目標を立てたはいいものの、なかなか達成まで遠いなぁ・・・そんな思いを抱えていたりしませんか!?個人であろうと、企業・組織であろうと、目標達成のキーは、「他者との共有」にあるかも知れません。
今回は、目標達成における共有の重要性について考えてみたいと思います。他者との目標共有がもたらす効果や、具体的な共有の方法、そして他者や社会のためになる目標設定の意義について、検討してみましょう。
目標は共有してこそ!?
勉強に対する目標でも、習慣に対する目標でも、業績に対する目標でも、まずは目標があること自体がとても大切なことです。人は、現状と理想のギャップの中に原動力を見出す生き物だからです。
目標が設定できれば後は、ひたすら行動をして、達成に向けて具体的な努力の積み重ねをしていくことが理想です。
しかし、誰も言わずにひとりで頑張ろうとしてしまうと思わぬ落とし穴があるかも知れません。なぜなら、人の意志は相当に弱いものだからです。
毎日の状況は絶えず変化していきます。その変化に対応していくだけでも結構大変なものです。「やすきに流れる」とはよく言ったものですが、毎日の変化の中に、自分の目標や意志が隠れてしまって、行動を忘れてしまうことも多々あります。
そんな状況を打破するのが、目標を他者と共有することです。ここには大きなメリットがあります。
まず、他者に目標を宣言することで、自分自身に説明責任が生まれ、目標達成へのコミットメントが強まります。また、目標を共有することで、他者から応援やアドバイスをもらえる可能性が高まります。
目標を共有したら、なんとなく人の目が気になりますよね。「あの人、あんなこと言ってたのにぜんぜんじゃん!」みたいなことを言われないかな?みたいな思いが、自分の習慣化の継続を引き出します。
それだけではなくて、他者と目標を共有しておくことで、応援やアドバイスもしくは、協力などを提供してもらえる可能性が増えます。
どうやるか(How)、よりも、実は誰とやるか(Who)のほうが大切だよ!という本もあるくらい、チームを作ることは重要です。ご参考として、こちらの1冊「【学校で教えてくれないWHOの話とは!?】WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」|ダン・サリヴァン,ベンジャミン・ハーディ,森由美子」もぜひご覧ください。
目標設定の内容、それでOK?
人知れず目標を立てて、行動するのではなく、思い切って「あなたの目標を他者と共有してみること」を実践してみましょう。
その時、大切になるのが、「目標の内容」です。
例えば、ラーメン大好きな人が「全国のラーメン店を食べ歩きたい!」という欲望を持っていたとします。そして、それを目標として「今年1年で47都道府県のラーメン店をまわる!」という目標を立てました。
でも、仮にあなただったらその目標を聞いて、どういう気持ちになるでしょうか。その人のラーメン好きの度合いは分かっても、応援したい!とか、共感する!という気持ちにはなりづらいのでは?
でも次のような目標であった場合は感じ方が変わるのではないでしょうか
「全国にある時代に愛されてきた老舗ラーメン店から顧客に愛される秘訣をレビューしたい。
そうした視点を大切にしながら、今年1年で47都道府県のラーメン店をまわる!」
少しだけ、応援したいとか、興味関心が湧いたのでは?
大切なのは、目標を自分一人の欲望だけで作り出すのではなく、他者や社会がちょっとでも共感できそうな内容にふれて立ち上げてみるということです。
そのためには、自分の目標が他者や社会にどのような価値をもたらすかを考えることです。ついつい自分のことだけを考えて目標を立ててしまいがちですが、実は、自分の成長と、他者・社会への貢献を「両立」するような目標を設定することで、より多くの人にとって意義のある活動が可能になるのです。
なによりそうした目標を立てたら、共有したいな!と思えるようにもなりますしね。
社会を巻き込める上手な目標設定の事例とは?
ラーメンの事例では個人の目標にフォーカスしてみましたが、今度は企業の目標設定の事例を通じて、他者や社会と共有できそうなニュアンスについて学びを深めていきましょう。
TOMS Shoes(トムス)
TOMS Shoesは、2006年、アメリカ人旅行家のブレイク・マイコスキーによって設立されたシューズブランドです。人気アイテムのエスパドリーユは世界のセレブからも愛用され一躍注目のブランドと成長し続けています。そしてTOMSが愛される理由は、デザイン性や履き心地などを超えたところにあります。
それは、“One for One”という目標にあります。
“One for One”という目標のもと、購入された靴1足につき1足を恵まれない国や地域の子どもたちに寄付するという運動を展開しているのです。
この取り組みを通じて、ブレイク・マイコスキーさんは、セレブを始め多くのファンを獲得し事業の成長と社会貢献の両立を果たしました。
自分の靴の選択が、世界のどこかで靴も変えずに、足を怪我したり、病気のリスクに晒されている子どもたちのためになるということは、人々の選択する理由に強く訴えました。
Patagonia(パタゴニア)
アウトドア用品で有名なパタゴニアの活動もそうでしょう。
パタゴニアは、1% for the Planetという地球環境保護プロジェクトを推進していることを標榜しています。
これは、売上の1%を地球環境の保護活動をしている団体等に寄付するというものです。これによって地球環境と事業の持続可能性の両立を図ることを実現しています。
この取り組みは、顧客をはじめとするステークホルダーと広く共有されています。こちらのサイトで詳しく活動内容がレビューされています。
ブランドのポジショニングにも役立つ?
こうした考え方は、ブランドを検討するときにもすごく役立ちます。先日、中小企業診断士として、とある個人事業主の方とディスカッションさせて頂く機会を得ました。
その方は、幼稚園や保育園を中心に動画撮影をして、顧客である保護者を中心に販売をされている方でした。これまではDVD等のソフトでの納品でしたが、さらなる利便性と効率性を追求してオンラインで見られる環境を届けられる新サービスを展開しようとしています。
これを機に、動画スタジオのブランドを検討してみよう!という話についてディスカッションを進めました。
そこで私が大切にしたほうが良いとお伝えしたのは、「顧客の定義」です。これまでは、幼稚園や保育園は撮影場所を提供する主体で、顧客は祖父母でした。しかし、よくよく考えてみると、幼稚園や保育園側のニーズの高さも浮かび上がってくると思ったからです。
少子化の流れは幼稚園や保育園関係者にとって中長期の運営を考えたとき、非常に大きな課題です。ジリジリと子どもの数が減少する中、積極的に園を保護者に選んでいただくことは、とても重要です。
また、同時に労働人口が減少する中で、幼稚園の先生や保育士を確保し、離職率を上昇させないような工夫も欠かすことができない状況です。
こうした環境を俯瞰すると、以下のようなお悩みが浮かび上がってきます。
顧客 | お悩み事(ニーズ) |
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園長先生 | ・園の保育の品質について具体的に伝えたい ・現場の先生に働く喜びを提供したい |
先生 | ・一生懸命努力していることをときには褒められたい ・もっと保護者とコミュニケーションがとりたい |
保護者 | ・子どもが園でどのように過ごしているのかを知りたい ・スマホで手軽に情報提供されたい |
顧客の定義を保護者に閉じずに、接点のある方々に拡張して検討してみると、幅広いお悩み事(ニーズ)が見えてきました。
そして同時に、当スタジオの「共有できる目標」も見えてきたのです。
それは、「園と保護者のコミュニケーションサポーター」という位置づけです。
そのための手段として、「動画」を位置づけることで、それぞれの顧客に対して当社の役割を雄弁に説明し、協力を仰ぎやすい自己紹介をすることが可能になるのではないかと考えました。
そのために動画の技術や媒体の納品形態を充実化させていることを伝えることで、当スタジオが選んでいただきやすい状況を共有できることが可能になります。
実は、このように目標設定は必ずしもひとりよがりではいけないし、あるいは、1対1の関係性に閉じたものではないということかも知れません。
ステークホルダーの可能性を広げ、そのステークホルダーごとのお悩みやお困りごとに耳を済ませることで、自社や自分自身の目標が見え隠れしだします。
社会とシンクロするために目標を使おう?
自分の目標を他者や社会の視点から捉え直し、Win-Winの関係性を築くこと。そして、その目標を共有し、他者の力を借りながら達成に向けて歩んでいくこと。これこそが、真の目標達成への近道なのです。
目標達成の鍵は、Sharing(共有)とAchievement(達成)の融合。この2つの力を上手に組み合わせながら、より大きな価値の捉え方で、事業を再検討してみることも重要かもしれません。