脳を上手に刺激せよ!?『不夜脳 脳がほしがる本当の休息』東島威史

『不夜脳 脳がほしがる本当の休息』東島威史の書影と手描きアイキャッチ
  • 脳の機能を守り、より良く働かせるには、どうすればいいのでしょうか?
  • 実は、脳は筋肉とは真逆の性質を持っています。筋肉はトレーニングで太く強くなりますが、脳は余計なものを削ぎ落とすことで機能を維持するんです。
  • なぜなら、脳は「刺激を処理するために削減する」臓器だからです。刺激を削減する時間が足りなければ、脳は疲弊し、壊れていきます。
  • 本書は、脳神経外科医・東島威史氏が、脳科学の知見をもとに「脳がほしがる本当の休息」を解き明かした一冊です。
  • 本書を通じて、睡眠、記憶、刺激――私たちが当たり前だと思っていた脳の働きが、次々と覆されていきます。
東島威史
¥1,617 (2025/12/29 10:06時点 | Amazon調べ)

著者の東島威史氏は、脳神経外科医として長年、脳の機能と疾患に向き合ってきた専門家です。臨床の現場で数多くの患者と接する中で、現代人の多くが抱える「脳疲労」の問題に着目するようになりました。

東島氏が特に注目したのは、睡眠不足と認知機能低下の関係です。従来、睡眠不足がアルツハイマー病のリスクを高めると考えられていましたが、東島氏は逆の可能性――つまり、アルツハイマー病の初期症状として睡眠障害が現れているのではないかという視点に行き着きます。

本書は、そうした臨床経験と脳科学の最新研究を融合させ、「脳が本当に求めている休息とは何か」を解き明かそうとする試みです。単なる睡眠の指南書ではなく、脳という臓器の本質的な性質を理解することで、私たちがどう生活すべきかを考えさせてくれる一冊となっています。

脳は「削ぎ落とす」ことで機能する臓器

私たちは無意識のうちに、脳を筋肉のように捉えていないでしょうか。

使えば使うほど鍛えられる、刺激を与えれば与えるほど活性化する――そんなイメージを持っている人は多いと思います。

しかし、本書が示すのは、まったく逆の事実なんです。

1つは、筋肉はトレーニングを中断するとすぐに衰えてしまうが、ある程度維持される点。筋肉は体の組織のなかで、最も早く老化し、反対に脳は、最も老化しにくい臓器である、という点だ。

筋肉は使わなければすぐに衰えます。

でも脳は違う。

脳は最も老化しにくい臓器であり、その理由は「削減する力」にあるんです。

脳は実は、「不要なものを削ぎ落としながら」機能を磨いていく。膨大なデータが入っているフォルダは、検索をかけても早くてならかなファイルが開かない。過去的には「必要なもの」を素早く活用するためには、不要なものがなるべく削ぎ落とされていなければならない。脳が若い機能を維持するために必要な作業が、脳細胞を「減らす」ことなのだ。

脳細胞が減ることを、私たちは恐れています。

記憶力が衰える、頭が悪くなる――そんな不安を抱きがちです。

でも実際には、脳細胞が減ること自体が、脳の正常な機能なんです。

膨大なデータが入ったフォルダは、検索に時間がかかります。

必要なファイルを素早く開くには、不要なものを削除しておく必要がある。

脳も同じで、余計な情報や使わない回路を削ぎ落とすことで、本当に必要なものに素早くアクセスできるようになるんです。

脳のときめきやドーパミンのように、脳には刺激が大切であり、脳細胞も立派な刺激だ。ただし刺激はなんでも通動や運動するほど、心拍数が上がって脳に刺激を与える。歩きのドキドキや推し活のドキドキよりも、さらに強い刺激だ。それもあって強いときめきほど、実際よりも長くなり、たくさんの情報を処理しやすくなる。これは、覚醒度と関連している。ドキドキしている一脳が覚醒状態になる一たくさんの情報を処理しやすくなるという順だ。仕事のストレスという「悪いドキドキ」であっても刺激になる。

刺激は脳にとって重要です。

ドキドキする体験、ときめく瞬間――これらは確かに脳を活性化させます。

心が動くような出来事があると、時間は実際よりも長く感じられ、たくさんの情報を処理しやすくなる。

これは覚醒度が上がっている状態です。

良いドキドキも、悪いドキドキも、どちらも刺激としては同じように脳に作用します。

つまり、刺激そのものは脳に必要なものなんです。

しかし、ここに重要なポイントがあります。

刺激がないと脳の認知機能は衰える。それどころか、壊れてしまうこともあるうう。

脳は刺激を求めています。でも同時に、その刺激を「削減する」必要もある。

この一見矛盾するような2つの要求を、脳は持っているんです。

まずは大量に細胞を増やしてから、いらないものを削ぎ落としていく。細胞はやたらと量だけあるよりも、必要なものが必要なだけあるほうが、機能を遂行しやすいのだ。

胎児期から出生後にかけて、脳は大量の細胞を増やします。

でもそれは、最終的に削ぎ落とすためなんです。

必要なものだけを残し、不要なものを削除していく。

このプロセスこそが、脳の洗練であり、機能の維持なんです。

脳は「削ぎ落とされて」完成する

これが意味するのは、削減できない脳は壊れていくということです。

刺激が多すぎて削減が追いつかない。

あるいは、削減するための時間が確保できない。

そうなったとき、脳は疲弊し、やがて機能を失っていくんです。

では、脳が刺激を削減するために必要な時間とは何か。

それが睡眠なんです。

だからこそ、良質な睡眠が必要になる

脳は刺激を削減することで機能を維持しています。

では、その「削減」はいつ行われるのか。

答えは、睡眠中なんです。

本書で述べたいのは、「脳がほしがる本当の休息」だ。体を休息させるには「睡眠」は必要不可欠だが、脳はそもそも眠らない――そんな話をしている。

睡眠は「体のための休息」だと、私たちは考えがちです。

疲れた体を回復させるために眠る。

でも実際には、睡眠の主役は脳なんです。

脳は睡眠中も活動を続けています。

老廃物を除去し、刺激を処理し、必要な情報を整理していく。

「睡眠不足でアルツハイマー病に」は拡大解釈このように見ていくと、「睡眠不足がアルツハイマー病の一つの原因」というのは、拡大解釈であり、正確に言うなら、「睡眠不足とアルツハイマー病のなりやすさは相関する」となる。

睡眠とは、脳が刺激を削減するための貴重な時間なんです。

睡眠不足の背景がアルツハイマー型認知症につながるのではなく、「認証の初期症状」として睡眠障害が現れている可能性がある。因果関係が逆なのだ。

睡眠不足とアルツハイマー病の関係について、私たちは因果関係を逆に捉えていたかもしれません。

睡眠不足がアルツハイマーを引き起こすのではなく、認知症の初期症状として睡眠障害が現れている可能性がある。

つまり、脳の削減機能が低下し始めると、睡眠にも問題が出てくるということです。

でも同時に、こうも言えるんです。

睡眠不足が続けば、脳は刺激を削減する時間を失い、やがて削減機能そのものが衰えていく。

睡眠不足は、脳の削減能力を奪っていくんです。

生物のデフォルトは「休息モード」で、脳が誕生することで、「活動モード」が得られていった。つまり、脳はそもそも「活動するために新たに加わった器官」ではないだろうか。

これは興味深い視点です。

生物の基本状態は「休息モード」であり、脳が加わることで「活動モード」が可能になった。

だとすれば、睡眠とは元の状態に戻ることではなく、脳が積極的に削減作業を行う時間なんです。

睡眠はあくまでも「体のための冬眠状態」「エネルギー節約のためのシステム」である可能性が高く、脳は切り離して考えるべきだ。

睡眠を「体の休息」と捉えるのは、一面的すぎるのかもしれません。

体はエネルギーを節約し、回復する。

でも脳は、睡眠中も働き続けている。

刺激を削減し、情報を整理し、機能を維持するために。

館という「刺激」に対応する精神として誕生したのが脳であり、覚醒の機能が脳である。ここのことからも「脳は刺激を処理するためになる刺激」ということは言うまずもだろう。

脳は刺激を処理するために生まれた器官です。

そして、刺激を処理するためには、削減が必要なんです。

では、脳はどのようにして情報を削減しているのか。

記憶の仕組みを見ると、そのプロセスが見えてきます。

いささか飛躍する意見ではあるが、「記憶の定着」とは、必要な記憶を取り入れ、整理し、定着させるプロセスではなく、脳がランダムに取り込んださまざまな記憶のうち、「ありゃ必要ではないもの」を、無意識という倉庫に入れておくことを言うのだ。

記憶の定着と聞くと、私たちは「必要な情報を整理して保管する」というイメージを持ちます。

でも実際には、脳はランダムに情報を倉庫へ放り込んでいるだけかもしれません。

必要なものを選んで残すのではなく、不要なものを意識の外へ追いやる。

これもまた、削減のプロセスなんです。

「歳をとると記憶力が落ちる」というのは、この仕組みで説明がつく。新しい情報が古い情報に勝てないからだと考えられるのだ。仮に僕が1日10回「ヒゲソリ」という言葉を聞いていたら、40年間で約14万回「ヒゲソリ」という言葉に触れている。新しい言葉を覚えるには、それと同じくらいの回数を聞かなければ、既存の記憶に上書きできないわけだ。

40年間で14万回「ヒゲソリ」という言葉を聞く。

でも、その記憶は定着していません。

なぜなら、それは「ありふれた必要ではないもの」として、無意識の倉庫に放り込まれているからです。

歳をとると記憶力が衰える――そう感じるのは、実は脳が正常に機能している証拠なんです。

新しい情報が、すでに蓄積された膨大な情報に勝てない。

これは、脳が適切に削減作業を行っている結果なんです。

睡眠中、脳はこうした削減作業を続けています。

刺激を処理し、不要なものを意識の外へ追いやり、必要なものへのアクセスを確保する。

だからこそ、良質な睡眠が必要なんです。

睡眠不足とは、この削減作業の時間が足りない状態を意味します。

刺激が蓄積し、処理しきれなくなり、やがて脳は疲弊していく。

睡眠は、脳が自らを守るための、不可欠な時間なんです。

東島威史
¥1,617 (2025/12/29 10:06時点 | Amazon調べ)

その一方で、良質な覚醒にも適度な刺激が必要

ここまで、脳が刺激を削減する必要性と、そのための睡眠の重要性を見てきました。

では、削減さえできていればいいのか。
刺激は少なければ少ないほどいいのか。

実は、そうではないんです。

脳は眠らず、刺激を常に求めているということ
脳は起きたままでも老廃物を除去する仕組みがあるということ

脳は眠らず、刺激を常に求めている。

これが、脳のもう一つの本質なんです。

削減が必要である一方で、刺激がなければ脳は機能を失っていく。

この2つの要求は、矛盾しているように見えるかもしれません。

でも実際には、両方とも真実なんです。

刺激がないと脳の認知機能は衰える。それどころか、壊れてしまうこともあるうう。

刺激がない状態――完全な退屈、何も変化のない日々。

そうした状況では、脳は衰えていきます。

使わない機能は失われる。

これは、体の筋肉と同じです。

でも、だからといって刺激が多ければいいわけでもない。

脳のときめきやドーパミンのように、脳には刺激が大切であり、脳細胞も立派な刺激だ。ただし刺激はなんでも通動や運動するほど、心拍数が上がって脳に刺激を与える。歩きのドキドキや推し活のドキドキよりも、さらに強い刺激だ。それもあって強いときめきほど、実際よりも長くなり、たくさんの情報を処理しやすくなる。これは、覚醒度と関連している。ドキドキしている一脳が覚醒状態になる一たくさんの情報を処理しやすくなるという順だ。仕事のストレスという「悪いドキドキ」であっても刺激になる。

ドキドキする刺激は、脳を覚醒させます。

良い刺激も、悪い刺激も、どちらも脳にとっては同じように作用する。

そして、強い刺激を受けたとき、脳はたくさんの情報を処理しようとします。

これは、脳が鍛えられている状態とも言えるんです。

刺激が多すぎれば疲弊する――それは確かです。

でも同時に、その刺激は脳を活性化させ、鍛えることにもなっている。

つまり、問題は刺激の「量」ではなく、「質」と「バランス」なんです。

使わない臓器などが「もういらないんだよね?」と考えてしまうことを「廃用性萎縮」という。脳だけでなく筋肉や他の臓器、そして脳にも起こる。

脳は使われなければ、機能を失っていきます。

「もう必要ないんだよね?」と判断され、萎縮していく。

これが廃用性萎縮です。

だからこそ、適度な刺激が必要なんです。

刺激がありすぎれば、削減が追いつかずに疲弊する。
刺激がなさすぎれば、使われずに萎縮する。

脳が求めているのは、その中間――適度な刺激なんです。

ほんとんどの人は「疲れたら休息しなければ」と思うし「疲れる前に休まなきゃ」というのは、ではなく活力だ」というのが日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹さんの説で、非常に納得感がある。それに加えて優れているのは、「脳疲労の正体はバランスの崩れ」なのだ。

つまり、「脳疲労」の正体とは、2つのバランスが崩れる。①脳の機能や構造部位が、それ以上の刺激を拒んでいる②血流や代謝が低下した部位が、刺激を求めている①か②か、もしくはその両方か。要するに、②という実感があるから、①か②、もしくはその両方か。要するに、②という実感があるから、バランスが崩れたとき、何をするとそれが改善する実感がありだろうか。

脳疲労の正体は、バランスの崩れなんです。

刺激が多すぎる部位と、刺激が足りない部位。

この2つが同時に存在している状態――それが疲労なんです。

だとすれば、疲れたときに必要なのは「完全な休息」ではないかもしれません。

バランスを取り戻すこと。

刺激が多すぎる部分は削減し、刺激が足りない部分には適度な刺激を与える。

そのバランスこそが、脳の健康を保つ鍵なんです。

そして、このバランスを実現するのが、良質な睡眠と良質な覚醒なんです。

睡眠中、脳は刺激を削減し、整理します。
覚醒中、脳は適度な刺激を受け、機能を維持します。

この2つのサイクルが、うまく回っているとき、脳は最適な状態で働けるんです。

脳は持続で、他の臓器が「増えることで機能を獲得してきた」のに対して「削ぎ落として機能を獲得する」臓器だ。

脳は特殊な臓器です。

増やすことではなく、削ぎ落とすことで機能を獲得する。

でも同時に、刺激を求め続ける。

この一見矛盾する2つの性質を理解することが、脳を本当の意味で休ませ、活かすための第一歩なんです。

私たちが目指すべきは、完全な無刺激ではありません。

適度な刺激を受け、それを適切に削減できる状態。

良質な覚醒と良質な睡眠のバランス。

それこそが、脳がほしがる本当の休息なんです。

次回の投稿でも、本書を具体的にレビューさせていただき、どのような習慣を持つことが脳の休息と活動のバランスを保つことにつながるのかを考えていきましょう。

脳(睡眠)についてはこちらの投稿「量より質!!『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 脳は「削ぎ落とす」ことで機能する臓器――筋肉とは真逆で、脳細胞が減ることは正常なプロセスです。刺激を処理するためには削減が必須であり、削減できない脳は疲弊し、壊れていきます。
  • だからこそ、良質な睡眠が必要になる――睡眠は脳が刺激を削減する貴重な時間です。睡眠不足とは削減する時間の不足を意味し、記憶の定着も「整理」ではなく「不要なものを倉庫へ放り込む」削減プロセスなんです。
  • その一方で、良質な覚醒にも適度な刺激が必要――脳は刺激を常に求めており、刺激がなければ機能を失います。刺激過多は疲弊させますが、同時に脳を鍛えることにもなる。脳疲労の正体はバランスの崩れであり、良質な睡眠と良質な覚醒のバランスこそが、脳の健康を保つ鍵なんです。
東島威史
¥1,617 (2025/12/29 10:06時点 | Amazon調べ)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!