【価値があるとは、そもそも何か?】教養としてのお金とアート|田中靖浩,山本豊津

教養としてのお金とアート
  • 教養としてのアートが注目されています。また、新しい働き方に際して、個人の価値についても敏感でありたい世の中です。
  • 実は、アートとお金の接点に横断的に触れることで、理解がさらに深まります。
  • なぜなら、アートをお金で語ることはタブー視されていますが、実は、アートがその輝きを保つためにはお金の存在が不可欠であるのです。
  • 本書では、会計士・コンサルタントとして数多くの独自視点の著書を発表し続ける田中氏と、東京画廊代表の山本氏が互いの専門分野の距離感をはかりながら、新しい論点を紡いでいきます。
  • 本書を読み終えると、教養としてのアートの世界を俯瞰できるだけではなく、価値や価格への向き合い方、そして自分自身の価値についての考えるヒントを得ることができるでしょう。

区切ることの大切さ、アート、会社、個人。

山本 法人の永続性と対照的に、アーティストの人生は有限で区切りがありますが、逆に言えば区切らないと価格に転化できないということでもあると思います。死は区切りだから、アーティストの実存を区切るからこそ作品の価値が生まれる。会計も今年度の決算を出して税金を納めたから次に進めるのであって、区切らないと定量化できないという共通性がありますね。

アートも会社も区切らないと評価できない

区切ることで、人は価値を認識することができます。

時系列的な区切りが価値を認識するには指標となります。

さらに時系列だけではなく、私、あなたという区切りも意味の根源になるでしょう。

私が持っていて、あなたがもっていないこと、逆に、あなたが持っていて、私が持っていないこと、をそれぞれが私、相手という区切りをまたいで認識することで、そこに交換が生まれるはずです。

山本 それは「切断」ということと関係しています。さきほど「文明とは区切り」であると言いましたが、簿記も、あるいは国家という枠組みも、一種の区切りです。そして、国家を区切ることによって「歴史という区切り」が生まれ、室町時代とか戦国時代といった区分が出てくる。そうした区切りの最大のものが貨幣だと思います。

ダ・ヴィンチにはなぜ未完の作品が多いのか

また同時に、人類学の「贈与」と「交換」を思い浮かべました。プレゼントすることで、つながりを保つ贈与、一方、お金を払って繋がりを打ち切る交換が、人類学で議論されてきたテーマのひとつです。

過去の投稿「【いかに公平な世界をつくる?】うしろめたさの人類学|松村圭一郎」もぜひ合わせてお読みください。

個人が自立して初めて価値が生まれる。

田中 (中略)個人の自立が前提となって、価値や価格の議論が始まります。近代社会では自立している個人が価値をつくり、それを他人も必要とすれば価格が生まれるのです。自分がつくったものを他人が認めないと、価値や価格にはならない。だから価値や価格は「社会関係」であると言えます。

個人が自立して初めて価値は生まれる

つながるからこそ、価値が認識されます。だからこそ、人は繋がり合わなくてはいけないのです。

しかも、会社組織の人間としてつながるのではなく、「個人」と「個人」が繋がり、互いの個性も含めた価値を直接的に認識するそんな瞬間がとても大事なのだと思います。

日本人ビジネスパーソンの笑い話として、自分は部長職ができるとか、課長職なら転職したいというようなオファーを出すというものがあります。

でもこれって、本来的には、おかしいですよね。

どんな貢献ができるかを、自分の言葉で説明できるかどうかに敏感になりたいものです。

なぜいま「個人」が大切と言われるのか?

山本 人間様ではなく、機械様がご主人になってきた。
田中 そうです、機械に従属して人間が働くようになったのがチャーリー・チャップリンの『モダン・タイムス』時代です。大企業のサラリーマンであるかぎり、自分の倫理・道徳よりも上司が何を言うかが気になります。そのなかで個として倫理観が薄くなります。いまのようにガバナンスやディスクロージャーのプレッシャーもあると、ますますその傾向が強まります。個が組織カプセルに包まれた存在になってしまった。

なぜいまは「個人が大切」と言われるのか

組織のカプセルから飛び出して、自分自身の価値と向き合うことが、これからのキャリアビジョンにはとても大切なのだと思います。

美術も公になることで、価値が認められると言います。これと同じように個人も、人と出会いながら、どんどん公になって、「価値の転換」をしていかないといけないです。

まとめ

  • 区切ることの大切さ、アート、会社、個人。――区切ることで、価値を認識することが可能になります。
  • 個人が自立して初めて価値が生まれる。――個人が区切られて、他者と相対する中で、価値と価格のすり合わせが発生します。
  • なぜいま「個人」が大切と言われるのか?――新しい時代において、個人の価値をひとりひとりが敏感になって、社会との接点を見つけられるかがポイントです。

自分自身の価値に敏感になりたいと思いました。そのためにも、まずは、アートを描くように自分の中に蓄えを作って、そうしながらも、人と出会いながら、価値の転換をはかっていく、両輪が大切だと思えました。

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