【人の深みはひきこもりが生む!?】ひきこもれ|吉本隆明

ひきこもれ
  • 「ひきこもり」が問題になることがあります。そして、よくあるパターンが、ひきこもりを外に出していくこと。でも本当に、「ひきこもり」がいけないことなのでしょうか。
  • 実は、ひきこもって、自分の時間を持つことは、人に取って大切な時間かもしれません。
  • なぜなら、独りの時間に自分とむきあって、自分と言葉を交わす時間で、人は深みが出てくるのです。
  • 本書は、作家であり、ご自身もひきこもりであると称する吉本隆明さんが、ひきこもりが一方的に悪いものとして語られている今を問題視しながら、ひきこもりの効用について語ってくれています。
  • 本書を読み終えると、日常生活の中で、自分と向き合う時間をもっと持って、自分と対話をしてみたい気持ちが深まるでしょう。

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ひきこもりには2種類ある

ひきこもりには2種類あると思います。ひどい引っ込み思案だったり孤独癖があったりして、どうも世の中とうまく折り合えず、一人でいるのが楽なんだよという人たち。そして、ある限界を超えて病気の範疇に入ってしまっている人たち。

第1章 若者たちよ、ひきこもれ

前者は、とくに問題がありません。昔からいたし、当人にとってひきこもりの時間が必要なのだからそうしているのであって、それを邪魔してはいけないです。でも、後者は、専門医に見てもらいましょう。

いまの世の中の論調は、こうしたひきこもりを分けることなく、ひとまとまりで全部ダメ!と決めつける風潮にあります。コミュ力とか、社交性とか、明るさとか、どうもそっちのほうが善で、反対はダメというような感覚に世の中がなっているのが、いかがなものかと思います。

なぜか。

よくよく考えていくと、ひきこもりの時間はとても豊かな時間であるとも言えるのです。

ひきこもりが生み出すもの

一人になって自分と向き合う長い時間をもつことが何をもたらすかについて、「第二の言語」という考え方にもとづいて、説明してみようと思います。他人とコミュニケートするための言語ではなく、自分が発して自分自身に価値をもたらすような言葉。感覚を刺激するのではなく、内臓に響いてくるような言葉――。ひきこもることによって、そんな言葉をもつことができるのではないか、という話です。

第1章 若者たちよ、ひきこもれ

伝達を目的としないで、自分自身との対話を目的とする言語を、吉本隆明さんは、第二の言語と呼びます。この第二の言語の効用は、自分自身の内蔵(心)にひびくような言葉で、自分との対話を可能にします。そうして、対話をする中で、価値がうまれると言います。

反対に、第一の言語は、脳が優位に働き、伝達を目的として、意味を交換するような言葉です。

ひきこもって、第二の言語で自分と対話をしている中で、価値が増殖し、そして、豊かな時間・豊かな自分が育まれていきます。

「孤独」をとことんつきつめて、その上で風通しやっていくというのが、理想です。

ひきこもりにも社会への見立ては必要

ひきこもりはちっとも悪くない。文学の本質も変わらない。けれども、ひきこもってはいても、いつでも社会が今どうなっているのかを自分なりに把握しておかなければ、相当危ないんだと思うようになりました。
社会全体をこういうふうに捕まえるのが一番自分らしいんだ、というビジョンを絶えずもってないと、文学も駄目なのではないかということです。

第4章 ぼくもひきこもりだった

吉本隆明さんは、戦中にはひたすらに自身の好きな作家の本を読んでいたといいます。太宰治や堀辰雄など。でも、こうした作家が戦後にものを書かなくなったといっています。

こうしたインパクトはご自身にもあって、それまで戦争に突き進んでいた社会と、敗戦からいっきに戦争反対・平和を賛美する社会に180度変わってしまった社会のギャップに途方に暮れた感覚を覚えたといいます。

孤独は、決して社会からの決別ではありません。

第二の言語をもって、社会への見立てを深めていく時間が「孤独」であるとも言っていいのではないでしょうか。

むしろ、孤独のなかにひきこもることによって、社会と積極的に関わる姿勢を保ち続けることになるのです。

いま、社会はどんな方向へ向かおうとしているのか、何をめざしているのか、社会へのビジョンを自分なりに見極めておくことが大切です。

まとめ

  • ひきこもりには2種類ある――孤独が好きな人と、病気の人。これをひとかたまりにとらえて「ひきこもりはダメ!」としてはいけません。
  • ひきこもりが生み出すもの――ひきこもる孤独のなかで、第二の言語;内蔵(心)にひびくような自分のための対話の言葉で、自分の価値を深めて、豊かなにしていくことができます。
  • ひきこもりにも社会への見立ては必要――孤独の中で社会への見立てを続けていきましょう。むしろそれは、積極的に社会と関わることになるのです。

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