【サステナビリティの目指し方とは!?】田坂広志「21世紀の資本主義」を語る|田坂広志

田坂広志「21世紀の資本主義」を語る
  • 21世紀、私たちは何を指標に生きていくことが理想でしょうか!?
  • 実は、新しい資本主義を定義し直すことが良いかも。
  • なぜなら、これまでの資本主義はほんの100年のトレンドかもしれないからです。
  • 本書は、田坂広志さんの視点でこれからの新しい経済を説く1冊です。
  • 本書を通じて、新たな経済の論点を得られるでしょう。
田坂広志
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新たな経済のあり方とは!?

新型コロナウイルスの流行で、わたしたちは何を学ぶべきでしょうか・・。その発生と蔓延の背景に何があるのかから、新しい経済に対する示唆を得ましょう。

自然環境の破壊や地球の温暖化など、年々、深刻化する地球環境問題の解決が遅々として進まない背景は、自然保護や温暖化対策よりも利益拡大と経済成長を優先する、現在の資本主義の根本的な歪みがある。

まえがき

私たちは、新しい経済の論点を持たなくては、地球がいくつあっても足りません。経済の在りかたが大きく変わっていくであろう21世紀をあらかじめ俯瞰することで、生きる価値観のアップデートを行いましょう。

経済の在り方が大きく変わります。経済は、「ボランタリー経済」へと徐々に移行していきます。ボランタリー経済とは、自発性の経済のことで、人々が善意や好意など、自らの自発的意志によって行う経済活動のことです。

これを別の視点で説いてくれているのがこちらの投稿「【信用貯蓄を始めよう!?】なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?|山口揚平」の1冊です。

上記投稿もあわせてぜひご覧いただきたいです。

ボランタリー経済に対して、現在の資本主義社会において支配的なのが、人々が「貨幣」の獲得を目的として行う経済活動「マネタリー経済」です。

このボランタリー経済とは、実は、人類最古の経済原理でもある。

第4話 ウェブ革命は、ボランタリー経済を復活させる

貨幣経済が登場するまで、人々は、それぞれの信用をもとにした、物々交換を主流としていていました。さらにその前には、善意や好意によって貴重な財貨を相手に贈る「贈与経済」つまり、ボランタリー経済が人類のコミュニティを支えていました。

贈与の習わしは、文化人類学でも特に研究をされています。過去の投稿「【いかに公平な世界をつくる?】うしろめたさの人類学|松村圭一郎」もぜひご覧ください。

2つの理由から「ボランタリー経済」は影の存在でした。

1)経済活動が、家庭や地域という「狭い世界」に限定されていたから。
2)貨幣などで客観的に評価できない「目に見えない」経済活動だったから。

しかし、ネット革命とウェブ2.0革命が、この構図を打ち破る契機となりました。この革命の結果、ボランタリー経済が「広い世界」に解き放たれ、ウェブサイトという形で多くの人々の目に見えるようになったためです。

日本型経営は、もとよりこうしたボランタリー的要素を含んでいたと言えそうです。

というのも、

  • 「企業は、本業を通じて社会に貢献する」
  • 「利益とは、社会に貢献したことの証である」
  • 「企業が多くの利益を得たということは、その利益を使ってさらなる社会貢献をせよとの、世の声である」

というニュアンスを、日本の経営者は暗黙知として抱えて、事業を行ってきたのです。

この3つの言葉に象徴されるように、日本型資本主義は、米国型資本主義などとは異なり、本来、利益追求と社会貢献を対立的なものとは捉えてきてこなかった。

第7話 日本型資本主義が、世界の資本主義の進化を導く

利益と社会貢献を含んだ概念を身に着けて、経済活動を立て直していく視点を求めましょう。

5つの経済パラダイムとは!?

上記のように、ひとつめのパラダイムは、「貨幣経済」から「自発経済」への転換です。

1)「貨幣経済」から「自発経済」への転換

そして、これに続くパラダイム4つを見ていきましょう。

2)「操作主義経済」から「複雑系経済」への転換
日本の経営思想に古くから語られてきた様々な言葉、「右手に算盤、左手に論語」(渋沢栄一)、「売り手よし、買い手よし、世間よし」(近江商人)、「浮利を追わず」(住友家訓)などのように、企業の社会的に責任や社会貢献を重視する思想は、はるか昔から存在していました。そして、これらは、法律で定められているとか、そういうことではなく、「自律的規範」や「自発的使命」として存在していました。

3)「知識経済」から「共感経済」への転換
ひとりの人材が素晴らしい知識や知恵を生み出すためには、知識や知恵を持った人々との豊かな関係がなくてはなりません。「目には見えない4つの資本」が必要なのです。

  • まず、ある人材が、素晴らしい知識や智恵を生み出すためには、知識や智恵を持った人々との豊かな関係がなければならない。(関係資本)。 
  • そして、そうした豊かな関係を築くためには、何よりも、互いの信頼が求められる。(信頼資本)。 
  • さらに、そうした人間同士の信頼が生まれるためには、社会的な評判が重要な役割を果たす。(評判資本)。 
  • そして、互いに知識や智恵を共有し、新たな知識や智恵を創造するためには、その企業や組織に創造的な文化が不可欠である。(文化資本)。

これらの高度な「見えない資本」が蓄積共有されていくためには、最も重要になるのが「共感」です。

新たな知識や知恵は、共感がある場において生まれてくるからである。

第12話 「知識経済」は、「共感経済」へと進化する

4)「享受型経済」から「参加型経済」への転換
これまでの経済では、「生産者」と「消費者」という言葉が象徴するように、一方的な関係が主体でした。これからは、インターネットの力を借りて、相互に依存する関係性が深まっていきます。
ネット革命の進展に伴って「経済」や「文化」の分野においても、「直接民主主義」が実現していきます。

企業が消費者の「代理人」として、市場ニーズを調査し、ニーズにあった商品を開発し、市場に提供してきたが、それは、いわば「経済」の分野における「間接民主主義」と呼ぶべきものであった。

第15話 政治の民主主義から経済や文化の民主主義へ

これからの時代には、その商品開発やイノベーションのプロセスに、消費者が直接関与するようになります。あるいは、「文化」の分野においても、消費者が自らコンテンツを作り出し、発信する時代が到来しています。

5)「無限成長経済」から「地球環境経済」への転換
残念ながら、従来の経済学では、「地球環境経済」を提唱することは難しいです。

地球環境経済を提唱していくためには、従来の経済用語の定義をもう一度行う必要があります。

「経済」とはなにか?
「成長」とはなにか?
「豊かさ」とはなにか?
「幸せ」とはなにか?

  • 例えば、「経済」や「成長」という言葉を、単に「マネタリー経済」(貨幣経済)だけの成長ではなく、貨幣で評価できない「ボランタリー経済」(自発経済)や「知識経済」をも含めた成長として再定義できるでしょうか!?
  • 例えば、「資本」や「豊かさ」という言葉を、単に「貨幣資本」で評価される豊かさだけでなく、「知識資本」「関係資本」「信頼資本」「評判資本」「文化資本」「共感資本」などの、貨幣で評価できない資本をも含めた豊かさとして再定義することはできるでしょうか!?
  • 例えば、「幸せ」という言葉を、単に「現在の世代」の幸せだけでなく、「未来の世代」の幸せを含めたものとして再定義することはできるでしょうか!?
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5つの価値観の転換とは!?

こうした、パラダイムの転換に際して、私たちは、どのような価値観(ものさし)を持てばいいでしょうか。

1)第一は、「無限」から「有限」への転換です。
2)第二は、「不変」から「無常」への転換です。
3)第三は、「征服」から「自然(じねん)」への転換です。
4)第四は、「対立」から「包摂」への転換です。
5)第五は、「効率」から「意味」への転換です。

地球という有限のものごとを前提に、私たちの循環をどう作っていくのかを考えていく必要があります。また、変わらないことを前提にするのではなく、変化を前提にそれをどう受け入れていくのかを検討する必要もあります。

さらに、自然をどう征服するかではなく、自然とともに生活を作れるかを検討する必要さえ見えてくるでしょう。また、二項対立でものごとを理解するのではなく、清濁併せ呑むイメージで、どうしたらインクルーシブな立場でものごとを見られるかも、検討する必要があるでしょう。

速さ、大きさ、強さといった効率ではなく、「遅いこと」「小さなこと」「弱いこと」にも大切な意味があることにどうしたらアンテナを立てられるでしょうか。

謙虚さ、そして、寛容さ。
21世紀の世界に求められるものは、究極、その2つの価値に他ならない。

第20話 21世紀、日本が牽引する世界の新たな文明

まとめ

  • 新たな経済のあり方とは!?――ボランタリー経済が前提になります。
  • 5つの経済パラダイムとは!?――5つの視点で、経済の再定義が必要です。
  • 5つの価値観の転換とは!?――謙虚さ、そして、寛容さ。を目指す5つの価値観を知りましょう。
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