仕事は、あなたの“態度”のバランスに表れる!?『自分の仕事をつくる』西村佳哲

『自分の仕事をつくる』西村佳哲の書影と手描きアイキャッチ
  • あなたは仕事をするとき、どんな態度で相手と向き合っていますか?
  • 実は、多くの人が「お客様は神様」的なしもべの態度か、あるいは自分のやりたいことを押し通す自己満足か、そのどちらかに偏ってしまっているんです。
  • なぜなら、西村佳哲が本書で指摘するように、しもべ的な態度を取ると「他人事ではない仕事」ができなくなり、逆に自己満足が強すぎると、それは仕事ではなく「ただの労働」になってしまうからです。
  • 本書は、その両極端の間にある「第三の態度」について、様々な働き手への取材を通じて描き出しています。
  • 本書を通じて見えてくるのは、仕事が家族や恋人とは別の形で人と人をつなぎ、社会を作る上で欠かせないレイヤーになっているという事実です。
西村佳哲
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西村佳哲さんは、デザインコンサルタント、そして「働き方研究家」として活動されている方です。

前回のレビューでもご紹介しましたが、西村さんはもともとプロダクトデザインの世界にいながら、次第に「どのようにデザインが生まれるのか」「どんな働き方がよいものを生み出すのか」という問いに関心を移していきました。

本書『自分の仕事をつくる』は、そんな西村さんが日本国内外を旅しながら、印象的な働き方をしている人々に会いに行き、対話を重ねた記録です。

今回の続編では、前回触れきれなかった「仕事における人間関係」という側面に焦点を当てます。

西村さんの静かで温かいまなざしは、仕事を通じて生まれる関係性の本質を、丁寧に浮かび上がらせてくれます。

前回の投稿はこちら「自分の仕事を見出し、そして、生き抜こう!?『自分の仕事をつくる』西村佳哲」からご覧ください。

「しもべ」でもなく「自己満足」でもなく――仕事の第三の態度

私たちは仕事をするとき、しばしば両極端の態度に陥ってしまいます。

ひとつは「お客様は神様」的な、しもべのような態度です。

相手の要望を何でも聞き入れ、自分の意見を押し殺して、ひたすら奉仕する。一見すると誠実な姿勢に見えますが、西村さんはこれに警鐘を鳴らしています。

ホテルマンや英国の執事のように、しもべ的な態度が相手を喜ばせることに本人が意義を感じる職種もある。しかし、そうではない職種で無用にしもべ的な態度を取ることは、自ら、この社会でもっとも大切なものをあえられなくしてしまう。西村さんの言う「他人事ではない仕事」になりやすいのだ、しもべのように仕える、アナタ方ハソレデイイノデショウカ?

しもべ的な態度が問題なのは、それが「他人事の仕事」につながってしまうからです。

「お客様がこう言っているから」「上司の指示だから」――そうやって自分の判断を放棄し、ただ言われた通りに動く。それは責任を回避しているようで、実は最も無責任な態度なのかもしれません。

私自身、広告会社で働く中で、この罠に陥りそうになることがあります。クライアントの要望を聞きすぎて、本当に必要なことを提案できなくなる。「お客様の言う通りにしておけば間違いない」という思考停止です。

でも、もう一方の極端も問題があります。それは「自己満足」です。

自己満足の度合いが強いと、それは仕事というよりただの労働になってしまう。

自分のやりたいことを押し通す。
自分の美学やこだわりを優先して、相手のことを考えない。
それは確かに「自分事」ではあるかもしれませんが、仕事とは呼べないんです。

仕事という言葉は、「稼ぎ」や「つとめ」という言葉で語られることもあるが、彼らは、自分と他者と世界を架け渡すものが仕事だと考えているようだ。つとめとして働く中では、一時的に自分の気持ちをおさえたり・ひかえたり、儲かりそうでくる。だけどその態度が、当然のように成し遂げてしまう。このような能力の有無は、人の成熟をしめすものでもある。ここでは一人一人が自分の気持ちをおさえたり・ひかえたり、儲かりそうでくる。だけどその態度が、当然のように成し遂げてしまう。このような能力の有無は、人の成熟をしめすものでもある。ここでは一人一人が自分の気持ちにとらわれることなく、一人ひとりが人間の仕事だろうと僕は思うので、それは尊いと思うし敬しいという気持ちがあります。

この引用には、仕事の本質が詰まっています。

仕事とは「自分と他者と世界を架け渡すもの」なんです。自分だけでもなく、他者だけでもなく、その間を橋渡しする営みです。

そのためには、時に自分の気持ちを抑えたり、控えたりする必要があります。でもそれは、自分を殺して黙々と無機質に続けることではありません。

西村さんが「それは尊い」と言うのは、この絶妙なバランスを保つことが、人間にしかできない高度な能力だからです。

では、本書に登場する人々は、どのような態度で仕事に向き合っているのでしょうか。

この本に登場する人々にしもべ的な態度はないかといって、傲慢でもない。彼らはシンプルに相手と向き合う。

「シンプルに相手と向き合う」――これが第3の態度です。

しもべのように卑屈になるのでもなく、自己満足で傲慢になるのでもなく、ただ真っ直ぐに相手と向き合う。

そこには対等な関係性があります。

私が非営利団体の支援をさせていただく中で学んだのも、まさにこのことでした。支援する側が上で、される側が下という関係ではない。お互いに異なる立場から、共通の目的に向かって協力し合う。そんな対等な関係性の中でこそ、本当に意味のある仕事が生まれるんです。

顧客に対しても、上司に対しても、部下に対しても、同じです。しもべになるのでも、自己満足を押し付けるのでもなく、シンプルに向き合う。

それは簡単なことではありません。自分の気持ちを適度に抑えながら、でも完全には殺さない。相手の要望を聞きながら、でも自分の判断を放棄しない。

この微妙なバランスを保つこと――それこそが、プロフェッショナルの態度なのだと思います。

そしてこの態度は、訓練や経験を通じて身につけていくものです。最初からできる人はいません。でも、意識的に取り組むことで、少しずつ成熟していけるんです。

西村さんが「人の成熟をしめすもの」と言うのは、まさにそういうことなのでしょう。

他者と世界を架け渡すもの――仕事が持つ固有の役割

では、「仕事」とは何なのでしょうか。お金を稼ぐこと?義務を果たすこと?

西村さんは、もっと本質的な定義を提示しています。

仕事という言葉は、「稼ぎ」や「つとめ」という言葉で語られることもあるが、彼らは、自分と他者と世界を架け渡すものが仕事だと考えているようだ。

「自分と他者と世界を架け渡すもの」――この定義は、極めて重要です。

稼ぎやつとめとして働くとき、私たちはしばしば受動的になります。「お金のために働く」「義務だから働く」――そこには、自分の意志が入り込む余地が少ないんです。

でも仕事を「架け渡すもの」と捉えると、景色が変わってきます。

自分の内側にあるもの――考えや感情、技術や経験――を、外側の世界へと橋渡しする。そして他者の内側にあるものを受け取り、自分の中に取り込む。この双方向の流れが、仕事なんです。

だからこそ、完全な自己満足ではいけないし、完全なしもべでもいけない。自分を持ちながら、他者に開かれている。そんな状態が必要になってくるわけです。

つとめとして働く中では、一時的に自分の気持ちをおさえたり・ひかえたり、儲かりそうでくる。だけどその態度が、当然のように成し遂げてしまう。

自分の気持ちを抑えたり、控えたりする――これは一見すると、自分を殺しているように見えるかもしれません。

でも実際には違うんです。

それは「今この瞬間は、相手の話を聞くことに集中しよう」という選択なんです。自分の意見を言うタイミングは後で来る。今は相手を理解することに専念する。

こうした柔軟な態度の切り替えができること――これこそが、西村さんの言う「人の成熟」なのだと思います。

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家族を超える関係性――仕事が生み出す社会的つながり

仕事が「自分と他者と世界を架け渡すもの」であるなら、そこにはどんな関係性が生まれるのでしょうか。

西村さんは、極めて重要な指摘をしています。

わたしたちは、仕事を通じて、家族友人恋人関係とはちょっと別の形で人と関わる(大量生産なんかも含めて)。

仕事を通じて生まれる関係性は、家族や恋人、友人とは異なる「第三の関係性」なんです。

家族は血縁でつながっています。恋人は愛情でつながっています。友人は好意や共感でつながっています。

では、仕事を通じてつながる関係性とは何でしょうか。

それは「共通の目的」や「協働」によってつながる関係性です。お互いに好きか嫌いかは関係ない。血縁も関係ない。ただ「良い仕事をする」という一点でつながっている。

この関係性には、家族や恋人にはない独特の強さがあります。

私が非営利団体の支援をさせていただく中で、まさにこの関係性の豊かさを実感しました。最初は全く知らない人たちでした。年齢も立場も違う。でも、共通の目的――社会をより良くしたいという思い――を持って協働する中で、深い信頼関係が生まれたんです。

それは友情とも違う、家族愛とも違う、でも確かに強いつながりでした。

ホテルマンや英国の執事のように、しもべ的な態度が相手を喜ばせることに本人が意義を感じる職種もある。しかし、そうではない職種で無用にしもべ的な態度を取ることは、自ら、この社会でもっとも大切なものをあえられなくしてしまう。

「この社会でもっとも大切なもの」――それは、この対等な協働関係なのだと思います。

しもべと主人の関係では、対等性がありません。どちらか一方が従属している。そこには真の協働は生まれません。

逆に、自己満足を押し通す関係でも、協働は生まれません。一方的に自分のやりたいことを押し付けているだけです。

でも、シンプルに向き合い、お互いの立場を尊重しながら、共通の目的に向かって働くとき――そこに生まれる関係性こそが、社会を作る上で欠かせないレイヤーになるんです。

考えてみれば、私たちの人生の大半は仕事をしている時間です。家族と過ごす時間よりも、友人と過ごす時間よりも、仕事に関わる人々と過ごす時間の方が長いかもしれません。

だからこそ、仕事を通じて生まれる関係性の質が、私たちの人生の質を大きく左右するんです。

まとめ

  • 「しもべ」でもなく「自己満足」でもなく――仕事の第三の態度――しもべ的な態度は「他人事の仕事」につながり、自己満足が強すぎると「ただの労働」になってしまいます。本書に登場する人々は、そのどちらでもなく「シンプルに相手と向き合う」という第三の態度を持っています。自分の気持ちを適度に抑えながら完全には殺さず、相手の要望を聞きながら自分の判断を放棄しない――この微妙なバランスを保つことが、プロフェッショナルの態度であり、人の成熟を示すものなのです。
  • 他者と世界を架け渡すもの――仕事が持つ固有の役割――仕事とは「稼ぎ」や「つとめ」ではなく、「自分と他者と世界を架け渡すもの」です。自分の内側にあるものを外側の世界へと橋渡しし、他者の内側にあるものを受け取る――この双方向の流れが仕事の本質です。一時的に自分の気持ちを抑えたり控えたりしながらも、それは自分を殺すことではなく、柔軟に態度を切り替える選択です。この高度な技術と人間的な成熟こそが、仕事を単なる労働ではなく、創造的で社会を豊かにする行為に変えていきます。
  • 家族を超える関係性――仕事が生み出す社会的つながり――仕事を通じて生まれる関係性は、家族・恋人・友人とは異なる「第三の関係性」です。血縁でも愛情でも好意でもなく、「共通の目的」や「協働」によってつながる対等な関係――それこそが社会を作る上で欠かせないレイヤーになっています。シンプルに相手と向き合い、お互いの立場を尊重しながら共通の目的に向かって働くとき、そこには家族とは違う、でも同じくらい大切な絆が生まれます。この関係性を一つひとつ丁寧に築いていくことが、「自分の仕事をつくる」ということなのです。
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