AIは架け橋?~世代を超え、言葉を超える、新しい協働プラットフォームとしてのAI活用~

AIは架け橋?~世代を超え、言葉を超える、新しい協働プラットフォームとしてのAI活用~

「AIは人間の仕事を奪う」

対話型AIが社会実装される中で、そんな不安の声をよく耳にするようになりました。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

対AIという構図ではなく、AIの強みをいかに引き出し、人がさらに人らしく仕事をしたり、活動をすることについて考えることはできないかと考えます。

AIにはもっと大切な役割を期待したいと、私は考えています。

それは、「人と人をつなぐ架け橋」としての役割です。

みなさん、こんにちは。増田みはらし書店・店主の増田浩一です。今回の投稿では、AIの可能性の解像度を一緒にあげる試みをしてみましょう。

非言語領域を取り扱う?

人の思考は、当然のことながら、すべてが言語化されているわけではありません。

ベテラン社員の長年の経験。若手社員の新しい視点。そして、中堅層の実務的な知見。

AIを上手に使えば、これらを言語化し、意識下のもとにおき、有機的につなぐことで、組織の力として活用することができるのではないかと考えます。

そんな可能性について検討してみたいと思います。

そもそも、暗黙知というのは、確かに個人の中に蓄積されているものかもしれませんが、その成長過程というのは、もしかすると、必ずしも一人では完成しないものなのかもしれません。

  • 熟練工の「匠の技」
  • 営業マンの「勘所」
  • リーダーの「決断の瞬間」

私たちは往々にして、これらを個人の中に閉じた能力として捉えがちです。

匠の技は、見習いとの対話の中で、より洗練されていく。
営業の勘所は、顧客との相互理解を通じて、より確かなものになっていく。
リーダーの決断は、メンバーとの対話を経て、より深い知恵となっていく。

つまり、「暗黙知」とは、本来的には「共創の産物」なのです。

「具体」と「抽象」をつなぐAI

私たちの仕事は、常に具体的な状況の中で行われます。

この顧客との、このタイミングでの商談。この素材での、この条件下での加工。このチームでの、この文脈での意思決定。

しかし、その経験を次の機会や他者に活かすためには、ある程度の「抽象化」が必要です。

実は、ここに、大きな課題があります。

具体的な経験は、その場の文脈に深く結びついているからこそ、抽象化が難しい

かといって、過度に抽象化すると本質的な部分が失われてしまうかもしれないし、意識的に頭を働かせたり、問いを建てなくては、抽象化をわざわざすることはしません。

AIは、この「具体」と「抽象」の適切な架け橋、そして、その抽象的で非言語領域の学びを人と人が見つめる機会を提供する基盤としての可能性を秘めているのです。

例えば、ベテラン営業マンの複数の商談データをAIで分析すると、状況に応じた会話の間(ま)の取り方や、質問の順序といった普遍的なパターンが見えてきます。

この「パターン」は、単なる形式的な抽象化ではなく、その場の文脈を残したまま本質を抽出したもの。それは、新しい状況でも応用可能な「知恵」となっていくのです。

また、その無意識下の状況や判断や思考が言語化されることで、他者と共有され、共に考え、さらに知恵としてよりブラッシュアップされる機会を作ることだってできるでしょう。

「見えない知恵」を引き出すための基盤としてのAI


気がつけば、私たちの周りにはたくさんの「見えない知恵」が循環しています。

製造現場での匠の技。営業現場での駆け引きの機微。デザイナーが固有に持つものごとを形にする説得力。リーダーシップの真髄。

近年、「人的資本」の見える化について、しばしばフォーカスが当たりますが、まさにこれらの知恵は、財務諸表には現れない、しかし、企業やブランドの真の強さを支える重要な資産なのです。

そして、その「見えない資産」は、決して個人の中だけで完結するものではなく、むしろ、人と人との対話を通じて
磨かれ、育まれていくものです。

AIを人の代替として捉えるのではなく、新しい協働プラットフォーム、人の知恵を共に検討するOSのような位置づけとしてフォーカスしてみましょう。

そのポジショニングを与えることで、AIがあるからこそ、人がますます人と協働できる可能性を解放することができるはずです。

共有と創造により、社会的生き物である人の生活や活動を、より豊かにしていく可能性を秘めています。

具体的な経験を適切に抽象化し、再び新しい具体へと応用する。その往来の中で、組織の知恵は少しずつ育っていくのです。

個人の気づきがチームの知恵となり、チームの知恵が組織の強さとなる。この永続的な学びの循環の中で、企業やブランドはよりしなやかな強さを獲得していくのではないでしょうか。

AIは、この「見えない価値の創造」を支援してくれる、新しい同僚。そして、その価値は人と人との真摯な対話があってこそ、より豊かに育まれていくのです。

AIの活用視点については、こちらの1冊「【自分の仕事の“定義”をアップデートしよう?】上司がAIになりました|橋爪大三郎」やこちら「【AI対話で、自分の可能性を引き出そう?】「AI思考」は武器になる|谷岡悟一」もぜひご覧下さい。

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