ものごととの関係性をマインドセットとともに磨こう!?『自分を変える戦略書』井添結琴

『自分を変える戦略書』井添結琴の書影と手描きアイキャッチ

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール

【経営ビジョンの視点で読み解く本書の核心】マインドセットの変革は「意志の力」ではなく、信念の書き換えという体系的なプロセスで実現します。アメリカの成功哲学と東洋の感性を融合させた実践理論が、停滞を打破する具体的な手順を提示しています。
 
1.成功の再定義:社会が押しつける成功像を手放し、「自分・他者・お金」との関係性から自分軸の成功を設計する
2.SHIFTメソッド:潜在意識に刻まれたマインドブロックを5ステップで書き換え、成長型マインドセットを習慣化する
3.循環する豊かさ:自己肯定感を土台に、与える生き方が唯一無二の価値を生み出し、豊かさが循環する構造をつくる

  • 「変わりたい」と思いながら、何年も同じ1日を繰り返してしまうのはなぜでしょう?
  • 実は、行動の前に「信念」という見えないフィルターが存在していて、それが現実を形づくっているんです。
  • なぜなら、私たちは知識を得ても、潜在意識に刻まれたマインドブロックが変わらない限り、行動パターンも結果も変わらないからです。
  • 本書は、学歴もコネもなかった著者が、アメリカの成功哲学と自身の経験を融合させ、独自の「マインドセット変革理論」として体系化した実践書です。
  • 本書を通じて、自分の可能性を閉ざしていたのが他でもない自分自身だと気づき、信念を書き換えて現実を変える具体的なプロセスを手に入れることができます。

井添結琴さんは、ビジネスコンサルタント・マインドセットコーチとして活躍する経営者です。学歴もコネもゼロの状態からアメリカで成功哲学を学び、数年で独立。

20代で億を超える事業を築きました。

東洋人の感性にも自然に響く形で西洋の成功哲学を再構築した「マインドセット変革理論」を提唱し、経営者から会社員、主婦、学生まで幅広い層の変革を支援しています。

「成功の定義」を自分で決める

マインドセットの話をするとき、多くの人はまず「行動習慣」や「思考法」の話を期待します。でも本書が最初に問いかけるのは、もっと根本的なことです。

「あなたにとっての成功とは何か?」

この問いが意外と難しい。

頭の中に浮かぶ「成功のイメージ」を丁寧にたどると、多くの場合それは自分で考えたものではないことに気づきます。高収入、有名企業への就職、社会的地位、資産規模——気がつけば、社会が「こうあるべきだ」と刷り込んだ基準を、そのまま自分の目標として設定してしまっているんです。

本書はここに鋭くメスを入れます。

社会が押しつける「こうあるべきだ」という常識や、他人からの期待をそのまま自分の目指すべき姿だと勘違いし、成功の定義そのものを誤って認識している場合がほとんど

他人の成功基準を追いかけている限り、たとえ達成しても「これが本当にほしかったものだろうか」という空洞感が残ります。中小企業診断士として多くの経営者と向き合ってきた経験からも、これは強く実感するところです。事業の数字は伸びているのに、なぜか経営者の顔が晴れない——そういうケースの根っこには、しばしばこの「成功の誤認」があります。

では、本当の成功の基盤とは何か。本書はシンプルに3つに整理します。

「自分との関係」「他者との関係」「お金との関係」です。

自分との関係とは、健全な自己愛と自己信頼を持ち、穏やかな心で生きていること。他者との関係とは、愛・信頼・尊敬に基づく人間関係を築き、さらに人類愛を持って生きていること。そしてお金との関係とは、安定した経済力を持ちながら、目の前の豊かさを感じる心の余裕を持ち、お金を愛しお金から愛されていること。

この3つの関係性のバランスが整ったとき、人は初めて「幸せな成功」を実感できる。著者はそう説きます。

注目したいのは、この順序です。自己の安定→経済の安定→周囲への貢献。よく「まず人のために」という話を聞きますが、本書は違います。まず自分を満たすことが先。それなしに他者貢献を続けようとすると、エネルギーが枯渇して長続きしない。この論理は、ブランドプロデューサーとしての実感ともぴったり重なります。

組織でも個人でも、「自分の強みや軸がわからないまま外側だけ整えようとする」ケースをよく見ます。でも軸がなければ、どんなに磨いても輝かない。成功の定義を自分で持つこと——これが本書の出発点であり、変革のすべての前提です。

そしてここで著者が持ち出す概念が「スーパーパワー」です。あなたの夢、信念、使命、経験、スキル、やさしさ、思いやり——これらが混ざり合ってできる、あなたにしか生み出せない価値。可能性がないのではなく、可能性に気づいていないだけ、と著者は言います。

自分軸の成功定義を持ち、自分だけのスーパーパワーを自覚する。この土台の上に初めて、次のマインドセット変革が意味を持ちます。

マインドブロックはSHIFTで書き換えられる

「変わりたい」という気持ちはある。知識も増えた。それでも変われない——この壁の正体は何でしょうか。

本書の答えは明確です。潜在意識に刻まれた「制限的な信念(マインドブロック)」が、行動を無意識に制限しているから。そしてそのブロックを意識的に書き換えるための体系が、著者が開発した「SHIFTメソッド」です。

S(See)=気づく まず、自分の中に潜む制限的な信念や感情に「気づく」こと。「どうせ自分には無理だ」「失敗したら終わりだ」——こうした声が無意識に流れていないか、立ち止まって観察します。問題を無視せず、その存在に目を向けることからすべてが始まります。

H(Heal)=癒し、手放す 気づいただけでは意識がそこに留まり、停滞を生みます。不要な信念やネガティブな感情を癒し、解放していくプロセスです。手放すことで、心に新しい信念を育むための余白が生まれます。

I(Install)=刷り込む 成功のマインドセット構築につながる、力強い肯定的な信念を意識的に植え込みます。繰り返しの言葉や習慣を通して潜在意識に刷り込む。アファメーションが機能するのはこのフェーズです。

F(Fortify)=強化する 繰り返しの実践を積み重ねることで、新しい信念を強固にしていきます。瞑想、ビジュアライゼーション、感謝の習慣——これらは「気持ちいいからやる」ものではなく、信念を神経回路レベルで定着させるための科学的なプロセスです。

T(Transform)=変化する 「すでに成功した自分なら、何を信じ、どう考え、どんな行動を選ぶだろうか?」。その視点を今この瞬間から先取りして生き始めることで、信念の改革を現実の結果へと反映させます。

このメソッドで特に重要なのが、言葉の扱い方です。本書は東フィンランド大学の疫学調査を引きながら、シニシズム(皮肉的不信)が多い人は認知症リスクが3倍に上昇し、寿命も短くなる傾向があると指摘します。肯定的な言葉は成長を促進し、否定的な言葉は成長を止める——これは植物だけでなく、人間にも働く法則です。

自分の人生は、自らが日々選び、使う言葉通りとなる——これが「言葉の法則」

アファメーションの実践は3ステップです。否定的な口癖を見つけ、それを肯定的な言葉に書き換え、感情とセットでイメージしながら繰り返し唱える。「私にはできる」という言葉を、すでに実現した未来の感情とともにリアルに感じながら放つ——この組み合わせが潜在意識への刷り込みを加速させます。

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授の研究も本書は紹介しています。成長型マインドセットを持つ人は、困難に直面した際も前向きな思考と行動を選びやすく、パフォーマンスが向上しやすい。マインドセットは科学的に変えられる——この確信が、実践の継続を支えます。

キャロル・ドゥエック教授の論点については、こちらの1冊「【あなたは硬直型!?それとも、しなやか型!?】マインドセット:「やればできる!」の研究|キャロル・S・ドゥエック」もぜひご覧ください。

また、世界の一流たちが共通して使う「ある言葉」として著者が紹介するのが「ありがとう」です。成功者たちは、感謝される側であっても先に感謝を伝える。この習慣が自己肯定感を高め、周囲の才能を引き出す。レジの順番待ちや電車を待つ隙間時間に「今、感謝できることは何だろう」と問いかける——こうした小さな習慣の積み重ねが、マインドセットを変えていきます。

自己肯定感を土台に、豊かさを循環させる

SHIFTメソッドの最終的な目的地は何か。本書が最後に描くのは、自己肯定感を土台とした「循環する豊かさ」の世界観です。

自己肯定感とは何か。本書の定義はシンプルで力強いものです。

自己肯定感とは、ありのままの自分に対する絶対的な信頼感です。

「何が起きても私は価値のある人間だ」という揺るぎない信念。「完璧でなくても、そのままで大丈夫」という受容感。「失敗しても、私の価値は下がらない」という安定感——これらは「条件つきの自信」ではなく、「無条件の自己受容」です。

ここで著者が提示する実践が「意図の力」です。同じ文章でも、ネガティブなワードに焦点を当てるか、ポジティブなワードに焦点を当てるかで、文章全体の印象がガラリと変わる——これは脳の仕組みによるものです。「探しているものを重要だと判断し、それ以外を背景に押しやる」という機能。自己肯定感が低い人は、無意識にネガティブワード探しを習慣にしています。意図して焦点を変えることで、現実の見え方が変わります。

そしてお金の話。本書のお金論は、多くの自己啓発書とは一線を画します。「使えば使うほど増えるお金の使い方」として著者が描くのは、循環の構造です。

ただ貯め込むだけでは、エネルギーは停滞し、やがて腐っていきます。しかし、正しく流せば、自分も潤し、周囲をも豊かにし、やがて何倍もの豊かさとなって返ってくる

お金の使い方には2つの方向性があります。

自分への投資(学び・健康・成長)と、他者への投資(感謝・応援・貢献)。

成功者たちが「他者への投資」を重視するのは、それが最終的に自分の豊かさを何倍にも増やすことを経験を通じて知っているからです。

この考え方はブランドづくりとも深くつながります。強いブランドは、常に「与える側」に立っています。価値を提供し続けることで信頼が積み重なり、それが唯一無二のポジションをつくる。「与えれば与えるほど、あなたの強みは明確になり、磨かれ、やがて誰にも真似できない唯一無二の価値へと成長していく」という著者の言葉は、ブランド論としても完全に通じます。

本書のエピローグに登場するのが、著者の恩師であるマーケティングの神・ジェイ・エイブラハム氏の言葉です。「人生で行うすべての物事において、価値の創造者になりなさい」。

なぜ成功者が無名の若者を助けるのか。その答えは「自分も若い頃、多くの人に助けられた。その価値がより多くの人たちへと広がっていくなら、それだけで幸せだ」というものでした。

自己実現とは、社会貢献です。あなたが幸せになることは、わがままではありません。あなたが成功することは、自己中心的なことではありません。

自分が満たされることで、周囲の人たちも満たすことができる。この循環こそが、本書が描く「豊かさ」の本質です。マインドセットを変えるとは、単に「前向きになる」ことではありません。自分の在り方を変えることで、周囲への影響が変わり、やがて世界との関係性が変わる——その大きな物語として本書は読めます。

まとめ

  • 「成功の定義」を自分で決める――社会の成功基準ではなく、「自分・他者・お金」との関係性から自分軸を設計することが変革の出発点。他人の基準を追い続ける限り、達成しても空洞感が残ります。
  • マインドブロックはSHIFTで書き換えられる――See・Heal・Install・Fortify・Transformの5ステップで潜在意識の制限的信念を体系的に書き換える。言葉の選択と感謝の習慣が、神経回路レベルでマインドセットを変えていきます。
  • 自己肯定感を土台に、豊かさを循環させる――無条件の自己受容を土台に、お金もエネルギーも与えることで循環する。「与えれば与えるほど強みが磨かれる」という構造が、唯一無二の価値を生み出します。

実践のためのQ&A

本書の内容を踏まえ、読者が直面しやすい「1歩先の疑問」についてまとめました。

アファメーションを続けているのに変化が感じられません。どこを見直せばいいですか?

アファメーションが機能しない最大の原因は、「言葉だけで感情が伴っていないこと」です。本書のSHIFTメソッドでいえば、Heal(手放す)のステップが不十分なまま Install(刷り込む)に進んでいる可能性があります。

まず古いマインドブロックに気づき、それを手放す作業を先に行う。その上で、すでに実現した未来の感情をリアルに感じながら言葉を放つことで、潜在意識への刷り込みが加速します。

自己肯定感を高めたいのですが、自信がない状態からどこを入口にすればいいですか?

本書が示す最も手軽な入口は「感謝の焦点化」です。レジの順番待ちや移動中に「今、感謝できることは何だろう」と問いかけるだけでいい。

脳は「探しているものを重要だと判断する」仕組みを持っているため、意図してポジティブなものを探す習慣をつくるだけで、現実の見え方が変わり始めます。自信は先につくるものではなく、小さな感謝の積み重ねの中から育つものです。

成功のために環境を変えるべきか迷っています。どう判断すればいいですか?

本書は「自分軸で環境を選ぶこと」を強調しています。他人の評価や一般論ではなく、「自分がどう感じるか」という感覚を指針にする。その環境にいるとき、自分のエネルギーが高まるか、それとも消耗するか——この問いが最も正直な判断基準です。

同じ努力でも環境によって成果が何十倍も変わると本書は言います。自分の心の声に耳を澄ませ、しっくりくる場所を選ぶことが、変革を加速させる鍵になります。

この記事を書いた人:増田 浩一(増田みはらし書店 店主/中小企業診断士)プロフィール
ビジョン思考・組織・ブランド・生き方について、良書とともに探究しています。

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