この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
【経営ビジョンの視点で読み解く本書の核心】「頑張っているのに変われない」のは、意志が弱いからではなく、無意識が変化を拒んでいるからです。タッカー氏が示す「気づく・手放す・再設定する」という3ステップを通じて、経営者自身が握りしめている価値観そのものを問い直す視点が得られます。
1.コンフォートゾーンの正体:無意識が守ろうとしているのは心地よさではなく、「慣れ親しんだ状態」であることに気づきます。
2.感情という無意識のサイン:一次感情と二次感情を読み解くことで、自分の本当の欲求に近づいていきます。
3.価値観の再設定:これまで正しいと信じてきた基準さえも、無意識がつくり出したものかもしれないという発見に至ります。
- 経営判断や日々の意思決定において、自分が「正しい」と思っている基準は、本当に自分自身が選び取ったものでしょうか。
- 実は、私たちが「当たり前」だと信じている価値観や判断基準の多くは、無意識がつくり出した「型」に過ぎない場合があります。
- なぜなら、無意識は過去の経験や感情を通じて、知らないうちに私たちの反応パターンを固定してしまうからです。
- 本書『こうして、無意識は現実になる』は、この仕組みを心理学・脳科学・量子論などの知見から解き明かし、「気づく」「手放す」「再設定する」という3つのステップで無意識を書き換える方法を提示しています。
- 本書を通じて、経営者自身が無自覚に握りしめている「当たり前」を問い直し、より本質的な意思決定へとつながる視点が得られるはずです。
タッカー氏について、簡単にご紹介したいと思います。
タッカー氏は、潜在意識変容アドバイザーとして、心理学・哲学・脳科学・量子論・NLP(神経言語プログラミング)・瞑想・スピリチュアルを統合し、無意識の構造から人生を書き換える方法を体系化してこられました。
25か国を訪れながら自己探究を続け、アメリカ・ニューヨーク在住時にはハーバード大学やウォール・ストリートでセミナーを開催した経歴をお持ちです。イギリス、インド、台湾、マレーシアなど世界各地でもセミナーやコーチングを行い、「無意識を変容させることで、心と現実が変わるメソッド」を発信し続けています。
YouTubeやポッドキャストでも人気番組「マインドフルネス瞑想ガイド」を運営し、総登録者24万人以上、総再生数は8000万回を超える発信力をお持ちです(2025年10月時点)。
理論だけでなく、自らの体験と対話を積み重ねてきた人物であることが、本書の説得力の背景にあると感じます。
無意識が「変わりたくない」と告げている
なぜ、頑張っているのに現実は変わらないのでしょうか。
この問いへの答えは、意志の強さや努力の量ではなく、無意識の性質そのものにあると思います。
コンフォートゾーンとは「安全な壁」である
無意識は、自分にとっての心理的安全領域であるコンフォートゾーンを、常に守ろうとする性質を持っています。
それは、いまのあなたを傷つける環境であったり、意識的に望んでいる状態ではなかったとしても、無意識にとっては慣れた場所であるため、安心感を覚えてしまうのです。
ここで誤解をしないでほしいのですが、無意識は決して敵ではありません。
それはあなたを突き動かしているエネルギーの源であり、あなたを守ろうとして働いているのです。
無意識は、自分にとっての心理的安全領域であり、いつもそこに戻ろうとする性質を持つ。
たとえば、「いまの仕事に魅力を感じていない。でも、やらないといけない」「頭で考えていることと、無意識で感じていることが違う」といった感覚は、意識と無意識の不一致が起きている状態と言えると思います。
自分が変わらないと好かれない、などと、いまの自分が変わることを、無意識のどこかで好んでいないケースが少なくありません。
「当たり前」を変えることは、コンフォートゾーンを変えること
無意識を書き換えるということは、コンフォートゾーンの場所を変えるということだと思います。そうすると、いまの「当たり前」に違和感が生じ、新しい自分が「安心できる場所」だと感じられていない状態が、一時的に生まれます。
だからこそ、変化の初期段階で「前より苦しい」と感じる瞬間があっても、それは失敗のサインではなく、無意識の設定が書き換わっている途中のサインだと捉え直すことができるはずです。経営者として新しい方針や価値観を打ち出すときに感じる抵抗感も、同じ構造で説明できると思います。組織のコンフォートゾーンもまた、無意識と同じよう
「慣れた状態」を守ろうとする性質を持っているからです。
コンフォートゾーンとはなにかについては、こちらの1冊「【安心こそが、人の原動力?】コンフォート・ゾーン|クリステン・バトラー,長澤あかね」もぜひご覧ください。おすすめです。

感情は無意識からの一次情報である
感情を「厄介なもの」として扱ってしまう経営者は少なくないと思います。
しかし、本書を読むと、感情こそが無意識を知るための、もっとも身近な手がかりであることが分かります。
感情には「一次感情」と「二次感情」の層がある
感情には、大きく2つの層があります。
一次感情(プライマリーエモーション)は、喜び、悲しみ、怒り、驚き、恐怖など、人間の基本的な感情です。
二次感情(セカンダリーエモーション)は、一次感情を覆い隠しながら表に出てくる感情で、罪悪感や自己否定につながり、苛立ちや嫌悪、恐怖感などを指します。
たとえば、悲しみと怒りが複合的に絡み合うと、一次感情を覆い隠しながら、喜びと驚きが重なれば、心が大きく揺さぶられる感動になります。
このように、感情は単独で表れるのではなく、根っこにある一次感情が形を変えてあらわれているのです。
感情の奥に、本当の気持ちや願い、「こうあってほしい」などの望みを見つけていく。
感情を無視することは、無意識のサインを見逃すこと
本当の気持ちに気づくために、無意識からの小さなメッセージに耳を澄ませ、外側にあらわれている感情の奥にある一次感情に近づいていくことが必要だと思います。
あなたの素直な感情は、無意識を知るサインになっているのです。
これは組織経営にも通じる視点だと感じます。会議での苛立ちや違和感といった二次感情の奥には、多くの場合「本当はこうしたい」という一次的な願いが隠れています。
経営者やリーダーがその奥にある感情に気づけるかどうかは、組織の意思決定の質そのものを左右すると思います。
感情を数値やロジックだけで処理せず、無意識からの情報として扱う姿勢が、これからのリーダーシップにはいっそう求められるはずです。
価値観の書き換えは、恐れを手放すことから始まる
無意識を再設定するためには、まず「手放す」というプロセスが欠かせません。ここでの手放す対象は、これまで自分を守ってきた価値観や判断基準そのものです。
ありのままの自分を認める勇気を持つ
私たちがストレスを感じ、「現実がうまくいかない」と感じる原因は、意識と無意識の不一致が起きている状態にあります。意識と無意識の距離を感じているのに、自分が変わらないと好かれない、などと思い込んでいるケースも少なくありません。
大切なのは、いま、あなたが本当に感じていることをありのままに認めることに対して、罪悪感を抱く必要はないということです。
それは、あなたが悪いとか、他の人や環境が悪いという善悪の問題ではなく、ただ「ありのまま」を見て、認識するだけのことだと思います。
いま、あなたが本当に感じていることをありのままに認めることに対して、罪悪感を抱く必要はない。
アニマルスピリットを解放し、「ほんとうの欲求」を見つける
経済学では、理性ではなく感情が大きな鍵を握っている本能的な生命力を「アニマルスピリット(情動の力)」と呼びます。
これまでのステップで無意識の設定に「気づく」「手放す」を進めてきたことで、私たちはこの情動の力を思い出す準備が整っていきます。
自分を肯定する深層自己説得という方法を重ねながら、「私は自分を出してもいい」「私は自分の個性を受け入れる」というセルフトークを繰り返していくうちに、やがて心の奥で「本当にそうかもしれない」と感じはじめます。
これは、経営における意思決定の基準そのものを、外側から与えられたものではなく、自分自身の内側から選び直すプロセスだと感じます。組織のビジョンや判断基準も、リーダー自身の無意識が握りしめてきた「当たり前」を手放すところから、初めて本質的に更新されていくのではないでしょうか。
無意識が作り出す世界観については、こちらの1冊「【生きるとは?】無意識のバイアスを克服する:個人・組織・社会を変えるアプローチ|ジェシカ・ノーデル」も大変おすすめです。ぜひご覧ください。

まとめ
- 無意識が「変わりたくない」と告げている――コンフォートゾーンを守ろうとする無意識の性質を理解することで、変化への抵抗は失敗ではなく、書き換えの途中のサインだと捉え直せます。
- 感情は無意識からの一次情報である――一次感情と二次感情の層を読み解くことで、表面的な苛立ちの奥にある、本当の願いに気づくことができます。
- 価値観の書き換えは、恐れを手放すことから始まる――ありのままの自分を認め、アニマルスピリットを解放することで、経営判断の基準そのものを内側から選び直せます。
実践のためのQ&A
本書の内容を踏まえ、読者が直面しやすい「1歩先の疑問」についてまとめました。
この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。
