この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
【本書の要約】違和感を封印せず観察する力が、組織を変える。勅使川原真衣が説く、能力主義を超えた関係性の作り方。「何か変」という感覚を入口に、それぞれの「正義」を理解し、凸凹を組み合わせる。決めつけない姿勢が、一人ひとりが自分のまま働ける組織をつくる実践ガイド。
- 職場で「何か変だな」と感じたとき、あなたはその感覚を口に出せますか?
- 実は、その違和感こそが、組織が変わる最初の兆しなんです。
- なぜなら、違和感は私たちが本当に大切にしていることと、目の前の現実がずれた瞬間に発動するサインだから。
- 本書は、組織開発の専門家・勅使川原真衣さんが、違和感を封印せず観察する力を磨き、能力主義を超えて人と人を組み合わせる実践的な方法を示したガイドブックです。
- 本書を通じて、「決めつけない」という姿勢から始まる、一人ひとりが自分のまま働ける組織の作り方を学ぶことができます。
勅使川原真衣さんは、組織開発の専門家として、多くの企業や組織の現場に関わってきました。その経験の中で彼女が目にしてきたのは、共につくるのではなく、自分の世界の「正しさ」を押しつけ合う組織の姿でした。それぞれが「正しさ」を生きているからこそ、違いが衝突し、違和感が積もり積もって発酵していく。そんな現場を数多く見てきたのです。
本書は、その違和感を封印するのではなく、観察のスキルとして磨き上げることで、組織を変えていく実践的なガイドブックです。
勅使川原さんが提唱するのは、能力主義による序列ではなく、一人ひとりの凸凹、「持ち味」の違いを組み合わせることで存在価値を発揮する組織づくり。
アクセルがブレーキに「俺みたいになれ!」と言うことがナンセンスであるように、みんなが同じである必要はない。誰がどの機能を持っていて、どう組み合わせてやっていくか、それがすべてだと彼女は言います。
違和感は組織が変わる兆し
「わかる!うまく言えないけど」
「◯◯さん、ちょっと今のはさすがに傷ついたんですが!」
「それはさすがにムリですってば。どうします?」
こんな言葉が飛び交っている職場は、いい職場なんです。
なぜなら、違和感が積もり積もって、発酵していかないから。
言われた瞬間にぐさっとくる感覚、ハッとする感覚をちゃんとつかむ。
そして、それをとりあえずテーブルに置く。
多くの職場では、この素朴な「気づき」が封印されています。
「気のせいかもしれない」という思いが、違和感を察知した瞬間に私たちを襲うんです。
でも、数学者の伊原康隆は、「何か変」という感覚の重要性を指摘しています。
それは「ふっと感じる重要な作用」であり、「他人を傷つけかねない追求の行き過ぎに気づける」手がかりにもなる。
つまり、「何か変」は不穏でありながら、大事なサインでもあるんです。
違和感があると認めることは、「気のせいかもしれない」との戦いでもあります。
私たちは、違和感を感じた瞬間に、それを無視しようとします。
「自分の考えすぎだ」「こんなこと言ったら変に思われる」と。
でも、違和感を察知した瞬間にこそ、組織が変わる兆しが見えているんです。
なぜなら、違和感は自分にとって大切なこととずれた瞬間に発動するものだから。
自分にとって大切なこととずれた瞬間に、違和感が発動するのです。
この視点が重要なんです。
違和感は単なる気分の問題ではなく、自分の価値観と現実のギャップを教えてくれるセンサーなんです。
組織をどうこうする前に、自分を観察し、何を「当たり前」と思いやすいのかを知っておく必要があります。
そのために必要なのが、「観察」という一生モノのスキルです。
これは、自分自身と相手へのすべてのコミュニケーションの土台となる腕を上げていくこと。
違和感に気づいたら、3つのステップを踏みます。
ステップ①は、違和感に気づくこと。
ステップ②は、複数の解釈を当ててみること。
ステップ③は、対話の糸口になる仮説を立てること。
この3つのステップの中で、最も大切なのは①の「気づく」なんです。
違和感を感じることは、自分という人間が環境次第でどんな反応を示すのかを把握する第一歩。
自分は何が許せて、どんな違いについては我慢ならないか。
それをも自覚することが、組織開発の第一歩なんです。
多くの組織では、この違和感が「決めつけ」によって封印されています。
「この人はこういう人だから」「若い人はみんなそうだから」と。
でも、本当は問題の本質は別のところにあります。
本当はタスクの与え方で解決できるはずのことなのに、そこが明文化されてない。ゆえに相手の態度から良し悪しを評価してしまっている。
上下の関係などで、支持されているかどうか、期待されているかどうか、好かれているか嫌われているかといった評価が絡むと、流せなくなってしまう。
ものわかりがいいって思われないといけない。
察しろよと感じ取ってしまうことで、聞きづらいというのもそう。
部下からすると、「本当は聞かないでできたほうが上司も楽だし、評価されるんだろうな」と思うから、溝が深まってしまうんです。
そもそも、こうした配慮って、残念ながら独りよがりな前提なんです。
聞かないほうが優秀なんじゃないかとか、相手が忙しそうで話しかけづらいって、そう考える本人が忙しいときに話しかけられるのが嫌なだけということも。
世の中は自分と同じように考える人ばかりではありません。
その職場の「当たり前」「ちゃんと」「普通」が一体どういう言動なのかを言語化できていないことこそが問題なんです。
違和感を封印せず、「来たな〜」「またか〜」というニュアンスで向き合う。
拒絶や排除をせず、隣に腰掛けるイメージで。
そうやって違和感と付き合い続けることで、組織は少しずつ変わっていくんです。
「正義」は人の数だけある
「決めつけ」の奥底には、それぞれの「当たり前」「ちゃんと」「普通」があります。
人はみな違う色のメガネをかけているんです。
本来、物事に色はついていません。
コナンくんではないですが、「真実はいつもひとつ」。
ところが、赤いメガネをかけている人には世界が赤く見え、青いメガネをかけている人には世界が青く見えます。
同じものを見ても、「解釈」が変わるんです。
人はみな違う色のメガネをかけている
この解釈のクセの違いこそが、組織のあらゆる問題の根っこにあります。
ある刺激に対してどう反応するかは、人によってばらばら。
それはつまり、同じ情報や状況に対しても、その人の解釈のクセによって目に見える言動が分かれるということなんです。
大体の問題は、正義のぶつかり合いです。
批評家の東浩紀は、「訂正する力」が大切だと言います。
どんなに頭が良かろうが、経験が豊富だろうが、間違えることはある。
そのときに、「ごめんね、間違ってたわ」と言えるかどうか。
人と人とは違うし、情勢も変わるし、わからないことは無限に発生しつづけます。
だから、お互いを否定はしない。
否定はいらない。
否定ではなく「訂正」すればいいと考えます。
「僕も正しい答えがわからなくてさ。だから一緒に考えてくれない? ぜひ、思いついたことを聞かせてほしい」
こんなふうに素直に言えるリーダーこそ、真の「優れたリーダー」なんです。
良いコミュニケーションとは、互いの見え方の「訂正」のし合いとも言えます。
相手の状態を「観察」し、何も決めつけずにただ受け取るということが基本姿勢としてすごく大切なんです。
つい「この人はパワハラ気質」とか、「メンタル弱っ」とか思ってしまいそうになるかもしれませんが、それは早計。
だって、相手が何を考えているか、どんな気持ちでその言動に至ったかは知らないからです。
ここで重要になるのが、3つのステップです。
①自分の解釈のパターンを知る
②相手の解釈のパターンを知る
③それらを踏まえて、組み合わせる
この①〜③までの道中、何はなくとも大事なのが、すべてのコミュニケーションの土台となる自分自身と相手への「観察」の腕を上げていくことなんです。
「正義の反対は正義」という視点を持つことで、私たちは相手を理解する新しい入口を手に入れます。
「どういう正義があれば、こう考えるのだろうか?」
この問いを持つことで、決めつけずに相手を見ることができるようになるんです。
たとえば、子どもがテストで100点を取ってきたとします。
つい「偉いね」と声をかけたくなるかもしれません。
でも、「100点を取って偉いね」を裏返すと、「100点を取らないと偉くない」ということになります。
子どもは大人が思っている以上に敏感ですから、そのことにちゃんと気づきます。
もし子どもがテストで100点を取ってきたら、こう言えばいい。
「そうなんだ、やったじゃん」
「100点だったんだ、いっぱい勉強したんだね」
無理にほめることはありません。
ただ、受け止めてあげればいいんです。
これは職場でも同じなんです。
評価や序列づけではなく、ただ受け止める。
その人の「正義」を理解しようとする。
ジャッジしない自分になれたとき、私たちは「自分のまま働ける」んです。
とはいえ、違和感がある状態は気持ち悪いというのもそのとおりです。
一体、どう付き合ったらいいのか?
いつもそこにいる存在として、「来たな〜」とか「またか〜」というニュアンスで向き合う。
拒絶や排除をせず、隣に腰掛けるイメージです。
これは「異質への開放性」とも呼ばれる姿勢です。
「なんか、この人苦手だな」と思ったとき、そこで相手を拒絶するのか、それとも興味を持つのか。
この分かれ道が、組織の未来を決めるんです。
能力ではなく組み合わせで考える
人には凸凹があって、コミュニケーションは苦手だけど、専門的なスキルを持っている人。
素直さには欠けるけれど、行動力がある人。
主体性があるとは言えないけれど、コツコツと忍耐強く仕事に取り組める人。
さまざまな特徴を組み合わせることで、会社は回っています。
人にはみな、「あれはできてもこれはできない」という大前提があるんです。
社会や組織はレゴブロックの組み合わせのようなもので、個々人の特徴へのジャッジや序列なしに、目的(何をつくりたいのか?)に沿って組み合わせることが大切です。
これが、本書が提示する最も重要な視点です。
存在価値を発揮する組織とは、この個人の凸凹、「持ち味」の違いが噛み合っている組織に他なりません。
車は、それを構成する機能が揃って初めて走るものです。
ですから、アクセルだけがたくさんあっても意味がないし、アクセルがブレーキに「俺みたいになれ!」なんて言うことは、ナンセンス。
みんなが同じである必要はなく、誰がどの機能を持っていて、どう組み合わせてやっていくか、ということがすべてなんです。
ここで重要になるのが、ダイナミックスキル理論という考え方です。
簡単に言うと、同じ人でも、誰と一緒にいるか、どんな課題に取り組むか、その日のコンディションはどうかによって、発揮できる能力は大きく変動するんです。
「相手はXX力が低い」と捉えるのか、「相手は今この環境ではXXを発揮しにくい状況にある」と捉えるかでは、出すべき助け舟が変わってくる。
人間の能力発揮は関係性の中で構成されます。
「誰と一緒に仕事をするか」で大きく変わってくるんです。
抽象を整理するのが得意な人と具体を詰めるのが得意な人、思い切って前に進められる人と調整が上手な人。
こうしたペアによって、世の中の偉業は成し遂げられてきたはずです。
相手を理解することも、そう簡単ではありません。
だからこそ、「どういう正義があれば、こう考えるのだろうか?」「誰と組むと、この人は活躍しそうだろうか?」をじっくりと観察することが必要なんです。
「勝者」の人たちは、今の社会の仕組みで生きやすい人たちかもしれません。
しかし同時に、苦しんでいる人であるとも思うんです。
能力主義を内面化し、他人と自分を比較して、「自分にはこの能力が足りない、あの能力も足りない」と、終わりのないラットレースを繰り広げている。
自分以外の誰かを蹴落とさないと自分の居場所がつくれない。
そんな能力主義の呪縛から解放されるために、私たちは「組み合わせで考える」という視点を持つ必要があります。
Playfullnessには4つの次元があります。
①他者指向性(緊張を和らげ、職場の雰囲気を明るくする)
②軽快さ(計画通りにこだわらず、その場のアドリブを楽しむ)
③知的探求(困難な問題をパズルのように楽しむ)
④異質への開放性(今までにないパターンと遭遇しても拒絶せず面白がる)
特に④の異質への開放性が重要なんです。
違和感を楽しむ。
これが、組織を変える鍵になります。
違和感は、組織が変わる兆しです。
その違和感から、それぞれの「正義」を理解し、能力ではなく組み合わせで考える。
決めつけない。
この姿勢こそが、一人ひとりが自分のまま働ける組織をつくる第一歩なんです。
まとめ
- 違和感は組織が変わる兆し――「何か変」という感覚を封印せず、観察のスキルとして磨くこと。違和感は自分にとって大切なこととずれた瞬間に発動するサインです。それを「気のせい」として流すのではなく、「来たな〜」と隣に腰掛けるように付き合うことで、組織は少しずつ変わっていきます。
- 「正義」は人の数だけある――人はみな違う色のメガネをかけています。同じものを見ても解釈が変わる。大体の問題は正義のぶつかり合いです。だからこそ、否定ではなく「訂正」のし合い。「どういう正義があれば、こう考えるのだろうか?」という問いを持つことで、決めつけずに相手を理解する道が開けます。
- 能力ではなく組み合わせで考える――組織はレゴブロックの組み合わせのようなもの。アクセルがブレーキに「俺みたいになれ!」と言うことはナンセンス。人間の能力発揮は関係性の中で構成されます。能力主義の呪縛から解放され、「誰と組むと活躍しそうか」を観察することで、一人ひとりが自分のまま働ける組織がつくられていくのです。
この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。
