睡眠こそ、最強の“薬”である!!『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー

『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカーの書影と手描きアイキャッチ
  • あなたは毎日、どれだけの時間を睡眠に充てているだろうか?
  • 実は、睡眠時間が6時間を下回ると、免疫機能が衰え、がんのリスクが2倍になり、心臓病や糖尿病、認知症のリスクが急上昇するんです。
  • なぜなら、睡眠は単なる休息ではなく、脳と身体のあらゆる機能を最適化する生物学的プロセスだからです。
  • 本書は、カリフォルニア大学バークレー校の睡眠科学者マシュー・ウォーカーが、20年以上の研究成果を基に、睡眠の科学的メカニズムと健康への影響を包括的に解説した一冊です。
  • 本書を通じて、睡眠を「奪われるもの」ではなく「処方すべき万能薬」として捉え直す視点を得ることができます。
マシュー・ウォーカー,桜田直美
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マシュー・ウォーカーは、カリフォルニア大学バークレー校の神経科学・心理学教授であり、人間睡眠科学センターの所長を務めています。イギリスのノッティンガム大学で神経科学の博士号を取得した後、ハーバード大学医学部で精神医学の教授として研究を続けてきました。

彼が睡眠研究に情熱を注ぐようになったのは、現代社会における「睡眠軽視」の風潮に対する危機感からです。特に先進国では、過去100年で平均睡眠時間が大幅に減少し、それが公衆衛生上の重大な問題となっていることに警鐘を鳴らしています。

ウォーカー博士は、睡眠を「人類という地球の支配者を生んだ原動力の一つ」と表現し、その重要性を科学的エビデンスとともに世界中に伝える活動を続けています。

本書は、専門的な研究成果を一般読者にも分かりやすく伝えることを目的として執筆されました。

すべては睡眠で最適化される――脳・身体・心への包括的影響

睡眠を「休息」として捉えるのは、あまりにも表面的な理解なんです。

睡眠は極めて複雑で、しかも奥味深い機能を持っています。私たちが思っている以上に、健康に重大な影響を与えているんです。睡眠の役割は決して1つではありません。むしろ脳と身体の両方に対して、多様な恩恵をもたらしています。

睡眠は心身の健康を保つ最強の薬

この言葉が示すように、睡眠は身体の諸器官であっても、脳の機能であっても、すべてが睡眠によって最適化されているんです。

具体的には、睡眠時間が6時間か7時間を下回る状態が長く続くと、免疫機能が衰え、がんのリスクが2倍にもなります。それに加えて、睡眠時間はアルツハイマー病のリスクの分かれ道にもなる。また、心血管や脳卒中、鬱血性心不全などを発症するリスクが高まるんです。

「落ち着かない心」は睡眠不足のときほど顕著になります。睡眠不足は、うつ病、不安、自殺傾向などのさまざまな心の問題の原因にもなるわけです。睡眠不足のときは食欲が増すと感じたことはないでしょうか。睡眠が足りないと空腹を感じるホルモンが大量に分泌され、逆に満腹を感じるホルモンは少なくなるからです。その結果、十分に食べても食欲が満たされないんです。

さらに驚くべきことに、人間の睡眠はあらゆる動物の中で特別な位置を占めています。

人間は平均して8時間の睡眠を必要としますが、他の霊長類はみな10時間から15時間眠ります。トータルの睡眠時間は短いが、他の動物と比べてレム睡眠の時間は長い。他の霊長類の場合、レム睡眠の長さは全睡眠の9%ほどですが、人間は20〜25%にもなるんです。

すべてのサルの中で、人間の睡眠は「異常値」ということになるだろう

この「異常値」としての人間の睡眠パターンを理解するには、サルから人間への進化、木の上での生活から地面での生活への移行を理解する必要があります。

人間にしかない特徴は少なくとも2つあります。特徴の1つは想像力を発揮させてもらえる抽象的思考能力であり、もう1つは言語をマスターできる高い認知力の高さです。レム睡眠と、それにともなう夢を見るという行為が、この2つの特徴を大きく発達させたと考えられているんです。

レム睡眠は脳の情動回路に絶妙な調整を加えます。そう考えると、レム睡眠が原動力となり、原始的な感情が洗練されて、理性でコントロールできるようになった可能性が高いわけです。

現代社会が睡眠を奪う構造――カフェイン、人工光、睡眠負債

現代人の睡眠を脅かす要因は、決して個人の意志の問題だけではないんです。

社会構造そのものが、私たちの生物学的な睡眠ニーズと対立しているからです。

まず、朝型と夜型の分類は「クロノタイプ」とも呼ばれています。大人の場合、クロノタイプはほぼ遺伝で決まることが多いんです。あなたが夜型であるなら、それは遺伝で決まっている両親のどちらか、または両方が夜型だろう。悲しいことに、夜型人間は社会から不当な扱いを受けることが多いわけです。

しかし、より深刻なのはカフェインと人工光の影響です。

午後7時30分ごろに夕食後のコーヒーを1杯飲んだとすると、午前1時30分になってもまだ半分のカフェインが体内に残り、その刺激が続いている

カフェインの半減期は驚くほど長く、午後のコーヒーが夜の睡眠を確実に妨げます。それでもカフェインがかなり強力であり、それにもう半分を分解するという大変な作業もまだ残っているんです。

さらに、現代社会特有の問題として人工光があります。

借金から逃げることはできません。返済されなかったアデノシンは、次の日も、またその次の日も脳内に残り、慢性的な睡眠不足の状態をつくり上げるんです。このようにアデノシンの借金を抱えている人は、睡眠的な破産を経て、慢性的にさまざまな症状に悩まされることになります。現在、世界中の先進国で、この睡眠負債が蔓延している状態なんです。

この「睡眠負債」という概念は極めて重要です。2つの睡眠で記憶スペースの容量不足を解消するプロセスを考えてみましょう。

2つの睡眠で記憶スペースの容量不足を解消する

まず、大きな粘土のかたまりを台座に置きます。大きな粘土のかたまりは、寝るまでに脳内に蓄積されたすべての記憶情報に相当するわけです。そして粘土のかたまりを削り、大まかな形にしていきます。これが長時間続くノンレム睡眠です。その間、細部は整っていないが、大まかな形になっていく(後期のノンレム睡眠)。この彫刻の段階が終わると、また粘土を大まかに削る作業が始まり(2度目の長いノンレム睡眠)、それからさらに細部をつくり込んでいく(3度目のより長いレム睡眠)。

このサイクルを何度かくり返すことにより、求められる作業のバランスが変わります。

大まかに削る作業はほぼ終わり、細部の調整が中心になっていくわけです。

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睡眠という万能薬の使い方――レム睡眠とノンレム睡眠の役割

深い眠りの間、脳は何をしているのか。

この問いに対する答えが、睡眠を「薬」として理解する鍵になります。

外界の刺激が入ってこなくなると、意識がなくなるだけでなく(ノンレム睡眠時に夢を見ないのも、時間の感覚がなくなるのも、すべて意識がなくなるからです)、皮膚が「リラックス」してデフォルトモードに入るんです。

ノンレム睡眠で情報を整理し、レム睡眠で情報を統合する

この2つの睡眠の役割分担が、人間の認知能力を支えています。

ノンレム睡眠時に夢を見ないことを前提とすると、ノンレム睡眠中の脳は記憶の整理をしているんです。一方、レム睡眠では夢を見ますが、その夢の中で脳は情報の統合作業を行っています。

レム睡眠こそ最大のギフト

人間にしかない特徴は少なくとも2つあります。

特徴の1つは想像力を発揮させてもらえる抽象的思考能力であり、もう1つは言語をマスターできる高い認知力の高さです。レム睡眠と、それにともなう夢を見るという行為が、この2つの特徴を大きく発達させたと考えられているんです。

レム睡眠は脳の情動回路に絶妙な調整を加えます。そう考えると、レム睡眠が原動力となり、原始的な感情が洗練されて、理性でコントロールできるようになった可能性が高いわけです。

EQの高さは、日々十分なレム睡眠をとっているかどうかで決まります(これを読んで、EQが高い友人や友人、または有名人がほぼ毎日いい浮かんだのなら、その人は十分にレム睡眠が足りていないだなぁなのだと考えてみよう)。

レム睡眠の間に起こる記憶の癒痕から、創造性や文化を生まれるということもある。これまで関連性が低いと思われていた情報の断片の間に、新しいつながりがつくられるからです。睡眠サイクルをくり返しながら、レム睡眠は脳内に広大な情報のネットワークをつくっていくんです。

夢とレム睡眠は、人類という地球の支配者を生んだ原動力の1つだということだ

さらに重要なのが、睡眠が脳を掃除するという機能です。

睡眠が脳を掃除する

脳内に汚物を排出する下水システムのようなものがあることが判明したんです。

簡単に言うと、寝ないことは軽度の脳損傷で、睡眠は脳の掃除だということです。

この脳の掃除機能は、認知症予防においても極めて重要な意味を持ちます。睡眠時間と感染率はきれいに比例していました。ウイルスにさらされるまでの1週間の睡眠時間が短いほど、感染して風邪をひく確率が高くなったんです。5時間未満のグループは、感染率は50%にもなった。そして7時間以上のグループはたった18%でした。

睡眠不足とがんの関係も看過できません。

たった一晩だけでも、免疫系の中に存在するナチュラルキラー細胞が、8時間たっぷり眠ったときと比べ、じつに70%も少なくなった

この数字は衝撃的です。

睡眠不足が免疫システムに与える影響の深刻さを示しているからです。

健康については、こちらの1冊「ありがとうを言おう!?『10000人を60年間追跡調査してわかった 健康な人の小さな習慣』大平哲也」をぜひご覧ください。

まとめ

  • すべては睡眠で最適化される――脳・身体・心への包括的影響――睡眠は単なる休息ではなく、脳と身体のあらゆる機能を最適化する生物学的プロセスです。睡眠時間が6時間を下回ると、がんや心臓病、認知症のリスクが急上昇し、免疫機能も衰えます。人間の睡眠パターンは他の霊長類と比べて「異常値」であり、特にレム睡眠の割合が高いことが、人類の抽象的思考能力と言語能力の発達を支えてきました。
  • 現代社会が睡眠を奪う構造――カフェイン、人工光、睡眠負債――現代人の睡眠不足は個人の問題ではなく、社会構造そのものが生物学的な睡眠ニーズと対立していることに起因します。カフェインの半減期は驚くほど長く、午後のコーヒーが夜の睡眠を確実に妨げます。さらに人工光が概日リズムを狂わせ、返済されない「睡眠負債」が慢性的な健康問題を引き起こしています。
  • 睡眠という万能薬の使い方――レム睡眠とノンレム睡眠の役割――ノンレム睡眠は記憶の整理を、レム睡眠は情報の統合と感情の調整を担っています。レム睡眠は創造性や情動知能(EQ)の発達に不可欠であり、「人類という地球の支配者を生んだ原動力」でもあります。また、睡眠は脳内の老廃物を排出する「掃除機能」も持っており、認知症予防や免疫力維持においても決定的な役割を果たしています。
マシュー・ウォーカー,桜田直美
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