- リーダーシップを考える時、まず何が大切でしょうか!?
- 実は、その人(人格)かもしれません。
- なぜなら、人格が結局は、常に表出するから。
- 本書は、人格をどう磨くのかについて説いた1冊です。
- 本書を通じて、リーダーとは何かを考える機会を得ることができます。

祝福的であるために?
リーダーというのは、波及効果をもたらす人です。
それは、とても良い波及効果。
「部下やメンバーが自らのひらめきを大切に育てる場をつくること」
「関わる人の人生をエキサイトメントにするような影響を与えること」
です。
著者・大野栄一さんは、次のように語ります。
リーダーに求められているのは、指示や結果を出すこと以上に、「祝福的であること」なのです。
この「祝福的」というのが、本書が異彩を放つ通奏低音となっています。
祝福的な存在として、自身を観察した時にどうか・・・
そうした観点から点検をしてみると、実は、リーダーというのは、テクニックではないということが良くわかります。
それは、その人自身のあり方であり、生き様そのものをかけるものなのです。
表面的な心がけや努力で、どうこうなるものではない。
ちまたに溢れる「部下への“正しい”接し方」や「リーダーとして獲るべき行動や考え方」というのは、場当たり的で、その場しのぎの発想を助長しますが、本書は、異なります。
自分の生き方をどう作っていくか、いかに人生を立ち上げていくか、そういう人として生きることのプロジェクトを検討することを促す1冊なのです。
大切なのは、「1人の時間」を通じて、4つの力をデザインしていくことです。
1.思考自由度・・いかに思い込みを捨てられるか。
2.問いの力・・適切な質問を通じて、問題の本質をつけるか。
3.喚起力・・メンバーの内面に働きかける本質を通じたコミュニケーションを創発できるか。
4.構造デザイン力・・仕組みや構造に落とし込み、継続体な変化を促進できるか。
これらの力のあり方を自ら意識して、1人の時間にそれらをどのように磨いていくのかをまず検討することから始めてみましょう。
なにより、人は「自分が自分に教えたこと(解釈できたこと、理解できたこと、わかったことなどなど)」しか、人は学ぶことができません。
いかに視野を広げて、視座を高めて、そして、視界を良好にし続けていくことができるかが欠かせない論点です。
上記4つの力を検討していくことで、リーダーとして以下のような波及効果を生み出すことができます。
① 自分の状態を客観的に見て、他者との関係性を創っていくことができる。
② 偏見のない「健全な視点」からものごとを検討することができる。
③ 「フォロワー」とともに、社会を変えていくことができる。
④ 与えられた条件の中で、ポジティブな作用を創り出すことができる。
⑤ コミュニケーションの質を高め、関係性を構築することができる。
先入観に気づくことから!?
リーダーの4つの力のうち、まず思考の自由度は、特に重要なポイントになるでしょう。
変化の時代において、従前の考え方を持ってだけものごとを進めてしまうのでは、不都合が多いです。社会は変わっているのに、対応が変わらないのであれば、ズレが生じて、ムリ・ムダ・ムラが、ものごとを前に進む力を奪ってしまいます。
リーダーがどのようなものごとの理解の枠組みを持てるかで、その組織の充実度はまったくかわります。
そのために、リーダーであるためには、まずものごとの理解の枠組みをコントロールして見るために、自分のそれに自覚的になることから始めてみるのが重要です。
「好き・嫌い」「良い・悪い」もまた思考の檻
自分がどのような「ジャッジ」をしているのかについて、知ることが最初のヒントかもしれません。
無意識のうちに、何かを判断しているのですが、その基準は誰によってもたらされたものでしょうか。社会の常識?誰かの常識?自分の経験?・・・?これらを検討することで、自分の思考を俯瞰するヒントを得ることができます。
自分自身の思考の枠組みを知ることで、それを絶えず揺らがせることができるようになります。
大切なのは、背景が変わればジャッジの基準も当然変わるし、常に正解であるということはまったくないということです。
そうした思考で、他者(メンバー)と向き合うことによって、周囲の人も、自由な発想でものごとを捉えられるようになります。
発想が自由になれば、従前にとらわれることなく、ものごとの本質に向かって、仕事やプロジェクトを進めることができるようになり、最終的には、やりがいや成果につながることもあるでしょう。
思考の枠組みと同じように、リーダーとして、常にメンバーとの関係性を考えることは大切です。
一人ひとりのメンバーの多様な主体性を引き出すためには、指示や命令ではなく、問いや貢献のスタンスが欠かせません。
まだメンバーが気づいていない論点から質問を投げかけること、そして、その探索を手伝うように、常に「先渡し」で貢献していくことが大切です。
ここで欠かせないのが、メンバーの論点を見つけるために、サーヴァント、つまり支援者としての心構えを持っていくことです。
交換条件の思考から抜け出すには、「どんな結果が得られるか」ではなく、「自分がどのように貢献できるか」に意識を向けることが大切です。
「今、自分がメンバーに対して、何ができるか」を常に考えることで、邪念を払うことができ、シンプルにものごとを前に進めることも可能になるでしょう。
貢献にフォーカスすることは、次のようなメリットをもたらします。
- 報酬や見返りではなく、自己成長や他者への影響を考えるようになる。
- 交換条件の思考は短期的な利益を求めるが、貢献志向は長期的。
- 長期的な視点を持つことで、安定した成長が期待できる。
- 自己中心的な考え方から他者志向の考え方になる。
- チームワークが強化され、組織全体の成果向上につながる。
- 思考が柔軟になるため、新たな視点やアイデアを受け入れやすくなる。
- 組織全体の成果や社会への価値提供に注意が向くため、顧客視点での思考が進む。
1人の時間に、自分が「先に」どんな貢献ができるかを考えておく。
貢献を軸に自らのやり方やスタンスを検討することは、とても健全な体質を意識することができるようになります。

全体性を取り戻せ?
また、意識のパラダイムとして、外と内への視点があります。
リーダーは、実は自分の率いるチームを良くしようという視点から、内へ内へと向かいがちです。
でもそれだけでは、実はチームは良くなりません。
大切なのは、実は外へ向かうことです。
外の世界を観察するほど、内面への洞察が深まる
外の世界をしっかり観察しながら、外の世界との関係性を考えていくことで、実は内面の魅力や、状況に気づいたり、外の世界との関係性を創り出すヒントを得ることが可能になります。
このパラダイムはとても重要です。
目的的に動くのではなく、全体にシステムや相互関係の成り立ちを見つめて、それに従って動き考えることが、実は最終的にチームのためになります。
また、同じように大切なのが、チームとの距離感です。
人はもともと「所有したい」生き物です。本能的にそれは、大切なことなのですが、それを組織やチームに勘違いして当てはめてしまうと、無理が生じます。
「自分のもの」と思ってしまうと、自分の思い通りにコントロールしようとする意識を高めてしまうことになります。でも、残念ながら不可能なことです。
リーダーが過剰に自分のチーム・組織を所有しているという感覚を大切にしてしまうと、メンバーと組織がどんどん萎縮してしまいます。
責任感の強い、真面目なリーダーでこの傾向は強いです。
残念ながら、この所有意識によって、よりよい波及効果を得ることは難しいのです。
所有意識を払拭するためには、2つの工夫を検討してみましょう。
1)主語を変える
2)助詞を変える
1)主語を変える;私ではなく、私たちという視点でものごととの関係性を考えてみましょう。個人的な視点を、広げていくイメージです。
「私」→「私たち」「お客さま」「社会」というふうに、広げて考え、さらに、実際に言葉にしていくと、自分の思考や行動や先入観をアップデートしていくことができます。
例えば、お金を使うときを考えてみてもいいかもしれません。「私のお金」を使う(=失う)ということではなく、「私たちのお金」を使うと捉えてみると、大きな循環の中に自分自身があるという感覚を取り戻すことができるようになり、本来的な全体性をもって、世界を捉え直すことができます。
2)助詞を変える;「私の」という所有を示す助詞を、「私と」という並列の関係を表す助詞に置き換えることで、対象への執着を和らげることが可能になります。
「の」から「と」へ、視点を変えるだけで、リーダーとして人格が磨かれていくきっかけになります。
ここまでが基本の心構えです。次回も本書を取り上げさせていただきながら、リーダーとしての心構えや1人の時間にどのような自己点検が大切なのかを詳しくご紹介させていただきたいと考えています。
リーダーシップについては、こちらの1冊「【リーダーとは、役職ではなく、役割!?】リーダーシップ・シフト|堀尾志保,中原淳」もぜひご覧ください。

まとめ
- 祝福的であるために?――周囲との協調の中で、メンバーの力を引き出すのがリーダーです。
- 先入観に気づくことから!?――自己認識をすることが大切です。
- 全体性を取り戻せ?――主語と助詞をコントロールして、意識と視点を変えていきましょう。
