- マーケティングにおいて重要なことは何でしょうか?
- 実は、顧客の解像度かもしれません。
- なぜなら、顧客からはじめなくては、課題解決が絵空事になります。
- 本書は、最も重要だと言っても過言ではない、顧客のことについて知るための1冊です。
- 本書を通じて、マスアプローチではない視点を得ます。

価値とはなにか?
どのような企業が継続的に、収益を得ることができるでしょうか。
最も重要なことは、「顧客」が何に価値を感じているか、それをしっかりと把握しながら、自社の商品やサービスを磨き込んでいけるかどうか?です。
「顧客心理」に着目し、「誰に(Who)」「何を(What)」を提供していくのか、それを軸に考え込んでいるビジネスだけが、この世界に残る権利を得ることができるのです。
とても当たり前ですが、最も重要なことを引用します。
顧客は便益と独自性を見出すからこそ、対価を支払ってくださるのです。
この相互の関係性が成立して、はじめてプロダクトの「価値」が生まれ、事業の成長が見込めます。
さらに重要な論点を重ねていきましょう。
それは、「価値」というのはどこから生まれるのか?ということです。
勘違いしてしまうのですが、商品やサービスそれ自体が価値であるというのは、少し違います。
「価値」が生まれるのは、そうした商品やサービスを顧客が体験・受け取った時に、顧客の中で「実感」されるものなのです。
反対に顧客がそこに便益と独自性を見出すことができなければ、「価値」はないに等しいです。
N1から始めよう?
西口一希さんが強調するのは、そうした価値の源泉を解像度高く見出す方策についてです。
それが、「N1分析」です。
「N1分析」では、顧客の購入行動につながる、顧客自身も気づいていない、言語化できていない潜在ニーズをつかみ、有効なプロダクトの提案、さらにマーケティング施策を創出し、定量的な検証を重ねて拡大展開していきます。
これらの一連の発想の重要なポイントは、顧客の状況が起点となっているということです。
ここで、これまで王道であったマーケティング、つまりマスマーケティングとの比較をしてみましょう。
歴史的にマーケティングは市場全体を大きな塊としてマクロ的にとらえ、既存の理論やルールを活用してシェア拡大を目指す「演繹的」な手法が一般的でした。
マスマーケティング | N1マーケティング | |
---|---|---|
思考プロセス | 演繹的(一般から個別へ) | 帰納的(個別から一般へ) |
アプローチ方法 | 同一メッセージを大量配信 | 個別最適化されたメッセージ |
データ分析 | 集計データ、平均値重視 | 個別データ、パターン分析重視 |
主要メディア | テレビ、新聞、ラジオなど | デジタル、SNS、メールなど |
コスト構造 | 初期投資大、単価低減 | 初期投資小、運用コスト比例 |
KPI重視点 | リーチ数、認知度 | エンゲージメント率、LTV |
戦略立案の特徴 | 市場全体の仮説から展開 | 個別事例の積み上げから展開 |
ここで冷静になってみると「マス」という顧客は世界のどこにも存在しないということです。
全体をくくってそこから個人にアプローチしていく方法ですと、どうしても矛盾が生じることもあります。
マスマーケットと一口に読んでいる世界も、実は多種多様な個々の顧客の集合体や平均値にすぎません。
テクノロジーの発展や、あるいはものごとに対するアプローチを支える価値観のシフトによって、N1にアプローチして、ペインを解像度高くキャッチアップして、ともに商品やサービスを作り込んでいく発想が実行可能な世界観になっています。
顧客の状況を起点にする発想についてはこちらの1冊「【キーは、「状況」という単位!?】バリュー・プロポジションのつくり方|前田俊幸,安達淳」もおすすめです。

次のコメント、本当でしょうか?
「アメリカの人口は日本の3倍ですから、ポテンシャルも日本の3倍あります!」
確かに事実としてアメリカの人口は3倍です。
しかし、アメリカは、人種、国籍、出身地、宗教、年収、教育歴、政治的信条などの考え方や属性によって価値観の差異が非常に大きい(日本も価値観の差異はあるが、相対的に)と捉えることだってできます。
さらに、州は一般的に国レベルの自治権を有することもポイントになります。立法、財政、司法、歴史的背景からしても、中央政府からの影響は、日本の都道府県とは全く異なるものがあります。
つまり日本よりも遥かに細かいセグメンテーションをもって、顧客を捉える必要があるということになります。

商売とは?
市場を良く見つめていくと、次のような真実に気づくことができます。
マーケットは塊ではない。真理のある個人の集合がマーケット。
演繹的アプローチと、帰納的アプローチの使い分けこそが重要であるという視点に立つこともできるでしょう。
演繹的アプローチは、既存の理論や仮説から出発し、具体的な結論を導き出す方法です。例えば、「若年層はデジタルネイティブである」という一般的な理論から、「したがって、この製品は若年層向けにデジタルマーケティングを重点的に行うべきだ」という具体的な戦略を導き出します。トップダウン型のアプローチとも言えるでしょう。
一方、帰納的アプローチは、個別の観察やデータから始まり、そこからパターンを見出して一般的な理論を構築していく方法です。例えば、多くの消費者の購買データを分析し、「この年齢層では、こういった購買パターンが見られる」といった一般的な傾向を導き出します。ボトムアップ型のアプローチです。
それぞれのアプローチには長所と短所があります。
演繹的アプローチは、既存の理論を活用できる反面、現実の市場が理論と異なる場合に誤った結論を導く可能性があります。帰納的アプローチは、実際のデータに基づいた発見が可能である一方、十分なデータがない場合に誤った一般化をしてしまうリスクがあります。
今回のテーマであるN1分析は、帰納的アプローチの具体的な方法論ですが、N1分析がない限り、マーケティング戦略は机上の空論でしかない、とも言えるように思えます。
演繹的マスアプローチ、帰納的N1アプローチ、その双方がとても重要であるということですね。
結局、どんなビジネスでも、突き詰めて考えれば、核となるビジネスは、1人の顧客との1つのプロダクト(商品やサービス)の組み合わせでしかない。
商売の原点を、私たちは見つめるべきなのかもしれません。
顧客がプロダクトに価値を見出すことができれば、入手するためにお金や時間や体力(総じてコスト)ということ、そしてそれが商売であるということです。
西口一希さんの著書については、こちら「【分ければ顧客価値が見えてくる!?】顧客起点の経営|西口一希」やこちら「【N1から始めよう!?】たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング|西口一希」もぜひご覧ください。


まとめ
- 価値とはなにか?――顧客が見出すことによって初めて生まれるものです。
- N1から始めよう?――一人ひとりと具体的に向き合い、価値の源泉を探りましょう。
- 商売とは?――価値の交換であり、その原点を改めて見つめてみることです。
