- あなたの会社で働く人たちは、本当に幸せでしょうか?
- 実は、多くの企業が高い業績を上げながらも、従業員の幸福度や定着率に課題を抱えています。給与を上げても、福利厚生を充実させても、なぜか離職率が改善しない。そんな悩みを抱える経営者は少なくありません。
- なぜなら、従来の「もらう」発想に基づいた経営では、本質的な幸せを生み出すことができないからです。人間の幸福は、何かを得ることではなく、むしろ「与える」ことによって実現されるという逆説的な真理があります。
- 本書は、株式会社Enjin代表の本田幸大さんが、仏教的な智慧と現代経営学を融合させて編み出した「ウェルビーイング経営」の実践書です。ギバー社員の育成、幸せトライアングルの構築、そして「不幸にならない」という発想転換を通じて、組織の根本的な変革を目指しています。
- 本書を通じて、働く人一人ひとりが本当の意味で幸せを感じながら、同時に企業の持続的な成長を実現する新しい経営のあり方を学ぶことができます。
本田幸大さんは、和歌山県出身で甲南大学経営学部を卒業後、広告代理店を経て2006年にプラットフォームを活用した中小ベンチャー企業・クリニックのグロース支援サービスを行うEnjinを創業されました。設立15年で5000社以上の企業にグロース支援を行い、2019年には大阪市北税務署より「優良申告法人」の表彰を受けています。現在は、NPO法人Candy Actionの代表理事を務めるなど、社会貢献を軸とした活動にも尽力されています。
本書では、単なる経営論を超えて、人の幸せを軸にした経営のあり方を実体験を交えながら丁寧に解説されています。
幸せの逆説〜「もらう」から「与える」への発想転換
この本を読んで最も印象深かったのは、幸せについての根本的な発想転換です。
私たちは普通、幸せになりたいと思うとき「何かを得たい」「何かをもらいたい」という方向に考えがちです。もっと給料が欲しい、もっと評価されたい、もっと認められたい…。
しかし本田さんは、逆説的な真実を指摘します。
「幸せになりたいけれど、幸せだとは言えない。世の中はそんな人が大多数を占めているのではないでしょうか。あなたやあなたの周りの人たちのことを思い浮かべてください」
「幸せはお金の総量だと思い、お金を手にしてみたとしても、幸せを感じられない。社長や経営者になり、高層マンションに住み、高級車に乗り、派手な洋服、腕時計を身につけても、幸せを感じられない」
この現実を踏まえた上で、本田さんが提示するのが「与える」という考え方です。
「与えてもらうより、与えるほうが幸福感を生む」
これは単なる精神論ではありません。実際に脳科学の研究でも、他者のために行動するときに分泌される「幸せホルモン」の存在が明らかになっています。
私自身、この逆説的な真理を実感することがあります。自分のことばかり考えているときは、なぜか満たされない気持ちになることが多い。一方で、誰かのために何かできたとき、予想以上の充実感や喜びを感じることがあるんです。
この「与える」という発想転換こそが、ウェルビーイング経営の出発点になるのだと思います。
ギバー社員が創り出す好循環のメカニズム
本田さんが提唱する「ギバー社員」という概念は、従来の人事管理の枠を超えた画期的なアイデアです。
「与える社員、ギバー社員は会社を幸せな状態に導いてくれます」
「ギバー社員とは『行動型、自律型の社員』とも言い換えられ、積極的に仕事に取り組み、多くの人を巻き込み、たくさんの成果を創出します」
ここで興味深いのは、ギバー社員の特徴です。彼らは単に優秀なだけではありません。「自分がテイカーであるとは気づかずに、テイカー社員はますます奪おうとしてしまう」という指摘があるように、重要なのは自己認識なんです。
本田さんは経営者として、まず自分自身がギバーの実践者であり続けることの重要性を強調しています。
「有用な情報は共有する、自身が『ギバー』の実践者であり続ける」
「社員に『ギバー』を求めるのであれば、まず経営者である私自身から実践していく、このことの重要性をひしひしと感じています」
実際に本田さんは、毎日ウェブニュースから情報をピックアップして社内SNSで発信し、週に30本ほどの記事を発信し続けているそうです。
これは「言行一致」の典型例でしょう。
私が特に感心したのは、この取り組みが単なる情報共有を超えて、組織文化の形成につながっている点です。経営者が率先して「与える」姿勢を示すことで、社員たちも自然とギバーマインドを身につけていく。これこそが本当の意味でのチームビルディングなのかもしれません。
幸せトライアングルが生む持続可能な経営
本田さんが提唱する「幸せトライアングル」は、ウェルビーイング経営の核心を表した概念です。
「経済、健康、人間関係の『幸せトライアングル』」
「幸せトライアングルでは『経済』『健康』『人間関係』という三辺をそれぞれ大きくすることで、人が幸せである状態を作ることができると考えています」
この三角形のバランスが取れていることの重要性を、本田さんは自身の経験を通じて語っています。
「病気にならない、怪我をしない、体力をつけるということだけでなく、心も穏やかである状態、心が安定して過ごせる環境作りといったことも範囲として含まれます」
健康について、身体的な側面だけでなく心の安定まで含めている点が印象的です。現代の働き方を考えると、メンタルヘルスの重要性はますます高まっています。
人間関係については、深い洞察があります。
「人は一人では生きていけません。『人という漢字は人と人が支え合っている形が出来だ』という説もあります。やはり社会に生きている以上、誰かとともに生きるために、どういう人間関係を築いていけばいいのか、どうすればお互いが与え合い、喜びを分かち合い、感謝に満ちた日々を過ごすことができるのか、といったことを本気で考えなければいけません」
この視点は、働く人一人ひとりが職場で築く関係性の質が、その人の幸福度に直結することを示唆しています。
特に重要なのは、この三角形のバランスを組織全体で意識的に整えていくという発想です。従業員一人ひとりの「幸せトライアングル」が充実することで、結果として組織全体のパフォーマンスも向上する。これは従来の「頑張らせる経営」とは正反対のアプローチです。
本田さんの会社では、実際に離職率を25%から10%未満まで改善することに成功しています。これは「幸せトライアングル」を意識した経営の具体的な成果といえるでしょう。
「三角形の不足しているところを知り、伸ばす人がギバーになるために、そして人が幸せである状態を作るために『経済』『健康』『人間関係』という『幸せトライアングル』の三辺を大きくすることでその状態に近づけていくことができる」
私たちが働く上で、この三つの要素のバランスを常に意識することの大切さを、改めて実感しました。どれか一つが欠けても、真の意味での充実感は得られないのかもしれません。
この本を読んで最も印象に残ったのは、幸せとは逆説的に、自分を直接求めるのではなく、相手のために行動することで結果として訪れるものだという洞察です。
本田さんが実践している「ギバー社員」の育成は、単なる人材管理手法を超えて、働くことの本質的な意味を問い直すものだと思います。
従来の「成果を出せば幸せになれる」「頑張れば報われる」という発想から、「与えることで結果として幸せがついてくる」という発想への転換。これは、働く人一人ひとりの意識変革を求める大きなパラダイムシフトです。
特に印象深いのは、本田さん自身が経営者として率先してギバーマインドを実践している点です。毎日の情報発信、社員への働きかけ、そして「徹底して繰り返し伝え続ける」姿勢。これらすべてが、組織文化の変革につながっているのでしょう。
今の時代、多くの企業が人材不足や離職率の高さに悩んでいます。しかし、問題の根本は「与える」という発想の欠如にあるのかもしれません。
従業員に何かを要求する前に、まず企業側が従業員に何を与えられるかを考える。従業員同士が競争するのではなく、お互いに与え合う関係性を築く。そうした環境を意識的に作り上げることで、結果として業績も向上し、離職率も下がり、関わる全ての人が幸せになる。
本田さんの「幸せトライアングル」という概念も、この好循環を生み出すための具体的な指針として非常に有効だと感じました。経済・健康・人間関係のバランスを組織全体で意識することで、持続可能な成長が可能になるのだと思います。
これからの時代、「与える経営」「ギバー社員」という考え方は、ますます重要になってくるでしょう。なぜなら、それが働く人の本質的な幸福につながり、結果として組織の真の成長をもたらすからです。
幸福な組織という論点については、こちらの1冊「【幸せチームの7箇条とは!?】幸せなチームが結果を出す|及川美紀,前野マドカ」もぜひご覧ください。

まとめ
- 幸せの逆説〜「もらう」から「与える」への発想転換――「与える」という発想転換こそが、ウェルビーイング経営の出発点になります。
- ギバー社員が創り出す好循環のメカニズム――ギバーによって、より良い繋がりの好循環を生み出すことができます。
- 幸せトライアングルが生む持続可能な経営――「与える経営」「ギバー社員」という考え方によって、持続可能な成長を目指すことができます。
