自らの意志を生きる!?『ティール組織 入門[新訳イラスト版]――これからの人・組織・働き方の話をしよう』フレデリック・ラルー

『ティール組織 入門[新訳イラスト版]――これからの人・組織・働き方の話をしよう』フレデリック・ラルーの書影と手描きアイキャッチ

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール

【本書の要約】組織変革は個人の内側から始まる。ティール組織への道筋を示す実践的入門書。「この判断は正しそうか?」という内なる声に従い、自分の意志を取り戻すことで、信頼に基づく自主経営が生まれ、全体性(ホールネス)が回復する。フレデリック・ラルーが描く、階層ではなく生命体として進化する組織の姿を、イラストとともに理解できる一冊。

  • あなたの組織では、どれだけの人が仕事に心から愛着を持っているでしょうか。
  • 実は、2013年のギャラップ社の調査によれば、仕事や職場に愛着を抱いている人は全体のわずか13%に過ぎません。残りの87%は無関心か、反感さえ抱いているんです。この数字が示しているのは、組織の構造的な問題ではなく、私たち一人ひとりが「本来の自分」を職場で封印してしまっている現実です。
  • なぜなら、多くの組織が「人を信頼しない」という前提の上に成り立っているからです。管理と統制、承認と報告、ルールと監視──これらはすべて、「社員は放っておくと正しいことをしない」という疑念から生まれています。その結果、私たちは職場で仮面を被り、内なる声を抑え込み、誰かの指示を待つようになってしまうんです。
  • 本書は、そうした従来型組織から、生命体のように進化し続ける「ティール組織」へと転換するための実践的な入門書です。著者のフレデリック・ラルーは、世界中の先進的な組織を研究し、階層構造に頼らず、自主経営・全体性・進化する存在目的という3つのブレイクスルーによって機能する組織の姿を明らかにしました。
  • 本書を通じて、組織変革は壮大な計画や構造改革から始まるのではなく、一人ひとりが「この判断は正しそうか?」という内なる問いに従い、自分の意志を取り戻すことから始まるのだと気づかされます。個人が自分らしく活動し、感性に従って行動することで、組織全体が自然とホールネス(全体性)を取り戻していく──そのプロセスこそが、ティール組織への道なんです。

フレデリック・ラルーは、ベルギー出身の組織研究家です。

マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントとして活躍した後、組織変革の分野に転じました。従来の階層型組織に限界を感じ、世界中の革新的な組織を徹底的に調査し、その実践から普遍的な原理を抽出することに情熱を注いできました。

ラルーが本書で提示するティール組織の概念は、単なる経営理論ではありません。彼自身が、人間の意識の進化と組織のあり方が密接に結びついているという信念のもと、数年間にわたって現場に足を運び、実際に機能している組織の声に耳を傾けた成果です。

本書の特徴は、抽象的な理想論に終わらず、具体的な実践例と仕組みを豊富に紹介している点にあります。助言プロセス、全体性を育む場づくり、存在目的への耳の傾け方など、実際に組織で使える手法が丁寧に解説されています。

ラルーは、組織変革の本質は構造を変えることではなく、一人ひとりが内なる声に従い、本来の自分を取り戻すことにあると説きます。その思想は、ビジネスの枠を超えて、私たちの働き方と生き方そのものを問い直すものとなっています。

信頼は「人を信じる」決断から生まれる

ティール組織への転換を考えるとき、多くの人は新しい組織構造や仕組みの導入を思い浮かべます。しかし本当の出発点は、もっと根本的なところにあるんです。それは「人を信頼する」という決断です。

本書が指摘するように、ティール組織は「社員は信頼に値し、正しいことをしたいと願っている」という前提に立っています。これは単なる理想論ではありません。従来型組織が抱える深刻な問題──エンゲージメントの喪失──の根本原因が、この前提の欠如にあるからです。

ギャラップ社の調査では、仕事や職場に愛着を抱いている人はわずか13%でした。残りの63%は無関心、24%は反感を抱いています。この数字が示しているのは、組織が人を信頼していないという現実です。管理職による監視、細かな承認プロセス、がんじがらめのルール──これらはすべて「社員は放っておくと正しいことをしない」という疑念の表れなんです。

本書では「恐れの共謀」という表現が使われています。組織は従業員を恐れ、従業員は組織を恐れている。この相互不信が、職場で誰もが仮面を被る状況を生み出しています。大組織のリーダーは全能に見せようとし、「自分の人生はすべてが順調で、成功のゲームの勝者である」と他人から見られたいと思っています。一方で、従業員も本当の自分を隠し、組織が期待する「仕事用の自分」を演じ続けるんです。

しかし、信頼を出発点にすると何が起こるのでしょうか。本書が紹介する組織では、階層構造による指揮命令ではなく、「助言プロセス」という仕組みが機能しています。この原則は驚くほどシンプルです。「誰でもどんな決定でも行える。ただしその前に、その問題に関する専門知識を持つ人と、すべての決定の影響を受ける関係者に助言を求めなければならない」

人々がこの助言プロセスを非常に真剣に受け止めるのは、いつでも「助言を求める側」にも「助言をする側」にもなる可能性があるからです。

この仕組みの美しさは、コンセンサスを求めないことにあります。全員の希望を取り入れた妥協案ではなく、助言を真剣に検討したうえで、自分が最善だと思う行動を選択できるんです。決める側も、助言する側も、互いに入れ替わる。その対等性が、信頼を育んでいきます。

信頼は、制度や仕組みだけで生まれるものではありません。それは「人を信じる」という一人ひとりの決断から始まります。あなたが同僚を信頼し、同僚があなたを信頼する。その積み重ねが、組織全体の土台を変えていくんです。

内なる声に従う勇気が組織を変える

ティール組織の本質は、意思決定の基準が変わることにあります。従来型組織では、外的な基準──上司の承認、業績目標、市場の評価──が判断の軸でした。しかしティールでは、その基準が内側に移るんです。

本書では、こう問いかけられています。

「この判断は正しそうか?」
「私は自分自身に正直だろうか?」
「これは、私がなりたいと考える理想の自分と一致しているだろうか?」
「私はこの世界の役に立っているのだろうか?」

この問いは、ビジネスの文脈では異質に聞こえるかもしれません。しかし本書が指摘するように、ティールの世界観では、世界は「真の自己を発見し、それに向かって旅をし、生まれながらに持つ独自の可能性と才能を自ら引き出せる場所」と見られているんです。

従来の組織では、「誰もが成功を追求すべきだし、なりたいものには何にでもなれる。ただしそれには覚悟が必要だ」という外的な基準が支配的でした。しかしティールでは、自分が何になるべきかについての既成概念を手放し、自分の内なる声に耳を傾けて人生が導く方向へ進もうとします。これは「コペルニクス的転回」だと本書は表現しています。

この転回を可能にするのが、全体性(ホールネス)の回復です。職場には、誰もが仕事用の仮面を被るように促す暗黙のプレッシャーが存在します。私たちは誰もがエゴを持っています。「成功したい」「認められたい」「他人から良く見られたい」「会議で議論に勝ちたい」といった欲求です。と同時に、もっと深いところで、自分の人生や他の人々、そして地球に対する心の底からの希望も持っているんです。

私たちは心から全体性を渇望するようになります。私たち自身、自分を取り巻く人々、そしてあらゆる形態の生命と自然とのつながりを再び強く求めるようになります。その渇望を突き動かすのは、「私たちは自然を大切にすべきだ!」という道徳的な義務ではありません。私たちはみな深いところで結びつき、深く一体となっているという実感から、全体性を希求するのです。

職場を全体性を実現するための場所にすること。これは単なるウェルビーイングの話ではありません。本書が示すように、「あなただけでなく、同僚全員が愛情と思いやりを持って職場で振る舞っている様子」を想像してみてください。もし私たち全員がこうした状況で働けたら、仕事をもっと楽しめるはずです。私たちの人間関係や生活も大きく変わるのではないでしょうか。

自分自身をすべてさらけ出して人前に出ることは、高揚感がある一方で、弱さを感じさせるので安心して過ごせる空間が必要です。だからこそティール組織では、内省のための空間、物語を共有する場、ミーティングの質にこだわるんです。

ミーティングは、人間性の最も良い面が引き出される場にもなりえます。そこは、真の協力が引き出され、誰もが自分の強みを活かして貢献し、自分が本当に大切に思っていることについて話し合える場にもなりえます。

内なる声に従う勇気を持つこと。それは個人の成長であると同時に、組織変革の核心なんです。あなたが自分に正直になり、本当の自分で働き始めたとき、周囲の人々もまた仮面を脱ぎ始めます。一人の変化が、波紋のように広がっていくんです。

感じ取る力を解放すれば、組織は生命体になる

ティール組織を理解する最も本質的な比喩は、組織を生命体として捉えることです。生命は、進化に向かってありとあらゆる知恵を働かせながら、底知れぬ美しい生態系を維持しています。生態系は、全体性、複雑性、そして高い意識へと常に進化し続けています。自然は、自己組織化に向かうあらゆる細胞や生命体の欲求につき動かされて、どこかで絶えず変化しています。そこには中央からの指揮も統制もありません。

この自然の原理を組織に適用すると、驚くべきことが起こります。本書が指摘するように、複雑性が増すと、ピラミッド構造は崩れます。どんなに賢くても、トップにいる少数の人々がすべてを把握し、複雑な事態に十分に対処する余裕はありません。

考えてみてください。人間の脳には850億もの細胞がありますが、経営会議も中間管理職も存在していません。鳥の群れは互いにぶつかり合うことはありません。階層ではなく調整があるからこそ、鳥の大群は柔軟性と安全を保っていられるんです。森林は極めて複雑なシステムです。微生物から巨大な木まで、数十億もの生物が住んでいます。にもかかわらず、システム全体が驚くほど力強く協力し合っています。

では、組織が生命体として機能するために必要なのは何でしょうか。それは「感じ取る力」です。本書では、ティール組織を実践しているパイオニア企業がよく使う言葉として紹介されています。

自主経営組織では、だれもが感知器になり、変革に着手できます。たとえば有機体において、すべての細胞が自分の環境を感じ取って組織に必要な変化を促すのとまったく同じです。私たち人間は驚くべき感知器なのです。従来型組織では、こうした感じ取る力の多くがふるい落とされています。なぜなら、(時には歪められて)組織のトップに届いたメッセージだけが対応され、行動に移されるからです。

「感知と応答」を行う最も単純な方法? 自然な成り行きに任せることです……

この言葉は、一見すると無責任に聞こえるかもしれません。しかし実際には、極めて高度な信頼に基づいています。森の中には、雨が降らないときに備えて計画し、他の木を指導するような「マスター・ツリー」(先生役の木)は存在しません。生態系の全体が、その瞬間に創造性を発揮して反応します。

ティール組織も変化には同じように対処します。人々は、何が必要なのかを感じ取って自由に行動します。固定化された職務記述書や上下関係、所属先に縛りつけられていません。次々と予想もしない新しい事態が、不連続で起こってくるという状況に創造力豊かに対応できるんです。状況が変化するのは当然のこととして、自然に、どこでも、いつでも、ほとんど痛みも努力もなく対応します。

ここで重要なのは、「特別なことをしない」ことです。本書では、ある農業組織のリーダーの言葉が紹介されています。

「従来型組織では、5年先を見据えて翌年の計画を立てると言われています。私たちは、農家のように、20年先を見据えたうえで、翌日の計画を立てるのです」

これは単なる時間軸の違いではありません。存在目的に耳を傾けるという姿勢の違いです。組織が自主経営によって生命体として動くと考えられている世界では、変化を外から強制する必要がありません。生命体としての組織には、環境変化を感じ取り、内側から適応する能力が生まれつき備わっているからです。

あなたが日々の仕事の中で感じる違和感、「こうしたほうがいいのではないか」という直感、そうした内なる声こそが、組織を進化させる原動力なんです。それを抑え込むのではなく、助言プロセスを通じて行動に移す。一人ひとりがセンサーとして機能し、感じ取ったことに基づいて動き始めたとき、組織全体が生命体として呼吸し始めます。

個人が意志を見出し、それに従って活動する。その積み重ねが、最終的には組織全体のホールネス──全体性──を自然と取り戻していくんです。

本書をさらに深く学びたい方には、「ティール組織ラボ」というポータルサイトがあります。『ティール組織』著者フレデリック・ラルーの動画シリーズ全131本の日本語訳、実践的なWIKI、国内外の事例記事など、組織進化のための豊富なコンテンツが無料で公開されているんです。

特に注目したいのは、ソース原理の実践ワークショップなど、具体的な変容の旅路を支援するプログラムです。「理論は理解したけれど、どう実践すればいいのか」という問いに応えるリソースが充実しています。

ティール組織への道は、一人で歩む必要はありません。すでに旅を始めている人々のコミュニティがあり、学びと実践を共有する場が用意されています。本書を読んで何か感じるものがあったなら、ぜひティール組織ラボも訪れてみてください。

また、一人ひとりの感性を高めていくためには、組織内だけにとどまらないという環境設定も重要かもしれません。そんなときには、こちらの1冊「越境せよ!?『新時代を生き抜く越境思考 ~組織、肩書、場所、時間から自由になって成長する』沢渡あまね」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 信頼は「人を信じる」決断から生まれる──ティール組織への転換は、新しい制度や構造から始まるのではありません。「社員は信頼に値し、正しいことをしたい」という前提に立つ決断から始まります。助言プロセスに象徴されるように、一人ひとりが決定者であり、同時に助言者でもある。その対等性が、組織全体の信頼の土台を築いていくのです。
  • 内なる声に従う勇気が組織を変える──「この判断は正しそうか?」という内面の問いを大切にすること。意思決定の基準を外的なものから内的なものへ移すことで、私たちは本来の自分を取り戻します。全体性(ホールネス)の回復は、個人が仮面を脱ぎ、自分に正直になることから始まります。一人の変化が波紋となり、組織全体に広がっていきます。
  • 感じ取る力を解放すれば、組織は生命体になる──組織を生命体として捉えると、すべての人がセンサーとなり、環境の変化を感じ取って自然に対応できます。中央からの指揮命令ではなく、一人ひとりの感性に基づく行動の積み重ねが、組織全体を進化させていくのです。個人が意志を見出し活動することが、最終的には組織のホールネスを自然と取り戻していきます。

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

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