【「ない」を見つめよう!?】有と無 ―見え方の違いで対立する2つの世界観|細谷功

有と無 ―見え方の違いで対立する2つの世界観
  • どうしたら、視点をゆたかに、人生を切り拓く見立てを得ることができるでしょうか。
  • 実は、ものごとの2面性をとらえることが良いかもしれません。
  • なぜなら、それが人のものごとのとらえかたに基づくからです。
  • 本書は、「有と無」について視点を深めるための1冊です。
  • 本書を通じて、見えない方を見る視点とはどのようなものか、ヒントを得ることができます。

「ある」と「ない」を比べよう!?

本書は、「ものの見方のひとつを提供するための1冊」です。

人のものごとの見立てには、必ず「そうでないもの」との比較が無意識に必ず入っています。だから、有と無の枠組みを知ることによって、自分の思考の癖について俯瞰的に知ることになり、意識しながら、ものごとの見立てのアングルを検討することができるようになります。

どの定義もその背景に「そうでないもの」との比較が無意識のうちに必ず入っています。

そもそも言葉自体が抽象化の産物で、ものごとを都合よく切り出しているにほかなりません。「切り出している特徴」と「切り出していない特徴」の2つが含まれています。

私たちは、ものごとを考えるとき、言葉を使います。言葉とはそもそも一部のみを形容していないことを知らなけければ、つねに世界を素直に描写しているものと勘違いして、言葉の世界でのみしか、自らの感性を働かせることが難しくなってしまうでしょう。

有と無を比べて、ものごとを抽象世界から比較していく視点を身に着けていきましょう。

  • 「あるもの」はすぐに思い浮かびます。それはおもに「いま直接身近にあるもの」や過去の経験から来ます。
  • 「ないもの」は大きく2つに分かれます。「当該の場所にはないが別の場所にはあるのも」(家にはないが職場にはあるものなど)と、「本当にどこにもないもの」(「タイムマシン」「30年後の自分」など)
  • 「ないもの」は一見「どこにもないものに」に思えるが、実際にはどこかにあるものがほとんどである。
  • 「あるもの」のほうが(少なくとも短時間では)数多くリストアップできるが、実は(天文学的に)多いのは「ないもの」のほうである。
ある世界ない世界
五感で感じられる具体五感で感じられない抽象
高密度低密度
有限無限
確定している世界確定していない世界
外枠がある外枠がない
「ない」の後にくる「ある」の先からある
ある世界とない世界の比較

思考のパターンを俯瞰せよ?

有と無を比較して見つめていくと、想像以上に非対称性があることを知ります。ある世界は、自分たちが日頃多く触れている割には、想像以上に狭く、ない世界は、無限大に広がるからこそ、相対的にある世界を縮小させます。

「悪魔の証明」という言葉があります。これは、「ある」ことを証明することは簡単だけれど、「ない」ことを証明することはほぼ不可能であるというものです。それほど「ない」世界とは、奥が深く、しかし掴み所がないのですが、私たちの周囲には必ず存在している(逆説的な言い方かもしれませんが・・)のです。

一部のイノベータ(革新者)といわれるような人たちは、意識的にあるいは無意識的にこのような認知のゆがみを逆手にとって、世界を変革していきます。「ないもの」を見つめて、「ある」方に転換し、「ある」方の人に見せることで、新しいビジネスモデルを創るという試みです。

  • 「ある型」の思考回路・・大多数の人が持っている「あるもの」に目を向ける発想。
  • 「ない型」の思考回路・・少数の人が持っている「ないもの」まで視野にいれる発想。

世界や社会は、大多数の「ある型」と、少数の「ない型」の人たちの対立構造の中で動いている。

「ないもの」は、無から有を生み出すため、抽象的で、想像や創造などの思考力が重視されます。そして、そのために必要なのが、「上空から自分自身を客観視する」メタ認知の視点です。

「ある型」の発想では、いまある現実を重視するのに対して、「ない型」の発想では、もう少し視野を広げた理想まで思いを巡らせることができるのです。

メタ認知については、こちらの投稿「【頭がいいは、視点で決まる!?】メタ思考~「頭のいい人」の思考法を身につける|澤円」もぜひあわせてご覧ください。

経営の世界も見えない世界を多く扱います。ビジネスモデルだけではなく、人の心や、社会の仕組みなど、見えない方をいかに見つめて、ものごとを作り上げていくかが主題であると言えるでしょう。

見えないものをみることは、自分の生き方を自ら作り出していく行為にもフィードバックされます。それはまるで、新しい市場を創造し、切り拓いていく企業活動のように、ワクワクするようなプロセスの積み重ねとなっていきます。

「ない」から無限の可能性を!?

「ある型」の人は、「ない型」の人の浅さが耐えられません。「ない型」の人は専門領域がなく、非現実的でふわっとした夢物語ばかりを語っている人に見えます。「ない型」の人にとってはあるものをいくら深堀りをしたとしても、それは(見えない領域を含む)広い世界では役に立たないと思い、現実的なことを「退屈でつまらない」と感じてしまうものです。

人の判断は、無意識のうちに、前提をおいていることに気が付きます。常にその前提から「自分にとっての答え」を出しているのです。でもこれは無意識なので、日頃は気づきません。「ある型」の思考回路では、「正解がある」ほんの一部分の世界を、世界全体だと思いこんでしまうことが多いのです。

つまり、ほとんどの問題に対する「答え」は「前提や状況による」ということになるのですが、「ある型」の思考ではここが見えていないのです。

前提次第で、世の中やものごとは揺らぐということになります。決定的に決められていることなど何もなく、人やタイミング、考え方次第で多くは、かたちを曖昧にします。

世界が激しく変化しているときには、問題発見の領域が必要となります。すでに「ある」問題を解くのではなく、問題自体をない世界から生み出していく行為です。ビジネスの世界で言えば、安定している環境では顧客から毎年同じような依頼が来るのですが、不安定な市場においては、わざわざ新たな問題を発見して、仕事を作り出さなくてはならないでしょう。

しかし、前述の通り「ない世界」というのは無限です。考え方や見え方を変えていけば、無限の可能性の中で、仕事を作ったり、自分の言動を見出したり、可能性ある世界を生きていくことができるのです。

今回も細谷功さんの1冊には多くの示唆をいただきました。細谷功さんの著書についてはこちら「【「わかりやすい!!」は、本当に価値なのか!?】具体と抽象|細谷功」やこちら「【企業は“ストック”!?】フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則|細谷功」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 「ある」と「ない」を比べよう!?――実際の世界は、実感とは大きく異なります。
  • 思考のパターンを俯瞰せよ?――「ある型」「ない型」は、考え方も異なります。
  • 「ない」から無限の可能性を!?――変化の時代こそ、ない世界を見方に、切り拓きましょう。
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