好奇心は、“問い”という冒険を促す!?『新・問いかけの作法』安斎勇樹

『新・問いかけの作法』安斎勇樹の書影と手描きアイキャッチ

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール

【経営ビジョンの視点で読み解く本書の核心】「問い」は、人を動かす最もやわらかな力です。安斎勇樹が提唱する「冒険型チーム」の思想と問いかけの実践法を通じて、好奇心を起点にしたチームづくりの本質を提示しています。
 
1.冒険型への転換:効率優先の「軍隊型」から、多様な個性が探究し合う「冒険型」へ、組織の世界観そのものを問い直す
2.好奇心が問いを生む:技術より先に必要なのは「相手を知りたい」という純粋な関心であり、それが問いの質を根本から変える
3.定石の実践:個性を引き出し、制約をかけ、遊び心をくすぐる4つの定石で、日々のミーティングを冒険の場に変える

  • あなたのチームのミーティングは、誰かが一方的に話して終わっていませんか?
  • 実は、その場の「問いかけ」をほんの少し変えるだけで、メンバーの反応はガラリと変わります。
  • なぜなら、問いかけはメンバーの思考の「ライト」だからです。どんな光を当てるかによって、見えてくる景色がまったく違ってくる。うまく機能すれば、それまで黙っていたメンバーが自分の言葉で語りはじめ、チームに思いもよらないアイデアが生まれていきます。
  • 本書は、ワークショップデザインの研究者である安斎勇樹さんが、チームにおける「問いかけ」の技術と思想を体系的にまとめた一冊です。2014年に刊行された初版から約10年を経て、現代のチームが直面する課題に応える形で大幅に改訂されました。
  • 本書を通じて、問いかけとは「技術」である前に「姿勢」だということが、じわじわと伝わってきます。相手への好奇心があってはじめて、問いは力を持つ。そのことを、読み終えたあとに静かに実感できる一冊です。
安斎勇樹
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安斎勇樹さんは、東京大学大学院で学際情報学を修め、現在はMIMIGURIの共同代表を務める研究者・実践者です。「ワークショップデザイン」「組織開発」「創造性」を主なテーマとして、企業や教育機関での実践と研究を長年にわたって続けてきました。

前著『問いのデザイン』(共著)では問い自体の設計論を論じましたが、本書ではより日常的なチームの場面、つまりミーティングや1on1といった「問いかけ」の実践に焦点を絞っています。

また2025年には、組織論を正面から論じた『冒険する組織のつくりかた』を出版。軍事的世界観から冒険的世界観へという思想的な軸が、本書の背景にも流れています。

軍隊型から冒険型へ——問いかけが変える組織の世界観

中小企業の経営者と話していると、「うちのメンバーはなかなか意見を言わなくて」という声をよく聞きます。でも、それは本当にメンバーの問題なのでしょうか?

本書を読んで感じたのは、多くの場合それは「組織の世界観」の問題だということです。安斎さんは、チームのあり方を大きく2つに分けて考えます。ひとつは「軍隊型」、もうひとつは「冒険型」

軍隊型のチームでは、作業を効率的に分担することが最優先です。同じ職能を持つメンバーで構成され、上司が指示を出し、部下がそれを実行する。これはものづくりの効率化が求められた時代には非常に合理的な仕組みでした。今でも、ルーティンワークが多い現場ではその強みを発揮します。

一方、冒険型のチームでは、多様な個性が互いに刺激し合いながら「まだ答えのない問題」を探究していきます。

冒険型の醍醐味は、仕事の過程におけるコミュニケーションにこそあります。一人の専門性や視点だけで探究を深めることには限界があるため、なるべく多様な「こだわり」を持ったメンバーでチームを構成します。

ここで重要なのは、安斎さんが「軍隊型はもう古い」とは言っていないことです。どちらが優れているという話ではなく、現代の多くのチームが直面する「答えのない問い」に向き合うためには、冒険型の視点が不可欠だということです。

そして、冒険型のチームをつくるうえで中心的な役割を担うのが「問いかけ」です。何を問うかによって、チームの空気は変わります。メンバーが自分の「こだわり」を発揮できる場をつくるか、「とらわれ」の中に閉じ込めたままにするかは、リーダーの問いかけひとつで変わってくる。

コンサルタントとして経営者の方々と接していると、「どうすれば部下が動くか」という問いをよく受けます。でも、その問い自体がすでに軍隊型の発想を帯びていることがあります。「どうすれば部下が自分の頭で考えたくなるか」に問いを変えるだけで、リーダーとしてのアプローチはまったく違ってくる。本書はその転換を、静かに、しかし確かに促してくれます。

チームに「こだわり」を見つけて育てること、そして「とらわれ」を疑い問い直すこと。この2つが循環している状態こそが、冒険型チームの本質だと安斎さんは言います。その循環を生み出す起点になるのが、日々の問いかけなんです。

好奇心なき問いは届かない——相手の懐に飛び込む力

本書を読んで、自分の中でいちばん響いたのはここでした。

問いかけを「技術」として学ぼうとすると、どうしても「どう聞けばいいか」という形式に目が向きがちです。でも、安斎さんはそれよりずっと手前にある何かを大切にしています。それが「好奇心」です。

良い問いかけは、相手への好奇心から生まれる

これはシンプルな言葉ですが、実践の中では意外なほど忘れられています。会議で「何か意見はありますか?」と聞くとき、本当に相手の考えが知りたくて聞いているか。それとも、形式的に場を回すために聞いているか。その違いは、聞かれた側にはちゃんと伝わってしまいます。

好奇心がなければ、問いはただの手続きになります。相手もそれを感じ取り、当たり障りのない答えを返すだけになる。逆に、「この人の話を本当に聞きたい」という気持ちが言葉の奥に滲み出ているとき、相手はそこに安心感を覚え、少しずつ本音を語りはじめます。

安斎さんはこれを「相手の懐に一歩踏み込む」と表現しています。技術より先に、姿勢がある。謙虚な「学習者」としての姿勢が、問いかけの土台になるということです。

では、好奇心を持ったうえで、どのように問いを実践していくのか。本書が提示するのが「見立てる→組み立てる→投げかける」という3つのサイクルです。

まず「見立てる」は、チームとメンバーの状況をよく観察することから始まります。メンバーが今どんな心情なのか、何が「こだわり」で何が「とらわれ」なのか、チームの空気はどんな状態か。こうした観察なしに、的確な問いかけは生まれません。

次に「組み立てる」では、その見立てに基づいて、望ましい変化を生み出す具体的な質問を設計します。そして「投げかける」では、質問を活かすも殺すも投げかけ方次第——タイミング、声のトーン、間の取り方も含めて工夫します。

このサイクルを日々積み重ねていくことで、チームの状態はじわじわと変わっていきます。

日々の問いかけの蓄積が、チームの状態をつくる

これは、短期間で劇的な変化を求めがちな経営の現場において、非常に大切な視点です。問いかけは即効薬ではない。でも、続けることで確実にチームの土壌を変えていく。コツコツと積み上げていく問いの文化こそが、冒険型チームの基盤になるんです。

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問いかけの4つの定石——チームの冒険を始める具体的な技法

好奇心と観察という土台があったうえで、本書はより具体的な実践の技法を教えてくれます。それが「問いかけの4つの基本定石」です。

問いかけの基本定石
1 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
2 適度に制約をかけ、考えるきっかけをつくる
3 遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
4 凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す

この4つを読んで感じるのは、どれも「答えを引き出す」のではなく「思考を促す」ことを目的にしているということです。正解を求める問いではなく、相手の内側にある何かを動かす問いを、安斎さんは大切にしています。

定石①「個性を引き出し、こだわりを尊重する」は、冒険型チームの根幹です。「あなたはどう思いますか?」という問いも、「あなたが特に大切にしていることは何ですか?」という問いも、表面上は似ていますが、後者のほうがずっと個人の「こだわり」に近づいていきます。

定石②「適度に制約をかける」は少し意外に感じるかもしれませんが、実践するととても効果的です。「自由に意見をどうぞ」よりも、「もしコストが半分だったら、どんなアイデアが生まれると思いますか?」のほうが、人は具体的に考えやすい。制約は思考の補助線になります。

定石③「遊び心をくすぐる」は、場の空気を変えるうえで特に力を発揮します。ちょっとユニークな問いかけは、メンバーの防衛本能をゆるめ、思いがけない発想を引き出します。コンサルティングの現場でも、ちょっとしたメタファーや仮説思考の問いを使うだけで、場の空気が一変することがあります。

定石④「凝り固まった発想をほぐす」は、バイアスを壊すための問いです。「これは当たり前だ」と思っていることに、あえて「なぜそうなんでしょう?」と問い返す。素人質問とも呼ばれるこの手法は、チームの前提そのものを揺さぶる力があります。

この4つの定石は単独でも機能しますが、複数を組み合わせてミーティングのプログラムとして設計すると、その真価が発揮されます。安斎さんはそれを「ミーティングのプログラムを組み立てる」と表現しています。問いかけは即興ではなく、設計できるものだという視点は、チームリーダーにとって大きな武器、いや、大きな可能性になるでしょう。

そして最終的には、自分のチームだけのオリジナル質問パターンを発明することが目標です。チームの個性に合った問いのレパートリーが育っていくとき、そのチームはもう「冒険型」の入口に立っています。

安斎勇樹さんのご著書については、こちら「問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術|安斎勇樹」とこちら「【ひとりよりも、チーム!?】チームレジリエンス|池田めぐみ,安斎勇樹」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 軍隊型から冒険型へ――現代のチームに必要なのは、指示と効率だけではなく、多様な個性が探究し合う「冒険」の視点です。問いかけは、その世界観の転換を日常の中から静かに促す力を持っています。
  • 好奇心が問いを生む――技術より先に、相手への純粋な関心がある。「見立てる→組み立てる→投げかける」のサイクルを支えるのは、謙虚な学習者としての姿勢であり、その姿勢こそが問いを本物にします。
  • 4つの定石の実践――個性を引き出し、制約をかけ、遊び心をくすぐり、発想をほぐす。この4つの定石を日々積み重ね、チームオリジナルの問いのレパートリーを育てることで、ミーティングは冒険の場へと変わっていきます。

実践のためのQ&A

本書の内容を踏まえ、読者が直面しやすい「1歩先の疑問」についてまとめました。

好奇心はどうすれば育てられますか?

好奇心は「持とう」と意識するより、「相手のことを何も知らない」という前提に立ち返るところから始まります。どんなに長く一緒に働いているメンバーでも、まだ知らない「こだわり」があると思って接することが、問いを生む姿勢につながります。

問いかけを変えても、沈黙が続く場合はどうすればいいですか?

まず「見立て」を見直すことが大切です。沈黙には理由があります。「とらわれ」が強すぎるのか、心理的安全性が足りないのか、場の目的が共有されていないのか。問いの技術を変える前に、チームの状態を観察し直すことが先決です。

軍隊型と冒険型のバランスはどう取ればいいですか?

本書が示す通り、どちらかが正解ではありません。ルーティン業務には軍隊型の効率性が有効で、新しい課題の探究には冒険型の姿勢が必要です。チームとして「今これはどちらのモードか」を意識して切り替えていくことが、実践的なバランスのとり方です。

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この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

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