感性と心が言葉を作り、そして、人格になる!?『言葉一つで、人は変わる』野村克也

感性と心が言葉を作り、そして、人格になる!?『言葉一つで、人は変わる』野村克也の書影と手描きアイキャッチ
  • なぜ、同じことを伝えても、人を動かせるリーダーとそうでないリーダーがいるんでしょうか。
  • 実は、言葉の巧みさや話術の問題ではないんです。
  • なぜなら、言葉はその人の感性や心のあり方から生まれるものであり、表面的なテクニックでは人の心を本当に動かすことはできないからなんです。
  • 本書は、名将・野村克也が50年以上の野球人生を通じて実践してきた「言葉で人を変える」方法論を体系化した一冊です。
  • 本書を通じて、リーダーの最重要任務は部下の「意識改革」であり、そのためにはまず自分自身の感性を磨き、心を高める必要があることが見えてきます。
野村克也
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野村克也さんは、1935年生まれのプロ野球選手・監督です。選手としては南海ホークスで活躍し、戦後初の三冠王、通算657本塁打という金字塔を打ち立てました。引退後は、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務め、特にヤクルトでは1990年代に黄金時代を築き上げました。

野村さんといえば「ID野球」という言葉が有名です。これは、データと理論を駆使した緻密な野球のことですが、その根底にあったのは「考える野球」でした。選手一人ひとりに考えさせ、気づかせ、成長させる――この姿勢が、弱小チームを常勝軍団に変える原動力となったんです。

本書を執筆した背景には、長年の指導経験から得た確信があります。それは「言葉一つで人は変わる」ということ。ただし、その言葉は表面的なものではなく、指導者自身の感性と心のあり方から生まれるものでなければならない。この信念を、野球の枠を超えて多くのリーダーに伝えたいという思いが、本書には込められています。

感性と心を磨くことの重要性

人を変える言葉は、どこから生まれるんでしょうか。

野村さんは明確に答えています。

「すべての始まりは、感じる力だ」

人間の行動は「頭脳」と「感性」が司っているんです。

感情が刺激されることで、頭脳を使って考え、行動に結びついていく。

行動が変わることで人は成長し、組織自体もより良い方向に向かっていく。

つまり、感情が刺激されることがすべての始まりなんです。

この視点は、多くのリーダーシップ論が見落としている本質だと思います。

私たちはつい、ロジカルな説明や明確な指示を与えることに意識が向きがちです。

しかし野村さんは、それ以前の段階――「感じる」という入口の重要性を強調しているんです。

考えることの前提としての感じる力

野村さんの洞察はさらに深まります。

「人は感じるから、考えるのだ。そして自らの頭で考える人間は、困難にぶつかったときにも、解決策をみずから見つけることができる」

ここで重要なのは、順序なんです。

感じる→考える→行動する、という流れ。

何も感じない人間は、考えることもないので壁にぶつかったときに、もう一ステップアップできない。

つまり、すべての始まりは「感じる力」であり、感じることのある選手は、常に周囲のことを見ており、さまざまなことに疑問や興味を持つ。

この「感じる力」を育てることこそが、リーダーの仕事の出発点なんです。

現代の組織では、しばしば「考えろ」「もっと主体的に」と言われます。

しかし、そもそも何も感じていない人に「考えろ」と言っても、考える材料がないんです。

野村さんは、この根本的な問題を見抜いていました。

感性を磨くための日常的実践

では、どうすれば感性は磨かれるのか。

野村さんは、特別な訓練ではなく、日常の中での意識のあり方を重視しています。

いわゆる伸び悩んでいる選手は、「感性」の大切さを訴えていました。

「人の最大の罪は、鈍感であることだ」

この言葉は、野村さんが好きな言葉で、よくミーティングなどでも使っていたそうです。

人は感じるから、考えるのだ。

そして自らの頭で考える人間は、困難にぶつかったときにも、解決策をみずから見つけることができる。

何も感じない人間は、考えることもないので壁にぶつかったときに、もう一ステップアップできない。

つまり、日常の中で「感じる」習慣を持つこと。

些細な違和感、小さな変化、周囲の人の様子――これらに敏感であることが、思考の質を高め、行動の質を高めていくんです。

そして、この感性の豊かさこそが、人を動かす言葉の源泉になるわけです。

言葉が人を変える仕組み

野村さんの言葉の哲学には、明確な前提があります。

「進歩とは変わることだ」

変化とは何かを失うのではなく、何かを得ること。

そこに楽しみを覚え出し、勇気をもって挑戦するものだけがさらに成長していける。

成長を阻むものとは、もしかすると変化を受け入れない自分自身でもあるんです。

つまり、人の前の現実を好転させるには、まず、自分自身の前の現実を好転させるしかない。

この視点は、コーチングやマネジメントの本質を突いています。

多くのリーダーは、部下を「変えよう」とします。

しかし野村さんは、変化の主体はあくまで本人であり、リーダーの役割は「変化への勇気」を与えることだと理解していたんです。

問いかけを通じた気づきの創出

では、どうやって人は変わるのか。

野村さんの答えは「問いかけ」です。

技術的限界に落胆している人への言葉として、野村さんはこう語りかけます。

「技術的限界は誰にもあることだ。落胆することはない。そこから先に、いまではは気づかなかった新たな自分の可能性をみつけることができるはずだ」

技術の習得など、新たな試みに消極的な人には「そもそもの部分で理解不足のためにそうなっている人も多い」と見抜きます。

そういったタイプの選手には、「そもそもバッターとは」と、根源的な部分を問うことで、野球への理解を深めることが大切だ、と。

理解が深まることによって、選手が新たな一歩を踏み出していくこともあるんです。

これは、単なる質問ではありません。

本人が気づいていなかった可能性や、見落としていた前提を、問いによって照らし出す作業なんです。

具体的な言葉の引き出し方

野村さんの言葉の使い方には、いくつかの特徴があります。

まず、目標設定を促す問いかけ

「君はどうなりたいんだ」

これは、人が伸びていくには明確な目標設定が必要だという前提に基づいています。

指導者は常に、「どうなりたいか」「そのために何をするべきか」といった問いかけで、選手たちの目標設定を促していくべきなんです。

次に、「そもそも論」による本質への回帰

「そもそも論」を問いかけて、腰の重い人材を動かす

技術の習得など、新たな試みに消極的な人には、「そもそもバッターとは」と、根源的な部分を問うことで、野球への理解を深めることが大切だと野村さんは言います。

理解が深まることによって、選手が新たな一歩を踏み出していくこともあるんです。

さらに、自己認識を促す問いかけ

「まず、自分を知りなさい」

自分をまず知りなさい。

自分がどういう朝だったらチームで生き残っていけるか、しっかり考えなさい、と。

目標を見失っているような選手にはよく言ったものです。

これらの問いかけに共通するのは、答えを与えるのではなく、考える材料を提供する姿勢です。

野村さんは、選手自身が気づき、自ら変化を選択することを重視していたんです。

細かいことを見逃さない観察力

言葉の効果を高めるもう一つの要素は、観察力です。

「細かいことを感じないやつは、大きなことは絶対できない」

野球にかぎらず、人は集団のなかで生きるものだ。

どのような仕事も人と人の集まりである。

そうした組織のなかで機能しない人材とは、「需が」「俺が」の視点が脆弱で、自分の人間性まで見透かされてしまうということを肝に銘じておかなければならない。

つまり、部下の些細な変化、表情の陰り、言葉の端々――これらを見逃さない観察眼があってこそ、適切なタイミング適切な言葉を届けられるんです。

野村さんは言います。

「頭の片隅に何か引っかかる、それが教育だ」

ただそれだけ、こういった言い方も、お互いの知識なとではなく、自分にとって必要な知識が彼らの頭のどこかに少しでも引っかかってくれればいいという思いから出ているんです。

「いままで考えたことがなければ、考えてみてもいいんじゃないか」「知らないよりは、知っているほうがいい」

つまり、一度の言葉で劇的に変わることを期待するのではなく、少しずつ「引っかかり」を作っていく――この忍耐強いアプローチが、結果的に人を変えていくんです。

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リーダーの最重要任務としての意識改革

野村さんは、リーダーの仕事の本質を一言で表しています。

「指導者のもっとも大事な仕事は、部下の意識改革だ」

この言葉には、深い洞察があります。

技術指導でも、戦術指導でも、業績管理でもない。

意識改革――つまり、部下の「考え方」「感じ方」「価値観」そのものを変えることこそが、リーダーの最重要任務だということなんです。

仲間たちと一つの成果を挙げ、全員で喜び合うとき、利己的な目標達成がなんとも小さく見えてくるものだ。

そういう経験をしてきた個々が集まった組織が、本当に強いチームとなっていくんです。

野村さんが実践してきたのは、まさにこの「意識改革」でした。

弱小チームだったヤクルトを、どうやって常勝軍団に変えたのか。

それは、選手一人ひとりの「野球観」「チーム観」「自己認識」を根底から変えることだったんです。

「子を見れば親がわかる」――リーダーの責任

野村さんの言葉には、厳しい自己認識も含まれています。

「子を見れば親がわかる、選手を見れば監督がわかる」

その意味では、監督というのはとても怖い仕事だ。

選手たちの振る舞いで、自分の人間性まで見透かされてしまうということを肝に銘じておかなければならない。

この視点は、多くのリーダーが見落としがちな真実です。

部下の成長は、リーダーの鏡なんです。

部下が成長しないとき、その責任はリーダー自身にある。

部下が変わらないとき、まず変わるべきはリーダー自身なんです。

野村さんは、選手時代から監督時代を通じて、常にこの厳しい自己省察を続けてきました。

「指導者のもっとも大事な仕事は、部下の意識改革だ」

そして、その意識改革を成功させるためには、リーダー自身が高い感性と心を持っていなければならない。

つまり、すべては自分に返ってくるんです。

意識改革を実現するための実践

では、具体的にどうやって意識改革を進めるのか。

野村さんの実践には、いくつかの重要な要素があります。

第1に、プロセスを重視すること

「安定的な実力をつけるためには、やはり日々、プロセスのほうを重視して取り組むべきだ」

結果だけを求めるのではなく、プロセスを重視する。

この姿勢が、選手の「考える習慣」を育てていったんです。

第2に、一流を目指すこと

「一流を目指している人への言葉『細かいことを感じないやつは、大きなことは絶対できない』」

野球にかぎらず、人は集団のなかで生きるものだ。

どのような仕事も人と人の集まりである。そうした組織のなかで機能しない人材とは、「俺が」「俺が」の視点が脆弱で、自分の人間性まで見透かされてしまうということを肝に銘じておかなければならない。

高い基準を示し、それに向かう姿勢を育てる。これが、組織全体の意識を高めていくんです。

第3に、継続的な問いかけ

野村さんの指導は、一度の説教や指示ではありませんでした。

日々のミーティング、練習中の声かけ、試合後の振り返り――あらゆる場面で、問いかけを繰り返していたんです。

選手たちを納得させるだけの言葉があったかと問われれば、いま思い返すとそうは思えない。なぜなら、現役時代は野球に関する本は読んでいたものの、野球以外の知識はどこも薄かったからだった。

解説や評論、講演の仕事を実際に危機感を抱いたのは、引退後、解説や評論、講演の仕事を実際にこなすようになってから、文学的、芸能的に危機感を抱いたのは、引退後、解説や評論、講演の仕事を実際にこなすようになってからだったというのです。

第4に、言葉を磨き続けること

野村さん自身、現役引退後、言葉の力を高めるために膨大な読書を続けました。

「選手たちを納得させるだけの言葉があったかと問われれば、いま思い返すとそうは思えない」

この謙虚さと、学び続ける姿勢。

これこそが、野村さんの言葉に説得力を与えていたんだと思います。

リーダー自身が成長し続けること。

感性を磨き、心を高め続けること。

そこから生まれる言葉だからこそ、人の意識を変える力を持つんです。

感性の論点については、こちらの1冊「【行動・感性・創発の好循環がキー!?】田坂広志「21世紀の知」を語る|田坂広志」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 感性と心を磨くことの重要性――人を変える言葉は、リーダーの感性と心のあり方から生まれます。「感じる力」がすべての始まりであり、日常の中で感性を磨き続けることが、思考の質を高め、行動の質を高めていくんです。
  • 言葉が人を変える仕組み――「進歩とは変わることだ」という前提のもと、問いかけによって気づきを創出し、本人が自ら変化を選択するよう導く。答えを与えるのではなく、考える材料を提供し、少しずつ「引っかかり」を作っていくアプローチが、結果的に人を変えていきます。
  • リーダーの最重要任務としての意識改革――指導者のもっとも大事な仕事は、部下の意識改革です。そして「子を見れば親がわかる」という厳しい自己認識のもと、リーダー自身が感性を磨き、心を高め、学び続けることで、初めて部下の意識改革が可能になるんです。
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