みなさん、こんにちは。増田みはらし書店・店主の増田浩一です。
私は、広告会社で内外連携のもと新規事業を生み出していくインキュベーションセンターマネージャーの役割をいただきながら、中小企業診断士としても活動しております。
#考えるノート と題して、週に1回、私がさまざまなご支援のもとで、考えたことや、経営者や専門家の方からヒントを頂いたことについて、まとめて発信をしております。
次の有名なフレーズから今回の #考えるノート を書き進めていきましょう。
「ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスでトルネードが発生する」
気象学者エドワード・ローレンツが1972年に発表したこの概念は、初期条件のわずかな違いが、時間の経過とともに予測不可能な大きな変化をもたらすという「カオス理論」の象徴となりました。
バタフライエフェクトとは何か?
バタフライエフェクトの本質は、「非線形性」にあります。通常の因果関係では、原因と結果の規模は比例するものです。
しかし非線形のシステムでは、わずかな入力の違いが、指数関数的に拡大され、まったく予測不可能な結果を生み出します。
ローレンツがコンピュータシミュレーションで気象予測を行っていた際、小数点以下6桁目の数値のわずかな切り捨てが、まったく異なる天気予報をもたらすことを発見したのです。
これが「初期条件への敏感な依存性」として知られる現象です。
ここで、どういう立場に立つかということを自問自答してみましょう。
2つの考え方に立てること、それを選択できることに、気が付きます。
- どうせ、カオスで何をやってもわからないのだから、何もやらない。
- カオスであっても、自分がコントロールできることがあるので、それに集中する。
私は、勇気を持って、2つ目を選びたいなと思います。
自分がコントロールできることを選別するためには、どんな発想や着眼点が大切かを、引き続きみていきましょう。
経営における「蝶の羽ばたき」の接点を探る?
経営やプロジェクト運営も複雑な非線形システムです。
日々の小さな行動や決断が、気づかぬうちに積み重なり、やがて大きな成功や失敗を生み出していきます。
負のバタフライエフェクト — 小さな損失の積み重ね
例えば、こんな計算をしてみましょう。
1人が1日たった1分の無駄な作業をしているとします。1分なんて大したことはないように見えます。しかし、1,000人規模の企業だと、どうなるでしょうか?
- 1,000人 × 1分 = 1,000分 = 16.7時間/日
- 16.7時間 × 20営業日 = 334時間/月
- 334時間 × 12ヶ月 = 4,008時間/年
これは正社員2人分の年間労働時間に相当します。つまり、「たった1分」のムダが、年間で約2名分の人件費という膨大な損失につながるのです。
また、会議の開始が平均5分遅れる組織文化があるとしましょう。10人が参加する会議なら、1回につき実質50分の労働時間が失われます。これが週3回、年間を通じて続くと、約130時間、つまり約16営業日分の損失になります。
こうした「小さな遅れ」「小さなミス」が組織内で許容される文化は、やがて大きな非効率や重大な失敗へと発展する可能性があるのです。
正のバタフライエフェクト — 小さな改善の力
一方で、小さな改善活動も同じ原理で大きな効果をもたらします。
たとえば、日々の業務で使うエクセルシートの操作手順を見直し、1操作あたり10秒短縮できたとします。1日20回その操作を行う従業員が500人いれば、
- 10秒 × 20回 × 500人 = 100,000秒 = 27.8時間/日
- 27.8時間 × 20営業日 = 556時間/月
- 556時間 × 12ヶ月 = 6,672時間/年
これは約3.5人分の年間労働時間です!!
「たった10秒」の改善が、年間で数百万円の生産性向上につながる可能性があるのです。
人間の弱さを認め、習慣の力を味方につける!
「明日からがんばる」「今度こそ徹底する」――こうした意思の力に頼った改革がなぜ失敗するのか。
それは、人間は「本質的に弱い存在」だからです。
いくら優れた戦略や計画があっても、日々それを実行する習慣がなければ、絵に描いた餅になってしまいます。
ここに経営における最大の課題があります。
心理学的アプローチによれば、行動変容には「動機」「能力」「きっかけ」の3要素が必要です。
しかし長期的な変化を生むには、これらをさらに「習慣」へとアップデートさせる必要があるのです。
PDCAの「P」から見直す!
多くの組織でPDCAサイクルが回っていないのは、そもそも「P(計画)」が適切に設計されていないからではないでしょうか。
- パーパス(目的)の明確化
なぜそれをするのか。組織と個人のパーパスが共鳴するとき、小さな習慣は自発的に生まれます。 - 問題の本質的理解
表面的な問題に対処するのではなく、その根本にある本当の問題は何か。この問いを通じた対話が、真の解決策への第一歩となります。 - 課題の具体化
問題を解決するために「誰が」「何を」「いつまでに」するのか。曖昧さを排除し、行動可能な形に落とし込むことで、習慣化への道が開けます。
また、問題と課題を混同しないこともポイントです。問題とは、文字通り理想と現実のギャップという問題を示し、課題というのは、そのギャップを埋める論点のことです。 - KPIの設定と共有
進捗を測定する指標を他者と共有することで、責任感が生まれ、小さな習慣を維持する力となります。
4つ目には、あえて、共有と書きました。
効果的なPDCAを回すためには、以下の要素を他者と共有・対話することが不可欠だからです。
ここでも、私は、人の弱さを前提にした取り組みを強調してみたいと考えました。
自分一人では難しいことでも、人とともにあれば、一緒に進んでいくことができます。
対話を通じた共創の力とは!?
これらの要素を「一人で抱え込まない」ことが重要です。
チームで対話しながら進める習慣づくりでは、一人の意思ではなく、共に考え、共に行動する仕組みが、持続可能な変化をもたらします。
人間は社会的動物です。
「他者に宣言すること」「チームで取り組むこと」は、習慣形成の強力な原動力になります。さらに、他者との対話は盲点を発見し、より良い解決策を生み出す源泉にもなります。
ひとりではなく、誰といくか?をテーマにした1冊は、ぜひこちら「【学校で教えてくれないWHOの話とは!?】WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」|ダン・サリヴァン,ベンジャミン・ハーディ,森由美子」をご覧ください。社会の本質を考える機会をご提供してくれます。

小さな習慣から大きな変化へ!!
良いバタフライエフェクトを起こすためには、「正しい小ささ」を見極めることが重要です。
大きすぎる目標は挫折を招き、小さすぎる目標は変化をもたらしません。
例えば「会社の文化を変える」というのは大きすぎますが、「毎朝のミーティングで一人一つ良かった点を共有する」という習慣なら、やがて文化に影響を与える可能性があります。
シリコンバレーでよく言われる「小さく始めて、素早く失敗し、継続的に改善する」という考え方も、バタフライエフェクトの応用と言えるでしょう。
あと、これは、非公式発言なのですが、組織を動かすためには、やっぱり計画よりも「正しい小ささ」に従って“やっちゃう”ことだと思っています。
本当に信じていることがあれば、やってしまえばいいと思います。この現代であれば、お金がかからない方法を見つけることはたくさんできます。お金をかけられないなら、知恵をかける、時間をかける、仲間と共に手を組む、あるいは、誰かにお金を出してもらう。
そういう考えを巡らせることだってできます。
何より、そういう考えをスパイラルさせていくことこそ、アントレプレナーシップを自分の中に育みます。
アントレプレナーシップとは、残念ながら机上ではなく、実践の中でしか磨かれないものだからです。
会社や組織の規定があって、計画書を作らないといけないということがあれば、それをマイルストーンとして反対に活用するくらいの気概と着眼点があるくらいのほうが、実はプロジェクト推進というのは、うまくいくんじゃないかな?と最近特に考えています。
そのためには、型にはめるマネジメントではなく、ともに考える、どんな壁打ちでも一緒に前を見るリーダーシップが大事なのだと思っています。
せっかく活動して、良い結果や課題が見えても、会社や組織のロジックではかられては、やる気をそがいしてしまいますからね。
明日ではなく今日の一歩をたいせつに!!
あなたの組織に必要なのは、壮大な改革計画ではなく、今日からできる小さな習慣かもしれません。
それは朝のチームミーティングの質を上げることかもしれませんし、顧客からのフィードバックを記録する仕組みかもしれません。
大切なのは、その小さな一歩について、パーパスを共有し、問題の本質を理解し、具体的な課題とKPIを設定すること。
そして何より、それを一人で抱え込まず、対話を通じて共創していくことです。
「壮大な計画より小さな習慣。一人の意思より共有された目的。」
これこそが、バタフライエフェクトを経営に活かす真髄なのかもしれません。私たちの日々の小さな選択が、やがて未来を形作る大きな力になることを忘れないようにしたいものです。
経営や事業創造においては、まず、なぜするのかを検討し、その中で、問題の特定や課題の整理が大切になります。こちらの1冊「大切なことに対して、資源を集中させていくために!?『イシュー思考』和氣忠」は思考の枠組みとして非常に優れた考えの整理をもたらしてくれます。ぜひご覧ください。
