プロセスこそが、バリュー・コンテンツ!? 〜人間の本質的欲求に応える企業活動とは〜

プロセスこそが、バリュー・コンテンツ!? 〜人間の本質的欲求に応える企業活動とは〜

みなさん、こんにちは。増田みはらし書店・店主の増田浩一です。

2018年に埼玉県蓮田市で10万枚以上の埋蔵銭が発見されたニュースをご存知でしょうか!?あるいは、2023年にも、同じように群馬県前橋市で、10万枚を超える埋蔵銭が出土しています。

そうなんです。埋蔵金は、結構見つかっているんです(!)

おそらく、これらの発見のニュースよりも、テレビで放送される「お宝発掘!」や「伝説の埋蔵金を追え!」といった番組の方が馴染み深いのではないでしょうか。

実際の発見よりも、探索の過程を追うコンテンツの方が、私たちの心を惹きつけているように思います。

なぜでしょう。私たちは、「見つかった」という結果より、「探している」というプロセスにこれほど魅力を感じるのでしょうか。

実はこうしたことは、埋蔵金に限った話ではありません。

ミステリー小説を楽しむときには、犯人が分かった後より、謎を追う過程に夢中になります。

料理番組を見る時も、完成した料理より、作っていく工程に引き込まれます。

最近人気の手作り市場も、できあがりより、作る過程そのものに価値を見出しているといえるでしょう。

プロセスという価値を見つめてみる

このような「プロセスこそが価値である」という人間の本質的な欲求は、これからの企業活動に重要な示唆を与えてくれます。

では、この「プロセスこそが価値」という視点を、企業活動にどのように活かすことができるのでしょうか。

従来の企業活動は、完成した製品やサービスの提供を中心に考えられてきました。しかし、今、先進的な企業たちは、価値創造のプロセス自体を重要なコンテンツとして捉え直しをしてもよいのではないでしょうか。

例えば、製品開発の領域では、ベータ版テスターコミュニティの運営や、開発プロセスの公開、アイデアソンやハッカソンの開催など、「つくっていく過程」を顧客と共有する取り組みが広がっています。

生産・製造の現場でも変化が起きています。工場見学が単なる施設案内から、体験型コンテンツへと進化し、職人の技術継承過程を公開したり、製造工程をライブ配信したりする企業も増えてきました。

ブランド構築においても、完成されたブランドイメージの発信だけでなく、ブランドの成長過程や、時には失敗談までも含めた「なりゆきのストーリー」を共有する動きが出てきています。

さらに、社会課題の解決に向けた取り組みでも、成果だけでなく、試行錯誤のプロセスを開示し、多様な関係者との対話を通じて解決策を模索する例が増えています。

このように、企業活動の様々な場面で「プロセスのコンテンツ化」が進んでいます。それは単なる情報公開ではありません。顧客や関係者との対話を通じて、新しい価値を共に創造していく場づくりなのです。

変化を積極的に取り込んでいく

このような企業活動の転換は、特に企業を支援する私たち自身のマインドセットの変革を強く求めます。

広告プロデューサーや企業コンサルタントとして、クライアントの成長を支援する立場にある場合、最も重要な転換は「納品主義」から「修正主義」への移行です。

完璧な成果物を一度に納品することを目指すのではなく、対話を通じた継続的な修正と進化を前提とした支援へと、発想を転換する必要があります。

この転換は、仕事の評価や収益モデルにも影響を与えます。

従来の「成果物に対する対価」という考え方から、プロセス全体を価値創造の場として捉える「プロジェクトフィー」という考え方への移行が求められます。

なぜなら、私たちが提供する価値は完成品の中にだけ存在するのではなく、それを生み出していく過程の中にこそ存在するからです。クライアントとの対話、試行錯誤の共有、新しい可能性の発見 ― これらのプロセスそのものが、重要な価値を生み出しているのです。

では、このようなマインドセットの転換を、支援する側のチーム全体でどのように実現していけばよいのでしょうか。そのカギとなるのが、パーパスの言語化です。

これまで、私たちの多くの知見や価値観は「暗黙知」として共有されてきました。少人数のチームであれば、日々の密なコミュニケーションを通じて、言葉にしなくても相互理解が可能でした。

しかし、これからは異なります。多種多様な関係者がプロジェクトにジョインし、共に価値を創造していく時代において、暗黙知に頼った従来のアプローチでは限界があります。

求められるのは、チームのパーパスを丁寧に言語化し、明確に共有していくことです。

ここで重要なのは、単なる「言葉にする」作業ではないということです。

言語化されたパーパスは、以下のような特質を持つ必要があります。

  • パッションを感じられる表現であること
  • 一人ひとりが個性を託せる余白があること
  • 対話の起点として機能すること
  • 進化を許容する柔軟性があること

このように言語化されたパーパスは、チームの活動の起点となり、多様な関係者との協働を可能にします。それは同時に、私たち自身の思考や行動の指針としても機能するのです。

そして、このパーパスの言語化と共有のプロセスそのものが、人間の本質的な欲求に応えるものとなります。

人は、プロセスにこそ価値を見いだせる生き物である

このように考えると、冒頭で触れた「埋蔵金パラドックス」は、私たちに重要な気づきの機会を提供してくれます。

人は本質的に、結果以上にプロセスに価値を見出す存在なのです。

探求の過程で生まれる期待感。共に歩む仲間との対話。試行錯誤から得られる気づき。これらのプロセスが生み出す価値は、時として最終的な成果以上に大きな意味を持ちます。

企業を支援する私たちに求められているのは、このような人間の本質的な欲求に応える場づくりです。パーパスを丁寧に言語化し、共有し、進化させていく。その過程自体を、価値創造の中心に据えていく。

それは決して効率的とは言えないかもしれません。しかし、より豊かで、より深い価値を生み出す可能性を秘めています。なぜなら、それは人間の根源的な「プロセスを楽しむ欲求」に応えるものだからです。

私たちは今、企業活動の新しいステージに立っているのではないでしょうか。

それは、結果だけでなくプロセスにも深い価値を見出し、共に歩み、共に成長していく世界です。

その先に広がる可能性を、私たちは丁寧に追求していきたいと思います。

組織やチームにおいて、パーパスを策定する可能性については、こちらの1冊「【パーパスの設定と実行がキー!?】誠実な組織|ロン・カルッチ,弘瀬友稀」も多くのヒントを提供してくれます。ぜひご覧ください。

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