- 人の特性をより良く理解するには、もしかしたら、負の側面を理解することも大切かもしれません。
- 実は、誰しも少なからずダークな要素はあるかもしれないのです。
- これは、ファクター「D」として要素分化された指標により見分けることができます。
- 本書は、誰もが持ちうるダークサイドな一面について、理解を深める1冊です。
- 本書を通じて、明暗両局面に触れることで、人を見つめることができます。
ファクター「D」とは?
ドイツの心理学者モシャゲンやオランダのゼトラーらは、ダークな性格の特徴を集約することで、正確のダークな側面を統合して見出すことができる因子を見出しました。
これは、ダークの頭文字をとって単に「D」とも呼ばれています。
「頭文字に、D」とくれば、とあるIPを思い出しますが、ここはグッと我慢して、ダークサイドのストーリーに耳を傾けていきましょう。
Dが高い人は、他の人を犠牲にしても自分の利益を最大化することを目指すようです。ここでの利益というのは、単に具体的なものや金銭だけを指すのではなく、地位や権力などの社会的な立場、優越感などの楽しさ・快楽も含まれます。
他者から直接的に何かを得る行為だけが含まれているわけではありません。
他の人に危険が迫っていることを警告せずに、その人が危険な目にあうことを見逃して、自分が優位な立場に立つことも含まれてきます。
また、Dの人は、ものごとに対してもフィルターをかけてみます。自分に甘く、人に厳しくという感じです。
Dで表出する性格傾向は次の9つに分類され、これらは「ダーク・コア」と呼ばれているそうです。
1)エゴイズム:他者の幸福を犠牲にしても、自分の利益を追求する。
2)マキャベリアニズム:戦略的に、自分の利益のために無慈悲に他者を利用する。
3)道徳不活性化:道徳に反する行動に対して罪の意識を感じない。
4)ナルシシズム:自分自身を誇大な方向へと導くすべてを取り入れようとする。
5)心理的特権意識:他の人よりも多くの利益を受ける件k利があり、特別な扱いを受けるべきだと考える。
6)サイコパシー:感情反応に欠け、冷淡で、自己コントロールが欠如し、衝動的な状態である。
7)サディズム:意図的に他者に肉体的・精神的な苦痛を与える。
8)利己心:物質、金銭、地位、承認、成績、幸福など社会的に望ましい状態である利益を追求する。
9)スパイト:悪意を持って他者を困らせたり傷つけたりする。
しかしなぜ、こんなにもダークサイドの話や、名称というのは、「かっこいい」印象を与えるのでしょうか。
そう言えばプロレスも、ヒールが同じようにファンを集めたりするし、スターウォーズのダース・ベイダーやシスだってかっこいいし、人の中には、潜在的に悪い側面に呼応してしまうものが誰にしてもあるのかもしれません。
ネットフリックス制作の日本のドラマ『地面師たち』が今、話題です。これは2023年に公開された実際の不動産詐欺に関する実話に基づいたドキュメンタリーです。このシリーズは、「地面師」と呼ばれる不動産詐欺グループによる巧妙な詐欺事件を扱っています。地面師たちは、他人の土地を自分のものだと偽って売却するという大規模な詐欺を行いました。
日本社会に大きな衝撃を与えた、不動産取引の安全性や法制度について議論を巻き起こす結果となった実際の事件を取り上げているだけではなく、本編の中では、金、暴力、性、ドラッグ、快楽、欲望、トラウマなど人間の負の側面がリアルに描かれて、横糸をなすことで見事な作品に仕上がっています。
地面師という巧妙な手口を使う詐欺集団と騙される側、そして、こうした構図を追いかける社会権力の象徴としての警察が互いに接点を持ちながら、人間の性を描いている様子から、まさに上述の9つの「D」の特性「ダーク・コア」のリアルを見つめていくようです。欲望が極限に到達すると、人は究極的に悪くなることができるというメッセージも受け取れるような気がします。
でも、そうした欲望には、際限がないという事実から、通奏低音のような虚しさがストーリーにまた、ぐっとした深みを与えます。
ダークサイドは評価されやすい?
「ダーク・コア」がややこしいのは、それが一見評価しやすいポイントとして、第一印象を与えてしまうことです。
例えば、サイコパシーの高い人物は冷静で自信にあふれた振る舞いをするために魅力的で、巧みな話術で自分のペースに巻き込む傾向があります。あるいは、ナルシシズムの高い人物も自信満々で、かつ整った外見を持っていることが多く、初対面の人からは信頼できそうな人物にみられるかもしれません。さらには、マキャベリアニズムに至っては、交渉や採用の場面において、さまざまな手段や戦略を用いて、目的を達成します。
まさに、一見、とても優秀で魅力的な人物として映るのです。
結果的に、ダークな性格の持ち主は一定の確率で企業の中に入り込んでくると予想されるのです。
さらに、組織側からこれらの人物をみていくと、非常な「リーダーシップ」を持つと認識されます。一見冷静で、物事に動じないような態度を持っている人物であるかのように見えるからです。人を巧みに操り、はっきりと決断を下し、上の立場から人々を動かすという特徴は、リーダーや経営者に求められる特徴でもあるからです。
そもそもが、ビジネスそのものが求める特性が、そうしたダークサイドを少なからず必要とするということも言えそうです。
結果的に、「D」を持つ人というのは、非常に魅力的であったり、優秀であったり、そうした評価を隠れ蓑に、実は身近にたくさん潜んでいるのです。
自分の中のダークを感じる?
もしも、自分の中にダークな一面を見つけてしまったらどうしたらいいでしょうか?大切なのは、自分の目標や欲求の正体に目を向けてみることです。ダークな性格の特徴であり、さまざまな問題を引き起こす要因として、「自分自身のためだけの利益を最大化」してしまうということがあります。
しかし、自分が社会(会社組織)で生きているのであれば、それでは長い関係性を築くことはできません。大切なのは、自分の利益と会社組織等、自分が所属する集団の利益をリンクさせることです。
また、ダークな性格を持つ人は、集団の人間関係をかき乱してしまうことで、周囲との不協和音を生み出してしまいがちです。こうした状況が続くと、組織から排除を受けてしまいます。また一方で、組織側は、画一化されたメンバーで構成されるようになり、レジリエンスを阻害してしまいます。
ある程度の複雑性は、組織にとって不可欠です。
ましてや、変化が激しいこれからの時代の会社の舵取りでは、多様性や複雑性を内包しているということは、とても大切な要素になります。
ダークな性格が常に代謝や集団のためを思う行動に結びつくわけではありませんが、うまく工夫することで組織や集団に役立つ仕組みを考える余地は存在すると言えるでしょう。
さらにダークを活かすためには、さらに上位のダークなマインドセットを備えて、その環境を活かすのであると捉えてみることがいいのかもしれません。
そんなことができるのかはさておき、「毒をもって毒を制す」とはよく言ったものです。さらに上手に行くことで、自らの目的を達成する思考も時に必要なのかもしれません。
まとめ
- ファクター「D」とは?――ダークサイドを判断する性格要因です。
- ダークサイドは評価されやすい?――狡猾で堂々とした態度が、一見、非常に魅力的に映ります。
- 自分の中のダークを感じる?――毒をもって毒を制すスタンスで、ダークを活かし多様性を内包しよう。