幸福こそ最高の資源!?『幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える』前野隆司,小森谷浩志,天外伺朗

『幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える』前野隆司,小森谷浩志,天外伺朗の書影と手描きアイキャッチ
  • なぜ多くの企業が生産性向上に必死になっているのに、働く人の幸福感は一向に高まらないのでしょうか?
  • 実は、生産性は結果であって目的ではないからです。企業の真の目的は「幸せになること」であり、社員の幸福度こそが持続的な企業成長の源泉なんです。
  • なぜなら、幸福度の高い社員ほど創造性が高く、仕事の効率も良く、自発的に組織に貢献する傾向があることが科学的に証明されているからです。従来の「人を資源として扱う」経営学から「人の意志こそが資産」という発想への転換が求められています。
  • 本書は、幸福学の4つの因子(「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」)と、これからの経営学の4つのヒント(「自覚」「共鳴」「小欲」「畏敬」)を通じて、次世代日本型組織の具体的なビジョンを示しています。
  • 本書を通じて、組織と人が愛と感謝の好循環を生み出し、みんなが幸せになれる経営のあり方を学ぶことができます。バーチャルな存在である組織だからこそ、私たちは自分たちの愛や感謝に気づき、真の人間性経営を実現できるのです。
前野隆司,小森谷浩志,天外伺朗
¥1,528 (2025/09/05 11:53時点 | Amazon調べ)

前野隆司さんは慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授で、幸福学研究の第一人者として知られています。工学博士でありながら、人間の幸福について科学的にアプローチする独特な研究スタンスで注目を集めてきました。

小森谷浩志さんは企業経営の現場で長年活躍してきた実務家で、特にホワイト企業大賞の創設に関わり、社員の幸せと企業業績の両立を追求する活動を続けています。

天外伺朗さんはソニーで数々のヒット商品を生み出した伝説的な開発者であり、現在は組織運営や人材育成の分野で独自の理論を展開しています。

この3人が集結したことで、幸福学の理論と経営の実践、そして日本独自の組織文化の可能性を統合的に論じた画期的な一冊が誕生しました。特に「働く人の幸せこそが企業成長の源泉」という視点から、従来の経営学に一石を投じる内容となっています。

生産性至上主義からの脱却——真の目的は「幸せになること」

産性は結果であって目的ではないんです。

では何が目的なのか。

それは「幸せになること」です。この根本的な価値観の転換こそが、これからの組織運営に欠かせない視点だと思うんです。

幸福学では、幸せを2つの概念で整理しています。ひとつは「ヘドニズム(快楽主義)」で、美味しいものを食べたり、ボーナスが出てウキウキしたりする一時的な快楽や喜びです。もうひとつが「ユーダイモニズム(幸福主義)」で、自分の人生に意味を見出し、「私が人生で行なってきたことには意味があったなあ」としみじみ感じるような、人生全般にわたる長期的な幸せを指します。

この2つの違いは、幸せを感じる「タイムスパン」の長短にあります。

一時的な「ハッピー」は短期的な心の動きですが、真の幸せである「ウェルビーイング」は長期間にわたる心の状態を表すんです。

企業がめざすべきは、まさにこの「ウェルビーイング」的な幸せです。

社員一人ひとりが「この仕事には意味がある」「この組織で働くことに価値を感じる」と思えるような環境をつくることが、結果として業績向上につながるメカニズムなんです。

「生産性向上の手法に走るのではなく、『自分の何を通して社会に貢献するのか』、『自分がこの組織で働く意味は何なのか』、『自分にとっての幸せは何なのか』を深く問うている」

この問いかけこそが、現代の組織に求められる根源的な変革の出発点だと思います。

幸福学が示す4つの因子と組織への応用

幸福学の研究から、人が幸せを感じる状態には4つの因子があることがわかっています。これを組織運営に活かすことで、社員の幸福度を高め、結果として企業業績も向上させることができるんです。

「やってみよう因子」(自己実現と成長の因子)は、今の仕事や会社で働くこと自体に喜びや楽しさを感じている状態です。単に与えられた業務をこなすのではなく、主体的にチャレンジする環境が整っているかがポイントになります。

「ありがとう因子」(つながりと感謝の因子)は、人間関係の質を表します。働く人を思う「愛」が足りない組織では、いくら金銭的な報酬があっても心が満たされず、幸せになれません。会社が愛をもって社員のやりがいを”搾取”している状態ではなく、本当に社員を大切にしているかが問われるんです。

「なんとかなる因子」(前向きと楽観の因子)は、互いを尊重し合う自由で達な社風の中で伸び伸びと仕事ができているかを示します。失敗を恐れずにチャレンジできる心理的安全性が確保されている環境ですね。

「ありのままに因子」(独立と自分らしさの因子)は、自分の成長をどれだけ実感できているかを表す因子です。個人の特性や価値観を活かせる働き方ができているかが重要になります。

興味深いのは、幸福度の高い社員ほど創造性が高く、仕事の効率も高く、求められた以上の働きやソーシャルサポートを惜しまないという研究結果です。

欠勤率や離職率は低く、上司や顧客から高い評価を受ける傾向があるとのこと。

「幸福度の高い社員ほど、創造性が高く、仕事の効率も高く、求められた以上の働きやソーシャルサポートを惜しまない。欠勤率や離職率は低く、上司や顧客から高い評価を受ける傾向がある」

これは決して理想論ではありません。「働く人の幸せこそ企業や社会の成長の源泉」であり、社員が幸せになるほど、それが原因となって結果的に会社の業績も伸び、組織全体が強くなっていくという好循環が生まれるんですね。

前野隆司,小森谷浩志,天外伺朗
¥1,528 (2025/09/05 11:53時点 | Amazon調べ)

次世代日本型組織の具体的なビジョン——経営学の系譜を超えて

従来の経営学では「経済人→社会人→自己実現人→経営人」という進展を見てきました。しかし、人材育成を「経営資源」のひとつとして捉え、「企業の利潤追求のため」に位置づける発想には根本的な問題があります。

人材育成が利潤追求のための資源だとすると、人という存在はどう捉えられるのでしょうか。これまでの経営学の系譜では、人を「資源」として扱う視点が当たり前のように語られてきましたが、これからの時代に求められるのは全く違うアプローチです。

ひとりひとりの人の意志こそが資産であるという考え方です。人を資源として活用するのではなく、一人ひとりの個性や意志、そして幸せを追求する権利そのものに価値を見出す経営のあり方です。

ホワイト企業の3つの因子として「いきいき、のびのび、すくすく」が挙げられています。これらは幸福学の4因子と密接に関連していて、実際の組織運営でも応用可能な概念です。

「いきいき」因子は働くこと自体への喜びや楽しさ、「のびのび」因子は自由で達な社風での伸び伸びとした仕事、そして「すくすく」因子は自分の成長実感を表しています。

重要なのは、これらが単なる福利厚生の充実ではないということです。社員満足度と幸福度は似ているようで全く違うんです。満足度は「会社の中のある特定の部分」への評価ですが、幸福度は人生全般にわたる充実感や意味の実感を指します。

「ESは時代遅れ!?業績は社員幸福度に比例する」

従業員満足度(ES)を高めることと、社員の幸福度を高めることは別次元の取り組みです。真に求められるのは、働く人一人ひとりが「この仕事を通じて自分の人生に意味を見出せる」「この組織の一員として社会に貢献できている」と実感できる環境づくりなんです。

やりがいという「幸せの青い鳥」を探すのではなく、働く人を想う「愛」を組織に根づかせること。経営の視点から著しく欠落している「つながりと感謝」のバランスを取り戻すこと。これこそが次世代日本型組織の核心だと思います。

本書では、これからの経営学に向けた具体的な4つのヒントも示されています。

1. 自覚——深く自分を認識し、感じとること。これまでの経営学は次々と目新しい手法を開発し、経営者もそれに飛びついてきましたが、これからの経営では「われわれは、この社会でいかなる存在か」という存在の本質を丁寧に掘り下げ続け、深く自らを認識することが求められます。

2. 共鳴——内から湧き上がってくる使命を言動力とすること。従来のテーラー以降の経営学では「管理する人と管理される人」という分離の世界観がありましたが、これからの経営学では動機付けさえも必要としません。外から与えられる動機付けではなく、内から湧き上がってくる使命感が原動力となるんです。

3. 小欲——利益はあくまでも結果として捉えること。近年、多くの企業は欧米型コーポレートガバナンスの影響を強く受け、「利潤の極大化」を目指すようになりましたが、これからの経営学では短期利潤の極大化には関心が薄く、欲は控えめであり、利益はあくまでも結果として捉えます。

4. 畏敬——自己を超えた大きな関係性の中で自分と自分たちを捉えること。合理的で緻密な計画というよりも、自己の限界を知り、自己を超えた大きな関係性の中で自分と自分たちを捉えていく姿勢です。

「我々の人生は、有り難い『順境』だけでなく、様々な『逆境』も含め、すべては、大いなる何かに導かれている。『幸運に見える出来事』だけでなく、『不運に見える出来事』も含め すべては、我々に良き人生を送らせるための 大いなる何かの導きである」

この4つのヒントは、単なる経営手法を超えて、人間としての根本的なあり方を問い直すものです。自覚と共鳴によって内発的動機を育み、小欲によって持続可能な成長を実現し、畏敬によって大きな視野で物事を捉える——これこそが次世代の日本型組織が世界に示すべき新しい経営のあり方だと思います。

この本が示している最も重要な洞察は、「幸せを目的とする経営」が決して非現実的な理想論ではないということです。むしろ、厳しいビジネス環境において持続的な成長を実現するための、最も合理的で効果的な戦略なんです。

そして何より印象深いのは、組織とそれを構成し支える人との関係性です。組織はバーチャルな存在ですが、だからこそ私たちは自分たちの感謝や愛に気づくことができる。つまり、人は手段として組織をつくっているという視点こそが重要なんです。

組織と人は愛と感謝の好循環の中にあります。組織があることで人は自分の価値や他者との繋がりを実感し、人が幸せになることで組織も成長する。この相互作用の中心にあるのが、4つのヒントで示された「自覚」「共鳴」「小欲」「畏敬」の精神性です。

幸福学の4つの因子を組織運営に活かし、社員一人ひとりの意志と個性を大切にする経営のあり方は、日本企業が世界に誇れる独自の強みになり得ると確信しています。

生産性至上主義から脱却し、真の意味での人間性経営を実現することで、企業も社会も、そして働く人も、みんなが幸せになれる未来をつくることができるはずです。

社員の幸福を考えるとき、組織との関係を紐解くのも効果的です。ファンという概念で、関係性を見つめてみるのはいかがでしょうか!?こちらの1冊「【全員・需要文化の作り方?】社員が会社のファンになる 就労幸福度アップの教科書|平栗健太郎」も大変おすすめです。

まとめ

  • 生産性至上主義からの脱却——真の目的は「幸せになること」――ひとりひとりの従業員が幸せを追求することが、現代の組織に求められる根源的な変革の出発点です。
  • 幸福学が示す4つの因子と組織への応用――幸福度の高い社員ほど創造性が高く、仕事の効率も高く、求められた以上の働きやソーシャルサポートを惜しまないのです。
  • 次世代日本型組織の具体的なビジョン——経営学の系譜を超えて――真の意味での人間性経営を実現することで、企業も社会も、そして働く人も、みんなが幸せになれる未来をつくることができるのです。
前野隆司,小森谷浩志,天外伺朗
¥1,528 (2025/09/05 11:53時点 | Amazon調べ)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!