Whyこそが、大切に!?『AIに書けない文章を書く』前田安正

AIに書けない文章を書く
  • AI時代に文章を書くということは、どんな行為となるでしょうか。
  • 実は、Whyの行間を紐解くということかもしれません。
  • なぜなら、Whyは身体や関係性も含めた身体性によってもたらされるからです。
  • 本書は、AI時代における言葉や文章の意味を考える1冊です。
  • 本書を通じて、人たる所以(ゆえん)を感じるヒントを得ます。
前田安正
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文章とは?

文章とは、『大辞林』によると、「書き手の思考や感情がほぼ表現し尽くされているまとまりの統一ある言語表現」とされています。

つまり、AIには思考や感情がないので、文章は書けないのです。

というある種のAIに関する結論からスタートする本書ですが、一方で、そもそも人が表現するということ、文章としてしたためることの意義や意味、行為について考えるヒントを多く提供してくれます。

「ほぼ表現し尽くされている」ということからして、完全には常に表現できない、というのが文章の特徴の一つでもあると読むこともできるでしょう。

言葉は不完全なものです。明確な定義があるようですが、実はその意味合いは、人によって千差万別にゆらぎます。

また、言葉は、完全にその著者の気持ちや状況をすべてを代替できるものでもないというのも事実です。

媒体に変換するときに、その大部分をカットしてしまっているからです。

だからこそ、完全にその著者の思いや感情をその文章の中に載せることはできるわけがないし、それを読み取るときにも誤差や勘違いが生じてしまう、というのが文章のそもそもの現実です。

一方で、私たちは、その余白とも言えるようなクッション作用があることで、文章に多くを感じることができます。

ストーリーへの共感が根拠に

それがストーリーへの共感です。

ストーリーへの共感は、上記の余白、クッション地帯でおきます。

まるで自分がその著者の体験を擬似的に追体験したように、その著者の気持ちに入っていく余地を与えられているように、その状況が自分の体験とシンクロするように、あいまいさがあるからこそ、他者との間ののりしろを見つけることができるのが、文章の特徴です。

僕たちが経験する全ては、現実に即したストーリーがあります。そのストーリー自体は、僕たちが生きていくうえで、とても大切な情緒の一つとして育まれます。

私たちが目にしているものの実態は、実は目に触れていないところにある可能性があるということです。

ストーリーとは?

ChatGPTを始めとした生成AIが人に変わってものを書く時代になりました。さらに生成AIが進化する中で、AIが書いた文章が世界に溢れてくるようになるでしょう。

ものを書くという行為が、AIにどんどん代替されていく感覚になりますが、どこまでいってもAIが書く文章は、文章ではないというのが著者のスタンスです。

そこに決定的に欠けているのが、著者の思いや気持ち、体験であるからです。

AIは残念ながらどこまでいっても、個人の思考や感情に立ち入ることはできずに、文章を文章たらしめる根幹にふれることはできないのです。

一方で生成AIが得意とするのは、すでに活字としてまとめられネット上に公開されている文字群の中から最適解を見出すというアクションです。

この卓越した能力により、まとまった文字を執筆するヒントを人に投げかけてくれる最高の相棒になるでしょう。

でも大切なのは、常に自分という当事者の思いや感覚や感性を表現できているかという感覚です。

そうでなくては、自分というものを認めずに、生きづらくなってしまいます。

いくらAIがあなたの言葉を上手に彩ったとしても、あなたの中に確かな感覚や感性、あるいは体験にまつわる想いが無くては、それは意味のなさないものになるのです。

大人になっても、手の届かない山の上に宝物があるはずなのに、それを経験や知識でわかったような気になっています。

それは感性の摩滅につながり、無感動と無関心を育んでしまうかもしれないのです。

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Whyを見出すには?

人の感性や人の体験、想いによって、もたらされるのが意志であるとして、その意志を互いに確認する媒体としての文章を考えた時、実は文章というのは、Whyをいかに託せるか?ということが、表現の根幹になるように思います。

以下の文章を比較してみましょう。

  • きのう僕は動物園でライオンをみました。
     ↓
  • きのう僕は学校の遠足で動物園に行きました。真っ先にライオンをみました。
     ↓
  • きのう僕は学校の遠足で動物園に行きました。真っ先にライオンをみました。『ジャングル大帝』という本が好きだったからです。
     ↓
  • きのう僕は学校の遠足で動物園に行きました。真っ先にライオンをみました。『ジャングル大帝』という本が好きだったからです。それは6歳の誕生日に父からプレゼントされたものです。
     ↓
  • きのう僕は学校の遠足で動物園に行きました。真っ先にライオンをみました。『ジャングル大帝』という本が好きだったからです。それは6歳の誕生日に父からプレゼントされたものです。真っ白いライオンのレオが、仲間たちと協力して生きていく姿に感動したからです。
     ↓
  • きのう僕は学校の遠足で動物園に行きました。真っ先にライオンをみました。『ジャングル大帝』という本が好きだったからです。それは6歳の誕生日に父からプレゼントされたものです。真っ白いライオンのレオが、仲間たちと協力して生きていく姿に感動したからです。しかし、実際に見たライオンは白くありませんでした。しかも、木陰で寝てばかりだったので、がっかりしました。

Whyを問いかけていくことで、ひとつのつながりを持った文章になり、そして、この著者の背景を想像できるものになりました。

ここでなぜ、このようにストーリーを私たちは、感じることができるのか?そこには3つの要素が関連しているからです。

それが、「状況」「行動」「変化」です。

「状況」とは、ライオンを見たという事実です。
「行動」とは、学校の遠足で、とか、真っ先にという、「みた」という行為を具体的に説明することです。
さらに、「変化」とは、期待していたものと異なる気持ちを表現していることです。

これら3つをまとめて綴ったものが、ストーリーと呼ばれるものになります。

人はいまの状況があって、それに対して行動し、変化が生まれます。その変化が新たな状況となって次の行動を生み、変化をつくります。人はこうしたスパイラルを経ながら進んでいきます。

本や映画で描かれるストーリーに心動かされるのも、上記の「状況」「行動」「変化」が満たされて、人に想像ののりしろを提供するからです。

ことばを情報に変えるということは、「状況」「行動」「変化」を書くことなのです。どこかに出かけたこと(状況)だけを書いても、第三者には出かけた意味や理由がわかりません。「行動」「変化」にこそ書き手の思いが表現されます。そこに、読み手の知りたい情報があります。

まさに、これがAIが本当の文章を書けない理由です。固有の体験と想いに紐付けができないものは、文章とは言えないのです。

AIについては、こちらの1冊「AIはパートナー!?『AIにはできない 人工知能研究者が正しく伝える限界と可能性』栗原聡」をご覧ください。おすすめです。

そして言葉については、こちらの1冊「【書くことは、考えること!?】書くとはどういうことか|梶谷真司」をぜひご覧ください!

もしかすると、他者とともにあるということなのかも?そのアイデアについては、こちら「間(ま)を意識せよ!?『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』井上慎平」とこちら「【人は、なぜ共に働くのか?】働くということ 「能力主義」を超えて|勅使川原真衣」の1冊をぜひご覧ください。

まとめ

  • 文章とは?――体験が常に紐づいているものです。
  • ストーリーとは?――主に、著者の想いにシンクロして触れることです。
  • Whyを見出すには?――「状況」「行動」「変化」を満たし、共有し、スパイラルを描きましょう。
前田安正
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