意味は作るものではなく、読むものだ。——「見えないものを読む経営」第13話

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この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール


意味は、作るものでしょうか。 多くの会社がビジョンやパーパスを言語化しようとします。 でも本当は、意味はすでにそこにあるのかもしれません。 今回は、深層の一番底にあるものについて考えます。


価値観には、源泉があります。

前回、氷山の一番深いところに価値観があると話しました。 でも価値観は、突然生まれるものではありません。 必ず、そこに至るまでの何かがあります。

その源泉を、私は原体験と呼んでいます。


創業者がなぜこの事業を始めたのか。 どんな痛みを見てきたのか。 何を守りたくて、会社を作ったのか。

そうした体験が、組織の価値観を形づくっています。

言葉になっていないことがほとんどです。 資料にも書かれていません。 でも確かに、そこに流れています。

日々の意思決定の中に。 何を優先し、何を後回しにするかという判断の中に。 誰が評価され、どんな行動が称えられるかという空気の中に。

原体験は、見えない形で組織に宿っています。


ここで、大切なことがあります。

原体験は、今いる人たちのものだけではありません。

自分が入社する前から、その会社には歴史があります。 創業者がいなくなった後も、その思いは組織の中に残っています。 自分が生まれる前から、意味はすでにそこにあった。

私はある老舗の会社と仕事をしていたとき、このことを強く感じました。

創業から数十年が経っていました。 創業者はすでに亡くなっていました。 しかし文化は、確実に存在していました。

それは言葉になって現れていることもあります。 社員の姿勢や振る舞いになっていることもあります。 あるいは、会社全体の雰囲気として漂っていることもあります。

形はさまざまです。 でもどの形であれ、そこには確実に何かが流れています。

何を美徳とするか、という意識です。

「うちはお客さんに絶対に嘘をつかない」 「品質で手を抜いたことは一度もない」

誰かに教わったわけではない。 マニュアルに書いてあるわけでもない。 でも、みんなが知っていた。

創業者の原体験が、時間をかけて組織の文化になっていた。 そしてその文化が、社員一人ひとりの判断の中に静かに生きていた。

それが原体験から生まれた意味の、組織への宿り方です。


意味を言語化しようとする企業は多くあります。

パーパスを作る。 ミッションを定める。 ビジョンを掲げる。

それ自体は大切な作業です。

でも、うまくいかないことも多い。 立派な言葉が額に入って壁に飾られ、日常の仕事とは切り離されていく。

なぜでしょうか。

意味を「作ろう」としているからかもしれません。

本当は、すでにあるものを丁寧に掘り起こす作業のはずが、新しいものを外から貼り付ける作業になってしまっている。

パーパスの言葉が美しければ美しいほど、現場との距離が広がっていく。 そんな光景を、私は何度も見てきました。

意味は、作るものではありません。 読むものです。 すでにそこにある何かに、触れるものです。


誰にでも歴史はあります。

個人にも、組織にも。 自分が生まれる前から、歴史はある。 自分が入社する前から、意味は流れていた。

だからこそ、読む価値があります。

新しく作ろうとする前に、まずそこにあるものに耳を澄ます。 その静かな作業の中から、本当の意味が少しずつ言葉になっていきます。

あなたの組織の深層には、どんな原体験が眠っているでしょうか。

そしてあなた自身の中には、どんな歴史が流れているでしょうか。


今回は、価値観の源泉である「原体験」について考えました。 意味は作るものではなく、すでにそこにあるものに触れること。 自分が生まれる前から、歴史はある。だから読む価値がある。 次回(第14話)は、この「意味はすでにある」を実際の対話の中で体感したエピソードをお話しします。言葉の奥を読んだとき、何が起きたのか。


この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

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