この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
序章に続き、第1章では、違和感と言葉というテーマについて考えました。違和感は思考の入口であり、言葉の裏側には本質が隠れている。第2章では、もう少し深いところに入っていきます。
ある会社の話をよく聞きます。 会議で問題を議論しても、解決しない。 施策を打っても、また同じ問題が出てくる。 なぜでしょう。 今回は「見えている問題」と「見えていない問題」について考えてみます。
会議が終わると、決まって同じ空気が流れます。
「また今月も売上が足りなかった」
「採用をもっと頑張らないといけない」
「部署間の連携を強化しよう」
対策が出ます。
担当者が決まります。
期日が決まります。
でも不思議なことに、同じ話が翌月もまた繰り返されます。
私はこの光景を、たくさんの会社で見てきました。
問題は解決されているはずなのに、繰り返される。 対策を打っているはずなのに、変わらない。
そのたびに思います。 何かが、見えていないのではないか。
このことは、広告会社で働いていた頃から感じていました。
クライアントからオリエンテーションを受けます。
課題が書かれています。 背景が書かれています。 ターゲットが書かれています。
でも先輩からこう教わりました。「書いてあることは、氷山の一角だと思え」
自分たちが言葉にできることと、本当に感じていることは、必ずしも一致しない。
人は自分の無意識を、そのまま言葉にすることができないからです。
オリエンテーションに書かれた課題の奥に、本当の課題がある。言葉にされたニーズの奥に、本当のニーズがある。
だからこそ、書かれていることだけを読んでいてはいけない。 書かれていないことを読む必要がある。
クライアントのこともそうですが、これは、クライアントが対象としている顧客についても同じことが言えます。例えば、調査をして何らかの声やデータを取得したとしても、文字通り捉えていても良い企画というのは、できないものです。
これは広告の仕事だけではありません。 経営の現場でも、まったく同じでした。
物事には、見えている部分と、見えていない部分があります。
海に浮かぶ氷山を想像してみてください。
私たちの目に入るのは、水面より上にある部分だけです。 しかし実際には、その何倍もの塊が水の下に沈んでいます。
組織の問題も、これに似ています。
会議に上がってくる「問題」は、水面に出ている先端にすぎません。
その下には、もっと大きな何かが横たわっています。
たとえば、人が辞めているとします。 それは表面に出ている現象です。 しかしその下には、評価のされ方への不満があるかもしれません。 さらにその下には、会社が何を大切にしているのか分からない、という感覚があるかもしれません。 そしてもっと深いところには、会社が本来持っていたはずの意味が、いつの間にか薄れていた、という事実があるかもしれません。
表面だけを見ていると、「採用を増やせばいい」という結論になります。
しかし深層を見ると、問いはまったく違ってきます。
「この会社は、何のために存在しているのか」
私が企業と向き合うとき、最初に注意を向けるのは「見えていない部分」です。
資料に書かれていること。 それは大切な情報ですが、それだけでは足りません。
この会社は、なぜこの事業を続けているのか。 この経営者は、何に引っかかりを感じているのか。 この組織が繰り返しているパターンは、どこから来ているのか。
そうしたことは、資料には書かれていません。 でも確かに、そこに存在しています。
人の言葉のなかに。 会議の空気のなかに。 創業からの歴史のなかに。
見えないものが、組織を動かしていることがあります。見えないものが、組織を止めていることもあります。
序章と第1章では、違和感と言葉というテーマについて考えました。 違和感は思考の入口であり、言葉の裏側には本質が隠れている。
第2章では、もう少し深いところに入っていきます。
違和感が示しているのは、何か。 表面の下には、何があるのか。 そして、その見えないものをどうやって読み取るのか。
経営の本質は、見えているものを管理することではないかもしれません。 見えていないものを読むことに、あるのかもしれません。
あなたが今、何度も繰り返している問題があるとしたら。 その下には、何が沈んでいるでしょうか。
今回は「見えている問題」と「見えていない問題」について考えました。 自己認識できる領域と、言葉にできる領域は違う。無意識の領域にこそ、本当の問題や価値が潜んでいます。 次回(第12話)は、その氷山の下に何があるのかを、もう少し具体的に掘り下げていきます。
この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。
