- 脳の機能を維持し、より良く働かせるために、私たちは何をすればいいのでしょうか?
- 実は、脳を健康に保つ方法は、意外とシンプルなんです。特別な器具も、複雑なプログラムも必要ありません。
- なぜなら、脳が求めているのは「適度な刺激」と「適切な休息」のバランスだからです。そして、そのバランスは日常的な習慣で実現できるんです。
- 本書は、脳神経外科医・東島威史氏が、脳科学の知見をもとに具体的な実践方法を示した1冊です。
- 本書を通じて、運動、食事、読書――日常の中にある行動が、いかに脳に影響を与えているかが見えてきます。
著者の東島威史氏は、脳神経外科医として長年、脳の機能と疾患に向き合ってきた専門家です。
前回のレビューでは、脳が「削ぎ落とすことで機能する臓器」であることや、睡眠と刺激のバランスの重要性について見てきました。脳は筋肉とは真逆で、使えば使うほど鍛えられるのではなく、余計なものを削減することで洗練される――そんな常識を覆す視点を東島氏は提示してくれました。
そして今回は、その理解を踏まえた上で、「では、具体的に何をすればいいのか」という実践の話に入っていきます。
東島氏が臨床経験と脳科学の最新研究から導き出したのは、決して難しい方法ではありません。運動、食事、読書――私たちが日常的に行っている(あるいは行える)行動の中に、脳を健康に保つ鍵があるんです。
本書は、そうした実践可能な方法を、脳のメカニズムとともに丁寧に解説してくれます。理論だけでなく、具体的にどう行動すべきかを示してくれる一冊となっています。
前回の投稿はこちら「脳を上手に刺激せよ!?『不夜脳 脳がほしがる本当の休息』東島威史」をご覧ください。
脳を鍛える――運動と刺激のデザイン
前回見てきたように、脳は刺激を削ぎ落とすことで機能を維持します。
でも同時に、適度な刺激がなければ脳は衰えていく。
では、脳にとって「良い刺激」とは何か。
その答えのひとつが、運動なんです。
脳は「筋トレ」できる
脳は筋肉のように鍛えられない――そう思われがちです。
でも実際には、脳にも「成長因子」が存在するんです。
有酸素運動でBDNFを出し、脳を鍛える 脳と筋肉は「使うほど鍛えられる」という共通点がある。そして体の筋肉を使ってトレーニングすることで、脳にもよい影響を与える。その鍵を握るのは、「BDNF(脳由来神経栄養因子)」というたんぱく質だ。 BDNFは、神経細胞の成長や機能の維持に活性化させている。BDNFは、神経細胞の成長やシナプスの可塑性を促し、記憶や学習能力の維持に欠かせない。
BDNF――脳由来神経栄養因子。
これは、神経細胞の成長やシナプスの可塑性を促す、脳の成長因子なんです。
記憶や学習能力の維持に欠かせないこの物質を、私たちは自分で増やすことができる。
その方法が、有酸素運動です。
走る、歩く、泳ぐ――こうした運動が、脳の成長を促すんです。
でも、それだけではありません。
骨を刺激する「ジャンプ」で記憶力が改善 もう一つ、「オステオカルシン」というホルモンも、脳機能に良い影響を与えることがわかってきた。オステオカルシンは骨から血中に分泌されるホルモンだ。単純に「骨を丈夫にする役割」もあるとわかっているが、近年の研究で「骨が脳や代謝とやりとりできるようにつなぐ、神経伝達物質をアシストする役割」もあるとわかってきている。
骨から分泌されるオステオカルシンというホルモン。
これも、脳機能に良い影響を与えることがわかってきました。
骨を刺激することで、このホルモンが分泌される。
そして、神経伝達物質をアシストする役割を果たすんです。
脳が疲れたら、どんどん歩いて、ジャンプをし、マラソンをしよう。
これは、とてもシンプルなアドバイスです。
脳が疲れたと感じたとき、私たちは休息を求めがちです。
でも実際には、動くことが脳の回復につながることもあるんです。
歩く、ジャンプする、走る。
こうした運動が、BDNFやオステオカルシンを分泌させ、脳を活性化させる。
前回見た「脳疲労はバランスの崩れ」という視点から考えれば、これは理にかなっています。
刺激が足りない部分には、運動という刺激を与える。
それによって、脳全体のバランスが回復するんです。
生物は「飢餓」の状態がデフォルトモードに設計されており、「満腹」の状態は未来「異常事態」に近いのだ。
そして、運動と並んで重要なのが、もう一つの実践です。
それが、次のセクションで見ていく「断食」なんです。
脳を休める――断食という選択肢
運動が脳を刺激するなら、断食は脳を休める方法です。
でも、ここで言う「休める」は、単なる休息ではありません。
この「飢餓=デフォルトモード」の時間を長くすることで、世にも(インターミッテント・ファスティング)」で、次のようなやり方がある。①24時間食べない日を、1日おきに設ける②3週に1回、24時間何も食べない日を設ける③1週間に2日だけ、カロリー制限(500〜600※程度)する(5:2法)④16時間何も食べずに、8時間の間だけ食べて良いとする(16:8法)
この中で、最もよく実施されているのは④の16:8法だ。
断食――あるいは間欠的ファスティング。
最もよく実施されているのは、16時間何も食べず、8時間の間だけ食べる「16:8法」です。
朝食を抜いて、昼から夜にかけて食事をする。
あるいは、夕食を早めに済ませて、翌日の昼まで食べない。
こうした方法で、脳に「飢餓モード」の時間を与えるんです。
満腹は「異常事態」であり、体に強い色味をかけているという認識で、少なくとも現代では間違いなくそうだ。
満腹が「異常事態」――これは、衝撃的な指摘です。
私たちは、お腹いっぱい食べることが健康だと思いがちです。
でも実際には、満腹状態こそが体に強い負荷をかけている。
生物の基本設計は「飢餓モード」なんです。
脳の疲れは睡眠では癒やされない。 古いもの(老廃物)を捨て去る気がするのは脳の栄養補給が行われたからではなく、「腸でブドウ糖を吸収すると、脳でドーパミンが出る」ためだ。 朝起きてすぐと寝直前システムは起動しないが、仕事中に一瞬的な快感やすっきりした感じがするが、文字通り目やかしているだけで、脳のためにはならない。
断食中、脳は老廃物を除去し、デトックスを行います。
そして、食事をしたときに分泌されるドーパミンは、一時的な快感をもたらす。
でもそれは、実は、脳の本質的な回復ではないんです。
実際にクルミはオメガ3脂肪酸が豊富で、神経細胞の膜の主成分である脂質に抗酸化物質やポリフェノールも含まれ、脳の炎症を抑え、記憶や学習機能に良いとする説もある。
脳に必要なのは、糖分ではなくクルミ。
オメガ3脂肪酸が豊富なクルミは、神経細胞の膜の主成分である脂質を含んでいます。
抗酸化物質やポリフェノールも含まれ、脳の炎症を抑え、記憶や学習機能に良い影響を与える。
断食と適切な栄養――この2つの組み合わせが、脳を休め、回復させるんです。
前回見たように、脳は睡眠中に刺激を削減します。
でも、断食もまた、脳が不要なものを削ぎ落とす時間を提供してくれるんです。
満腹状態では、消化にエネルギーが使われ、脳は本来の削減作業に集中できない。
空腹の時間を作ることで、脳は本来の機能を取り戻すんです。
そして、もうひとつ、脳を鍛える日常的な習慣があります。
それが、読書なんです。
疲れない脳を「読書」で鍛える
運動で刺激し、断食で休める。
この2つに加えて、もうひとつ重要な実践があります。
それが、読書です。
本を読むという「特別な刺激」
読書は、特別な刺激なんです。
読書に没入すると「脳は刺激を自家発生させる」 僕たちは本を読んでいるとき、朝顔前野と側頭葉を駆使している。
テレビやスマホとは違う、独特の効果を脳にもたらします。
人間の脳は音段から前頭前野を使っているが、読書の場合は聴覚情報がなく、視覚情報は文字だけというように「外部刺激が不足した状態にある」。そのため「脳自身が刺激がどこかで補う必要があり、「内部刺激」を作り始めるのだ。自分のイマジネーションで、主人公の顔や声やはづつ、ストーリーの流れを再現したり、変えて見ていったい一文だけとは、それが岸壁の上から見る荒れた海なのか、浜辺の波の穏やかな海なのか、その水の色や風の匂いさえも映像や情景やなどを作り上げているのだ。より深く、より早く前頭前野を動かし、没入するから読書はすごい脳トレになる。
読書の特別さは、ここにあります。
テレビや映画は、映像や音声という「外部刺激」を提供してくれます。
でも読書は違う。
文字だけという「外部刺激が不足した状態」で、脳は自ら「内部刺激」を作り始めるんです。
主人公の顔、声、ストーリーの流れ。
「海」という一文字を読んだとき、それが荒れた海なのか、穏やかな海なのか。
水の色、風の匂い――すべてを、脳が自ら作り上げていく。
このプロセスこそが、脳を深く鍛えるんです。
「週1回の読書」で認知機能低下リスクが46%低下した
そして、読書の効果は科学的にも証明されています。
週に1回の読書で、認知機能低下リスクが46%も低下する。
これは、驚くべき数字です。
読書は手軽に取り組める、脳を鍛える有効な手段だ。そして、音読や黙読や朗読や聴聴を同時に刺激し、それらを統合する前頭葉が回も強く刺激し、脳の知的活動を大きく強化することができる。
読書は、手軽に取り組めます。
特別な器具も、場所も必要ありません。
本を開けば、どこでも脳を鍛えることができる。
そして、音読すれば、さらに効果は高まります。
黙読、音読、朗読、聴聴――これらを統合する前頭葉が強く刺激され、脳の知的活動が大きく強化されるんです。
前回見た「適度な刺激」という視点から考えれば、読書は理想的な刺激なんです。
ドキドキしすぎる刺激でもなく、退屈な刺激でもない。
脳が自ら内部刺激を生成することで、適度な負荷がかかり、鍛えられていく。
そして、その刺激は外部から一方的に与えられるものではなく、自分でコントロールできる。
疲れたら休憩すればいいし、集中したいときは没入すればいい。
この「自律性」もまた、読書の大きな利点なんです。
運動で体を動かし、BDNFやオステオカルシンを分泌させる。
断食で脳に休息の時間を与え、不要なものを削ぎ落とす。
読書で内部刺激を生成し、前頭葉を鍛える。
この3つの実践は、どれも特別な道具や技術を必要としません。
日常の中で、誰でも取り組める習慣なんです。
そして、この3つに共通しているのは、「脳に適度な刺激と休息を与える」という点です。
脳は削ぎ落とすことで機能する。
でも同時に、刺激がなければ衰えていく。
この一見矛盾する2つの要求を、運動、断食、読書という日常的な習慣が満たしてくれるんです。
まとめ
- 脳を鍛える――運動と刺激のデザイン――有酸素運動でBDNFを分泌させ、ジャンプで骨を刺激しオステオカルシンを出す。脳が疲れたときこそ、歩き、ジャンプし、走ることが脳の回復につながります。
- 脳を休める――断食という選択肢――16:8法などの間欠的ファスティングで、脳に「飢餓モード」の時間を与える。満腹は異常事態であり、空腹の時間こそが脳の本来の機能を取り戻す時間なんです。
- 疲れない脳を「読書」で鍛える――読書は外部刺激が不足した状態で、脳が自ら内部刺激を生成する特別な行為です。週1回の読書で認知機能低下リスクが46%低下する、手軽で効果的な脳トレなんです。
