意味に気づくとは、すでにあるものに触れることだ。——「見えないものを読む経営」第15話

意味に気づくとは、すでにあるものに触れることだ。——「見えないものを読む経営」第15話の手書きアイキャッチ

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール


第2章の最後に、ひとつの問いを立てたいと思います。 意味に気づくとは、どういうことでしょうか。 新しく作ることではない。発見することでもない。 すでにあるものに、触れること。今回はそこから考えます。


第2章を通して、ひとつのことを考えてきました。

見えているものの下に、見えていないものがある。 出来事の下に、パターンがある。 パターンの下に、構造がある。 構造の下に、価値観がある。 そして価値観の下に、原体験がある。

氷山の一番底にあるもの。 それが、意味の源泉です。


では、意味に気づくとはどういうことでしょうか。

多くの場合、意味は「作るもの」として語られます。

パーパスを策定する。 ビジョンを言語化する。 ミッションを定める。

もちろん、それらは大切な作業です。 しかし私がこの章で見てきたのは、少し違う景色でした。

老舗企業の社員たちは、誰に教わるでもなく創業者の哲学を体現していました。 Z世代のメンバーたちは、問いを重ねるうちに自分の原体験に辿り着きました。

どちらも、意味を外から与えられたわけではありません。 すでにそこにあったものが、言葉になっただけです。

意味に気づくとは、新しく作ることではありません。 すでにあるものに、触れることです。


ここで、少し立ち止まって考えてみてください。

あなたが今いる組織には、どんな歴史がありますか。

創業者は、何を見てこの事業を始めたのか。 どんな痛みがあって、何を守りたかったのか。 長い時間の中で、何が受け継がれてきたのか。

それはもしかしたら、言葉になっていないかもしれません。 誰かの姿勢として現れているかもしれません。 会社の雰囲気として漂っているかもしれません。 あるいは、何を美徳とするかという暗黙の意識として、日々の判断の中に流れているかもしれません。

でも確かに、そこにあります。

誰にでも歴史はあります。 自分が生まれる前から、歴史はある。 自分が入社する前から、意味は流れていた。

だから読む価値があります。


意味に気づいたとき、何かが変わります。

Z世代のチームがそうでした。 お互いの原体験に触れたとき、同じスラックの一言が違って見えるようになった。 同じ会議の発言が、違う重さを持つようになった。 仕事のひとつひとつに、文脈が生まれた。

意味を知ると、世界の解像度が上がります。

これは組織の話だけではありません。

経営者が自社の原体験に触れたとき、戦略の見え方が変わります。 リーダーがメンバーの深層を読んだとき、言葉のかけ方が変わります。 一人の社員が自分のマイパーパスに気づいたとき、日々の仕事への向き合い方が変わります。

そしてもっと小さなところでも、変化は起きます。

朝、誰かからメッセージが届いたとき。 その人の原体験を知っていると、同じ言葉が違って聞こえます。 なぜこの人はこう表現するのか。 なぜこのタイミングで連絡をくれるのか。 言葉の奥に、その人の歴史が見えてくる。

意味を読むとは、そういうことです。


意味は、特別な人だけが持つものではありません。 どんな組織にも、どんな人にも、歴史があります。 だから誰にでも、意味はあります。

第2章のテーマは「深層には原体験がある」でした。

見えないものを読むとは、この深層に触れることです。 表面の言葉や出来事だけを見ていては、たどり着けない場所があります。

でも丁寧に耳を澄ませば、そこには確かに流れているものがあります。

価値観として。 文化として。 人の姿勢として。 そして、誰かの原体験として。

読む、とはその意味に触れることです。

第3章では、その意味を読んだあとの話をします。 読み取った意味を、どうやって戦略へと変えていくのか。 意味は、経営の力になります。

あなたの組織の深層には、どんな意味が流れているでしょうか。 そしてあなた自身の中には、どんな原体験が眠っているでしょうか。


第2章「深層には原体験がある」、今回で最終回です。 意味に気づくとは、新しく作ることではなく、すでにあるものに触れること。 誰にでも歴史はある。自分が生まれる前から、意味は流れていた。

次章(第3章)では、読み取った意味を戦略へと変えるプロセスに入ります。どうぞ引き続き、お付き合いください。


この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!