【キーインサイトはあるか?】センスのよい考えには、「型」がある|佐藤真木,阿佐見綾香

センスのよい考えには、「型」がある
  • どうしたら思考をより鋭いものにできるでしょうか。
  • 実は、大切なのは「インサイト」かもしれません。
  • なぜなら、たったひとつのインサイトの力は、計り知れないものがあるのです。
  • 本書は、ビジネスにおけるインサイトをつくための思考法に関する1冊です。
  • 本書を通じて、優れた思考とアイデアをもたらすためのヒントを得ます。
佐藤真木,阿佐見綾香
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インサイトが、キー?

考えるための本は数多くあります。本書は、その中でも、思考のための枠組みとして「インサイト」の重要性に力点を置きます。

闇雲に努力して、ひたすらにアイデアを捻り出そうとするよりも、たった一つの「インサイト」さえ見つかれば、信じられないような高い確度で、より多くの人を動かせるような、優れたアイデアが発想できます。

インサイトがあれば、優れたアイデアが導き出されて、仕事を前に進めていく、強力な力になります。

ではインサイトとは何でしょうか。ビジネスの世界でインサイトという言葉が使われる場面は多岐にわたります。特に広告業界では、消費者インサイトという形で頻繁に耳にする言葉ですが、実は広告業界とビジネス全般におけるインサイトには、重要な共通点があります。

まず第1に、両者ともに「顧客ニーズの深い理解」を目指しています。表面的なデータや現象だけでなく、なぜそのような行動が起きているのか、その背景にある本質的な欲求や課題は何かを理解しようとします。これは、効果的なマーケティング施策の立案やビジネスモデルの構築において不可欠な要素です。

第2の共通点は、「データと直感の両方を活用する」アプローチです。定量的なデータ分析は重要な基盤となりますが、それだけでは見落としてしまう発見があります。経験やビジネスセンスから生まれる直感的な理解と、データによる裏付けを組み合わせることで、より深いインサイトを得ることができます。

そして第3に、両者とも「意思決定の質を高めること」を究極の目的としています。インサイトは単なる発見や気づきで終わるものではありません。それを基に、より良い戦略や施策を生み出し、実行に移していくための基盤となります。的確なインサイトは、ビジネスにおける重要な意思決定の質を大きく向上させる可能性を持っています。

このように、広告業界とビジネス全般でのインサイトは、その活用方法や具体的なアプローチに違いはあるものの、本質的な部分では共通する要素が多くあります。これらの共通点を意識することで、より効果的なインサイトの発見と活用が可能になるでしょう。

インサイトを見つけようとする視点があれば、ものごとの表面的な結論だけではなく、その原因にまでリーチする行動を生み出すことができます。

例えば、定量的なデータ、コーラは、ハンバーガーといっしょにや、暑い時に無性に飲みたくなる。というデータがあった時に、そのままアウトプットすれば、暑い夏の日のハンバーガーとのキービジュアルになるかもしれません。

でも、インサイトを用いることができれば、「理由もなく急に飲みたくなる」、そこからコピー「No Reason」という共感ベースのシリーズ企画を生み出すことができるようになるかもしれません。

このようにインサイトは、視点の奥へ、そして裏側へと人の思考をいざなうのです。

まだ言葉にできていないこと?

インサイトは確かにあるが、「まだ言葉にできていないこと」と定義しても良いかもしれません。

うまく言葉にして自覚できていない「隠れたホンネ」を考えることを提案

そもそもどんな仕事においても、人生のさまざまな出来事においても、考えるべき・とらえるべきは、「人の心」です。相手をラクにするが、はたらくだとしたときに、単に機能的なこと(利便性、役に立つ)ということだけではなく、人としての気持ちに寄り添えるかがとても大切です。

感動というのは、そういう時に生まれるのかもしれません。

相手自身もまだ、気づいていないことを、共に見つけていくことについて、一緒に探しに行く行為が大切なんですね。

インサイトは、そうした隠れたホンネをつき、人を動かすことができます。

その人の本当の欲望をうまく言語化して、その欲望に見合うような行動をしてあげられれば、相手に喜んでもらうことができます。

いまから100年ほど前にエストニア出身のドイツ人心理学者ヴォルフガング・ケーラーは、「インサイト」の学習について次のように述べました。

問題解決において、試行錯誤的に解決手段を探していくのではなく、諸情報の統合によって一気に解決の見通しを立てること

この定義が生まれたのは、次のような実験によってです。

お腹をすかせたチンパンジーを連れてきて、天井からバナナを吊るした部屋に入れます。バナナはチンパンジーがジャンプしても届きません。部屋には3つの木箱を用意してあり、これを重ねていくと、バナナに手が届きます。

この過程をケーラーは、「インサイト学習」と呼びました。

ものごとや状況を俯瞰して、その中で、問題の根本原因を突き止めていく行為によって、インサイトに触れる機会を得られるのだと思います。

ポイントは、チンパンジーは、試行錯誤するのではなく、一気に箱を積み重ねたと言います。つまり、ものごとの本質を理解していたということになるでしょう。

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インサイトの見つけ方?

機能するインサイトは、次のような要素によって定義されます。

1 聞き手の内面に気づかせ、ハッとさせる新たな発見や驚きがあるか?(Surprise)
2 人の発想を拡げるインスピレーションを感じさせるか?(Inspiration)
3 自分が心から腑に落ちているか? (Commitment)
4 1行で言い表せて、誰もが理解できる明確な言葉にできているか?(Wording)
5 人間らしさ・人間の本質があるか?(Essential)

これらをガイドラインに沿ってみながら、よいインサイトを見つけていきましょう。

さらにインサイトを見つけるポイントは、次のようなステップで見出すことができます。

STEP1 日常の中の違和感に目を向ける
 =直観や観察に基づいて、「気づき/違和感」を持つ(感性力)
STEP2 違和感を抱いたのはどんな常識か?
 =日常の暮らしの中の「常識/定説」を改めて明確に把握する(常識把握力)
STEP3 常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか?
 =当たり前だと思われていることに「疑問/問い」を持つ(問題提起力)
STEP4 隠れたホンネを、自分の納得いく言葉にする
 =自分の目で改めて世界を捉え直した「仮説/推論」を立てる(言語化力)
STEP5 自分の言葉を、みんなに信じてもらう
 =客観的に誰もがわかるように「確認/検証」する(説得力)

つまり次のようなステップを意識してみるとよいでしょう。

① 日常の中の違和感に目を向け、
② その違和感を抱いたのはどんな常識か?を明らかにし、
③ その常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか?を探り、
④ そこに隠れていたホンネを、自分の納得いく言葉にして、
⑤ その自分の言葉を、みんなに信じてもらう。

これらのステップを意識しながら、自分の感性を大切にしながら、深堀りをしていきましょう。

大切な起点は、「まず自分の違和感」ということがとてもポイントですね。自分の感性を研ぎ澄ませていくためには、どうしたらいいかを検討したいです。

  • 思っていたのと違う!
  • 予測誤差が大きいのはなんでだ?
  • 好き!って思うのはなぜ?
  • 嫌い!って思うのはなぜ?

こうした感覚を大切にするのに加えて、インサイトを大きく捉えていく視点も活用してみましょう。

これを「逆説モデル」と呼びます。

「逆説モデル」は、次のようなワンフレーズ(1つの文章)で、ミニマルにインサイトを表現するモデルです。

「逆説モデル」
  みんな/世の中は、○○だと思っているかもしれないけど(常識/定説)
  実は/本当は、□□ではないか?と自分は思う。(仮説/推論)

インサイトを考えるということは、それは案外自分の見立て、感性を大切にすることかもしれません。そうした視点で、ものごとに関わる深さを意識してみるとよいでしょう。

インサイトについては、こちらの1冊「【本当のインサイトの話とは?】インサイト中心の成長戦略|中村陽二」と「【やってみることから、始めよう?】インサイト中心の成長戦略|中村陽二」もぜひご覧ください。ビジネス切り口でのインサイトについて、意識を向けるヒントをたくさん提供してくれます。

まとめ

  • インサイトが、キー?――ビジネスでは、インサイトを中心にした考え方が好転となります。
  • まだ言葉にできていないこと?――深く論点を見出していく行為がキーです。
  • インサイトの見つけ方?――自分の感性を大切にふかぼりましょう。
佐藤真木,阿佐見綾香
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