- 生きる力とは、本当のところ何でしょうか!?
- 実は、「読解力」を通じて見えてくるものも大きいかもしれません。
- なぜなら、状況を知り、心で感じ、そして次の1歩を踏み出すことが、生きるということだから。
- 本書は、読解力とは何かについて考え、そして、生きることを考える1冊です。
- 本書を通じて、曖昧だった“読む”ことについて、解像度を上げられます。

楽しいことこそ最強!?
生きる力、とくに、14歳、つまりこれから自分を形成しながら、社会との接点を増やしていく年代において、重要な生きる力とは何でしょうか!?
まず、1つ上げられるのが、教科書に書いてある「知識」でしょう。二次方程式とか、水溶液の性質とか、そういうものです。
そしてもう1つが、上記のような領域固有の「知識」ではなく、領域に横断的に関与していく力、つまり、ものごとを知るための力、「読解力」です。
OECDが2011年に発表した国際学習到達度調査(PISA)において、読書量と読解力の間に有意な相関が見出されました。
特に、読書を「楽しむ」傾向が強い15歳の生徒は、読解力テストで高得点を取る傾向がありました。
OECDの報告によれば、読書の楽しさに対する生徒の態度の違いが、読解力スコアの18%の差異を説明できるとされています。
また、OECDの報告書「Against the Odds: Disadvantaged Students Who Succeed in School」では、社会経済的に不利な立場にある生徒でも、読書習慣があることで学業成績が向上する可能性があることが示されています。
いかに「読むことの楽しさ」について経験できるかが重要であるということがわかります。
たいして興味がないのに幼児に字を読む練習を無理やりさせたりするのも、あまり読解力にプラスではないです。
本嫌いではなく、本が好きな子どもに育っていくためには、良い思い出とセットであることも大切でしょう。
親と一緒に楽しく本を読んだ経験や、親自身が楽しそうに本を読んでいる様子にたくさん触れた子どもは、きっと本について、前向きなスタンスを育むことができそうです。
そもそも本が好きになる経験を積めるかどうかがキーです。
<本を読むのが好きな人の読解力向上ルート>
本が好き ⇔ 楽しんで本を読む ⇔ 読んでわかる(読解力)
<本はイマイチ好きじゃない人の読解力向上ルート>
読んでわかる(読解力) → 読みたい → (楽しんで)読む ⇔ 本が好きになる
本が好きであることが、起点であるほうが、自らを結果的に読解力向上スパイラルへと導くことができるようになります。
方略で読むを知ろう?
読んで理解することを練習することも可能です。
心理学では、読んで理解するために、意図的にやることや考えることを「方略」と呼んでいます。
過去の研究の中で、4つの方略が説かれています。
「要約」「質問」「明確化」「予測」です。
自分で本を読みながら、これらの4つのアクションをとることで、自らの読解力を積み重ねていくこともできそうです。
「要約」とは、テキストや情報の主要なポイントを簡潔にまとめる方法です。要約することで、情報の本質を抽出し、理解を深めることができます。効果的な要約は、重要な情報を選び出し、余分な詳細を省きながら、元の意味を保持します。(どんな内容だったかまとめること)
「質問」とは、情報に対して疑問を投げかける方略です。質問することで、テキストとの対話が生まれ、理解が深まります。また、知識のギャップを特定し、批判的思考を促進する効果もあります。(先生がしそうな質問を考えてみる)
「明確化」とは、曖昧な情報や複雑な概念をより分かりやすく整理する方法です。例えば、言い換えたり、例を挙げたり、視覚化したりすることで、理解を助けます。(どういう意味かはっきりした説明をする)
「予測」とは、既存の情報や知識に基づいて、これから起こることや次に来る情報を推測する方略です。予測することで、新しい情報への準備ができ、理解が促進されます。(文章にどんなことが書かれていそうか、読む前に考える)
ポイントは、上記の4つの「方略」は互いに相関しているということです。
実は、受験勉強や、資格試験の勉強でも、これらの視点やアクションはとても重要なことなのですね。
ものごとの根幹に触れ、メカニズムやシステムについて思いを馳せ、さらには出題者の題意を汲みながら、問いについて適切な回答を模索していく、それらをよりよく体感していくためには、目の前のテキストとの方略的対話がとてもよい練習になります。
これ以外にも、以下の6つの論点で読むことについて、経験を積み重ねてもよいでしょう。
1.基本的な読み方コントロール
- あれ?と思ったらゆっくり読む
- 分からないと思ったら何回か読んでみる
2.明確化
- 「コレ」「ソレ」などが何を指しているかはっきりさせる
- あいまいな表現のものをつまりどういうことか言いなおす
- はっきり書かれていないことを足して言いなおす
- 自分の言葉で言いなおす
3.要点把握
- 大事そうなところを見つける
- キーワードを見つけて目立つようにする
- だいたいどういう流れなのか図にする
- 箇条書きにする
4.理解チェック
- 分からないところはどこか考える
- 自分がちゃんと分かっているか確認する
- 先生ならどんな質問をするか考える
5.構造注目
- 文章の段落構造に注意する
- 接続詞に注目して話の流れを捉える
- いくつかのまとまりを作って整理する
6.知識の活用
- 関連することでなにか知っているか思い出す
- 知っていることと同じところ、違うところを考える
- 知っている内容と結びつける

メタ認知が分かるにつながる!?
実は、読解力とは、メタ認知のことであるとも言われています。
自分はこれが理解できていない、ということを自分で把握できているということです。理解しようとしているのが「認知レベル」、それがうまくいっていないことを見つけるのが「メタレベル」です。
メタな視点を持つことによって、わからないところを知り、そしてそれを突き詰めていく出発点に立つことができます。
でも、メタ認知は、基本的に自分に対して甘いので、なかなか起動してくれなかったり、長持ちしてくれなかったりしたりします。
なぜなら、人は通常の認知活動をしながら、メタ認知を働かせるために、2つの認知構造を働かせることに慣れていないからです。
当然ですよね。もともと目の前のことに一生懸命生きて、生きながらえてきた(サバンナ的野生の環境で)のですから。
読んでいるときにメタ認知を働かせるというのは、頭の中につながりを作ると同時にそのつながりが途切れていたりねじれていたりするところがないかを確認していくという作業になります。
自分の中にある「スキーマ」を探索してみることも重要でしょう。
スキーマとは、人間が持つ知識の構造化された枠組みや認知的な枠組みのことです。これは私たちが新しい情報を理解し、解釈し、記憶するための基礎となる概念的な構造です。
スキーマは、以下のような特徴を持っています。
- 過去の経験や知識から形成される
- 新しい情報を解釈する際のフィルターとして機能する
- 情報の記憶や再生を助ける
- 状況に応じて適切に活性化される
スキーマは、ステレオタイプ(先入観を優先してしまう)を促してしまう可能性もありますが、メタ視点を組み合わせていれば、つねに自分の理解や見方について触れることができるので、さらに多面的なものごとの見方を助長させていくことができるようになるはずです。
「読む」ことは「わかる」とか「知」というもっと大きなことにつながっています。
読むとは、わかるということ。わかるということは、ものごとをわけられるということ。わけてものごとを見ることができれば、自分の生き方を導くヒントを常に得るということになります。
「分かる」というのは自分の知らなかった世界を拓いていくことだと思うからです。
読むことを通じて、自分の知らない「得意」や「好き」や「やりたいこと」が見つけることができれば、それこそが、生きる力になって、自分にまた還ってくるのです。
そう言えば、未来に対するビジョンについても「読む」と言いますよね。
そんな1冊はこちら「【商いのセンスを身につけるには!?】プロ投資家の先の先を読む思考法|藤野英人」をおすすめです。

読むこととビジョンは、深い関わりがをそもそも人は感じているということでしょうか。同じ認知領域に振り分けられている(同じ動詞でくくれる)というのは、興味深いです。
まとめ
- 楽しいことこそ最強!?――読解力は、楽しい読書によってもたらさせれます。
- 方略で読むを知ろう?――4つのアクションで自分の「読む」と向き合ってみましょう。
- メタ認知が分かるにつながる!?――そして、分かることが自分のいく道を照らしてくれます。
