時間は、本当に存在するのか!?それは、感じ方の問題か!?『時間の箱を抜け出して』谷崎玄明

『時間の箱を抜け出して』谷崎玄明の書影と手描きアイキャッチ

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール

【本書の要約】時間に追われる日々から抜け出すための思考転換の書。時間管理術ではなく、時間そのものの捉え方を問い直す。公認会計士でありながら原始仏教徒という異色の著者が、時間の本質、人生を形作る「動作」への気づき、幸せと時間の関係を解き明かす。自分を縛っているものに自覚的になることで、本当の自由が見えてくる一冊。

  • あなたは今日、何時に起きて、何時に仕事を始め、何時に終えるつもりでしょうか。
  • 実は、そうやって時間を区切りながら生きることが「当たり前」だと感じているとしたら、あなたはすでに見えない箱の中にいるのかもしれません。
  • なぜなら、時間というのは本来、それ自体として存在するものではなく、わたしたちが後から作り出した概念に過ぎないからです。
  • 本書は、公認会計士でありながら原始仏教徒という異色の経歴を持つ谷崎玄明が、時間管理術ではなく時間そのものの捉え方を問い直す一冊です。
  • 本書を通じて、わたしたちは「時間に追われる生き方」から「時間を気にしない生き方」へと思考を転換し、自分を縛っているものに自覚的になることの大切さを学ぶことができます。
谷崎玄明
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谷崎玄明は、公認会計士、原始仏教徒、心理カウンセラー、著作家という多面的な顔を持つ人物です。公認会計士として数字と向き合いながら、同時に原始仏教の実践者として心の在り方を探求してきました。日商簿記1級、心理学検定1級、心理カウンセラーなど、多岐にわたる資格を保有しています。

一見相反するように見える「会計」と「仏教」という二つの領域を歩んできた谷崎は、効率や成果を追求する現代社会の中で、多くの人が時間に追われ、本来の幸せを見失っている現状に危機感を抱きました。時間管理のテクニックを磨くことではなく、時間そのものの捉え方を根本から見直すことこそが、現代人に必要なのではないか――そんな問いから本書は生まれました。

原始仏教の教えと現代人の悩みを結びつけながら、わたしたちが無自覚に受け入れている「時間」という概念を解きほぐし、本当の自由と幸せへの道を示してくれます。

時間は「ある」のではなく「捉えている」だけ

時間は存在するのか、しないのか。この問いに明確に答えることは、実は誰にもできません。谷崎は仏教哲学とアインシュタインの相対性理論を引きながら、時間というものが本来、それ自体として存在するものではないと説明します。

「わたし」も「わたしの心」も、身体中のどこを探しても存在しないのに、わたしが成り立っているのは、すべて相対的であって、因縁によって成り立っているからです。万物が因縁に成り立っているように、当然、時間も相対的に、因縁によって成り立っています。

「わたし」がどこにあるかと問われても、心臓にも脳にも魂にも指し示すことができないように、時間もまた、どこにも存在していないんです。わたしたちは「わたし」が存在すると感じているように、時間も存在すると感じているだけなんですね。

ところが現代人は、時間が存在することを疑いません。朝7時に起きて、9時に出勤して、18時に退社する――そうやって時間に沿って生活することが「当たり前」になってしまいました。谷崎はこの状態を「時間の箱に閉じ込められている」と表現します。

わたしたちはいつしか、教育を通じて時間を学び、それが当たり前だと思います。常識だと思います。時間に遅れないことは常識、の以前に、時間に沿って生活することが当たり前だ、と。

幼い頃から学校で時間割を守ることを学び、遅刻しないことの大切さを教え込まれ、社会に出てからも時間厳守を求められ続ける。そうして「時間という箱」は、わたしたちの意識の中で強固なものになっていくんです。

箱の中にいる人は、箱の存在に気づきません。それが「当たり前」になってしまっているから。時間に追われることが苦しいと感じながらも、そこから抜け出す発想すら持てなくなってしまうんですね。

まず必要なのは、自分が「時間の箱」の中にいることに気づくこと。時間は絶対的なものではなく、わたしたちが捉えているだけのものだと理解すること。その気づきが、箱を抜け出す第一歩になります。

人生は「時間」ではなく「動作」でできている

時間の箱を抜け出すために、谷崎は思考を変えることから始めることを提案します。

その中で特に印象的なのが、一日を「覚醒と非覚醒」というふたつに分けるという考え方です。

一日は覚醒と非覚醒。どうですか。シンプルではないですか。シンプルさは常に心掛けておいて損はありません。仕事も、家事も、そして時間もシンプルで良いのです。

わたしたちは一日を24時間という単位で区切り、そこに予定を詰め込んでいきます。でも本当は、目が覚めている時間と眠っている時間があるだけ。それをシンプルに捉え直すだけで、時間への囚われが緩んでいくんです。

さらに谷崎は、覚醒している間に流れているのは「時間」ではないと言います。では何が流れているのか――それは「動作」です。

息を吸うこと、息を吐くことや、行住坐臥と表現されるような、歩いていること、立っていること、座っていること、横たわっている姿勢を基礎として、前へ進むこと、後ろへ戻ること、前を見ること、後ろを見ること、かがむこと、立ち上がること、床を磨くこと、窓を磨くこと、服を着ること、服を脱ぐこと(中略)これら以外のすべての行動を含めて、あなたの人生ができあがっているのです。

この引用を読むと、「時間」という言葉が一切出てこないことに気づきます。わたしたちの人生は、時間ではなく、無数の動作の連続でできているんですね。

そして谷崎は、その動作の中でも特に「呼吸」に気づくことの重要性を説きます。

どれだけ人生の残り時間を計算しても、命を実感しきることはできませんが、自分の一呼吸に一切の意識を集中することができれば、そこに命が生まれます。「わたしは生きている」と客観的に知ることができます。

息を吸っているとき、息を吐いているとき。その一つひとつに気づくこと。それが「時計」を「呼吸」へ、つまり機械的な時間を生きた命へと置き換える実践になるんです。

時間という抽象的な概念に支配されるのではなく、今この瞬間の動作に意識を向ける。それが時間の箱を抜け出す具体的な方法なんですね。

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時間を忘れることが幸せへの道

時間の箱を抜け出した先に、何があるのか。谷崎は明確に「幸せ」だと答えます。そして、幸せと時間の関係について、興味深い視点を示してくれます。

幸せは過去になく、今ここにある。これはつまり、幸せが無常のなかにあることを意味しています。常ならず(無常)のなかに、刹那の幸せが続いていることこそが、あるべき幸せであって、本当の幸せです。

幸せは、過去の思い出の中にも、未来の計画の中にもありません。今この瞬間にしかない。それは仏教でいう「無常」――すべては変化し続け、固定されたものは何もないという真理と繋がっています。

わたしたちは「ずっと続く幸せ」を求めがちですが、実は刹那刹那の幸せが続いていくこと、それこそが本当の幸せなんですね。

そして谷崎は、「時間を忘れる」ことと幸せの関係について、面白い逆転の発想を示します。

楽しかった → 没頭した → 時間を忘れていた
しかし、これは逆でも成り立つのです。
時間を忘れていた → 没頭した → 楽しかった

何かに夢中になっているとき、わたしたちは時間を忘れています。そして後から振り返って「ああ、楽しかった」と思う。でもこれを逆にして、意図的に時間を忘れることができれば、没頭が生まれ、楽しさが生まれるんです。

この視点は、近年話題になっている「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」の本質も説明してくれます。

「FIRE」が幸せに見えるのは、時間を気にせずに済むからです。時間を気にしなくても大丈夫だから、幸せなのです。お金があればあるほど幸せではなく、かといって時間があればあるほど幸せでもありません。大事なのは、時間を気にしないこと、つまり時間を忘れることです。

FIREを目指す人の多くは「お金の自由」を求めているように見えますが、実は「時間の自由」を求めているんです。でもさらに深く見れば、本当に求めているのは「時間を気にしない自由」なんですね。

お金があっても時間に追われていれば幸せではないし、時間があってもそれを「有効活用しなければ」と焦っていれば幸せではない。時間そのものから自由になること――それが幸せへの道なんです。

わたしたちを縛っているのは、時計でも予定でもなく、「時間を守らなければならない」「時間を無駄にしてはいけない」という思い込みです。その縛りに自覚的になり、少しずつ緩めていくこと。それが時間の箱を抜け出す実践になります。

自分の時間を手元に引き寄せるためには、こちらの1冊「【Inside-out型で生きてみよう!?】じぶん時間を生きる|佐宗邦威」もおすすめです。ぜひご覧ください。

まとめ

  • 時間は「ある」のではなく「捉えている」だけ――時間は本来、それ自体として存在するものではなく、わたしたちが相対的に捉えているだけのものです。しかし現代人は教育を通じて時間を学び、いつしか「時間の箱」に閉じ込められてしまいました。まず必要なのは、自分がその箱の中にいることに気づくことです。
  • 人生は「時間」ではなく「動作」でできている――一日を覚醒と非覚醒に分けるシンプルな捉え方。そして覚醒している間に流れているのは時間ではなく、息を吸うこと、歩くこと、食べること、すべての動作です。特に呼吸に気づくことが、機械的な時計を生きた命へと置き換える実践になります。
  • 時間を忘れることが幸せへの道――幸せは今この瞬間の無常の中にあり、時間を忘れて没頭することで生まれます。FIREの本質も、お金や時間の量ではなく「時間を気にしない自由」にあります。わたしたちを縛っているのは、時間そのものではなく、時間に関する思い込みです。その縛りに自覚的になることが、本当の自由への第一歩になります。
谷崎玄明
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この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

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