- 偏差値28の落ちこぼれが、バングラデシュで教育革命を起こした奇跡の実話――。
- 実は、税所篤快さんの物語は単なるサクセスストーリーではありません。自分が受けた映像授業での救いを、今度はバングラデシュの子どもたちに届けるというすばらしい恩送りの循環が描かれています。
- なぜなら、彼の「弱さ」こそが最大の「強さ」の源となったからです。勉強についていけなかった痛みを知っているからこそ、本当に効果的な教育支援ができたのです。
- 本書は、22歳の著者が綴った「疾走ドキュメンタリー」として、前に向かって走り続ける人間の力強さを教えてくれます。
- 本書を通じて、世の中の基準ではなく自分の文脈で人生を捉え直し、理想の人生へとシフトしていく主体性の大切さを学ぶことができます。
弱さが生み出した強さ
税所篤快(さいしょ・あつよし)さんは、1989年、東京都足立区生まれです。高校3年生の春、偏差値28という状況から一念発起し、早稲田大学教育学部に進学されました。
19歳でバングラデシュのグラミン銀行研究ラボの初の日本人コーディネーターとなり、20歳で史上最年少でe-Educationプロジェクトを設立された現役大学生起業家です。多くの人に支えられて這い上がった経験を、今度は途上国の子どもたちに還元し続けています。彼の物語は、人とのつながりがいかに人生を変える力を持つかを教えてくれます。
弱さこそが強さになる。 この本を読んで、そんなことを心から実感しました。
偏差値28の落ちこぼれ。 普通なら絶望的な状況ですよね・・・。
でも、税所篤快さんという一人の青年は、 そのどん底の経験があったからこそ、 遠く離れたバングラデシュで教育革命を起こすことができたんです。
自分が勉強についていけなかった痛み、 置き去りにされた辛さを知っているからこそ、 本当に困っている人たちの気持ちが理解できる。 そして、本当に効果的な支援ができるんです。
まず驚くのは、税所さんの高校3年生の春の偏差値が28だったということ。 普通なら大学進学など夢のまた夢という状況でしょう。
でも、彼にはそんな絶望的な状況を変えてくれる出会いがありました。 それが「東進ハイスクール」という予備校での体験なんです。
「先生がひとりもいない……!? 教室に入ると、そこに並んでいるのは数十台のPCだ」
すべての授業がDVDの映像で行われる革新的なシステム。 当時としては画期的だったこの映像授業が、税所さんの人生を根底から変えたんです。
質の高い講師陣の授業を、何度でも繰り返し受けることができる。 自分のペースで学習を進められる。
これまで授業についていけずに置き去りにされていた彼にとって、 まさに救いの手でした。
そして1年間の猛勉強の末、 税所さんは見事に早稲田大学教育学部への合格を勝ち取ります。 しかし、この物語の真価は、ここからが本番なんです。
実は税所さんには、 大学進学前に苦い経験がありました。 中学生のときに取り組んだチャリティ活動でのことなんです。ケニアの子どもたちのために募金活動を行い、文房具などを送ったのですが、実際に現地を訪れてみると、その支援は現地の人たちのためになっていませんでした。
むしろ逆効果だったのです。現地の文房具店の商売を邪魔してしまい、経済的な自立を阻害していたことを知った税所さんは、深い反省をします。
「自己満足のチャリティとは正反対のことを行う」
この気づきが、彼の人生観を大きく変えました。本当に相手のためになる支援とは何か。現地の人たちと真剣に向き合い、彼らが本当に必要としているものを提供するにはどうすればいいのか。
この問いが、税所さんの原動力になったのです。
運命的な出会いがつなぐ縁
大学に入った税所さんは、その行動力を遺憾なく発揮し始めます。日経エデュケーションチャレンジへの応募など、様々な活動に猛烈なエネルギーで取り組みます。そして、その中で運命的な出会いが生まれました。秋田大学の坪井先生との出会いです。
坪井先生は、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が設立したグラミン銀行を日本に紹介した第一人者でした。税所さんの熱意と行動力を見た坪井先生が、グラミン銀行への道を開いてくれたのです。こうして税所さんは、19歳という若さでバングラデシュのグラミン銀行研究ラボの初の日本人コーディネーターになりました。
バングラデシュに渡った税所さんは、現地で貧困の根本的な原因を目の当たりにします。それは教育格差でした。首都ダッカには質の高い教育を受けられる環境がありますが、地方の農村部では優秀な教師が圧倒的に不足している。この現実を知ったとき、税所さんの頭に一つのアイデアが浮かびました。
「そうか。そんなに先生が足りないのなら、僕が学んだあの映像授業を取り入れたらどうだろう」
自分が偏差値28から救い上げてもらった、あのDVD映像授業のシステム。それをバングラデシュに持ち込めば、地方の子どもたちも都市部と同じ質の高い教育を受けることができるのではないか。こうして「e-Educationプロジェクト」が始まったのです。
税所さんは、このプロジェクトを「バングラデシュ版ドラゴン桜」と位置付けました。ドラゴン桜とは、落ちこぼれの高校生たちが東京大学合格を目指すという人気漫画ですが、税所さんの場合は、バングラデシュの地方の高校生たちが同国最高峰のダッカ大学合格を目指すプロジェクトです。
最初は半信半疑だった現地の人たちも、徐々にこのプロジェクトの効果を実感し始めました。映像で質の高い授業を受けた生徒たちの成績が向上し、実際にダッカ大学に合格する生徒も現れたのです。この成果は、ノーベル平和賞受賞者のユヌス博士からも激励を受けるほどの注目を集めました。
「黄色い目に、巨大な実験室があるなんてか。そして茅木は一人でそんなにくまなくて済む?何よりも素晴らしい話だ」
ユヌス博士のこの言葉が、税所さんの取り組みがいかに価値のあるものかを物語っています。
ここで改めて考えてみると、税所さんの物語には美しい循環があることがわかります。
彼は偏差値28の落ちこぼれだったとき、多くの人に支えられました。学校の先生が諦めずに支えてくれた。DVD映像授業という革新的な教育システムが彼を救った。秋田大学の坪井先生がグラミン銀行への扉を開いてくれた。そして今度は、税所さんがその恩を、バングラデシュの子どもたちに返しているのです。
しかも、その方法は自分が救われた方法とほぼ同じ。映像を使った質の高い教育の提供です。これは単なる偶然ではありません。自分が本当に困っていたとき、何によって救われたかを身をもって知っているからこそ、本当に効果的な支援ができるのです。
前へ進み続ける人間の強さ
この循環の美しさは、私たちにも大切なことを教えてくれます。
今、誰かに支えられているなら、いつかその恩を別の誰かに返していけばいい。恩送りという言葉がありますが、まさにそれが世界を変える力になるのです。
そして何より印象的なのは、税所さんの前向きな姿勢です。
「不可能はないんだ!!」「挑戦することを恐れない!!」「バングラデシュの若者から元気をもらいました。ありがとう」
この言葉からは、彼の溢れんばかりのエネルギーと希望が伝わってきます。
そんな声が並んでいた僕とも仰っているのが非常に印象的でした。しかし、このエネルギーの源は何でしょうか。
それは、前に進み続けることの力なのだと思います。とにかく前のめりに、一歩ずつでも前に進んでいく人間には、細かいことを気にしている暇がありません。
むしろ、そのこと自体がある種の幸せなのかもしれません。自分の役割を見つけ、それに向かって全力で走り続ける。そんな人間の強さを、税所さんは体現しているのです。
この本のタイトル「前へ!前へ!前へ!」は、まさに税所さんの人生哲学そのものです。過去の失敗や挫折にとらわれるのではなく、常に前を向いて歩き続ける。その姿勢が、彼を偏差値28の落ちこぼれから、バングラデシュで奇跡を起こす青年に変えたのです。
私たちも、きっと同じような力を持っているはずです。
大切なのは、世の中の基準で自分を測るのではなく、自分なりの文脈で状況を読み解き、主体的に行動していくことです。税所さんのように、偏差値という他人が作った物差しに縛られるのではなく、自分の経験や痛みを価値あるものとして捉え直す。そうすることで、理想の人生へと少しずつシフトしていくことができるのだと、この本は教えてくれます。
税所さんのストーリーが持っている本当の力。それは、どんな人でも、どんな状況からでも、人生を変えることができるという希望です。そして、一人の人間の前向きな行動が、最終的に多くの人の人生を変える力になるということ。
22歳の青年が綴ったこの疾走ドキュメンタリーは、年齢や経験に関係なく、情熱と行動力さえあれば世界を変えることができることを、私たちに教えてくれる貴重な一冊なのです。
社会を変えていく原動力を見つめるには、こちらの1冊「間に生きる!?『共感資本社会を生きる――共感が「お金」になる時代の新しい生き方』新井和宏,高橋博之」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。

まとめ
- 弱さが生み出した強さ――偏差値28の落ちこぼれだった税所さんが、DVD映像授業で救われた体験と、中学時代のチャリティ失敗から学んだ「真の支援とは何か」という問いが、彼の原動力となった物語です。
- 運命的な出会いがつなぐ縁――坪井先生との出会いからグラミン銀行への道が開かれ、バングラデシュでe-Educationプロジェクトを立ち上げ、ユヌス博士からも激励を受け、人生を変える力にしていきます。
- 前へ進み続ける人間の強さ――恩送りの美しい循環と、疾走する人間ならではの自由さ。世の中の基準ではなく自分の文脈で生きる主体性が大切なのです。
