- あなたは今、何を「当たり前」だと信じて生きているんでしょうか?
- 実は、その「当たり前」こそが、私たちを縛り、苦しめているのかもしれません。
- なぜなら、2000年以上前にブッダが感じた苦しみと、現代を生きる私たちの苦しみは、驚くほど変わらないからです。
- 本書は、ブッダの教えを「練習」として実践できる形で紹介し、現代人が自由に生きるための道筋を示してくれます。
- 本書を通じて、苦しみを排除するのではなく、苦しみがあるからこそ人生が整うという逆説的な真実に気づくことができるんです。
本書は、まったく異なる背景を持つ2人の著者によって生まれました。
河田真誠さんは、質問家、コンサルタント、研修講師、旅人、そして僧侶見習いという多彩な顔を持つ実践者です。大学を中退後、バイク業界で人生経験を積み、25歳で世界を旅しました。異文化に触れ、日本の良さや生き方の多様性を実感した後、帰国してデザイン会社を起業。
しかし離婚を機に会社を譲り、家族、お金、仕事、人脈、家などすべてを失うという経験をされます。全所持金2300円というどん底から這い上がり、コンサルタントとして独立。現在は問いかけることで経営課題を解決に導く質問の専門家として、さまざまな企業の経営に携わっています。2022年、高野山での僧侶との出会いをきっかけに仏教を学び始め、自身も得度し仏道に入られました。
監修者の松本峰哲さんは、種智院大学人文学部教授で、インド・チベット密教の専門家です。東北大学大学院で学び、長年にわたり研究を重ねてこられました。現在は大学で教鞭を取る傍ら、仁和伝法所研究員、善通寺勧学院研究員としても活動されています。また、真言宗御室派・神護寺の副住職を務め、研究と実践の両面から仏教の教えを探求し、後進の指導にあたっています。
どん底を経験した実践者と、学問と修行を重ねた研究者。
この2人が出会うことで、現代人の苦しみと2000年の叡智が見事に結びついた1冊が誕生したのです。
2000年を超える普遍的な苦しみ――なぜブッダの教えは今も響くのか
私たちは、スマートフォンを手に持ち、AIと会話し、宇宙開発を夢見る時代に生きています。
テクノロジーは驚異的な進化を遂げ、私たちの生活は2000年前とはまったく違う姿になりました。
でも、心の奥底で感じている苦しみは、本当に変わったんでしょうか?
本書で紹介されているように、ブッダが感じた苦しみは「思い通りにならない現実」でした。
王子として何不自由ない生活を送っていたブッダは、ある日、病気、老い、死という避けられない現実に出会います。
そこで彼が感じたのは、自分の力ではどうにもならないものが存在するという絶望的な事実だったんです。
この苦しみは、2000年以上経った今も、私たちの日常にそのまま存在しています。
仕事で思うような成果が出ない。人間関係がうまくいかない。大切な人との別れ。自分の老いや病気への恐怖。
形は違っても、「思い通りにならない」という本質は何も変わっていません。
だからこそ、ブッダの教えは色褪せないんです。
本書が示しているのは、この普遍的な苦しみに対する答えが、すでに2000年前に提示されていたという事実です。
「ブッダさんは苦しみを出会ったこと、思い通りにならない現実を知り、自分で考えることができるようになった」
重要なのは、ブッダは苦しみから逃げなかったということです。
彼は苦しみと正面から向き合い、その原因を徹底的に考え抜きました。
そして到達したのが、「苦しみの原因は外側にあるのではなく、自分の内側にある」という洞察でした。
私たちは、苦しみの原因を常に外に求めます。
上司が悪い、会社が悪い、社会が悪い、運が悪い。
でも本当は、その「苦しみ」を作り出しているのは、自分の中にある「こうあるべきだ」という思い込みなんです。
ブッダの教えが時代を超えて響くのは、この根本的な真実を突いているからです。
外側の世界は変えられなくても、自分の内側は変えられる。
「とらわれ」から自由になることで、同じ現実でも苦しみではなくなる。
これは、2000年前も今も変わらない、人間にとっての普遍的な真理なんです。
「当たり前」を疑う勇気――インドで体感した価値観の解体
本書の導入部分で、河田さんはインドでの体験を通じて、衝撃的な気づきを語っています。
私たちは幼い頃から「ずっと正しい」と教えられてきたことを、疑わずに信じて生きています。
学校では「正解」があり、「不正解」があると教えられました。
そして、その「正解」を目指すことが正しい生き方だと刷り込まれてきたんです。
でも、インドという異文化の中に身を置くと、その「当たり前」が完全に崩れ去ります。
「これらの思考や価値観は、親や先生と同じように人から与えられたもの。その価値観が世間になるときが来るんだと思う」
つまり、私たちが「自分の考え」だと思っているものの多くは、実は他人から与えられた価値観なんです。
そして恐ろしいのは、自分の中にある他人の価値観を見つけること自体が難しいということです。
なぜなら、それはあまりにも深く内面化されていて、もはや「自分そのもの」のように感じられるからです。
河田さんが指摘するのは、さらに深い矛盾です。
「自分と違うものの価値観との対立ではなく、自分の中の複数の価値観同士が矛盾しているのに気づいていなかったこと」
これは、本当に核心を突いています。
私たちは、自分の中に矛盾した価値観を同時に抱えているんです。
たとえば、「人に優しくあるべき」と思いながら、「自分の利益を守らなければ」とも思っている。
「家族を大切にしたい」と思いながら、「仕事で成功しなければ」とも思っている。
これらの価値観は、それぞれが「正しい」と教えられてきたものです。
でも、同時に実現することは不可能な場合もあります。
すると、どちらを選んでも苦しみが生まれるんです。
本書が提示する「自由に生きる練習」の第一歩は、この「当たり前」を疑うことから始まります。
本当にそれは正しいのか?誰にとっての正しさなのか?自分は本当にそう思っているのか?
これらの問いを自分に投げかけることで、初めて「とらわれ」が見えてくるんです。
そして、ここで重要なのが、本書の終わりで示される姿勢です。
「どちらが正しいかは重要ではない。大切なのは、『あなた自身が何を考えるか』だ」
仏教の教えを信じてほしい、でも、それ以上に大切なのは、自分が何を選び、何を信じているのかを自覚することだと河田さんは語ります。
盲目的に従うのではなく、自分で考え、自分で選ぶ。
これこそが「とらわれない」生き方の本質なんです。
インドという異文化は、日本で「当たり前」とされていることが、世界では「当たり前ではない」ことを教えてくれます。
そして、その気づきは、自分の内側にある無数の「当たり前」を疑う勇気を与えてくれるんです。
苦しみがあるから人生が整う――8つの教えを「練習」として生きる
ここまで読んで、もしかしたらこう思った人もいるかもしれません。
「結局、苦しみから逃れられないなら、どうすればいいんだ?」
でも、本書が示す答えは、私たちの予想を裏切るものです。
「苦しみがあるから、人生が整う」
本書が提示するのは、苦しみを排除するのではなく、苦しみを人生を整える力に変えるという視点です。
ブッダは苦しみと出会ったことで、自分で考えることができるようになるのだと思います。
私たちも同じように、困ったり悩んだりすることで、目分を成長させ、人生を整えていくんです。
そして本書では、この視点を実践するための8つの仏教の教えが「練習」として紹介されています。
1.「空」――良いも悪いもない
物事に絶対的な「良い」「悪い」はありません。すべては状況や見方によって変わります。この教えは、物事を決めつける癖から自由になることを教えてくれます。
2.「縁起」――一人で生きている人なんていない
すべては関係性の中で存在しています。私たちは無数のつながりの中で生かされているんです。
3.「因果応報」――人生はあなた次第
自分の行いは必ず自分に返ってきます。これは脅しではなく、自分の人生を自分で創れるという希望のメッセージです。
4.「輪廻」――死は終わりでない
死を恐れるのではなく、今この瞬間をどう生きるかに集中する。輪廻の思想は、そんな視点を与えてくれます。
5.「六道」――恥ずかしくない生き方をする
自分の行いを常に振り返り、恥ずかしくない生き方を選ぶ。それが心の平安につながります。
6.「無我」――自分だけど、自分ではない
固定的な「自分」など存在しません。この教えは、変化を恐れず、柔軟に生きることを教えてくれます。
7.「観音三十三身」――だれしも仏様の姿がある
すべての人の中に仏性があります。他人を尊重し、自分も尊重する視点です。
8.「成仏」――誰もが人の役に立てる存在である
私たちは誰もが、何らかの形で人の役に立てる存在です。この教えは、自分の存在価値を肯定してくれます。
これらの教えは、単なる知識ではありません。日常の中で「練習」として実践することで、初めて意味を持つんです。
たとえば、上司に理不尽なことを言われて腹が立ったとき。
「空」の教えを思い出せば、その出来事に絶対的な「悪」はなく、見方を変えれば学びになるかもしれないと気づけます。
人間関係で孤独を感じたとき。
「縁起」の教えを思い出せば、自分は無数のつながりの中で生かされていることに気づけます。
将来が不安で仕方ないとき。
「因果応報」の教えを思い出せば、今この瞬間の行いが未来を創ることに気づき、今できることに集中できます。
本書が素晴らしいのは、これらの教えを「こうあるべき」という新たな「とらわれ」にしないよう、丁寧に説明している点です。
「信じるものをちゃんと知ろう」
仏教の教えを盲目的に信じるのではなく、自分で考え、自分で選ぶ。
そして、自分が選ばなかった方は、自分の中では正しくないということも自覚する。
この姿勢こそが、本当の意味での「とらわれない」生き方なんです。
苦しみは避けられません。
でも、苦しみがあるからこそ、私たちは考え、成長し、人生を整えていくことができるんです。ブッダの教えは、2000年を超えて、私たちにそのことを教え続けています。
仏教の教えをさらに知りたい方はこちらの1冊「【仏教の教えを一言でいうと!?】完全版 仏教「超」入門|白取春彦」もぜひご覧ください。

まとめ
- 2000年を超える普遍的な苦しみ――なぜブッダの教えは今も響くのか――テクノロジーは進化しても、「思い通りにならない」という人間の根本的な苦しみは変わりません。ブッダの教えが時代を超えて響くのは、苦しみの原因は外側ではなく自分の内側にあるという普遍的な真実を突いているからです。
- 「当たり前」を疑う勇気――インドで体感した価値観の解体――私たちが「自分の考え」だと思っているものの多くは、実は他人から与えられた価値観です。さらに、自分の中に矛盾した価値観を同時に抱えていることに気づいていません。「当たり前」を疑い、自分で考え、自分で選ぶことが「とらわれない」生き方の第一歩です。
- 苦しみがあるから人生が整う――8つの教えを「練習」として生きる――苦しみを排除するのではなく、苦しみを人生を整える力に変える。本書が紹介する8つの仏教の教え(空、縁起、因果応報、輪廻、六道、無我、観音三十三身、成仏)を日常で「練習」することで、私たちは少しずつ「とらわれ」から自由になっていけるのです。
