- どうしたらチームのためによりよいリーダーシップを発揮することができるでしょうか。
- 実は、スピードと信頼がキーワードかも。
- なぜなら、絶えず変化する環境において、欠かせないファクターだからです。
- 本書は、これからの時代のリーダーシップを考える1冊です。
- 本書を通じて、何が周囲をリードするファクターになるのかヒントを得ることができます。
2つの重要な両立視点とは?
非常に有能なリーダーたちは、加速度的に課題を解決すると同時に、顧客や従業員、株主の成功とウェルビーイングに対しても責任を持って行動しています。そして、素早く彼らとの信頼関係を構築し、今後の活動の礎としています。
本書は、リーダーシップをスピードと信頼で考える1冊です。
スピードがあると、組織のエネルギーが引き出され、進む方向が明らかになる。信頼があることで、ステークホルダーは付いていこうと決意する。
まるでスピードと信頼は、新たな目的地に飛び立とうとする飛行機の推進力でもあるかのうようです。十分なスピードがなければ宙に浮くことはできないし、十分な信頼がなければ、誰も搭乗することはないでしょう。
4つのマトリクスで組織について検討してみましょう。本書のテーマ、スピードと信頼を軸にしています。
遅い | 速い | |
信頼・高い | 確実な管理 ・過去の方針 ・合意による意思決定 ・従業員にとって高い快適性 | 加速する卓越性 ・ステークホルダーにとっての価値の増大 ・バランスの取れた創造性あふれる文化+業績 ・自身とやる気に満ちた従業員 |
信頼・低い | 避けられない減退 ・ステークホルダーにとっての価値の減少 ・取引型の文化 ・従業員の強い不信感 | 向こう見ずな破壊 ・高度なイノベーション ・ステークホルダー離れ ・“われわれ”と“彼ら”という内外を分ける考え方 ・従業員の強い不安 |
重要なのは、高い信頼性が担保されているのに加えて、スピードも一定程度重視されているべきということです。高い信頼性があっても、確実な管理をもたらすだけで、高度なイノベーションを創出するとは限りません。
スピードというもっとも貴重な時間という資源を上手に利活用しようとしている組織、あるいは実際に活用できている組織が、正しい厳しさのもと、成果を上げることが可能になるのです。
リーダーは、スピードと信頼を大切にしていた。
この両立をこれからのリーダーは目指していくべきであると、本書は説きます。
信頼のキーとは?
2012年フェイスブックが提出した新規株式公開の目論見書のなかで、CEOマーク・ザッカーバーグさんは、次のように語りました。
素早く動き、破壊せよ
素早く動くことで、より多くのものを築き、より早く学ぶことができるのです。
しかし残念なことに、企業は、成長すればするほど、そのスピードは緩慢になっていきます。なぜなら、速度低下による機会損失よりも、失敗を恐れる体質に変貌していくからです。
重要なことは、そうした法則にどっぷりと浸かり、変容できないというマインドセットを育むということでありません。スピード or 成長ではなく、その両立にこそ、本当のリーダーシップと成功があるのだと本書は繰り返し伝えてくれます。
株式上場から10年後の2022年、マーク・ザッカーバーグさんは、社名をメタと改め同社が「自社も互いも大切にする」会社として、ともに素早く動く会社として成長し続けることを社会にコミットしました。こうした方向転換は絶えずしていくことが重要だし、変化もいち早く外部の変化にあわせて取り入れていくことがキーとなります。
二者択一のワナにハマってはいけません。重要なの論点は両方をいかにとれるか、ということにありそうです。
こちらの1冊「【私たちは、二者択一にとらわれている!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス」も両立の視点を強化してくれます。難局に際しては絶えず身につけておきたい視点と覚悟のように思えます。
組織の信頼性に欠かせない要素として重要にしたいのは次の3つです。
1)真正性・・この組織はやるといったことをやる!
2)論理・・この組織はわれわれのニーズに確実に応えてくれる!
3)共感・・この組織はステークホルダーであるわれわれを大切にする!
この論点を忘れてはなりません。それぞれが絶えず各ステークホルダーにとって満たされているものになっているのかを、リーダーはチェックしておく必要があります。
また、自社や自分が所属している組織にとって、それぞれのゆらぎはどういうものがあるかを検討したり、メンバーに1オン1などでヒアリングしながら、見える化しておくことも重要です。これは主体が企業という大きなくくりだけではなく、日々運用をともにするチームという単位でも大きく役立つ視点であると思われます。
イノベーションを味方に!?
組織が絶えず、パフォーマンスが発揮できるようにするために検討しておくべきことのひとつに、インクルージョンがあります。これは包摂と訳される概念で、多様性を取り込みながら、さまざまな人とおなじベクトルや目標を目指し、よりよい協働体制を作り上げ続ける力を意味します。
同質性は時に素早く動いたり、判断したりすることで利があるように思えますが、残念ながらそれは短期間のみの話です。これからの時代を中長期視点で事業や組織の永続性を担保し続けていくためには、メンバーの同質性ではなく多様性を内包していくビジョンと考え方と協働の仕組み自体がとても重要なのです。
インクルージョンは、共通情報効果を打ち消すのだ。インクルージョンによって、たまたま共有していた情報だけでなく、それぞれがもつ独自の情報に誰もがアクセスできるようになる。
多様性がありインクルーシブなチームをつくれば、チームがアクセスできる情報量を莫大に増やすことが可能になります。
インクルージョンのカルチャーの醸成には次のような4つのレベルがあることを事前に理解しておきましょう。
1)安全・・自分が誰であるかにかかわらず、職場で身体的、精神的、心理的に安全だと感じる。
2)歓迎・・自分が誰であるかにかかわらず、誰もが入社してから退職するまでずっと職場で歓迎されていると感じる。
3)尊重・・自分が自分であるからこそ、職場で尊重されていると感じる。
4)無敵・・インクロージョンの文化が十分に組織にインストールされている。インクロージョンは倫理的かつ競争優位に欠かせないものとみなされている。
独自性を尊重する組織は、「違い」こそが創造性、イノベーションの源泉であると捉えることができます。それは一部の人達の貢献の妨げになるから、気をつけるべきものではなく、「違い」こそを強みにするためにいかに協働の仕組みを整えることができるか?を充実化させるのか?という思考のベクトルを持ち続ける必要がある。
モザイクにも似た組織が、新たな資源を獲得し、そして新しいカルチャーをスピードと信頼性を持って、世の中に提示していくことが可能なのです。
まとめ
- 2つの重要な両立視点とは?――信頼だけではなく、スピードもかけ合わせ続けることです。
- 信頼のキーとは?――真正性と論理、共感の要素を見つめましょう。
- イノベーションを味方に!?――信頼とスピードにはインクルージョンの考え方が不可欠です。