【ユーモアをいかに持つか!?】会社のなかの「仕事」 社会のなかの「仕事」~資本主義経済下の職業の考え方~|阿部真大

会社のなかの「仕事」 社会のなかの「仕事」~資本主義経済下の職業の考え方~
  • やりがいを一方的に搾取する資本主義にどうやって対抗したら良いでしょうか!?
  • 実は、ユーモアを持つことがポイントかも知れません。
  • それは、職場との距離を一定取り、職業人としての自分を確立します。
  • 本書は、21世紀のはたらき方にヒントをもたらす1冊です。
  • 資本主義と自分の距離感覚を鋭くさせます。

「やりがいの搾取」とは!?

資本は仕事を労働者に求めます。そして、労働者の「やりがい」が一致することによって、不当な搾取状態が見えにくくなり、労働者が自ら搾取率を高めていく状態を言います。

たとえば、あなたがバイクが好きだとして、ずっと乗っていたいから、バイク便を仕事に選んだとしましょう。ここで一定の「やりがい」を覚えます。そしていつしか、バイクが好きな自分が、バイク便が好きな自分にすり替わり、「やりがい」の中で、職場に没入していくのです。

「やりがいの搾取」は、「無限定」に増えていく仕事に労働者が没入していく状況から生まれやすい。

第1部 働く人を守る「職業」

無防備にやりがいを求め、資本主義のなかに埋没していくことを避けるべきです。3つのポイントを忘れないようにしましょう。

1)仕事は、客に喜んでもらうためにするのではなく、社会のなかで、自らの役割を果たすためにするものである(職業の社会的役割の明確化)→(仕事内容を社会的に規定することで)仕事の「無限定性」に歯止めをかけること。

2)「職業」をベースにした労働組合を通じて、経営者だけでなく、労働者の声も、職場の運営に反映させる(労働組合の再活性化)→(労働者が資本家と対等の立場に立つことで)仕事の「無限定性」に歯止めをかけること。

3)職場から距離をとることが可能となるような「ユーモア」を職場の中に取り入れる(上記1、2に加え、ユーモアのベースとなる「職業人教育」の実践)→職場への没入度合いを軽減すること。

職場との距離感が大切!?

上記のようなアクションを踏むことで、職場との距離を一定程度取り続けることが可能になります。そして、副次的に、職場とは別の、「職業」を中心に据えた公共圏を創り出すことでもあります。

職場・・資本のロジックで働く組織。
職業・・個の専門性に応じた横のつながり。

職業別組合は企業横断的なスキルをもつ「職業人」をベースにしています。

第1部 働く人を守る「職業」

単に、ユーモアを持てというだけでは、継続性が難しいです。

大切なのは、ユーモアの前提となる役割距離は、職場における役割以外にも自分には役割があることを自覚してこそ、とることができるようになります。

著者阿部真大さんは、ユーモアの例として、バブル時代の「かりあげクン」を引き合いに出します。職場から一定の距離を見出して、淡々とギャグ(として職場からは捉えられるマイペースさ)を連発する「かりあげクン」は、確実にユーモラスでした。

かりあげクンは、堅苦しい会社の仕事から「超越」した存在で、作品では、彼が「軽やかに暮らし」「とても楽しい生活をして」いる様子が描かれます。

第3部補論――ポスト戦後社会と「職業」

大切なのは、かりあげクンが会社を解雇されないこと、そして職場の上司や同僚を仲間として見ていることだと、阿部真大さんは指摘します。彼らは特にかりあげクンの「茶化し」に付き合ったり、それを見て(好意的に)苦笑することもあります。

彼らは、自分のなかにあもある「かりあげクン的なもの」を通じて、職場のなかにおける「仲間意識」を醸成しているのです

第3部補論――ポスト戦後社会と「職業」

でも、バブルが崩壊して、成長のために真面目にならざるをえない、新しい時代になりました。職場の引力も強く、ユーモアがユーモアにならない時代になってしまったのです。

日本では、バブル崩壊によって、ソ連的な社会主義(的資本主義)時代が終わり、本格的に「アメリカ化」しようとしている時代になりました。管理教育は自己責任を重視する「個性教育」=「ゆとり教育」へと、「会社主義」は新自由主義的な「業績主義」へと変容し、「抑圧的だが安定した社会」は終わりを告げました。

新しい手段が必要です。

距離感を磨くには!?

職場を、組織のなかで求められる仕事(資本が求める仕事)を中心とした職場と、社会のなかで求められる仕事を中心とした職場に二重化すると、片方を足がかりにして片方から距離をとることが可能となる

第1部 働く人を守る「職業」

たとえば、「研究会」への参加や、「メディア」での積極的な情報発信、「サバティカル(研究休暇)」の取得、などが手段として考えられるでしょう。

平成 30年に経済産業省と中小企業庁が発表した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会(人材力研究会)」の報告書では、「政府・社会として取り組むべき方向性」として、以下のように述べられています。

「企業」と「個人」の役割・関係性が大きく変化する中、企業が競争力を維持・強化するための「人材戦略」を推し進めるための環境と、個人が生涯学び、活躍し続ける(「働く」ことと「学ぶ」ことを一体的に行える)ための環境を整えていくことが必要である。政府・社会は、時代に応じた概念等を提示していくことにより機運を醸成するとともに、具体的な課題に対する支援策を充実させていくことが重要である。

経済産業省・中小企業庁 2018: 58

さらに手段の言及として、次のような提言もしています。

企業による「サバティカル休暇」等の個人の学び直しや振り返りを支援するための制度整備を促進するため、そのような制度を整備する企業に対する助成の在り方について関係省庁と連携して検討する。

経済産業省・中小企業庁 2018: 59

アンラーニングや、リスキリングがさかんに叫ばれていますが、同時に、新たなレイヤーで自分自信の存在意義を示し、「ユーモア」をもたらすようなはたらき方がポイントになるのでしょう。今後も「ユーモア」のあり方については、引き続き検討してみたいと思いました。

アンラーニングや、リスキリングについては、こちらの投稿「【HOW TO リスキル!?】リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考|小林祐児」もぜひご覧ください。おすすめです。

まとめ

  • 「やりがいの搾取」とは!?――自分の好みと仕事のすり合わせが没入を生みます。
  • 職場との距離感が大切!?――搾取されないようにユーモアで距離をとりましょう。
  • 距離感を磨くには!?――職場とは別のレイヤーを持つことです。
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