心感が生まれる――これが本当の成長の道のりなんですね。

実践なくして、真の安心感というのはないものなのですね。

この発想にちかい1冊としてコンフォートゾーンから「出る」のではなく、それを「拡張する」と説いたこちら「【安心こそが、人の原動力?】コンフォート・ゾーン|クリステン・バトラー,長澤あかね」もぜひご覧ください。

ここで、完璧主義者が陥りやすい3つの過ちについても触れておく必要があります。

グラントの研究によれば、完璧を追求する過程で、多くの人が以下の間違いを犯してしまうんです。

  • 第1に、些末な細部に過剰に向かってしまう。 本質的な問題ではなく、取るに足らない細部にこだわり、エネルギーを浪費してしまいます。木を見て森を見ない状態ですね。
  • 第2に、失敗を忘れてしまい、困難な課題や未知の状況を回避する傾向がある。 失敗の記憶を封印し、新たな挑戦から遠ざかってしまうんです。
  • 第3に、失敗する度に自身を過度に非難してしまう。 失敗から建設的に学ぶのではなく、自己批判に囚われてしまいます。

失敗の経験を省みることは、過去の自身をただ恥じる行為ではなく、未来の成長へとつなげる糧であるという認識に気付けているのである。

この視点の転換が、決定的に重要なんです。

失敗は恥ではなく、成長の糧である――この認識を持てるかどうかが、隠れた可能性を解放できるかどうかの分かれ目なんですね。

さらにグラントは、私たちに勇気を与える美意識を提示します。

「欠陥の中にも優美さが宿り得る」という美意識

完璧である必要はないんです。

むしろ、欠陥を抱えながらも前に進む姿にこそ、人間としての美しさがあるんですね。

「欠点を受け容れる」と、人としての器が大きくなる

このインサイトは、相当深いと思うんですね。

多くの人は、欠点を隠そうとし、認めまいとします。でも、自分の欠点を受け容れたとき――それを恥じるのではなく、成長の余地として捉えられたとき――人は真に大きくなれるんです。

人間は、自らの欠点を受容することで成長する。ただ責めるだけでは不十分であり、失敗や欠点を認め、受け止める必要があるのだ。

そして最後に、グラントが私たちに示す「成功」の再定義

成功とは、完璧にこれほど近づけたかではなく、その過程でどれほどの困難を乗り越えてきたかなのだ。

この言葉は、才能神話から完全に自由になった境地を示しています。

目的地にどれだけ近づいたかではなく、その道のりでどれだけ成長したか――それこそが真の成功なんですね。

私たちは、生まれ持った才能に制約されているわけではありません。むしろ、どれほど進歩できるかという可能性に満ちている――グラントが本書を通じて伝えるのは、この希望に満ちたメッセージなんです。

幼児期から育まれる性格スキル、不快感を超えて実践を重ねる勇気、失敗を成長の糧とする視点、欠点を受け容れる器の大きさ――これらすべてが、私たちの隠れた可能性を解放する鍵なんですね。

あなたの限界は、まだ先にある。

その事実を科学的に、そして人間味豊かに示してくれる本書は、まさに人生を変える一冊だと思います。

まとめ

  • 才能という幻想――なぜ私たちは「生まれつき」を信じるのか――「才能は生まれつき」という神話が、私たちの成長を阻んでいます。重要なのは「どこから始まったか」ではなく「どれほど進歩できるか」であり、真の原動力は野心(アンビション)ではなく、成長への純粋な願望(アスピレーション)なのです。
  • 性格スキルという可能性――幼児期から育まれる力――人間性は習得可能なスキルであり、幼児期の経験が生涯にわたる性格特性を形成します。困難を乗り越える3つの勇気(不快感を受け入れる、準備が整う前に飛び込む、失敗を経験する)が、隠れた可能性を解放する鍵となります。
  • 不快感を超えて――実践と失敗から真の成長へ――成長は「知識→安心感」ではなく「実践→不快感→さらなる実践→進歩→安心感」という道のりです。失敗は恥ではなく成長の糧であり、欠点を受け容れることで人としての器が大きくなります。真の成功とは、完璧に近づくことではなく、困難を乗り越えてきた過程そのものなのです。
アダム・グラント,楠木建
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