価値創造の「パラレルKPI」マネジメント:モチベーションとステージゲートで新規事業を成功に導く!!

価値創造の「パラレルKPI」マネジメント:モチベーションとステージゲートで新規事業を成功に導く!!

みなさん、こんにちは。増田みはらし書店・店主の増田浩一です。

私は、広告会社で内外連携のもと新規事業を生み出していくインキュベーションセンターマネージャーの役割をいただきながら、中小企業診断士としても活動しております。

#考えるノート と題して、週に1回、私がさまざまなご支援のもとで、考えたことや、経営者や専門家の方からヒントを頂いたことについて、まとめて発信をしております。

今回は、大企業における「新規事業」の成功確率を上げていくためのマネジメントについて考えていきましょう。

新規事業開発は、既存事業とは異なり不確実性への挑戦と長期的視点を必要とします。

確立された市場や顧客基盤がある既存事業と違い、新規事業では手探りの状態から価値を創造していく過程が求められるのです。そんな特性に適したKPI設計とマネジメントアプローチが、イノベーションの成功確率を高める鍵となります。

今回は、「1)個人の内発的モチベーションとパーソナル・ブランディング」と「2)ステージゲート型の新規事業の進捗管理」というふたつの軸(「パラレルKPI」)を中心に、効果的な新規事業開発チームのマネジメント手法をご提案したいと思います。

この2軸の視点は、私がこれまで様々な企業の経営者との対話や新規事業支援を通じて教えていただいた、あるいは、共に磨かせていただいた知見から生まれたものです。

まずは、新規事業開発の本質的理解から!

新規事業開発を成功させるために、まずはその本質を理解することが大切です。

内発的モチベーションが原動力:新規事業は単なる「組織の意思」から生まれるのではなく、個人の問題意識や熱意から発生します。「この課題を解決したい」「こんな世界を実現したい」という個人の強い想いこそが、困難や不確実性を乗り越えるエネルギー源となるのです。

あなたの組織でイノベーションを起こそうとするとき、まずはこの内発的なモチベーションを持つ人材を見出し、その想いに寄り添うことから始めてみることが欠かせません。

ないところからではなく、すでに組織の中には、こうした原石があるものだと信じてみることが何より大切になります。

「新規事業が、業務だから、アイデアをゼロベースで考えよう!」というのは、どうかな・・?と疑ってみてもよいです。すでに事業の種はある、それを見つけましょう。

長期視点の必要性:新規事業の収益化までには、想像以上に時間がかかることがほとんどです。短期的な収益指標だけで評価すると、芽が出る前に摘み取ってしまいかねません。

中長期的な価値創出プロセスを評価する視点を持ち、短期的な結果に一喜一憂しない姿勢が重要です。大切なのは、着実に前進しているかどうか、そして学びを蓄積できているかどうかという点なのです。

そのためには、後述しますが、確実に進んでいるということを理解するためのKPIが欠かせないのです。

ピボットの重要性:市場検証を繰り返す中で、当初の仮説からの方向転換(ピボット)が発生するのは自然なことです。

むしろ、最初の仮説のまま突き進むことの方が危険かもしれません。

この変化に柔軟に対応しながらも、核となる価値提供を見失わないバランス感覚が求められます。ピボットを単なる「軌道修正」ではなく、「市場からの学びに基づく進化」と捉えることで、チームの士気も維持しやすくなるでしょう。

ピボットをするには、勇気も必要です。なぜなら、それは過去を一部否定し、新しい創造性のある自分を見出すこと、つまりトランジション(変化)を受け入れるということだからです。

トランジションについては、こちらの1冊「【真の「成長」とは!?】トランジション ――人生の転機を活かすために|ウィリアム・ブリッジズ」もぜひ!

そのためには、自分の意志が起点となることはもちろん、KPIをコミットしてくれる仲間の存在も欠かせないものとなるでしょう。

パラレルKPIとは!?

今回メインで考えていきたいのは、新規事業のための「パラレルKPI」という概念です。

この考え方は、個人と組織、短期と中長期、活動(習慣)と成果、日常と年間、自由と規律などを分離させず、両立的に思考していくためのマネジメントの視点を重視したものになっています。

また、こちらの1冊「【私たちは、二者択一にとらわれている!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス」から重要な両立の着眼点をインスパイアいただいております。

新規事業開発チームのKPI設計には、以下のふたつの視点を組み合わせることが効果的です。

それぞれの軸は一見相反するように思えるかもしれませんが、両方を大切にすることで、不確実な状況においても、絶えずバランスを意識することができるようになります。

1)個人の内発的モチベーションとパーソナル・ブランディング

1つめの軸です。

新規事業開発において、チームメンバー一人ひとりの成長と専門性向上に焦点を当てることは、長期的な価値創出の基盤を築くことにつながります。

個人モチベーション評価の視点

メンバー一人ひとりの「なぜ」を大切にしましょう。「なぜこの事業に取り組みたいのか」という個人のミッションが明確になっているほど、困難に直面しても粘り強く取り組むことができます。また、自らの意思で責任領域を拡大していく姿勢や、新たなスキルの獲得に挑戦する姿勢も重要な評価ポイントとなります。

日々の対話の中で「今日はどんな発見があった?」「次に学びたいことは何?」といった問いかけを行うことで、モチベーションの状態を把握し、必要なサポートを提供することができるでしょう。

個人ブランディングの支援

新規事業に取り組むメンバーには、自らの専門性を外部に発信する機会を積極的に提供しましょう。セミナーでの登壇や執筆活動、専門コミュニティへの貢献などを通じて、個人のブランド構築を支援することは、モチベーション維持にもつながります。

また、業界のキーパーソンとの関係構築や、独自の視点・考え方の言語化と共有も、個人の成長とチームの知見拡大に大きく貢献します。「今週出会った印象的な人は?」「最近気づいた業界のトレンドは?」といった問いかけが、メンバーの視野を広げるきっかけになるでしょう。

組織価値との連動

個人の学びや成長は、チーム全体の財産となります。定期的なナレッジシェアの場を設け、一人ひとりの発見や気づきを共有することで、チーム全体の成長を加速させましょう。メンバー間での学び合いが自然に生まれる環境を作ることで、個人の成長と組織の発展が好循環を生み出します。

また、メンバーが外部から得た評価や関係性を、組織全体の資産として活かす視点も大切です。

  • 「あの人のコンテンツが業界で話題になっているね」
  • 「彼女のセミナーに多くの人が集まっているよ」
  • 「社内外から、引き合いのあるコンテンツを常に生み出しているね」

などといった外部評価が組織内でも肯定的に受け止められる文化を育みましょう。

2)ステージゲート型の新規事業の進捗管理

2つ目の軸を検討してみましょう。

個人の内発的モチベーションを大切にしながらも、プロジェクトとしての段階的発展を可視化し、組織としての意思決定と資源配分を最適化する仕組みも不可欠です。

なぜなら、1つめの指標だけだと、組織に対してコミットメント(つまり、新規事業で定量的な成果を上げるということ)が弱くなってしまう可能性があるためです。

新規事業の基本ステージ設計

新規事業開発のプロセスを複数のステージに分け、それぞれのステージで達成すべき目標を明確にしましょう。例えば、以下のようなステージ設計が考えられます。

Stage 00 — コンセプト検証ステージでは、顧客ペルソナと課題定義に注力します。「誰のどんな問題を解決するのか」を明確にし、初期的な価値提案を言語化します。この段階では、潜在顧客との対話を通じて定性的なフィードバックを集めることが最も重要です。数よりも質、仮説の数よりも深さを重視しましょう。

Stage 01 — PoC (Proof of Concept) ステージでは、概念実証による仮説検証を行います。最小限の機能やプロトタイプを用いて、初期ユーザーテストを実施し、核となる価値仮説が正しいかどうかを確認します。「本当にこの問題は解決する価値があるのか」「私たちの解決策は実際に効果があるのか」という問いに対する答えを探る段階です。

Stage 02 — MVP (Minimum Viable Product) ステージでは、最小機能製品の開発・提供を行います。初期ユーザーの継続的な利用を通じて、基本的な収益/価値提供モデルを確立することを目指します。この段階では「どうすれば継続的に価値を提供できるか」「どのような収益モデルが成立しうるか」という視点が重要です。

Stage 03 — 市場検証ステージでは、有料ユーザーの獲得を開始します。顧客獲得効率を測定し、スケーラブルな獲得チャネルの発見を目指します。「どのようなアプローチで顧客を獲得できるか」「獲得コストと顧客生涯価値のバランスはどうか」といった観点から検証を進めていきましょう。

Stage 04 — 事業化ステージでは、持続的な収益創出と組織体制・プロセスの確立を進めます。予測可能なビジネスモデルを構築し、安定的な事業運営の基盤を整えることが目標です。「どうすれば持続的に価値を提供し続けられるか」「どのような組織体制が最適か」を検討する段階です。

Stage 05 — スケーリングステージでは、成長率の加速と組織拡大、人材獲得を進めます。投資回収と収益性向上を目指しながら、事業の急速な拡大を実現することが課題となります。「どうすれば成長を加速できるか」「規模拡大に伴うリスクにどう対処するか」という問いに取り組みましょう。

ステージゲート評価基準

各ステージには明確な達成基準を設け、次のステージへの移行判断(Go/No-Go決定)の根拠とします。

この評価には、以下の3つの視点からのバランスの取れたアプローチが大切です。

  • 定量評価では、数値で測定可能な達成度を確認します。ユーザー数や継続率、収益など、具体的な数字で進捗を把握します。ただし、初期ステージでは無理に定量化せず、後のステージになるほど定量評価の比重を高めていくことが自然でしょう。
     
  • 定性評価では、質的な成果を評価します。顧客理解の深さや製品完成度、市場の反応など、数字では表現しきれない側面に光を当てます。特に初期ステージでは、この定性評価が重要な意思決定要素となります。
     
  • リスク評価では、残存する不確実性と対応戦略を評価します。「まだ分かっていないこと」と「それを解消するための次のステップ」を明確にし、次のステージに向けた準備が整っているかを判断します。

統合的マネジメントアプローチ

ここまで紹介した「パラレルKPI」を効果的に機能させるためには、それらを統合した実践的なマネジメントアプローチが必要です。

両者が相互に補完し合い、相乗効果を生み出すための具体的な方法を見ていきましょう。

もちろんこれらは、新規事業を担う組織のマネジャーが意識することですが、しかし、同時に、すべてのプロジェクトメンバーが意識していることも欠かせず重要だと思われます。

なぜならば、新規事業において、そのプロジェクトのマネジメントをするのはそれぞれのプロジェクトのリーダーだからです。

組織マネジメントとプロジェクトマネジメントが連携することで、大企業組織内における、バランスの取れた対話と決断を推進していくことが、初めて可能になります。

個人とステージの連動設計

新規事業開発の各ステージでは、必要とされる専門性や役割が変化します。

メンバー一人ひとりの強みや成長意欲を考慮し、最も活躍できるステージでの貢献機会を創出しましょう。

例えば、共感力の高いメンバーは初期の顧客理解フェーズで、分析力に優れたメンバーはビジネスモデル構築フェーズで、それぞれの強みを発揮できるでしょう。

また、ステージ移行に伴う役割の進化と拡張も意識的に設計することが大切です。「次のステージでは、あなたにはこんな役割を期待している」という未来像を共有することで、メンバーの成長モチベーションを高めることができます。

個人ブランディングとステージの相乗効果

各ステージでの取り組みは、メンバーの個人ブランディングにとっても絶好の題材となります。

コンセプト段階ではビジョンや問題意識の発信、PoC段階では検証プロセスと発見の共有、MVP段階では製品開発の思想や意思決定の発信、というように、ステージごとに焦点を当てるテーマを変えながら発信を続けることで、一貫性と多様性を兼ね備えた個人ブランドを構築できるでしょう。

「今週の発見をブログにまとめてみない?」「この検証結果は、業界イベントで発表する価値があるね」といった声かけを通じて、日々の業務と個人の発信活動をシームレスにつなげていくことが理想的です。

実践的なマネジメントツール

複数の視点からなるKPIを効果的に管理するためには、適切なツールと運用プロセスが欠かせません。以下に、実践的なアプローチをご紹介します。

パラレルKPIダッシュボード

プロジェクト・チーム・個人の各レベルの指標を一元管理し、全体像を可視化するダッシュボードを作成しましょう。

プロジェクトレベルではステージ進捗度やゲート達成予測、チームレベルではモチベーション健全度や知識蓄積度、個人レベルでは専門性向上度や貢献多様性などを一覧できると、バランスの取れた進捗管理が可能になります。

このダッシュボードは、単なる「管理ツール」ではなく「対話のきっかけ」としての役割も果たします。「この指標が下がっているのはなぜだろう?」「ここの進捗が予想以上だね、何がうまくいったの?」といった対話を通じて、数字の背景にある本質を捉えることが大切です。

そして、実は、このダッシュボードこそが、「週報・月報」になっているというような一石二鳥管理ツールをはじめに設計して、運用してみることが重要だったりします。

会社のためのだけの仕事をいかに排除するかが、実は欠かせない論点となります。なぜなら、新規事業は、集中(ゾーン)状態をいかにキープできるかも大事だからです。

いわゆる組織管理のための時間やタスクをどれだけ減らせるか、工夫してみることも忘れないようにしてみましょう。

定期的な「多層レビュー」

異なる時間軸と視点での振り返りを組み合わせることで、短期的な修正と長期的な方向性のバランスを取りましょう。

週次ミーティングでは短期的な進捗と課題の共有、月次レビューではステージ評価とリソース配分の最適化、四半期レビューでは戦略的方向性の確認と調整、半期/年次レビューでは個人の成長と組織価値創出の総括を行うといった具合です。

これらのレビューでは、単に「何ができたか」を確認するだけでなく、「何を学んだか」「次に何をすべきか」という視点を大切にしましょう。

特に新規事業開発では、計画通りに進まないことの方が多いため、計画と実績の乖離から学びを引き出す姿勢が重要です。

また、社内の人間だけではなく、特に重要なのが社外の人間との定例です。社内は直列的管理をしがちです。でも本当に重要で貴重な発想の機会を生み出せるのは、社外のフラットな関係性の中です。

だから、戦略的に社外を巻き込みながら、レビューを繰り返して、「共犯者」を広げて、そのことをレバレッジに社内を動かしていく企みを持っておくこともプロジェクトマネジャーの手腕の見せ所になります。

この論点については、また次の機会に #考えるノート としてまとめたいと思います。

文化・風土の醸成

KPIやレビューの仕組みを導入しても、それを支える文化や風土がなければ形骸化してしまいます。新規事業開発チームの成功には、以下のような文化的側面も欠かせません。

本質的価値を重視する文化

KPI達成自体が目的化しないよう、常に「何のために」の問いかけを行う習慣をつけましょう。数字は手段であり、目的は顧客や社会への価値提供であることを忘れないことが大切です。

評価においても、達成度だけでなく「どれだけ価値を創出したか」「どれだけ学びを得たか」という視点を最上位に置くことで、形式主義に陥るリスクを減らせます。

チームミーティングでは、定期的に「私たちは誰のために何を実現しようとしているのか」という原点に立ち返る時間を設けると良いでしょう。

顧客の声や社会課題に触れる機会も意識的に作り、チームの取り組みの意味を実感できるようにすることが大切です。

学びを最大化する風土

新規事業開発では、必ず想定外の出来事が発生します。それを「失敗」と捉えるのではなく「学びの機会」と捉える風土を育みましょう。失敗からの学びを価値化する仕組みや、実験と検証の繰り返しを奨励する姿勢が重要です。

例えば、「ベストフェイルアワード」のような形で、挑戦から得られた学びを称える機会を設けたり、「学びの可視化ボード」で各メンバーの発見や気づきを共有したりする取り組みも効果的です。

知識共有と相互学習を促進し、個人の経験がチーム全体の資産となる循環を作り出しましょう。

組織による新規事業開発チームへの支援のあり方とは?

新規事業チームの成功には、チーム内の取り組みだけでなく、組織全体からの適切な支援も不可欠です。

以下に、効果的な支援策をご紹介します。

1.知識・インフラの提供

新規事業チームが外部に発信し、知見を蓄積するための基盤を整えましょう。チームや個人のブログ、SNSアカウントなど、情報発信プラットフォームの整備を支援することで、個人ブランディングの取り組みをバックアップできます。

また、外部専門家とのネットワーク構築や、プロジェクト特性に応じたカスタマイズされた学習プログラムの提供も、チームの成長を加速させる重要な支援となります。過去の成功・失敗事例を蓄積したナレッジマネジメントシステムも、「車輪の再発明」を防ぎ、効率的な学習を促進するでしょう。

「どんな専門家と話してみたい?」「どんなスキルを身につけたい?」と問いかけ、必要なリソースにアクセスできる環境を整えることが、組織としての役割です。

2.実験・検証環境の支援

新規事業開発では、仮説検証のサイクルを素早く回すことが成功の鍵となります。そのために、ステージに応じた機動的な資金提供や、低コストで素早く試作できる設備・ツールの整備など、実験環境の充実が重要です。

初期ユーザーグループの紹介・構築といったテスト市場へのアクセス支援や、既存事業部門との橋渡しによる社内リソースの活用円滑化も、大きな助けとなるでしょう。「この仮説を検証するには、どんなサポートが必要?」と定期的に確認し、必要なリソースを柔軟に提供する姿勢が大切です。

3.モチベーション施策

新規事業開発は長期的な取り組みになることが多いため、モチベーションを維持するための工夫も欠かせません。事業成功時の収益シェアなど、将来価値を提供する長期インセンティブ設計や、挑戦や学びを価値化する独自の評価制度の導入も検討しましょう。

相互刺激と学び合いの機会を生み出すプロジェクト間交流の場や、トップの関与による意思決定迅速化のための経営層との直接対話機会も、モチベーション維持に役立ちます。「あなたの取り組みは会社の未来にとって重要だ」というメッセージが伝わる仕組みを意識的に作りましょう。

4.心理的安全性の確保

不確実性の高い新規事業開発では、心理的安全性の確保が特に重要です。学びを伴う失敗を評価する文化や、既存事業との軋轢を緩和する緩衝機能の提供、不確実性と向き合うためのメンタルヘルス支援なども考慮すべき要素です。

挑戦そのものを評価する基準を導入し、「やって失敗したこと」よりも「やらなかったこと」に対する機会損失を重視する価値観を醸成することで、積極的な挑戦を促す環境を整えましょう。「ここでは安心して挑戦していいんだ」と感じられる場づくりが、イノベーションの土壌となります。

あと、実はとっても大事なのが、「やっちゃう」ことの許容だと私は思います。

サントリーさんの有名な合言葉に「やってみなはれ」がありますが、これ相当大事と思います。指示を仰ぐのも、許可を得るのもたしかに大事だと思いますが、その前にできることがあるのかもしれないと信じて、まず動いてみる、そのことをレバレッジに、組織を動かしてみるというテコの原理をもっともっと活用してみるというしたたかさが、実はとっても大事なのではないかと思います。

せっかく大企業の中で考える機会を得ているわけですから、その構造全体を俯瞰して、どういう身のこなしが、全体に影響を与えていくのかを考えて見る視点が、なにより重要です。

なぜなら、その事自体が、社会全体への波及効果の起点となるからです。

成功のための実践ポイント!

最後に、これまでに紹介した考え方や仕組みを実践する上で押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。

1)明確な期待値設定

新規事業開発には不確実性がつきものですが、だからこそ「何を期待するのか」「何をもって成功とするのか」についての共通理解が重要です。経営層との期待値すり合わせを徹底し、短期/中期/長期の成果イメージを共有しておきましょう。

また、KPI評価の原則と例外も明確にしておくことで、想定外の状況が発生した際にも柔軟に対応できます。「このKPIが達成できなくても、こういう学びや発見があれば次のステップに進める」といった判断基準を予め決めておくと、現場の混乱を防げるでしょう。

2)柔軟性と一貫性のバランス

環境変化に応じた指標の見直しは必要ですが、評価の本質的部分における一貫性も重要です。特にピボット時には、評価軸の修正プロセスを明確にし、「何が変わって何が変わらないのか」を丁寧に説明することが大切です。

「私たちの目指す本質的な価値提供は変わらない」という軸を持ちながら、その実現方法については柔軟に変更できる姿勢を持つことで、変化と一貫性のバランスを取ることができるでしょう。

3)個人と組織の利益一致

新規事業開発を通じて、組織の成功と個人の成長が同時に実現できる状態を目指しましょう。中長期的なキャリア発展とプロジェクト進捗を連動させる設計や、新規事業を通じた人材育成という視点の導入が効果的です。

「この取り組みを通じて、あなた自身はどう成長したい?」「プロジェクトの成功は、あなたのキャリアにどうつながる?」といった対話を通じて、個人と組織のゴールを一致させていくことが理想的です。

4)継続的対話と相互理解

新規事業開発の成功には、リーダーとメンバー間の定期的な1on1や、チーム内での期待値とフィードバックの共有、経営層とプロジェクトチーム間の橋渡し機能など、多層的なコミュニケーションが欠かせません。

「今、何に悩んでいる?」「次に乗り越えたい壁は何?」「もっとサポートできることはある?」といった対話を通じて、互いの認識ギャップを埋め、進むべき方向性について共通理解を深めていきましょう。

まとめ「パラレルKPI」で行ってみよう!

新規事業開発の成功には、個人の内発的モチベーションを原動力としながら、組織としての段階的進捗管理を組み合わせることが効果的です。この2軸を統合した「パラレルKPI」設計とマネジメントにより、短期的な評価の難しい新規事業においても、着実な前進と価値創出が可能になります。

さらに、組織として新規事業チームを多角的に支援し、適切な環境づくりを行うことで、個人と組織双方の成長を促進することができます。この取り組みは単なる事業開発に留まらず、組織全体のイノベーション文化醸成と人材育成にも寄与するものです。

新規事業開発は、ビジネスモデルの創出と同時に、未来の組織を担う人材と知見を育む場でもあります。

そういった視点で捉えることで、たとえすべてのプロジェクトが事業化に至らなくても、組織として大きな価値を創出することができるのではないでしょうか。

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