AIを機会に!?『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』シバタナオキ

『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』シバタナオキの書影と手描きアイキャッチ
  • 生成AIの時代が到来して、あなたは不安を感じていませんか?日本企業は、AIの開発競争で欧米の巨大テック企業に太刀打ちできないんじゃないか。多くのビジネスパーソンが、そんな焦りを抱えているように思います。
  • 実は、その不安はある意味で的外れなんです。日本企業が持つ「現場」という資産、長年の設備投資によって蓄積されたデータ、そして課題先進国だからこそ生まれるAI実装の必然性──これらは、GAFAMには簡単に真似できない強みなんです。
  • なぜなら、AI時代の競争は「誰が最も優れたモデルを作るか」ではなく、「誰が現場に根付いた実装を実現できるか」で決まるからです。
  • 本書は、投資家・起業家として日米両方のビジネス環境を深く知るシバタナオキさんが、生成AIがもたらす未来を具体的に描いた一冊です。
  • 本書を通じて、私たちは「仕事とは何か」「人が人らしく働くとはどういうことか」という本質的な問いと向き合うことになります。AIが雑務を引き受けることで、労働が「他者のため」という本質を取り戻す社会。その可能性が、ここにあるんです。
シバタナオキ
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シバタナオキさんは、シリコンバレーと日本を橋渡しする投資家・起業家です。現在はNSV Wolf Capitalのパートナーとして、シリコンバレーの新興VCへのファンド投資やスタートアップへの直接投資を担っています。エンジェル投資家としても50社以上のスタートアップへの投資実績があり、テクノロジーとビジネスの最前線を見続けてきた人物です。

楽天の執行役員、東京大学の助教を経て、スタンフォード大学の客員研究員として渡米。その後、米国シリコンバレーでAppGroovesを起業し、帰国後は「決算が読めるようになるノート」を創業(2022年に事業譲渡)するなど、実践と理論の両面から企業経営とテクノロジーに携わってきました。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻の博士課程を修了し、工学博士の学位も持っています。

著書には『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(日経BP)、『テクノロジーの地政学』(共著・日経BP)があり、複雑な経済やテクノロジーの動きを、実践的な視点でわかりやすく解説することに定評があります。

本書を執筆した背景には、生成AIの登場によって世界のビジネスルールが根本から書き換わりつつある中で、日本企業が持つ独自の強みを見失わないでほしいという強い想いがあります。シリコンバレーで数多くのスタートアップの成長を見てきた経験と、日本企業の現場を知る立場から、「日本はどこで勝負すべきなのか」という問いに真正面から答えようとしています。

シバタさんの視点の特徴は、単なる技術論に終始せず、社会実装のリアリティを常に意識している点です。AIがどれほど進化しても、それを使いこなし、現場に根付かせるのは人間です。

本書では、日本が課題先進国であるがゆえに持つアドバンテージを丁寧に解きほぐし、アフターAIの世界で日本企業がどう戦うべきかという実践的な未来地図を描いています。

「現場」という資産──GAFAMには真似できない日本の強み

生成AIの時代が到来して、多くの人が不安を感じているんじゃないかと思います。

ChatGPTのようなツールを使いこなせる人と使いこなせない人の差が、そのまま仕事の格差になってしまうんじゃないか。日本企業は、AIの開発競争で欧米の巨大テック企業に太刀打ちできないんじゃないか。

そんな焦りが、ビジネスの現場には確実に広がっています。

でも、本書を読んで強く感じたのは、その不安はある意味で的外れだということなんです。

日本の大企業にこそチャンスあり。日本は少子高齢化や人手不足といった課題を世界に先駆けて抱える「課題先進国」であり、生産性向上への切迫感はどの国よりも高いのです。つまり、生成AIで解決すべき課題がどの国よりも多いのが日本だと言えるでしょう。

シバタさんが指摘するのは、日本が「課題先進国」であることの価値です。
少子高齢化、人手不足、膨大な業務データ──これらは一見すると弱点に見えるかもしれません。

でも視点を変えれば、これほどAIを実装する必然性が高く、その効果を実感しやすい環境は他にないんです。

GAFAMのような企業は、確かに強力なAIモデルを開発しています。

でも彼らが持っていないのは「リアルな現場」なんです。

製造業の工場、物流の倉庫、医療の最前線、介護の現場──そこには日々、膨大な学習データが生まれています。
機械の稼働状況、作業員の動線、トラブルの発生パターン、顧客とのやり取り。

これらのデータは、GAFAMがどれほど資金を投じても簡単には手に入らない「金の山」なんです。

「課題先進国」である日本において、大量の業務データを保有している伝統的な既存産業の大企業にこそ、生成AIを正しくビジネス実装で不可欠な大量の「質の高い学習データ」を保有する伝統的な既存産業の大企業に決定的に有利

しかも、日本企業にはもう1つの強みがあります。

それは、長年にわたる設備投資の積み重ねです。

工場の生産ラインにはセンサーが張り巡らされ、物流拠点には在庫管理システムが整備され、店舗にはPOSシステムが導入されています。

これらは過去の投資として埋没コストのように見られがちですが、AI時代においては「データを取れる環境」という貴重な資産に変わるんです。

設備があるからデータが取れる。
 ↓
データがあるからAIが学習できる。
 ↓
AIが学習するから現場が改善される。

この好循環を回せる企業こそが、アフターAIの世界では圧倒的に有利なんです。

さらに重要なのは、日本企業が得意としてきた「試行と学習の速度」です。

生成AIの必要は、勇気ある企業の判断を確実に押し広げてくれるでしょう。生成AIのAIの必要は、「様子見」ではなく「試行と学習の速度」です。

欧米企業は大胆なイノベーションを起こすのが得意ですが、日本企業は現場での細かな改善を積み重ねるのが得意です。カイゼン、品質管理、おもてなし──これらは全て、現場レベルでの試行錯誤から生まれたものです。

生成AIの実装においても、この強みは発揮されます。

いきなり完璧なシステムを作ろうとするのではなく、小さく始めて現場のフィードバックを集め、少しずつ改善していく。

この「学習する組織」としての文化こそが、AI時代における日本の武器なんです。

GAFAMには作れない高性能なAIモデルを、日本企業が作る必要はありません。

むしろ、彼らが提供するツールを現場に合わせてカスタマイズし、実際の業務に落とし込んでいく力こそが問われているんです。

そして、その力は日本企業が長年培ってきた現場力そのものなんです。

AI導入で「本来の仕事」を取り戻す──3つのレベルと労働の意味

AIの導入について語るとき、多くの人は「効率化」という言葉で片付けてしまいがちです。

でも、本書が示しているのは、もっと本質的な変化なんです。
それは「仕事とは何か」という問いを、私たち一人ひとりに突きつけるということです。

本書では、AI導入を3つのレベルに分けて説明しています。

Lv.1 従来AI──RPAやワークフローの自動化など、定型的な業務を機械的に処理するレベル
Lv.2 生成AI──自然言語理解や生成を活用し、柔軟性が向上したレベル
Lv.3 AIエージェント──LLMベースの知能を核に、外部ツールやAPIを統合し、システム全体を俯瞰的に行う、Full Automationに近い自律的な意思決定プロセスそのものを変革するレベル

この3段階の進化は、単なる技術の発展ではありません。

それぞれのレベルで、人間の働き方そのものが問い直されるんです。

特にLv.3のAIエージェントの世界では、複数のLLMが異なる役割を持って相互に作業を進める「マルチエージェント」の考え方が重要になります。

このように複数のLLMが異なる役割を持って相互に作業を進めることで、大きな問いが減ったり、回答の精度が上がったりということが起こります。複数のエージェントに役割を分担させることで、より詳細な指示を出すように相談するのが、マルチエージェントの考え方です。

ここで立ち止まって考えたいのは、私たちの組織の中にどれだけ「意味の薄い仕事」があるかということです。
会議のための会議、形式的な報告書、誰も読まない資料、慣例だからという理由で続けている業務。
人間は組織の中で、驚くほど膨大に仕事を作り出してしまう生き物なんです。

そして、その多くは本来やらなくてもいいことだったりします。

AIの導入は、こうした「ムリ・ムダ・ムラ」を容赦なく浮き彫りにします。

日本企業は自分でイノベーションを起こす必要はありません。日本企業に最も必要な経営と既存の経営という軸があり、アフターAIの世界では、既存事業を磨き込む「知の深化」と新しい方向を見つける「知の探索」の両立が読めるのです。

「この作業、本当に人間がやる必要があるのか?」
「この会議、AIが議事録を作って要点をまとめたら、もっと短くできるんじゃないか?」
「この報告書、誰のために作っているんだっけ?」

こうした問いが次々と湧いてくるはずです。

そして、AIが雑務を引き受けてくれることで初めて見えてくるのが「本来の仕事」なんです。

顧客の本当のニーズを理解すること。
チームメンバーの悩みに寄り添うこと。
新しい価値を創造するために試行錯誤すること。

これらは人間にしかできない、人間がやるべき仕事です。

でも、現状ではこうした本質的な仕事に割ける時間があまりにも少ないんです。雑務に追われ、形式的な作業に時間を取られ、気づけば一日が終わっている。AIの導入は、この状況を根本から変えるチャンスなんです。

特に日本企業が得意としてきた「既存事業の磨き込み」は、まさにこの文脈で輝きます。
イノベーションという言葉に踊らされて、無理に新しいことを始める必要はありません。

むしろ、今ある事業を徹底的に深化させ、顧客により良い価値を届けることに集中する。
そのために、AIに任せられることは全て任せて、人間は人間にしかできないことに時間を使う。

これが、アフターAIの世界における理想的な働き方なんです。

しかも、本書が指摘するように、日本企業には汎用的なChatGPTではなく、自社のデータを活かした専用ツールを作るという選択肢があります。

汎用ツールでそうまく行かなかったとき、それは次に外部の情報を検索してLLMによるテキスト生成を補う「RAG(Retrieval Augmented Generation)」という手法を取り入れることです。簡単に言えば、ChatGPTなどに複雑なリクエストを投げられるようになるということです。

RAG(Retrieval Augmented Generation)という技術を使えば、社内に蓄積された膨大なデータをAIに学習させ、自社専用のアシスタントを作ることができます。

過去のプロジェクトの成功事例、顧客とのやり取りの記録、トラブル対応のノウハウ──これらを全てAIが瞬時に検索し、最適な答えを提案してくれるようになるんです。

これは単なる効率化ではありません。

組織の知恵を継承し、新人でもベテランの知見を活用できるようにし、属人化を防ぐという、組織のあり方そのものを変える取り組みなんです。

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磨き込みの先に見える社会──他者のために働く喜びを取り戻す

ここまで、日本企業の強みとAI導入による仕事の再定義について考えてきました。

でも、本当に大切なのはその先にある社会の姿なんです。

AIが普及することで、私たちはどんな働き方を手に入れられるのか。
そして、労働という行為に、どんな意味を見出せるようになるのか。

シバタさんが本書で繰り返し強調しているのは、日本企業が「イノベーション」に焦りを感じる必要はないということです。

AI-DXの向かうところ-イノベーションは更らない ここで重要なメッセージをお伝えします。日本企業は自分でイノベーションを起こす必要はありません。

世界を変える革新的なサービスを生み出すことだけが、企業の価値ではありません。むしろ、既存の事業を徹底的に磨き込み、顧客により良い体験を提供し続けることこそが、日本企業の本領なんです。

トヨタの生産方式、セブンイレブンの物流システム、キーエンスの営業プロセス──これらは全て、既存事業の深化(磨き込み)から生まれたものです。

派手なイノベーションではなく、地道な改善の積み重ねが、結果として世界トップレベルの競争力を生み出してきたんです。

そして、アフターAIの世界では、この「磨き込み」の価値がさらに高まります。

なぜなら、AIが雑務を引き受けてくれることで、人間は本当に価値のある仕事に集中できるようになるからです。

データ入力や報告書作成に費やしていた時間を、顧客との対話に使える。
定型的な問い合わせ対応をAIに任せて、複雑な課題解決に注力できる。
会議の準備や議事録作成をAIが担当し、本質的な議論に時間を割ける。

こうした変化の先に見えてくるのは、労働が本来の意味を取り戻す社会なんです。

労働とは本来、他者のために何かを提供する行為です。

顧客の困りごとを解決し、同僚の成長を支援し、社会に価値を還元する。

そこにこそ、働く喜びがあるはずなんです。

でも、現実には多くの人が、こうした本質的な喜びを感じる余裕を持てていません。

雑務に追われ、形式的な作業に時間を奪われ、「何のために働いているんだろう」という虚しさを抱えている人も少なくありません。

AIの導入は、この状況を変えるきっかけになります。
機械に任せられることは機械に任せて、人間は人間らしい仕事に集中する。
創造性を発揮し、共感力を活かし、他者との関係性の中で価値を生み出していく。

これこそが、人が人らしく働くということなんです。

しかも、日本にはこの変化を実現するための土台がすでに整っています。

長年の設備投資によってデータを取れる環境があり、現場での試行錯誤を重視する文化があり、既存事業を磨き込むノウハウがあります。

課題先進国だからこそ、AIの必要性が高く、その効果も実感しやすい。

これらの条件が揃っている国は、世界を見渡してもそう多くはありません。

そしてアフターAIの世界では、この特性こそが大きな武器になるのです。つまり、生成AIで「知の深化」と「知の探索」が大きく進化により、世界中のイノベーションを持つ企業を言語の壁を越えて簡単に検索できるようになったからです。

さらに、アフターAIの世界では言語の壁が低くなります。

生成AIによって、日本企業は世界中のイノベーションを簡単に検索し、学び、自社の文脈に取り込むことができるようになるんです。

自分でゼロから発明する必要はない。
世界のどこかにある優れたアイデアを見つけ、それを日本の現場に合わせてカスタマイズし、徹底的に磨き込む。
この「知の探索」と「知の深化」の両立こそが、日本企業の新しい戦い方なんです。

そして、この過程で人間が担うべき役割は、ますます明確になっていきます。

AIが情報を集め、選択肢を提示し、定型的な作業を処理する。人間は、その中から何を選ぶか判断し、現場の文脈に合わせて調整し、チームメンバーと協力して実行していく。

つまり、意思決定、創造性、共感力といった、人間にしかできない能力こそが求められるようになるんです。

本書を読んで強く感じるのは、AI時代の到来は決して脅威ではないということです。

むしろ、日本が長年培ってきた強みを活かし、人間らしい働き方を取り戻すための大きなチャンスなんです。

GAFAMのような巨大企業が作るAIツールを恐れる必要はありません。
それらを武器として使いこなし、現場に根付かせ、顧客により良い価値を届けることに集中すればいいんです。

そして、その過程で私たちは、労働の本来の意味を再発見できるはずです。

他者のために働くこと。
自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できること。
チームメンバーと協力して、より良いものを作り上げていくこと。
こうした喜びを、もう一度、働く現場に取り戻すこと。

それこそが、アフターAIの世界で私たちが目指すべき社会の姿なんだと思います。

AIに関しては、こちらの1冊「Whyこそが、大切に!?『AIに書けない文章を書く』前田安正」も未来を見通すうえで、大変刺激的です。ぜひご覧ください。

まとめ

  • 「現場」という資産──GAFAMには真似できない日本の強み――「学習する組織」としての文化こそが、AI時代における日本の武器であり、それを加速度的に回すための課題と現場が日本には存在します。
  • AI導入で「本来の仕事」を取り戻す──3つのレベルと労働の意味――人間がやるべき仕事にフォーカスして、それに集中する環境を整えるためのツールとしてAI導入という機会を活用していきましょう。
  • 磨き込みの先に見える社会──他者のために働く喜びを取り戻す――日本が長年培ってきた強みを活かし、人間らしい働き方を取り戻すための大きなチャンスに集中していきましょう。
シバタナオキ
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