関係性が“資産”である!?『サブスク会計学――持続的な成長への理論と実践』藤原大豊,青木章通

サブスク会計学――持続的な成長への理論と実践
  • サブスクリプションという古くて新しい概念を見つめていくと、どんな本質的な視点を得ることができるでしょうか。
  • 実は、会計とは時間の認識、それも、関係性という資産を見つめることになるということかもしれません。
  • なぜなら、結局のところ商いとは、関係性を育むことにほかならないからです。
  • 本書は、サブスク会計学という新しいジャンル、財務会計・管理会計のクラックを見極めるための1冊です。
  • 本書を通じて、商売における新しい経営の肌感覚を育むヒントを得られるでしょう。
藤原大豊,青木章通
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会計にはクラック(ひび)がある!?

藤原大豊(ふじわら・ひろよし)さんは、三菱総合研究所主席研究員であり、専修大学兼任講師としても活躍される実務家です。京都大学経営管理大学院にてMBAを取得し、FP&Aや新規事業開発、なかでもROICやEVAといった価値創造経営(VBM)やサブスク会計に深い知見を持っています。大手住宅設備メーカーにて特注設計、品質保証、管理会計、IRなど幅広い実務を経験した後、ベンチャーや上場企業で経営を担い、サブスク型ビジネスの現場と制度会計の両面を横断してきました。

青木章通(あおき・あきみち)さんは、専修大学経営学部教授であり、サブスクリプション総合研究所のフェローとしても活動される研究者です。専門は管理会計・原価計算で、特にサービス業の変動価格設定(レベニューマネジメントやダイナミックプライシング)に関する研究をリードしています。大学では「サブスク経営」の演習科目も開講し、理論と実務を架橋する教育にも尽力されています。

本書は、サブスクリプションモデルの急成長に伴う“会計の見直し”というテーマに対し、実務と学術、両者の視座から迫る意欲的な1冊です。

サブスクリプションという言葉は、もはや一過性の流行ではなく、事業の根本構造に関わる考え方として定着しつつあります。定額課金や継続購入といった仕組みだけでなく、その裏側にある「関係の持続性」や「価値の時間的な分配」という視点が、事業運営や経営管理において重要性を増してきました。

しかしながら、従来の会計の枠組み──たとえば、売上計上や費用配分の基準、PL中心の評価指標──では、こうした新しいビジネスモデルを正しく把握・評価することが難しいという現実があります。ここに、“クラック(ひび)”が生まれているのです。

では、この会計上のズレや曖昧さをどのように乗り越えていくのか?

そのヒントを提示してくれるのが、本書『サブスク会計学』です。

本書は、財務会計・管理会計という二つの会計領域の“すきま”を照射しながら、サブスクリプション型ビジネスにおける収益の捉え方、費用の見積もり方、投資判断の基準などを、理論と実務の双方から考察していく試みです。

特に注目すべきは、「顧客との関係性をいかに資産として捉えるか」という問いに対して、単なる感覚論にとどまらず、ROICやEVAといった経営指標のフレームを通じて明快な理論を提示している点です。

また、売上の前倒し計上や、初期費用・取得コストのタイミングなど、従来の“物売り”中心の会計処理では見落とされがちな「時間のズレ」=会計上のクラックにも焦点を当てています。

これらを通じて見えてくるのは、「商いとは関係性の時間軸を編(あ)むこと」であり、「会計とはその関係性を可視化する装置でもある」という、深く本質的な洞察なのです。

なかでもわれわれが重要だと考えているのは、サブスクのビジネスは「予測可能性が高い」という点です。つまり、サブスクのビジネスでは将来の収益が予測可能であることを前提に、経営や事業の意思決定ができるようになります。

サブスクリプションモデルの真価は、「安定的な収益」以上に、その予測可能性の高さにあります。

「未来がある程度見通せる」という構造は、単に月額の売上が読めるということではありません。むしろそれは、「顧客との関係が継続する前提に立って、先手を打った経営判断ができる」という意味で、きわめて戦略的な資産でもあります。

だからこそ、たとえ初年度に大きな赤字を計上したとしても、数年後の回収シナリオが描けるならば、その赤字は「戦略的な投資」と見なすことができるのです。従来の売り切りモデルでは見落とされがちだった、「関係性の時間的な厚み」が、ここでは“見える化”されていきます。

こうした経営判断を支えるのが、まさに本書が示す「サブスク会計学」という視座です。

会計とは、過去の記録ではなく、未来のストーリーの設計図である──そんな見方すら可能にしてくれるのが、「予測可能性のある収益構造」という概念であり、それをどう“見えるかたち”に落とし込むかが、会計の役割だといえるでしょう。

サブスクとは、態度である!?

サブスクとは、定額制や継続課金という“形式”にとどまるものではありません。

関係性を担保する工夫次第でどんなビジネスもサブスク化できる

むしろ本質は、「関係性を前提に価値を設計し、継続的に更新すること」にあります。つまり、顧客との接点が反復的であることを前提としたビジネス設計の哲学です。

たとえば、BtoBの受託開発のような一見スポット型のビジネスであっても、「相手の変化を継続的にフォローし、常に最適な支援を届ける体制」を整えていれば、それは立派な“サブスク的な関係”と言えます。成果物ではなく「関係性」や「応答力」に価値があるからです。

ここで重要になるのが、「関係性を担保する仕組み」をいかにデザインするかという視点です。

それは、

  • 顧客の成功体験にコミットするカスタマーサクセスチーム
  • 解約率を定期的に分析し、予兆をとらえる指標設計
  • 一人ひとりの顧客に対して学習し、提案が進化するデータ基盤
  • 経営指標としてのLTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)の連動

など、まさに経営全体の設計思想に関わるテーマです。

本書は、これらの要素を“財務的にも意味づける”ための基盤を提供してくれます。

「顧客との関係性を資産とする」──この視点があるかどうかで、経営のレンズは一変するのです。

もうひとつ本書で印象的なのは、「サブスクは新しい概念ではない」という指摘です。

たとえば、昭和の時代から親しまれてきたアニメ『サザエさん』に登場する三河屋のサブちゃん──あの「御用聞き」スタイルも、立派なサブスクリプションのかたちだといいます。

顧客の生活や趣向を理解し、タイミングよく声をかけ、継続的に商品を届ける。その本質は、「定期課金」ではなく「関係性の継続」であり、「ニーズの先読みと応答」の連鎖なのです。

つまり、サブスクとは“モデル”ではなく“態度”である──。

その態度とは、関係を継続的に手入れし、信頼と理解を積み重ねることで、価値の交換を持続させていく営みそのもの。だからこそ、本書で語られるサブスク会計は、単に制度を更新するものではなく、経営の思想そのものをアップデートする契機なのだと感じさせられます。

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関係性を資産化できるか!?

関係性が長期化するということ──。

これは、単に「継続的に課金が続く」ことを意味するのではありません。むしろ重要なのは、「契約後にこそ本当の勝負が始まる」ということです。

サブスクリプション型のビジネスでは、売って終わりではなく、「育てて、続ける」ことが価値創出の本質になります。だからこそ、LTV(顧客生涯価値)を最大化するためには、カスタマーサクセスのフェーズへと、事業そのものを適切にシフトさせる構えが欠かせません。

ここで求められるのは、単なるフォローアップではなく、

  • 顧客の変化を読み取り、
  • 最適なタイミングで手を打ち、
  • 顧客視点を常に保ち続ける

という「持続可能な配慮の経営」です。

このとき重要になるのが、“時間の配分”と“コストの再設計”です。売上獲得に注がれていた時間や費用を、継続支援の体制へと再配置する。これこそが、サブスク会計が“経営会計”として機能するゆえんです。

会計とは、数字の管理にとどまらず、組織の関心の置き方を変えるレンズでもある──本書は、そうした新たな会計の姿を鮮やかに描き出しています。

サブスクリプションが注目される理由のひとつに、「安定収益の確保」があります。

これは一見、定額で一定の売上が毎月見込めるという“表面的な安心感”として語られがちですが、本質的にはそれ以上の意味を持っています。

従来の「非安定収益」──すなわちプロジェクト単位、販売単位でその都度売上が立つモデルでは、売上がゼロか百かの世界になりがちです。結果として、売上を得るために短期的な施策や営業強化に追われ、組織全体が“打ち上げ花火型”のリズムに巻き込まれてしまいます。

一方で、サブスク型に代表される「安定収益」が事業基盤にあると、経営の意思決定は格段に柔軟になります。

たとえば、

  • 新たな市場への投資
  • 組織体制の変革
  • 顧客ニーズに応じた価値の微修正
  • 環境変化に伴う中長期の舵取り

こうした未来志向の対応を、無理なく、かつ腰を据えて実行できる「土台」ができるのです。

この「安定収益=柔軟性の源泉」という構図は、VUCA時代における経営の根幹に関わるものです。すなわち、不確実性が高まる現代においては、固定的に見える安定収益こそが変化に適応する“ゆとり”と“猶予”を生み出すという逆説的な価値を持つわけです。

サブスクの特徴として「予測可能性が高い」「契約してからが勝負」「長期化するほど儲かる」「経営の安定」が一般的には挙げられている。

本書は、そうした経営のリズムを支える仕組みとしての「会計の再定義」を行っており、単なるテクニックや制度解説にとどまらず、「経営と会計の間」にある感覚のずれに光を当てています。

もっとも、サブスクリプション型のビジネスには、会計上の“違和感”もついてまわります。

たとえば、現行の財務会計基準では、契約初期に顧客獲得のための販促費や人件費が先行し、売上はサービス提供期間にわたって徐々に計上されるため、初期のPL(損益計算書)上では大幅な赤字が発生するのが通例です。

これは、いわゆる「Jカーブ」を描く構造。中長期的には黒字転換する見込みがあったとしても、初年度だけを切り取れば「経営失敗」と見えてしまうこともあります。

この“感覚とのズレ”こそが、サブスク会計の一つの壁でもあり、同時に、経営視点そのものをアップデートする契機なのです。

つまり、会計とは単なる記録ではなく、「時間の認識の枠組み」なのだと捉える必要があります。

私たちの肌感覚では、「今、こんなに頑張っているのに、なぜ赤字なのか?」と疑問が浮かびます。しかし、会計というレンズで見る時間は、「契約に基づいてサービスが提供される期間」に分配されており、過去の努力は未来に分散して評価されるのです。

このズレを「誤り」と捉えるか、「構造」と捉えるかで、経営の舵取りは大きく変わります。

したがって、経営者や実務家に求められるのは、制度に合わせて会計を“読む”力であると同時に、制度の向こう側にある本質──関係性と時間とのつながり──を“感じる”力です。

本書は、その“感じる力”に問いを投げかけ、私たちの経営の感覚値を揺さぶってきます。

『サブスク会計学』が私たちに投げかける最大の問いは、「何が本当に資産なのか?」ということです。

会計とは、時間の認識を数値に置き換える装置です。そしてサブスク型のビジネスにおいては、その時間のなかに、目には見えない“関係性”という資産が埋め込まれています。

たとえ初年度に赤字を掘ったとしても、将来的にLTV(顧客生涯価値)で十分に回収できるシナリオが描けるなら、その赤字はむしろ「関係性への先行投資」として戦略的に意味を持ちます。

つまり──
売上を一時の成果と見るのではなく、
契約の背後にある「時間と信頼の合意」をどう育てていくか。

その姿勢こそが、いま求められている経営感覚のアップデートです。

「月次で利益、年次で関係性」を測るというような、新しい時間軸の設計。
「契約後こそがスタート」というカスタマーサクセス視点の定着。
「信頼こそ最大の資産である」という発想の再構築。

本書が照らしているのは、サブスクリプションという“制度”ではなく、「関係性の継続が価値を生む」ことを前提にした経営の態度なのです。

数字の奥にある、関係の深さと時間の手触り──
その感覚値をアップデートする一冊として、本書はきわめて重要な役割を果たしてくれるでしょう。

まとめ

  • 会計にはクラック(ひび)がある!?――制度は万能ではなく、そこから見落とされがちな“感覚値”のアップデートにこそ価値があるのです。
  • サブスクとは、態度である!?――それは顧客とビジネスの見立てを反映したものとなります。
  • 関係性を資産化できるか!?――サブスク会計学とは、つまり商いの原点と重要性について改めて視点と視座をも投げかけてくれる考え方の体系なのです。
藤原大豊,青木章通
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