【ひとりよりも、チーム!?】チームレジリエンス|池田めぐみ,安斎勇樹

チームレジリエンス
  • いかに変化の時代の中でも絶え間ないクリエイションをもたらし続けることができるでしょうか。
  • 実は、チームとともに困難を乗り越えていくことかもしれません。
  • なぜなら、何をするかよりも、誰とするかのほうが特に重要であるからです。
  • 本書は、チーム主語で困難に向かい続けるマインドセットを見つめる1冊です。
  • 本書を通じて、いかに変化を取り組み、変革を続けられるだけのチームが作れるかを見いだせます。
池田めぐみ,安斎勇樹
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チームを振り返ろう?

人間のストレスは、外部からの不快な刺激(ストレッサー)によって、脳が反応していることは広く知られている事実です。そして人間は、「予測できる刺激」よりも「予測できない刺激」の方がより強くストレスを感じることがわかっています。

このストレスというのが厄介です。

人間は自分自身にストレスが発生すると、ストレスの「根本原因」を取り除くことよりも、ストレス感情を「一時凌ぎ」することを優先してしまう性質を持っているからです。

本来、外部の刺激の根本を探り、それに対してどのように本質的な手を打っていくのかを検討するのかが、理想です。でも、人は目の前の苦痛を和らげる方向へ進んでしまいます。それが自分ひとりではなく、チーム全体で困難な状態に陥っているときには、とくに顕著に働く可能性があります。

集団での意思決定は、一見すると個人の判断よりも優れているように思えますが、実際にはより大きな誤りを犯す可能性があります。これは「集団思考(グループシンク)」や「同調圧力」として知られる現象です。

集団内では、異なる意見を持つことへの不安から多数派に同調したり、責任が分散することで個人の判断力が低下したりします。また、議論を重ねるうちに意見が極端化したり、既存の考えを支持する情報ばかりが共有される傾向もあります。さらに、強力なリーダーの意見に他のメンバーが盲目的に従うこともあります。

これらの要因により、集団での決定が個人の判断の総和よりも劣ることがあります。しかし、この問題に対処する方法も研究されています。多様な意見を積極的に求める、批判的思考を奨励する、決定プロセスを構造化するなどの対策を講じることで、集団での意思決定の質を向上させることができます。

個人が自分の身を守るだけの「独りよがりのレジリエンス」では目先のストレスが軽減できるだけで困難と不確実性は低減できません。

また、外部環境だけに意識が向くことも、チームの底力を引き出すことにはなりません。なぜなら、環境の変化に機を捉えてしまって、「自分たちが何者で」「何がしたいのか」という根本的な自分たちの認識をないがしろにしてしまう可能性があるからです。

大切なことは、外部の環境に対して根本的に対処するために、その原因となっているものごとをよく見つめること、そして、そうした圧力をもたらす外部環境の中において、自らのチームはいかにあるべきか、あるいは、もっと強く「ありたい」かを検討し続けるというモチベーションでしょう。

3つの論点とは?

組織やチーム運営がより困難になっていきます。というのも、これからの時代はさらに少ないリソースが前提でものごとの解決に当たらないといけなくて、そうした事実が「踏襲」をさせてくれないからです。

2つのレジリエンスをチームとして身につけるように集中しましょう。

  • 能力としてのレジリエンス:困難からの回復に必要な能力や特性。
  • プロセスとしてのレジリエンス:困難な出来事から、回復する一連の過程。

そして、レジリエンスは多くの副産物をもたらします。

レジリエンスは「回復」に留まらず、「成長」も内包する。

レジリエンスを高めていくことによって、あらゆる機会を学びの機会にすることができます。そしてチームで向き合うことによって、ひとりの学習ではなく、集団的学習を引き出し、学びのポジティブスパイラルを構築することができるのです。

メンバー間での知識共有や相互学習、多様な視点からの理解促進、モチベーションの維持などが主な利点です。

さらに、グループ内での責任感、ディスカッションを通じた深い理解、協働スキルの向上も重要です。他者に教えることで自身の理解が深まり、社会的サポートも得られます。

これらの要素が相互に作用し、学習の質と量の両面で好循環を生み出します。ただし、効果的な集団学習には適切な環境設計が不可欠です。グループの規模やメンバーの多様性、ファシリテーションの質などに注意を払うことで、より効果的な学習体験を創出できます。

レジリエンスには次の4つのパターンがあります。

1)挫折:精神的に折れてしまい仕事に取り組めなくなってしまった状態。
2)負傷:再び仕事には取り組めるが、精神的・機能的に支障が残った状態。
3)回復:以前の精神的・機能的なレベルにまで戻ることができた状態。
4)成長:以前よりも精神的・機能的に高いレベルまで成長できた状態。

3や4を目指すことがポイントとなります。

チームでレジリエンスを高めていくためには、次の3つのステップを検討してみましょう。

ステップ1)課題を定めて対処する
ステップ2)困難から学ぶ
ステップ3)被害を最小化する

何に対して対処するのかを把握しなくては、何も行動することができません。まず大切なのは、自分たちがどのような困難に立ち会っているのか、そしてそれをどのような角度で見つめることでチームで解決するアプローチを取ることができるかを把握することです。また、メンバー間の協働のルールや「ありたい」チームの姿を事前に検討しておくことで、メンバー間に共通認識が生まれて互いに支え合いやすくなります。

「困難を解決」してしまうと、喉元過ぎれば熱さを忘れるかのように、その困難を忘れてしまうこともあります。

大切なのは、そこからいかに学ぶかということです。原因はなんだったのか、次回同じようなケースがあった時にどのように対処することが理想であるのかを互いに確認することで、次に備えることができます。また、そうして互いにモデルケースをディスカッションし、想定することで、困難に際して、チームとして対応する基礎体力を養うことができます。

また、被害を最小化するのは、何らかの困難が起こってから対処するのではなく、その前から備えることも含まれます。困難が顕在化する前に早期に困難の種を発見し、事前に対策を講じる必要があります。

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高レジリエンスチームの特徴とは?

チームレジリエンスの高低により現れる特徴を知り、内実を知るヒントにしてみましょう。各ステップに対してどのような反応をするのかをみていきます。

レジリエンスの高低高いチーム低いチーム
1.課題に落として対処する・チーム内で共有がはやい
・困難を課題として解釈する
・期限と担当を決めて解決する
・メンバーのストレスをケアする
・個人が困難を抱え込む
・責任を問われるため、困難の原因を分析しない
・担当されるのが嫌なため、課題を放置する
・メンバー間で不安やイライラが充満している
2.困難から学ぶ・困難を広く共有する
・困難を振り返り教訓を得る
・乗り越えた後は、嫌なことは思い出したくないので、お互いに振り返らない(責任を追求されるのもいやだ)
・振り返りをしても、誰かのせいにしたり、誰かが謝罪して済ませたり、教訓を得られない
3.被害を最小化する・困難を早期に発見する
・事前に対策を練る
・見つけたら対応を任されるので、困難の種を見過ごす
・リスクがわかっていても何とかなると思って対策を練らない
チームレジリエンスの高いチームと低いチーム

このように、レジリエンスを日常的に見つめて、チーム連携の底力を養っておくと、局面局面において、次に繋がる対応力を養うことができます。

どんな業種、どんな方針であっても「困難から学ぶ」ことは重要です。

チームが困難や失敗から学ばなくなると、どんなに優秀で成果をあげていたチームも、次第にレジリエンスが枯渇し、いつか必ず衰退します。

チームの底力についても言語化してみましょう。次の5つです。

1.チームの一体感
2.心理的安全性
3.適度な自信
4.状況に適応する力
5.ポジティブな風土

  1. チームの一体感: チームの一体感は、メンバー全員が共通の目標に向かって協力し合う状態を指します。これにより、困難な状況でも団結力が保たれ、個々の力を結集してチームとして機能することができます。一体感のあるチームは、互いをサポートし、責任を共有し、共に成功を目指します。
  2. 心理的安全性: 心理的安全性は、チーム内で自由に意見を言ったり、リスクを取ったりしても、否定されたり罰せられたりする恐れがない環境を指します。これにより、メンバーは新しいアイデアを提案したり、失敗から学んだりすることができ、イノベーションと継続的な改善が促進されます。
  3. 適度な自信: チームとしての適度な自信は、困難に立ち向かう勇気と、課題を乗り越える能力への信念を生み出します。しかし、過度の自信は慢心につながる可能性があるため、「適度な」という点が重要です。現実的な自己評価に基づく自信が、レジリエンスを支えます。
  4. 状況に適応する力: 変化する環境や予期せぬ事態に柔軟に対応する能力は、レジリエンスの核心部分です。この適応力により、チームは新しい状況下でも効果的に機能し、戦略や方法を迅速に調整することができます。
  5. ポジティブな風土: ポジティブな組織風土は、楽観主義、相互サポート、成長志向の雰囲気を醸成します。これにより、困難な状況でもチームメンバーは前向きな姿勢を保ち、挑戦を成長の機会として捉えることができます。また、失敗を恐れずに挑戦する文化も生まれやすくなります。

これらの要素は相互に関連し合い、強化し合います。例えば、心理的安全性はポジティブな風土の醸成に寄与し、チームの一体感は適応力を高めることにつながります。これらの基礎体力をバランスよく育成することで、チームのレジリエンスは大きく向上し、様々な困難や変化に効果的に対応できるようになります。

自らの所属するチームを点検する視点において、以下の星取表が参考になります。

責任者断罪型仲良しサークル高レジリエンス型
犯人を探さない×
謝って終わりにしない×
チームの関係性を深める×
困難をきちんと振り返る××
教訓を獲得する××
チームの型別の振り返りパターン

大切なことは、個人でものごとに対応するという考え方ではなく、チームのちからをいかし、困難に対応する際にも、チームで向き合うということを忘れないということです。ひとりひとりの能力を信じることもたしかに大切かもしれませんが、仕事やものごとに当たるときは、常にひとりではなく、誰かの存在が欠かせません。そもそも人は誰かとともにあるものです。

ノード(結節点)ではなく、パス(つながり・関係性)をもっと信じる力を養い、リーダーシップやマネジメントを検討していく必要がありそうです。

「誰かと」行う重要性については、こちらの1冊「【学校で教えてくれないWHOの話とは!?】WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」|ダン・サリヴァン,ベンジャミン・ハーディ,森由美子」をぜひご覧ください。

まとめ

  • チームを振り返ろう?――自分の所属するチームは予期せぬ困難で強さを発揮できるでしょうか。
  • 3つの論点とは?――課題に落とす、困難から学ぶ、被害を最小化するという視点です。
  • 高レジリエンスチームの特徴とは?――互いに学び続ける力を持ち、結果的に個人も育ちます。
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