時間をもう一度コントロールせよ!?『STOP OVERTHINKING』ニック・トレントン

『STOP OVERTHINKING』ニック・トレントンの書影と手描きアイキャッチ
  • あなたは、夜中に目が覚めて、翌日のプレゼンテーションや人間関係の悩みが頭の中をぐるぐる回り続けた経験はありませんか?
  • 実は、この「考えすぎ」は、思考の質の問題ではなく、思考が閉じたループの中で増幅され続ける構造の問題なんです。
  • なぜなら、同じ不安や心配が頭の中で反響し合い、外部からの新しい視点が入ってこないと、どんどん極端になっていくからです。これはSNSで起こる「エコーチャンバー」の構造とよく似ています。
  • 本書は、認知行動療法とストア哲学をベースに、この思考の無限ループから抜け出すための5つの習慣と5つの態度を提示しています。
  • 本書を通じて、出来事そのものではなく「とらえ方」を変えること、そして思考を外在化して客観視すること、さらに自分の時間を意識的に取り戻すことの重要性を学びました。
ニック・トレントン,児島修
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ニック・トレントンは、アメリカの著述家であり、行動心理学の修士号を持つ専門家です。科学的な事実をベースにしたビジネス書・自己啓発書を多数執筆しており、その著作は世界中で読まれています。

特に本書『STOP OVERTHINKING』は、世界150万部を突破するベストセラーとなり、ドイツ語、フランス語、アラビア語、中国語、韓国語など39か国語に翻訳されています。

これほど多くの国々で支持されているのは、「考えすぎ」という現代人共通の悩みに、認知行動療法やストア哲学といった普遍的なアプローチで応えているからでしょう。

トレントンの著作の特徴は、心理学の知見を日常生活に落とし込む実践的な姿勢にあります。本書も例外ではなく、思考の無限ループから抜け出すための具体的な習慣と態度の変化を、誰もが取り組めるレベルまで分解して提示しています。

思考のエコーチャンバー──考えすぎの正体

考えすぎることの何が問題なのか。

それは、考えること自体が悪いのではなく、同じ思考が頭の中でループし続けることなんです。これは、SNSでよく語られる「エコーチャンバー」の構造とよく似ています。

エコーチャンバーとは、同じ意見や情報ばかりが反響し合う閉じた空間のことです。自分と似た考えの人たちに囲まれていると、その意見がどんどん強化され、やがて極端になっていく。外部からの異なる視点が入ってこないため、客観性を失ってしまうんです。

考えすぎも、まさにこれと同じ構造を持っています。

けれども、「考えすぎる」と逆に問題が生まれてしまう。心配、不安、ストレス、反すう、強迫観念……考えすぎるところうした状態に陥りやすい気分が落ち着かないこのうえ何の役にも立たない。考えれば考えるほど泥沼にハマり、堂々めぐりが続き、余計な考えが次々と頭に侵入してくる。

心配事や不安が頭の中でぐるぐると回り続け、考えれば考えるほど泥沼にハマっていく。余計な考えが次々と頭に侵入してきて、本来立ち止まるべきではない状況に陥ってしまう。

本書では「ついつい考えすぎてしまうクセがある」と自覚するのは難しいと指摘されていますが、これは自分の思考パターンが当たり前すぎて、客観視できなくなっているからなんです。

トレントンは、この思考の無限ループを「ネガティブ思考でよくよく考え続ける『思考の無限ループ』から抜け出せず、必要以上に『不安』や『恐れ』を抱きすぎる」状態と定義しています。ここで重要なのは、不安や恐怖を「明らかにする」ことです。

不安は恐怖を「明らかに」する。目覚しているん人は、自分の心理について無理にそれを抑えようとするのではなく、心身の健康などは考えすぎを助長する。考えすぎているときに無理にそれを抑えようとすると、心理的な問題になる。そして、抑えようとすればするほどひどくなってしまう。これは逃れられない状況に見えるが、そんなことはない。この章以降では、この負のサイクルから抜け出す具体的なテクニックを紹介する。

無知は恐怖を助長するが、自分の心理について無理にそれを抑えようとするのではなく、まずは認識することから始まるわけです。

さらに本書では、認知行動療法の視点から「6つの認知の歪み」が紹介されています。これは、多くの人が複数の認知の歪みを同時に抱えているという前提に立っています。

1つ目は「オール・オア・ナッシング思考」。物事を白か黒かで判断し、中間のグレーゾーンを認めない思考パターンです。

2つ目は「過度の一般化」。一度の失敗や悪い出来事を、すべての状況に当てはめてしまう傾向です。

3つ目は「個人化」。他人の行動や出来事を、すべて自分のせいだと考えてしまうパターン。

4つ目は「内在化」または「外在化」。内在化とは、出来事の原因を自分にあると誤解すること。一方、外在化は自分の責任を他人のせいにすること。どちらも人間の主体性を奪い、無力感を生じさせるため、注意が必要なんです。

5つ目は「ネガティブバイアス」。ポジティブな出来事よりも、ネガティブな出来事に過度に注目してしまう傾向です。

6つ目は「感情的推論」。自分の感情を事実として扱ってしまうパターンです。

これらの認知の歪みは、思考のエコーチャンバーを形成する要因になります。自分がどのパターンに陥りやすいかを知ることが、考えすぎから抜け出す第一歩なんです。

とらえ方を変える技術──外在化という処方箋

本書が提示する解決策の核心は、「現実の『そのもの』ではなく現実の『とらえ方』を変えればいい」という認知行動療法のアプローチです。これは古代ギリシャのストア派哲学にも通じる考え方で、出来事そのものではなく、それをどう解釈するかが私たちの感情を決定するという思想です。

認知行動療法では、現実「そのもの」ではなく現実の「とらえ方」を変えようとする。

トレントンも結局、ストア派の教えに近い立場を取っているんですね。出来事をコントロールすることはできなくても、それに対する自分の反応はコントロールできる。この視点の転換が、考えすぎから逃れる鍵になります。

ちなみにストア派の教えについては、こちらの1冊「【ストイックは、生きやすい?】ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術|ライアン・ホリデイ」もぜひご覧ください。おすすめです。

ストレスマネジメントについても、本書は明確な定義を示しています。

ストレスマネジメントとは、「不安」を招く解釈や意味づけを加えずに、ストレスの対象を客観的に「認識」すること。そうすれば、逃げられないストレスに対して、自分の中の取るべき適切な対処行動を冷静に選べる。

つまり、ストレスに適応するには、自分を強くする方法を見つけることでもあるが、それは、ストレスに直面した時に対処できる視点を身につけることなんです。

ここで重要なのが「外在化」の技術です。頭の中だけで考え続けていると、思考は主観的で混沌としたままです。それを目に見える形にすることで、初めて客観的に観察できるようになる。

本書が推奨する具体的な方法の一つが「ジャーナリング」です。

言葉にして書き出すこと(ジャーナリング)である。

さらに、感謝日記の効果についても触れられています。

「感謝日記」を続けることで、物事のポジティブな面に目が向くようになり、毎日の経験が違ったものに感じられる。

ジャーナリングは人を強くします。なぜなら、頭の中で増幅されていた不安や悩みが、紙に書き出された瞬間に、ただの言葉の羅列に変わるからです。それを読み返すことで、「なんでこんなことで悩んでいたんだろう」と気づくこともある。

これは、ブランディングやプランニングの仕事でも全く同じ構造なんです。ブランドは目に見えません。企業の価値観、ビジョン、顧客との関係性──これらはすべて抽象的な概念です。だからこそ、見える化して、手に取れるような共通認識の基盤を作ることが欠かせないんです。

言語化されていないブランドは、関係者それぞれの頭の中で異なるイメージとして存在しています。それでは方向性が定まらない。プランニングも同じで、頭の中にある戦略を具体的な言葉や図に落とし込んで初めて、チーム全体で共有できる資産になります。

本書では、自分への思いやりを持つことの重要性も強調されています。

自分の認知のパターンに気づき、そこに歪みを発見したら喜ぶべきだ。

自分を責めるのではなく、観察する。認知の歪みに気づいたら、それは成長のチャンスだと捉える。この「頭に増幅する『セルフトーク』の犯人を見つける」姿勢が、考えすぎの悪循環を断ち切る鍵になります。

セルフトークには、中立的なもの(たとえ注目しても観察するもの)もあれば、ポジティブなもの(幸せで力を与えてくれるなど感情を動かすもの)、ネガティブなもの(ひどい気分にさせるもの、本質的に苦痛を与えるもの)もあります。自分がどのセルフトークに支配されているかを知ることが、思考パターンを変える第一歩なんです。

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時間を取り戻す──主体性の回復

考えすぎから逃れるための最終ステップは、自分の時間を取り戻すことです。多くの人にとって、優れたストレスマネジメントとは、優れたタイムマネジメントなんです。

多くの人にとって、優れたストレスマネジメントとは、優れた「タイムマネジメント」である。

時間の使い方を変えなければ、どれだけ思考パターンを改善しても、また同じ状況に戻ってしまいます。なぜなら、自分の時間を意識的に管理しないと、人のための時間ばかりで1日が埋まってしまうからです。

本書が提案する具体的な方法が「タイムブロッキング」です。

「タイムブロッキング」では、1日の中である決まった時間帯に、複数の作業を同時にやったりしない。事前にスケジュール化しておくので、意志が弱い人でも優先順位の高い仕事から着手できる。静かに作業や思考に浸りたいときにもよく合うからそれぞれの作業効率を高める(一定時間内の生産性が上がる)だけでなく、ストレスや心理的・感情的な問題を減らせる。ディープワーク対策にもなるのだ。

これは単なるスケジュール管理ではありません。「重要」かつ「緊急」なタスクと「重要」だが「緊急」ではないタスクを区別し、後者に時間を割くための仕組みなんです。

多くの人は、緊急なタスクに追われて1日を終えます。メールの返信、突発的な会議、他人からの依頼──これらはすべて「緊急」に見えますが、本当に「重要」なのか?自分の長期的な目標や成長につながっているのか?

タイムブロッキングは、この問いに答えるための技術です。

自分にとって本当に重要な作業──たとえば戦略的な思考、創造的なプロジェクト、スキルの習得──のための時間を、あらかじめカレンダーに確保してしまう。そして、その時間は何があっても守る。

これは、自分の人生をコントロールしているという感覚を取り戻すことでもあります。本書では「5つの態度」として、以下の視点が提示されています。

  • 1つ目の態度は、「コントロールできないことではなく『コントロールできること』に集中する」こと。
  • 2つ目の態度は、「できないことではなく『できること』に集中する」こと。
  • 3つ目の態度は、「持っていないものではなく『持っているもの』に集中する」こと。
  • 4つ目の態度は、「過去や未来ではなく『現在』に集中する」こと。
  • 5つ目の態度は、「ほしいものではなく『必要なもの』に集中する」こと。

「反すう」とは、不安で非生産的な考えすぎのこと。他のタイプの不安と同じく、「気づき」と「心理的距離を置くこと」で対処できる。

これらの態度は、すべてストア派の思想に通じています。外的な出来事に振り回されるのではなく、自分がコントロールできる領域に焦点を当てる。持っていないものを嘆くのではなく、持っているものに感謝する。過去を悔やんだり未来を心配したりするのではなく、今この瞬間に集中する。

外在化とは、問題を自分の外に出すこと。問題を抱えているのは間違ったことでもないし、悪いことでもない。問題を抱えているこそで、自分自身について語る方法を考えたり、意味のある変化を起こしたりできるのだから。そして何より自分の時間を作ること、それを意識的に行わないと人のための時間ばかりで1日が埋まってしまうことです。

問題を外在化し、自分の時間を意識的に設計する。これが考えすぎから逃れ、主体性を回復するための最終ステップなんです。

プランニングの世界でも、時間の使い方は死活問題です。
クライアントからの急な依頼、チーム内の調整、日々の業務──これらに追われていると、本当に重要な戦略的思考の時間が失われてしまいます。だからこそ、タイムブロッキングのように、自分の時間を守るための仕組みが必要なんです。

考えすぎを止めるとは、思考を放棄することではありません。
むしろ、質の高い思考をするための環境を整えることです。そのためには、時間という資源を、自分の意志で配分する必要がある。それが、主体性の回復であり、人生のコントロール感を取り戻すことなんです。

まとめ

  • 思考のエコーチャンバー──考えすぎの正体――考えすぎは、思考のネガティブなスパイラルへと自分を引き込んでしまうため、どこかのタイミングで、考えすぎな自分に気づくということが必要です。
  • とらえ方を変える技術──外在化という処方箋――まずは、セルフトークをしてみながら、自分の思考に客観的になることです。
  • 時間を取り戻す──主体性の回復――時間という資源を、自分の意志で配分するということ、それが自分の思考と行動を作り出すヒントを絶えず提供してくれます。
ニック・トレントン,児島修
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