【仮説こそ宝?】仮説行動――マップ・ループ・リープで学びを最大化し、大胆な未来を実現する|馬田隆明

仮説行動――マップ・ループ・リープで学びを最大化し、大胆な未来を実現する
  • どうしたら限られた時間という貴重なリソースを上手に使うことができるでしょうか。
  • 実は、大切なことは、常に「仮説」を持つということです。
  • なぜなら、仮説があれば、変化し続ける世界でも歩みを進めることができるからです。
  • 本書は、仮説を行動に移し続けるための発想をもたらす1冊です。
  • 本書を通じて、仮説の有用性そして、日常の中での心構えを知ることができます。

仮説とは?

良い仮説とは何でしょうか。

それは、実は、よい兆しを捉えるということかもしれません。

より良い仮説に辿り着くために、私たちは「こちらに向かうとよいかもしれない」という仮説をもとに、行動を始めます。

誰しも、こういう「こちらのほうがなんとなく良さそうだ」「なんだか違和感がある」と感じることは少なくないと思います。

たとえば、そうした感覚が顕著に現れるのは、初めての体験かもしれません。

初めての体験の例として、旅行先での感覚は特に印象的です。見知らぬ土地に降り立ち、その街並みや人々の様子を目にしたとき、私たちは無意識のうちに「この街は居心地が良さそうだ」とか「なんとなく落ち着かない」といった印象を抱きます。

この直感的な感覚は、実は私たちの経験や知識が複雑に組み合わさって生まれているものかもしれません。例えば、以前訪れた場所との類似点や、メディアを通じて得た情報との整合性、あるいは自分の価値観や好みとの親和性などが、瞬時に処理されて「感覚」として現れるのです。

そして、この「なんとなく」という感覚こそが、より深い理解への入り口となることがあります。なぜその場所に魅力を感じたのか、あるいはなぜ違和感を覚えたのか。その理由を探っていくことで、自分自身の価値観や、その土地の特徴をより明確に理解することができます。

つまり、こうした感覚は、単なる漠然とした印象ではなく、より深い洞察へと導いてくれる重要な手がかりとなるのです。

こうした感覚はビジネスの最前線で起こっていることは、言ってみれば、地図のないジャングルを探索しながら進んでいくようなものです。

仮説思考と、これに基づく行動に注目が集まっているのは、不確実かつ激変する環境の中で、歩みを進めていくために必要であると認識されているからです。

先がわからない状況の中では、過去を分析するだけでは、残念ながら一歩踏み出す勇気を得ることはできません。理由は単純です。過去の情報だけでは先がわからないからです。

不確実性の高い状況や不完全な情報しか入手できない場合、いくら意思決定をするための正しい情報を求めても、それはいつまでたっても叶いません。

本書は、次の3点を説きます。

① 思考重視から行動重視への転換を促す(仮説思考から仮説行動へ)
② 仮説という概念の解像度を上げる
③ 「失敗しないための仮説」と「大きく成功するための仮説」の両方へのヒントを提供する

仮説とそれに基づく行動がとくに重要なのは、いったん行動をしてみて、それに基づいて得られた新鮮な情報やフィードバックを活かして考えたほうが、よりよい新しい仮説にたどり着きやすいのです。

仮説の利点とは?

私たちは、限られたリソースを最大限活用する必要がああります。特に時間という資源は、貴重です。

時間の制約があり、かつ不確実な中で、活動を止めないために、「仮説」を上手に活用していきましょう。

私たちは仮説をうまく用いることで不確実性を活かし、利得を最大化することもできます。

仮説は、次の利点をもたらしてくれます。

1)仮説を使えば素早く、端的に、ものごとを探索をすることができる。
2)全体の整合性を取りやすくなる。

特に2つ目の利点については、若干補足が必要でしょう。

いくつかの事例をもとに仮説を持つことで全体の整合性が担保されるイメージを養ってみます。

経営課題レイヤー: 「業績が伸び悩んでいる原因は、新規事業への投資が不足しているのではないか」という仮説を持つことで、投資配分、人材配置、研究開発体制など、様々な要素を関連付けて分析できます。この仮説があることで、財務指標や組織構造、意思決定プロセスなど、異なる経営要素間の整合性を検証することができます。

マーケティング課題レイヤー: 「顧客離れの背景には、競合他社のデジタル施策の充実があるのではないか」という仮説を立てることで、顧客接点、購買行動、競合分析などの要素を体系的に結びつけることができます。この仮説を軸に、顧客満足度調査、解約理由、競合のサービス内容など、様々なデータの関係性を明確に把握できます。

4Pレイヤー(Product, Price, Place, Promotion): より具体的な施策レベルでは、例えば「価格帯(Price)の見直しが、製品(Product)の価値訴求を妨げているのではないか」という仮説により、4P間の整合性を検証できます。これにより:

  • 製品の品質と価格のバランス
  • 販売チャネルと価格設定の整合性
  • プロモーション戦略と製品ポジショニングの一貫性

といった要素間の関係を体系的に理解し、改善することができます。

重要なポイントは、次のように列挙することができます。

  1. 各レイヤーでの仮説に基づき、最も影響度の高い課題を特定できます。
  2. 仮説に基づき、どのレイヤーにどの程度のリソースを投入すべきかを判断できます。
  3. 上位レイヤーの仮説から下位レイヤーの施策まで、一貫性のある展開が可能になります。
  4. 仮説があることで、検証すべきポイントが明確になり、より効果的な改善サイクルを回すことができます。

当然レイヤー間にも相互関係があることも特筆されるでしょう。例えば、4Pレベルでの仮説検証が、マーケティング課題の解決につながり、さらには経営課題の改善にも寄与するという、階層的な整合性を確保することができます。

つまり、仮説を持っていれば、部分最適ではなく、「全体最適の視点」をもって、ものごとをより効果的に駆動させていく意思決定を推進することが可能になります。

ムリ・ムダ・ムラを排除しながら、組織を前に進めていくことが可能になります。

事実、仮説をビジネスで用いる効果は、研究でも示されています。

この実験では、116のスタートアップのチームを2つのグループにランダムに振り分けました。1つ目のグループに入ったチームは、ビジネスモデルキャンバスや顧客インタビューなどの、一般的な起業家向けのビジネストレーニングを受けました。もう1つのグループに入ったチームはそうした一般的なビジネストレーニングに加えて、仮説を用いた考え方や、仮説検証をする前にきちんと仮説を明確にして検証の閾値を定義すること、データに基づく意思決定の方法、といった科学的思考を学びました。

約1年後の成果を見てみると、成果は歴然でした。

一般的なビジネストレーニングしか受けていなかったグループの売上は平均約4万円だったのに対して、科学的思考のトレーニングも受けたグループの売上は平均約176万円だったのです。

これらの実験については、こちらの1冊『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す|アダム・グラント』でも詳細にレビューされています。ぜひご覧ください。

真の学びを手に入れる?

キーは、時間軸にあります。確かに業績のための行動に時間をかければ短期的な成果を最大化することができます。

しかし、一方で、中長期的な成果を最大化するためには、学習のための行動に時間をかけて、知識やスキルを伸ばす必要があるのです。

そこで、学習(学び)について検討を進めてみることにしましょう。真の学習(学び)とは何なのか?ということです。学校で教えてもらうような知識の習得だけではありませんね?

キーワードは、「システム」です。

知識の構造化: 断片的な情報や経験を、仮説を通じて関連付けていくことで、より深い理解が生まれます。例えば、ある市場での成功体験を、別の市場に応用する際、「なぜそれが機能したのか」という仮説を立てることで、表面的な模倣ではなく、本質的な成功要因を理解することができます。

実践を通じた検証: 仮説を持って行動することで、その結果から得られる学びの質が大きく変わります。「このアプローチがうまくいくはずだ」という仮説を持って実践し、その結果を検証することで、より深い気づきや新たな発見が生まれます。これは、単なる試行錯誤とは異なり、意図を持った実験といえます。

暗黙知の形成: 継続的な仮説検証のプロセスを通じて、明示的な知識だけでなく、状況に応じた判断力や直感的な理解力が養われます。これは、教科書や研修では得られない、実践の場でしか獲得できない重要な学びです。

このような学びの過程では、以下のような3つの要素が重要になります。

  1. 短期的には非効率に見える活動(仮説を立てる時間、検証の時間)が必要
  2. 失敗も含めて、検証の機会として捉える姿勢が重要
  3. 得られた知見を次の仮説に活かすという循環的なプロセスが必要

つまり、「真の学び」とは、仮説を持って実践し、その結果を検証し、次の仮説へとつなげていく、継続的なプロセスといえるでしょう。この過程で得られる深い理解と実践的な知恵が、中長期的な成果の最大化につながっていくのです。

仮説を持つためには、次のような考え方をあえて持ってみることも重要かもしれません。

  • 素直さをあえて捨ててみて、疑問を絶えず投げかけてみる。
  • 理想を持ってみて、現実とのギャップを意識してみる。
  • 自分がイラッとしてしまったことについて、その原因を探ってみる。
  • ものごとの差異に目をつけてみて、それがなぜ生まれているのかを考えてみる。
  • 興味関心を持ったことに対して、コミュニティ(同じことを考えている人同士)に投げかけてみる。
  • 自分の考えは間違っているかもしれないというスタンスで、人の話を聞く。

これらのティップスは、つまりは、「能動的に生きる」ということにつながっていくような気がします。

疑問を持つことを恥ずかしがらず、そこからさらに深めて問いや仮説を作っていきましょう。

日々の引っ掛かりやトゲを大事にしてみることです。引っ掛かりやトゲというのは、とても個性的なものであると考えることもできます。

もっというと、仮説を持ってものごとを考えていくということはすなわち、自分らしく生きることにもつながっていくようにも考えることができます。

仮説の検証をしていると、ほぼ必ずと言っていいほど、仮説は変わっていきます。仮説が変わること自体はまったく悪いことではありません。むしろいいことなのです。

何度もループを回していきながら、自らだけが経験・体験できる仮説立案の内容を突き詰めてみましょう。

以下を参考に、何層にもループを回してみることです。

  • 1分のループ……検算、具体例への適用
  • 1時間のループ……他人との議論や壁打ち、ヒアリング
  • 1日のループ……机上での調査
  • 1週間……小さな実験
  • 1か月以上……大きな実験(プロトタイプを作るなど)

仮説の内容についても、失敗を恐れずに、定説を覆すような内容についても大切にしてみましょう。実際に大成功するスタートアップの仮説というのは、多くの場合、パターンに当てはめれば「失敗する」と言われていたものでした。

なぜなら、急成長を可能にするスタートアップのアイデアは、これまでの常識に照らすと失敗するようなアイデアが多いからです。

単にうまくやることだけに意識を取られてはいけません。まずは自分ありきで、自分の視点・視野とそこから生み出される感覚に素直に従って、仮説を抱いて生きていきましょう。

まとめ

  • 仮説とは?――自分の思考と行動を規定するものです。
  • 仮説の利点とは?――全体最適を失わず、素早く端的に行動できます。
  • 真の学びを手に入れる?――仮説を持って、ものごとの仕組みに触れることを加速させましょう。
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