「読む」のではなく「推論する」――AIが教えてくれた“人間の知性の核心”とは!?

「読む」のではなく「推論する」――AIが教えてくれた“人間の知性の核心”とは!?

増田みはらし書店・店主の増田浩一です。

先日、手書きのPL(損益計算書)をスキャンしてAIに読み取らせたところ、売上高が「645,104」と表示されました。

しかし、その数字を見た瞬間に「あれ?」と違和感を覚えたのです。前年同期比で見ると、明らかに不自然な伸び率だったからです。

改めて手書きの原本を確認すると、実際は「426,104」でした。手書きの「4」や「2」や「6」が似ていたせいで、AIが誤読していたのです。

AIに何度もそれを指摘しても、わからないというのです。なぜ、言語に大変明るいAIが、人の手書きになった途端、読解がむずかしくなるのか・・・。

AIに実際に聞いてみると、面白いことに、AIと人間の読解には大きな差があることを教えてくれました。

私たちは「読んで」いるのではなく「推論して」いる

たとえば、こんな文章を読んだことはないでしょうか?

たぶん、こん○○ちは。きょ○は○○いい○てん○きですね。

これを私たちは、

たぶん、こんにちは。きょうはとてもいいてんきですね。

と、補って読めてしまいます。

なぜでしょうか?

それは、私たちが「文法」「語彙」「言い回し」などの“スキーマ(知識の枠組み)”をもとに、欠けた情報を補っているからです。スキーマとは、過去の経験や学習から構築された「こういう時はこうなるはず」という予測のパターンのようなもの。

つまり、「文字を読む」というよりも「意味を予測して埋めている」──“推論”しているのです。

OCRが間違えるのは、単に字形の一致に頼っているからであり、「この文脈で4が来そう」といった期待や「前年と比べて自然か」といった整合性チェックができないためです。

*OCR(オーシーアール)とは、Optical Character Recognition/Reader(光学文字認識)の略で、画像データに含まれる文字をテキストデータに変換する技術のことです。スキャンした文書や画像ファイルから文字を認識し、編集可能なテキストに変換することで、業務効率化や情報活用に役立ちます。

もちろん文脈の中での推論もありますが、人の文字の形のゆらぎを人は補正して見られるという推論もあります。AIにとっては、手書きの「4」や「2」や「6」が似ているように見えても、それらを身体を使って書いている人同士であれば、よっぽど雑に書かれていなければ、どの数字なのかを特定することはできます。

でも、AIにはそれがわからないんですね。彼らは、文字を手書きしたことがないですからね。

人の認知の曖昧さと、柔軟さについて、とても興味が湧いてきます。

スキーマは世界の見え方を決める

私たちの思考や読解は、“意味の編集”のようなものです。

本を読むときも、人と話すときも、誰かのプレゼンを聞くときも──私たちは常に、

  • これは何について語っているのか?
  • 自分の知っている何と関係があるか?
  • このあと、何が来るだろう?

といった「問い」を内面で発しており、その問いに答えるように情報を編集して受け取っています。

つまり、“読む”とは、「問いを立てて、意味を当てにいく力」であり、その“当てる精度”決めるのが、自分の中にあるスキーマ(=知識・経験・世界観)なのです。

そしてそのスキーマは、読む本や出会う人、体験する出来事によって少しずつ書き換えられていきます。

だからこそ、学び続けること、生きて体験すること、問いを持ち続けることが大切なのです。

経営・対話・読書──すべては「意味の再構成」である

「読解力」とは単なる語彙力や知識量ではありません。むしろ「問いを持ち、推論し、意味を編み直す力」に近い。

たとえば、経営判断もそうです。

不確かな情報を前に、何が本質かを見抜き、整合性のあるストーリーに再構成して決断する。

広告の現場でも同様です。

クライアントが「売上を上げたい」と言った時、その言葉の背後にある真の課題──市場認知の不足なのか、ブランドイメージの問題なのか、商品力の課題なのか──を文脈から推論して読み解くことが重要になります。

対話もそうです。相手の言葉の背後にある意図や感情を読み解き、文脈を補って反応する。

読書もそうです。書かれていない前提や含意を汲み取り、自分の経験と照らし合わせて理解を深める。

すべては「不完全な情報を、“意味で”つなぎ直す営み」なのです。

あなたのスキーマは、今日どんな世界を見せてくれたか?

AIが読めなかった数字を、私たちが自然に読めるのは、私たちの中に「期待」や「経験」や「文脈」というスキーマがあるからです。

そしてそのスキーマが、今日もあなたの世界の見え方を形づくっている。

だからこそ、自らのスキーマを育てること──それは、よりよく生きるための準備とも言えるのではないでしょうか。

読書をし、問いを持ち、経験に意味を与えていくこと。それは、「読む」力ではなく、「推論する」力を育てること。そしてそれは、AI時代を生きる私たち人間にとって、決して代替されない知性の核なのかもしれません。

今日一日を振り返って、あなたはどんな「推論」をしていたでしょうか?
そして明日は、どんな新しい問いを立てて世界を見つめてみますか?

AIを理解しながら、人を俯瞰してみるには、こちらの1冊「Whyこそが、大切に!?『AIに書けない文章を書く』前田安正」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。

それでは、また来週お会いしましょう。

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