- AIの時代にどのような存在であり続けることが、豊かな人生につながるのでしょうか。
- 実は、HIとしての存在意義を見つめることかも。
- HIとは、Human Intelligenceの略で、AIに対する人の存在に関わる概念です。
- 本書は、これからの時代にいかに「自分の脳」を活かすのか、視点を提供する1冊です。
- 本書を通じて、21世紀を豊かに生き進めるヒントを得られます。
HIとは?
みなさんが、御存知の通り、AI(Artificial Intelligence)の社会実装が始まっています。これまで当たり前とされてきた人が行っている業務を、AIが代替しながら、人の役割を再定義する問題提起が盛んに語られてくるようになりました。
そもそもAIがあろうがなかろうが、地球温暖化と生物多様性の危機を回避する必要から、これまでのような社会的費用を外部化した経済成長は困難です。人的資本とエネルギーが構造的に不足する中で、これまでとは抜本的に異なる経済モデルを構築することが、余儀なくされていると言っていいでしょう。
大切なのは、限られた資源の中で、AIと協同しながら、より良い世界を作り出していくために、人は何ができるのか?あるいは、人はどのような生活や社会を理想とするのか、を問い続けることです。
AIが知的生産すら代替していく時代には、誰もが等しく持つ脳の人間らしい働きを理解する必要があります。
答えがないものを問う力を、人は簡単に発揮することができます。なぜ生きるのか、なぜ存在するのか、なぜ生きていくのか、そうした哲学的な問いかけを人は行うことができます。一方で、AIには、こうした問いを自ら持つことは難しいとされています。
ニューロンとシナプス――脳の配線が「私」を決める
脳の反応は、化学物資のやり取りによるものです。それには正確性なシステムというよりも、偶発性を内包した、あいまいな仕組みによって私たちは駆動して、考えています。AIには、正確性や高度な複雑な処理は叶わないかもしれませんが、根本を問うたり、そもそもを疑ってみるというような、視点を持つことを脳は可能にしてくれます。
大切なのは、HI(Human Intelligence)という考え方かもしれません。AIの登場によって、知覚される人ならではの知性の時代に突入しています。
6つのモードで俯瞰しよう?
脳の基本的な特徴を6つのモードで理解してみましょう。人類は、もともとチンパンジーや類人猿と変わらない生活を送っていました。運動(狩猟と採集)、食事、睡眠、交流などです。その中で、人は生活環境の激変を体験してきました。その都度、言語能力の獲得による複雑な情報交換、文字の発明と普及による過去の情報へのアクセス、さらには印刷書籍やデジタルテクノロジーによる時空を超えた膨大な情報の生成と伝達です。
こうした経緯の進化の中で、脳に「新しい運転様式(モード)」を開発追加し、自分たちの脳のソフトウェアアップグレードの努力を続けてきました。
1)運動モード・・狩猟民族だった私たちの動物としての知能を活かすモードです。
2)睡眠モード・・地球上の多くの生物が持つバイオリズムのモードです。
3)瞑想モード &4)対話モード・・認知革命と精神革命による「知性」を駆動させるモードです。
5)読書モード・・印刷革命による知性の拡張をもたらすモードです。
6)デジタルモード・・知的生産に向けたインプットとアウトプットの飛躍的効率化を行うモードです。
特に3)瞑想モード &4)対話モード以降からの革新が大きな進化をもたらしました。それは、言語の誕生によるものです。これは認知革命と呼ばれています。複雑な発話という言語を使って、情報を非常に密にやり取りできる用になりました。
活動範囲が広がることで社会が複雑になり、周辺情報が増えることで、人は自分というものを認識して、心を持つに至りました。文字による記録で自らの歴史を知ることができたり、他者が考えたことを知ることも、自己認識の強化につながっていったものと推察されます。
一方で、紀元前500年頃くらいから、心や意識が生まれた弊害も見られるようになります。時間軸を手に入れたことにより、過去や将来について、悩みや不安を持つことで、人は苦しみます。宗教や哲学が同時に誕生して、人の心の救いとなっていきます。
世界を広げるにつれて、人は脳の働きをアップデートしてきました。これまでの歴史の中で、人類は、言語、文字、書籍、デジタルによる圧倒的な情報量の急増に直面しながら、自己と向き合い・見つめる課題に応えてきたのです。
言語化された情報を使った論理の最適化を目指す知能の世界では、今後AIが活躍する領域が増えてくるでしょう。
そうした時代においては、人間の脳のモード=無意識や思考、感情の解放と制御、共感の拡大、非常識とされるアイデア、想像もできなかった知の飛躍、見たこともない絵や聴いたことがない音を作るといった、言語化できない人間の脳の働きがとても重要になります。
人間らしさについては、こちらの1冊「【自分を「型」から解放するには!?】人生のレールを外れる衝動のみつけかた|谷川嘉浩」もぜひご覧ください。
無意識の領域や、直感的な発想、違和感などを、どれだけすくい取ってあげられるかもキーになるかもしれません。
HIを磨くには?
上記のような6つの脳のモードを駆使することで、AI時代におけるHIを見つめることが可能となります。
脳の働きは「物質的なプロセスだ」と明言しています。
崇高な精神的ななにかなどではなく、感覚器が得た感覚情報の意味を身体システムが理解し(知覚)、それが感情や意識となりって、表出されます。
生物としての身体機能=考えることにつながっているのです。
AIで得られた時間のゆとりを、人類は再び、運動や睡眠、瞑想や対話といった生命の活動に使うことができるでしょう。6つのモードを駆使して、生涯を通じて、脳を鍛え続けることが、今後ますます重要になります。
アリストテレスも奴隷は主人が「ただ生きる」だけでなく「よく生きる」ためにも必要だと肯定していました。
この奴隷という言い方は現代にはフィットしないかもしれませんが、私たちには、昼夜を問わず仕事をともにしてくれるAIというパートナーがいます。私たちはひとりひとりが、「よく生きる」とはどういうことかを問い、自らの存在を改めて考えて、アップデートしていくためのスパイラルへの過渡期を生きているのです。
AIの登場を脅威としてだけ捉えるのではなく、上手に活用して、貴重な時間を生み出し、身体性に紐づく感性を高める活動を自ら作り出していきたいものです。
まとめ
- HIとは?――AIに対するHuman Intelligenceを意識できる概念です。
- 6つのモードで俯瞰しよう?――HIの根幹をなす人間の思考=脳のモードを見つめてみましょう。
- HIを磨くには?――脳の6つのモードを意識しながら、身体を使っていきましょう。