深層には、価値観という層がある。——「見えないものを読む経営」第12話

深層には、価値観という層がある。——「見えないものを読む経営」第12話の手書きアイキャッチ

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール


組織の問題は、表面に出ているものだけではありません。 その下に、もっと深い層があります。 では、その層には何があるのか。 今回は氷山モデルを使いながら、組織の深層を考えてみます。


前回、氷山の話をしました。

組織の問題は、水面に出ている先端にすぎない。 その下には、もっと大きなものが沈んでいる。

では、その「下」には、何があるのでしょうか。


氷山を、いくつかの層に分けて考えてみます。

一番上にあるのは、出来事です。

売上が落ちた。人が辞めた。会議が紛糾した。

私たちが日常的に「問題」として扱っているものです。

その一層下には、パターンがあります。

毎年同じ時期に売上が落ちる。 いつも同じ部署から人が辞める。

同じ議題で、何度も同じ議論が繰り返される。

気づいていないことが多いのですが、組織の中では同じことが繰り返されています。 一度きりの出来事ではなく、ある種のリズムとして刻まれている。

さらにその下には、構造があります。

評価の仕組み。情報の流れ。意思決定の仕方。部署間の関係。

こうしたものが、パターンを生んでいます。

そして一番深いところに、価値観があります。

この組織が、何を大切にしているのか。 何が正しいとされているのか。 何が評価され、何が無視されているのか。

言葉になっていません。 誰かが明文化しているわけでもありません。

それでも確かに存在していて、日々の判断のすべてに影響しています。


私がコンサルタントとして企業と向き合うとき、最初に見るのはこの「価値観の層」です。

ある会社では、「挑戦しろ」という言葉が壁に掲げられていました。 しかし現場の社員は、新しい提案をほとんどしません。

なぜか。

話を聞いていくと、少し前に新しい事業が失敗したことがありました。 そのとき、担当者が社内で厳しく責められた。 誰も「挑戦するな」とは言っていません。 しかし「失敗すると評価が下がる」という空気が、静かに広がっていました。

言葉では「挑戦」を掲げている。 でも価値観の層では「失敗は危険だ」というメッセージが流れている。

この矛盾を見ないまま「もっと挑戦を促そう」という対策を打っても、変わりません。 変わるどころか、社員はますます混乱します。


価値観の層を読むためには、出来事や言葉の表面だけを見ていてはいけません。

どんなときに人が動いているのか。 どんなときに議論が止まるのか。 何が「当たり前」として扱われているのか。 逆に、何が「言ってはいけないこと」になっているのか。

そうした細かな観察の積み重ねから、組織の価値観は少しずつ見えてきます。

それは分析ではなく、読むという行為に近いものです。

会議の中での発言の順番。 誰の意見が通り、誰の意見が流されるか。 休憩時間の雑談で出てくる言葉。 メールの返信の速さと丁寧さ。

こうした小さな観察が積み重なったとき、その組織が何を本当に大切にしているのかが、少しずつ見えてきます。


氷山モデルを知ると、問いが変わります。

「どう解決するか」から、「何が起きているのか」へ。
「何を変えるか」から、「何がそうさせているのか」へ。

表面の問題を解こうとすると、対症療法になります。 しかし深層の価値観に触れると、組織の何かが変わり始めます。

ただ、ここで一つの問いが生まれます。

価値観は、どこから来るのでしょうか。

組織が大切にしているものには、必ず源泉があります。 誰かの体験があります。 誰かの痛みがあります。 誰かの願いがあります。

価値観の、さらに下に。 もう一つの層が、静かに沈んでいます。

あなたの組織の価値観は、どこから来ているでしょうか。


今回は氷山モデルを使って、組織の深層にある「価値観の層」について考えました。 出来事の下に、パターンがある。パターンの下に、構造がある。構造の下に、価値観がある。 でも価値観には、さらに源泉があります。次回(第13話)は、その一番底にあるものに触れていきます。


この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

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