みなさん、こんにちは。増田みはらし書店・店主の増田浩一です。
私は、広告会社で内外連携のもと新規事業を生み出していくインキュベーションセンターマネージャーの役割をいただきながら、中小企業診断士としても活動しております。
#考えるノート と題して、週に1回、私がさまざまなご支援のもとで、考えたことや、経営者や専門家の方からヒントを頂いたことについて、まとめて発信をしております。
さて、新年度を迎え、多くの組織で新たな体制がスタートする4月。この時期に改めて問い直したいのは、「マネジメント」の本質的な価値です。
近年、ビジネス書や経営論では「リーダーシップ」という言葉が持て囃される一方で、「マネジメント」という概念は地味で古臭いものとして扱われがちです。
しかし、『リーダーの仮面──「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』が指摘するように、組織の持続的な成功にはリーダーシップとマネジメントの両方が不可欠なのです。本書は、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏によるマネジメント書です。2020年11月にダイヤモンド社から出版され、累計67万部を超えるベストセラーとなっています。プレーヤーからマネジャーへの意識転換を促すための実践的な思考法を提示しています。
こちらの投稿「【5つのポイントにフォーカスせよ!?】リーダーの仮面 ーー 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法|安藤広大」もぜひご覧ください。

一般的に、リーダーシップは「人々を導き、インスパイアする能力」とされ、マネジメントは「プロセスや資源を効率的に管理する能力」と定義されます。
リーダーシップが「正しいことをする」のに対し、マネジメントは「物事を正しく行う」と表現されることもあります。
しかし、現実の組織運営では、この二項対立的な捉え方が問題を引き起こすことがあります。リーダーシップだけを重視すると、ビジョンは素晴らしくても実行力に欠け、マネジメントだけを重視すると、効率は良くても革新性や柔軟性が失われがちです。
「リーダーの仮面」が教えてくれること
「リーダーの仮面」が明確に示すのは、「プレイヤー」と「マネジャー」の役割において、常に優先すべきは「マネジャー」の役割だということです。
自分の成果が不十分であっても、チーム全体の責任はリーダーにあり、マネジメントに専念する必要があるのです。
特に新年度のスタート時には、明確なビジョンを示すリーダーシップと、具体的な行動計画を立てるマネジメントの両方が求められます。
しかし、多くの場合、華やかなビジョン提示に注目が集まり、地道なマネジメント活動は陰に隠れてしまいます。
マネジメントの再評価:5つの重要ポイントとは?
「リーダーの仮面」が強調するのは、マネジメントこそが組織の持続可能性を支える基盤だという点です。
安藤氏は効果的なマネジメントを行う上で、5つの重要なポイントを挙げています。
- ルール —— 場の空気ではなく、言語化されたルールをつくる
- 位置 —— 対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする
- 利益 —— 人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす
- 結果 —— プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る
- 成長 —— 目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ
これらのポイントは、伝統的なマネジメントの考え方とも共通する部分がありますが、特に現代の「フラットな組織」「心理的安全性」などの概念が広まる中で、あえて「位置」の重要性や「結果」への集中を強調している点が特徴的です。
マネジメントの実践方法
安藤氏の考え方を実践するには、以下のステップが重要です。
- 明確なルールの言語化と浸透
- チームのルールは言語化し、曖昧さを排除する
- ルールは「リーダーの命」として設定する
- ルールに誤りがあれば、潔く修正する姿勢を持つ
- 適切な距離感の維持
- ピラミッド構造を正しく運用する
- 評価者としての立場を明確にする
- 情報を吸い上げ、目標と結果に照らして判断する
- 利益と成長の連動
- メンバーの行動の動機は「利益があるかどうか」という点を理解する
- 個人の利益追求が組織全体の利益につながるよう設計する
- 「利益相反」が起きていないか常に確認する
目標設定と評価のサイクル
「リーダーの仮面」が提唱する効果的なマネジメントプロセスは、以下のサイクルで実現します。
- 目標設定 —— できるだけ数値化された明確な目標を設定する
↓ - プロセス —— 極力口出しせず、メンバーに任せる
↓ - 結果 —— メンバーから報告を受け、評価する
↓ - 行動修正 —— 「結果」と「評価」のギャップを認識し、次の目標と変えるべき行動を設定する
このサイクルを回し続けることで、真の成長が実現されるのです。
実践:プレイヤーからマネジャーへの転換を目指すには?
これらの本質を踏まえた上で、「リーダーの仮面」の考え方を現代の組織運営に応用するなら、以下のような実践が重要になるでしょう。
1. 明確なルールと目標の設定
「場の空気」ではなく「言語化されたルール」に基づく組織運営を行います。
- 数値化された明確な目標設定(例:「来月は10件の契約を成立させてください」)
- チーム内のルールを言語化し、「リーダーの命」として設定
- ルールや目標の設定理由を説明し、納得感を醸成
2. 適切な距離感と評価の実践
リーダーとしての立場を明確にし、結果に基づく評価を行います。
- プロセスへの過度な介入を避け、結果だけを見る姿勢
- 「結果」と「評価」のギャップを認識し、次の目標と変えるべき行動を設定
- 定期的な評価面談を通じた成長支援
3. 組織と個人の利益一致の設計
個人の利益追求が組織全体の利益につながる仕組みを構築します。
- 「これって、利益相反を起こしていないか?」を常に確認
- 短期的な利益だけでなく、「稼ぐ力を身に着けさせる」という長期的視点の導入
- チーム全体のパフォーマンス向上を主眼にした運営
現代のマネジメント課題と「リーダーの仮面」の視点
「リーダーの仮面」の考え方を現代の組織課題に応用すると、どのように解決策を見出せるでしょうか。
リモート/ハイブリッドワーク環境でのマネジメント
働き方の多様化は、マネジメントに新たな挑戦をもたらしています。リモートやハイブリッドワークが一般化する中で、物理的に「見えない」メンバーをどうマネジメントするかという課題が生じています。「リーダーの仮面」の視点では、これはむしろマネジメントの本質に立ち返る好機と捉えられます。
結果主義の徹底が鍵となります。対面でプロセスを監視できないからこそ、「プロセスではなく結果だけを見る」という姿勢が活きてきます。
また、対面での「場の空気」に頼れない状況では、明確に言語化されたルールと目標設定がより一層重要になります。チームメンバーが自律的に動けるよう、報告の仕組みを構造化し、定期的かつ明確な形で「結果」の確認ができる体制を整えることが効果的です。
この状況下でのマネジメントは、信頼ベースでありながらも結果へのコミットメントを求める、バランスの取れたアプローチが必要です。「リーダーの仮面」が説く「プロセスには口出ししない」という原則は、リモート環境ではむしろ自然な形で実践できるのです。
多様性と包摂性(インクルーシブ)を高めるマネジメント
多様なバックグラウンドを持つメンバーが協働する現代の組織では、一律のマネジメント手法が通用しなくなっています。「リーダーの仮面」の考え方を多様性の文脈で捉え直すと、興味深い示唆が得られます。
まず「利益」の多様性についての理解が重要です。異なる背景を持つメンバーにとって「利益」の形は多様であり、金銭的報酬だけでなく、成長機会やワークライフバランス、社会的意義など、様々な形をとります。
マネジャーには、この多様な「利益」を理解し、個々のメンバーが組織に貢献することで自身の「利益」も得られるような環境設計が求められます。
また、評価においても「結果」に焦点を当てる姿勢は、多様性を尊重する上で重要です。
働き方やプロセスではなく、最終的に生み出された「結果」で評価することで、多様なアプローチや思考様式を持つメンバーが各自の強みを発揮できる環境が整います。
例えば、「チームは塾に近い」という視点で組織を動かしてみることも可能性を担保します。
これを多様性の文脈で捉え直せば、すべてのメンバーに対して平等に成長機会を提供するという公平性の原則につながります。
背景に関わらず、全てのメンバーが「稼ぐ力」を身につけられるよう支援することは、真の包摂性につながるのです。
若手育成とベテラン活用の両立
年齢構成の変化に対応したマネジメントもまた、現代の組織が直面する重要な課題です。若手人材の早期育成とベテラン社員の経験活用を両立させるには、「リーダーの仮面」の考え方がヒントになります。
若手に対しては、短期的な成果よりも「稼ぐ力」という「一生もののスキル」を身につけさせる長期的視点が重要です。
これは「目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ」という原則に合致します。具体的な数値目標を設定しつつも、その達成プロセスを通じた学びを重視することで、持続可能な成長を促進できます。
一方、経験豊富なベテランメンバーには「マネジャー」としての役割を強化し、知識・経験の伝承を担ってもらうアプローチが有効です。彼らの経験を若手の「稼ぐ力」育成に活かすことで、組織全体の知的資産を循環させることができます。
また、世代を超えた健全な競争環境を構築することも重要です。年齢や経験年数ではなく「結果」に基づいた公平な評価と、それによる適切な緊張感の維持は、組織全体の活性化につながります。
この健全な競争が協力を阻害しないよう、チーム全体の目標達成への貢献と個人の成果のバランスを適切に取ることが、世代間の協働を促進する鍵となるでしょう。
新年度のマネジメント実践ガイド!!
マネジメントの理論を理解することも大切ですが、実際に行動に移すことがさらに重要です!!
新年度のスタートにあたり、「リーダーの仮面」の考え方を踏まえた具体的な実践ポイントをまとめてみました。
新年度に取り組みたい「5つのマネジメント行動」
- 定量的な目標設定
- 組織全体の目標を数値化して設定する
- 各メンバーの目標を明確に数値化する
- 組織のパーパスと個人のパーパスを言語化し、目標との関連性を明確にする
- 運用ルールの確立と共有
- 定例的な確認ミーティングの日程と形式を決定する
- 報告の頻度とフォーマットを統一する
- 評価基準を明確にし、透明性を確保する
- マネジャーとしての姿勢の確立
- プレイヤー業務とマネジャー業務の時間配分を明確にする
- 「結果」に焦点を当てた評価姿勢を一貫させる
- メンバーに適切な距離感を保ちながら、成長を促す関係性を構築する
- 健全な競争環境の整備
- チーム内での成果の可視化の仕組みを整える
- 競争がチームの分断につながらないよう、適切なルール設定を行う
- 個人の成果とチーム全体の成果のバランスを取る評価システムを構築する
- 成長機会の体系化
- 各メンバーのキャリアパスと成長計画を明確にする
- スキルアップのための研修や学習機会を計画的に提供する
- 失敗から学ぶ文化を醸成するためのフィードバック方法を確立する
マネジメントは、一朝一夕に完成するものではありません。
「リーダーの仮面」の考え方を取り入れながら、継続的な実践と改善を重ねることで、組織全体のパフォーマンス向上と各メンバーの成長を両立させるマネジメントを実現していきましょう。
4月の始まりに、「プレイヤー」と「マネジャー」の役割の違いを再認識し、チーム全体の成果を最大化するためのマネジメントスタイルを実践していくことが、今年度の飛躍につながる第一歩となるはずです!