【私たちは、二者択一にとらわれている!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス

両立思考
  • どうしたら、問題解決に素直に向き合っていくことができるでしょうか。
  • 実は、両立思考を用いることで、より正しく問題に向き合っていけるかもしれません。
  • なぜなら、一刀両断できるものごとって、実はそんなに世の中にないからです。
  • 本書は、両立思考とはなにか?その方法とはどんなものかを説いた1冊です。
  • 本書を通じて、複雑なものごとを複雑なままで取り扱う方法論を知ることができます。

二者択一思考とは!?

見るからに手に負えないコンフリクト(葛藤、衝突、対立)や解決不能な難題、がいたるところにある。

序文 やっかいな世界における両立思考の力

世の中の問題というのは、非常に複雑です。それもそのはず、この世の中はさまざまに関係しあっているからです。たとえば最近議論になる、組織か、個人かという問題もそうです。どちらにも当然メリットやデメリットもあるし、そのメリットやデメリットは、時と場合によって揺れ動きます。人によってもジャッジが異なるでしょう。例えば、副業の解禁をどうするか?アルムナイの活用をどうするか?という組織的な判断を下すタイミングでは、その問題への対処法について、さらに複雑さを増します。

あるいは、もっと身近な例としては、仕事か、家庭か、という二項対立もあるでしょう。もちろん両方大事なのです。両方が大事だから、人はその問題の前で躊躇します。そして、時に「英断」を下そうとしてしまいます。

択一が正しい場合もありますが、ただ、択一をしてしまうと、もう片方を捨てることになり、その結果、問題がさらに複雑化してしまうおそれがあります。

なぜなら、ものごとはすべてバランスの上で成り立っているためです。

この世界観を説いてくれている一つのコンセプトが仏教であり、禅でしょう。

【仏教の教えを一言でいうと!?】完全版 仏教「超」入門|白取春彦」や「【禅は、生きる知恵!?】人生を整える 禅的考え方|枡野俊明」の投稿もぜひご覧ください。

仏教では、ものごとがすべて繋がっている世界観を持っており、かつ、二者択一を嫌います。そしてもっというと、2つに別れているようで、それは一体であることを説いてくれています。陰陽、生死、明暗などなど、これらは、互いがあることによって互いが存在しうるものごとです。世の中とは、このようにできているため、必ずしも片方を取り出すことはそもそもできないというスタンスにたちます。

また、二者択一問題について警鐘をならすのは、苫野一徳さんです。こちらの投稿「【生きるための知恵の身につけ方とは!?】勉強するのは何のため?|苫野一徳」をぜひ御覧ください。

どうしても唯一の「正解」を私たちは、求めてしまう傾向にあることから、次のような「問い方のマジック」に騙されてしまうと苫野一徳さんは言います。

「問い方のマジック」は、A or Bでなぜか最初から二者択一担っている問いです。例えば、体罰は正しいのか、そうでないのか、という問い掛けのことです。

【生きるための知恵の身につけ方とは!?】勉強するのは何のため?|苫野一徳

二者択一かのように見えるジレンマは、心のなかで、綱引きのように作用し、感じた人間に対応を迫ります。ジレンマは、それぞれの選択肢に別々の論理的解決策が存在するような、相反するような選択肢を提示してくるのです。

パラドックスは、こうしたジレンマの中に隠れています。パラドックスとは、上述の仏教における陰陽、生死、明暗など、互いに存在しうる依存関係のことです。相反する力が潮の満干期のような循環のなかに囚われているような状況です。パラドックスは、矛盾を統合しているので一見して不条理に見えますが、さらに徹底的に調べていくと、競合する要求の包括的なシナジーを実現するロジックが、明るみに出る場合があります。

そのシナジーを活用し、その先を見いだすのが、弁証法でしょう。弁証法については、こちらの投稿「【「考える」の軸ができる!?】使える弁証法―ヘーゲルが分かればIT社会の未来が見える|田坂広志」をぜひご覧ください。

両立思考とは!?

このパラドックスのシナジーを有効に活用し、新たな突破口を見出し続けるのが「両立思考」です。

パラドックスを乗りこなすことは、まず緊張関係が諸刃の剣だと理解することから始まる。緊張関係は私たちをネガティブな未知に引きずり込む場合も、よりポジティブな道への推進力になってくれる場合もある。

まえがき

複数の排他的な選択肢から選ぶのではなく、ジレンマの背後に隠れている、パラドックスを表面化させ、パラドックスは解決できないことを受け入れることから始めるとどうなるか、を考えてみることです。

「どれを選ぶべきか」から「両立するにはどうすればよいか」に変えるとどうなるだろうか。

緊張関係は、制御できなくなって、破壊や損害の原因になることだって、うまく利用すれば、想像力とチャンスの源泉にだってなることを知るのです。

「ラバ」と「綱渡り」!?

著者のウェンディ・スミスさんと、マリアンヌ・ルイスさんは、この「両立思考」の結果として2つの状態を提示してくれています。

その一つが「ラバ」です。「ラバ」は、雌のウマと雄のロバの子どもです。馬の力は強く、よく働きますが、落ち着きがあり退屈することがあります。一方、ロバはおとなしいですが、がんこであまり頭が良くないといいます。この2つの種を交配させるとウマより大人しく働き者で長生きし、ロバより柔軟で頭の良い交雑種「ラバ」がうまれます。

ラバを見つけるには、パラドックスの対立項を統合する、シナジーのある選択肢を特定する必要があります。

例えば、図書館で2人の人が読書をしていたとしましょう。一人は、開いている窓を閉めたいという。そして、もう一人は、窓を開けておきたいという。二人は同じ部屋にいます。こうした状況にフォーカスしてみましょう。パラドックスの対立項は、窓の開け閉めです。シナジーある選択肢を特定するには、そのパラドックスの解像度を上げていくことがポイントです。

よくよく聞いてみると、一人が窓を閉めたい理由は、机の紙が風でとんでしまうからでした。そして、もう一人は換気をしたいためでした。二人は、隣の部屋の窓をあけて、互いに読書に集中できる環境を手に入れることができました。

こうしたシナジーの選択肢というのは、きっとあるはずです。自己のニーズと他者のニーズ、短期的な機会と長期的な機会を両立するソリューションを見つけるには、どうしたらいいかを問うのです。

ラバには繁殖力はなく、ラバからラバは産まれない。ラバを産むには、ウマとロバを繁殖させなければならない。これは、パラドックスを乗りこなすための重要な特徴である。

ラバ型――クリエイティブな統合を見つける

そしてもう一つが、「綱渡り」です。これは二者択一的な選択肢の間を細かく移動しながら、前進し、綱渡りのようにパラドックスを乗りこなすことを目指すものです。例えば、仕事と家庭の両立というのもこれにあたるかもしれません。常に仕事も、家庭も、状況は変化します。どちらか一方を取るのではなく、状況に応じて、バランスを取りながら前進する選択肢が、建設的でしょう。

対立極のあいだを常に行ったり来たりするような小さな選択を何度も行う。長い時間をかけて、2つの選択肢を両立できるような、全体像を踏まえたパターンを作る。

綱渡り型――一貫した非一貫性

ヨットや、自転車も進むために常にバランスを取ります。本当の意味で釣り合っているのではなく、無意識のうちに細かな動きを繰り返して、継続的にバランスを保つ方法論もあるのだと記憶にとどめましょう。

まとめ

  • 二者択一思考とは!?――どちらかを選ばないといけないのではと思ってしまっています。
  • 両立思考とは!?――すべてを包含する選択肢で進めることです。
  • 「ラバ」と「綱渡り」!?――クリエイティブな統合か、時間軸を活用した全体像かを検討しましょう。
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