市場価値を高めるための組織デザインを!?『Z世代はなぜすぐに辞めるのか?』泉澤恵一朗

Z世代はなぜすぐに辞めるのか?
  • 入社3日目で、新人が辞めた!などのニュースご覧になりましたか!?
  • 冷静に見ていくと、「採用」「雇用」に関してとても重要な論点が見つかります。
  • 企業と個人との関係性は少しずつ変わっているのです。
  • 本書は、Z世代をキーに、どのような労働観が広がっているのかを見つめる1冊です。
  • 本書を通じて、世代を超えて、組織で働くとはなにか?について考えるヒントを得られます。

会社は、面倒を見てくれない?

日本において、世代とは、一般的に1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代を指します。具体的には1995年〜2010年頃に生まれた人々を指すことが多いですが、定義には若干の幅があります。

基本的な特徴としては、以下がよくあげられるようです。

  • デジタルネイティブ:生まれた時からインターネットやスマートフォンが存在する環境で育った
  • SNSとの親和性が高い:TikTokやInstagramなどのプラットフォームを自然に使いこなす
  • 多様性への理解:ジェンダーや人種など多様な価値観を受け入れる傾向がある
  • 社会課題への関心:環境問題やSDGsなどへの意識が高い傾向 消費行動の変化:所有よりも体験を重視する傾向

そして、このZ世代に共通して、見られるのが「焦っている」という感覚です。

激しく変化のある社会の中で、どうしたら自分が自分らしく、でも、一定程度社会で活躍しながら、人生を創っていけるかという課題感を目の前に絶えず模索をしているからです。

足元の激しい変化は、コロナ禍がありました。

企業が新しい働き方を模索する中で、変化はビビッドに訪れました。

こうした変化を目の当たりにして、従前の働き方から全く異なる状況の中で、いかに自分を育てていけるか?ということが、Z世代の大きな課題になっています。

でも、そういう熱量を会社は受け止めきることがしづらい状況にあります。

「ブラック企業」という言葉が言われだして久しいですが、いかに従業員にとって働きやすい環境を具備するかについて、経営レベルの課題になっています。

結果、「ホワイト化」が進む中で、従業員に無理強いをすることができない。もっと頑張って成長の機会を得たいと思っても、会社ではこれまでのようにはなかなか環境を作り出すことができない状況になっています。

こうしたジレンマについては、こちらの1冊「【この10年でこんなに変わった労働環境!?】会社はあなたを育ててくれない|古屋星斗」もぜひご覧ください。

真剣に自分の人生と向き合おうとしているZ世代には、時間がありません。

自分が得られるものが少ないと分かれば、その組織に永く居続ける理由はもはやなく、当然辞めます。

大きな要因は「リアリティ・ショック」と言われています。

理想と現実のギャップがあり、それがネガティブな印象を与えてしまった・・・どうしたらそのギャップを減らすのか?あるいはポジティブなギャップにできるのかがキーです。

成長感が欠かせない?

Z世代の仕事の価値観、人生の価値観を見つめていきましょう。

①映え
②成長
③やりがい
④仲間

これらの要素を満たしてくれる仕事にフォーカスしていると言います。

しかし、これらの要素は並列ではなく、相互に関係もしています。

中でも特に強いのが、「②成長」です。

例えば、映えを意識しながら、やりがいや仲間を求めるのも、自分がぐいぐいと成長していることが確認できたり、他者にアピールできたり、そういうためのものだそうです。

また、彼らは「タイパ」も常に意識しています。

だから、「自分は何のためにこの仕事をしているのか」ということを気にしています。

言い換えると、すぐに「こんな仕事、時間の無駄じゃないか」という不満を持つわけです。

だからこそ、Z世代とより良い関係を創っていくためには、仕事や会社についてミッション・ビジョン・パーパスの言語化が欠かせず、常にそれを元に対話を続けていくというアクションが必要ということになります。

現場におけるひとつひとつの仕事はどうしても、作業化しやすいものがあります。分業するための仕組みである組織の中で活動していくためにはどうしてもそうなりがちです。

でもそれを放っておいては、現場と会社のつながりがどんどん希薄化してしまうでしょう。

そこで、チームとリーダーシップが不可欠になります。

チームという単位で、会社と現場の心理的な接続を維持・強化するために、リーダーは、常に、会社の解釈、そして現場メンバーの人生の解釈を促していくことが、よりよい環境づくりにはとても大切だと言えるでしょう。

意味の探索で、組織と良い関係を?

ここまでZ世代について取り扱ってきましたが、実はこれ、組織の本質だと思いませんか?

いま社会が大きな転換点にあって、すべての世代で、働き方の模索が続いています。

  • 定年世代は、ウェルビーイングの持続性の中での仕事を。
  • ミドル世代は、自分のキャリアと会社の中での役割を。
  • 若年世代は、自分の成長と絶えず変化する社会との関わりを。

このような視点で、多くの世代で、会社や組織をどう活用すればいいのか?が、大きなアジェンダになっています。

そして、そこで大切になるのが、上述のように組織のパーパスと自分のパーパスのすり合わせです。

かつ、その中に相乗効果を見出す必要があるでしょう。

何よりパーパスを相互に言語化してある状態が理想に成るので、「問い」によって、絶えず考え続ける体質をいかに作れるかが、重要になります。

この状況をさらに複雑に加速させているのが「副業」の解禁についてです。

第1章で、Z世代は副業の解禁について、「これからは会社が社員に責任を持たなくなる」と思っていると言いました。副業の解禁だけでなく、Z世代は、たびたびある大企業のレイオフやベンチャーの倒産のニュースも、2019年にあった経団連の会長の「経済界は終身雇用なんてもう守れない」という発言なども知っています。

Z世代も、他の世代でも、従業員としては、「会社は一生を通じて自分の人生を守ってはくれない」という前提が共有されつつあります。

どうなっても、食いっぱぐれない人間になるために、この組織で得られることは何なのかを常に考えている人にどう応えられるのかが、組織の運営で必要な論点になるのです。

一方、ことにZ世代においては、まだまだ社会の経験が足りないこともあり、「働くということ」に対する解像度が高くないのも現実です。

スキル向上という理想のベクトルはあるにしても、それがどのようなもので、社会の中で、どのように磨かれ、発揮されていくのか?については、手探りです。

そんな時に、先輩の存在や会社組織の存在はかけがえのないものとして、ポジショニングできるのではないかと思えます。

スキルに関して上司が提示した「こうなんじゃないか」という仮説が魅力的であれば、ひとまずそのとおりに取り組むので、すぐに会社を辞めたいとは思いません。

自分の市場価値を上げたいと考えるZ世代を、反対に、会社や組織が自律してものごとをさらに考えるためのカンフル剤として機能させていくことだって、可能かもしれません。

まとめ

  • 会社は、面倒を見てくれない?――キャリア的自律がどうしても求められる時代になりました。
  • 成長感が欠かせない?――市場価値を意識するZ世代にとって、成長は重要なニーズです。
  • 意味の探索で、組織と良い関係を?――相互に一定のよりよい緊張感を取り戻しましょう。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!