仕事は、“コンテキスト”の中で見出される!?『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』中島輝

『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』中島輝の書影と手描きアイキャッチ
  • あなたは自分の「仕事」に価値を感じていますか?
  • 実は、多くの人が仕事の価値を見出せずにいるのは、自分という「中心」を見失っているからなんです。
  • なぜなら、仕事とは常に他者と関わる営みだからこそ、逆説的に自分を見失わないことが何より重要になるからです。
  • 本書でエマソンが説く「円」の概念は、この問いに対する明確な答えを示してくれます。自分という円を持ち、その中でどんな活動を広げ、他者の円とどう交わっていくか。
  • 本書を通じて、仕事における真の価値とは何か、そして自分の才能をどう見出していくかという、現代を生きる私たちにとって切実な問いへの洞察が得られるはずです。
中島輝
¥830 (2025/10/06 07:47時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
Rakutenで探す

中島輝さんは、心理カウンセラー、自己肯定感の専門家として活躍されている方です。自己肯定感に関する著作を数多く発表し、メンタルヘルスの分野で多くの人々を支援してきました。

本書では、ラルフ・ワルド・エマソンという19世紀のアメリカの思想家の言葉を現代に蘇らせ、私たちが自分を信じて生きるための道標を示してくれています。エマソンは日本ではあまり知られていませんが、近代アメリカで成功を収めた知識人で、彼の思想は今なお多くの人々に影響を与え続けています。

中島さんの丁寧な解説により、エマソンの深遠な言葉が私たちの日常に根付く知恵として生まれ変わっています。

今回は、本書を仕事という視点で、見つめ、エマソンの独自の仕事観に触れていきたいと思います。昨日からの投稿の続きです。

昨日の投稿はこちら「本物の「自信」とはなにか!?『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』中島輝」からぜひご覧ください。

円という中心——自分の価値を見出すために

エマソンはこう語ります。

円は世界を付与する中心、最初の表現である

この言葉には、とても深い意味が込められているんです。円とは、自分自身の中心を持つということ。そこから世界が広がっていく。自分という存在が、世界を認識し、意味を与えていく起点になるということです。

でも現代を生きる私たちは、この「中心」を見失いがちです。特に仕事において、自分の価値が分からないと感じている人は少なくありません。「自分の価値が分からない」「価値があるとは信じがたい」——そんな思いを抱えている人に、エマソンは次の4つの定義を示してくれているんです。

仕事の4つの定義

  1. 身体的である
  2. 他者から認められる
  3. 喜愛を感じる
  4. 自分自身の価値を見出す

この4つを見ると気づくことがあります。

最後の「自分自身の価値を見出す」こそが、真の核心なんだと、私は思いました。

なぜなら、自分で自分の価値を見出せていない状態では、他の3つも本当の意味では満たされないからです。誰かに認められても、それが自分の中心から離れたものであれば、どこか虚しさが残ります。一時的な喜びはあっても、持続的な充実感は得られません。

エマソンが「円」という概念で示しているのは、まず自分という中心を持つことの絶対的な重要性なんです。その中心があってこそ、世界との関わりが意味を持つ。他者との交わりが、真の価値を生み出すようになるんです。

面白いのは、そしてそれを円に当てはめて考えると、価値観が存在し、そしてそれを心として価値関係が作られるということです。今自分がどの円の中にいるのかを客観的に見ることができる人は、人間関係を円滑にするコツに精通した人です。

この視点は革新的だと思うんです。
私たちは複数の円の中で生きています。会社という円、家庭という円、友人関係という円、趣味の円——それぞれの円で、私たちは異なる役割を持ち、異なる価値を発揮します。

そして重要なのは、「今自分がどの円の中にいるか」を自覚すること。
その自覚があれば、それぞれの円における自分の在り方を適切に調整できます。会社の円で求められることと、家庭の円で大切にすべきことは違う。でも、どの円においても共通して存在すべきなのが、自分という中心なんです。

正解は一つじゃないと思っています。しかし、それぞれの円で異なる正解があるのであって、それぞれ正当な人それぞれに言う。これは当たり前に言うことと言いたいんです。どの円の中でどういうのが価値観を持つように扱うかは、「これがベストプラクティスの原因」になるからです。

この言葉が示しているのは、価値というものが絶対的なものではなく、文脈依存的だということです。

ある円では弱みとされることが、別の円では最大の強みになることもある。その柔軟な視点を持つことが、自分の価値を正しく認識する鍵になるんです。

天職と才能——ひとつの方向へ進む船

エマソンは、天職についてこう語っています。

人は川に浮かぶ船のようなものだ。どこに進んでも障害はあるが、一つの方向へ進んでいけば、あらゆる障害は取り除かれるということです

この比喩は本当に美しいと思います。

川に浮かぶ船。

どの方向に進んでも、確かに障害はあります。でも、自分にとって正しい方向——天職の道に進むことをこのように意味していますと、エマソンは言っているんです。それを選んで一つの方向へ進んでいけば、あらゆる障害は取り除かれるということです。

でも問題は、多くの人がその「一つの方向」を見失ってしまうことなんです。

天職の道を模索することなく、なりゆきで仕事に就く人は、仕事の内容や業界の慣習にできるだけ近づくようにして「働いている」とエマソンは表現しています。

仕事をする上で、「こうするべし」と言って、自分らしさではあらない「とこうするべし」と様々な欠落をしているということです。

これは現代社会において、非常に多くの人が陥っている状況ではないでしょうか。就職活動で「安定」を求め、周囲の期待に応え、世間体を気にして仕事を選ぶ。その結果、自分らしさを欠落させたまま働き続けることになってしまう。

「こうするべし」という外からの規範に従うのではなく、「自分らしさ」を保つこと。これこそが、天職への道なんです。そしてここで重要になるのが、才能と品性の違いです。

才能(talent)はすべての人に備わっているもの。自分の才能を発揮すれば、それを使ってお金を稼ぐことができ、社会貢献もできる。ただし、才能というのは生かされるものだ、とエマソンは定義しました。

一方、品性(character)は、「自分らしさ」をつくり上げていく作業とも言えるでしょう。優れた品性には、人々に希望と勇気を与えるような、卓越した「芯」を創る力があります。

たとえば、新しいプロジェクトの立ち上げにあたって、周囲の気分を高揚させ、成功を確信させるような雰囲気をとれる、そんな力ということです。

この区別は本当に重要だと思うんです。才能だけでは不十分なんです。才能は誰もが持っている。でも、その才能をどう使うか、どんな方向性で発揮するか——それを決めるのが品性なんです。

品性とは、自分という中心をしっかりと持ち、自分の価値観に基づいて行動する力です。

それがあってこそ、才能は真の意味で「天職」に繋がっていきます。周囲に流されず、自分の信じる方向に進んでいく。その過程で、確かに障害はあるでしょう。でも、自分という船が正しい方向に進んでいれば、障害は次第に取り除かれていくんです。

中島輝
¥830 (2025/10/06 07:47時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
Rakutenで探す

円と円が交わるとき——文脈が価値を変える

ここまで、自分という円(中心)を持つことの重要性、そして天職に向かって一つの方向へ進むことの意味を見てきました。

でも、仕事というものは決して一人では成立しません。必ず他者との関わりが生まれます。
だからこそ、エマソンの「円」の概念がさらに深い意味を持ってくるんです。

自分の円の中でどんな活動を広げていくか。
そして、他者の円とどう交わっていくか。
その交点にこそ、真の価値が生まれるんだと思います。

自分という円を持ちながら、他者とのベン図を描き出していく。会社の円、家庭の円、友人関係の円——それぞれの円が重なり合う部分で、新しい価値や意味が生まれます。完全に重なることもなければ、完全に離れることもない。適切な距離感で、適切な重なりを作っていく。

そしてここで、エマソンの言葉が輝きを放つんです。

強さは弱さから生まれる

この言葉には、とても深い洞察が込められています。私たちは往々にして、自分の弱みを隠そうとします。弱点を克服しようと必死になります。でも、エマソンが教えてくれるのは、弱さこそが強さの源泉になるということなんです。

そして重要なのは、「文脈次第で弱みが強みに変わる」ということです。ある円の中では弱点とされることが、別の円では最大の強みになることがある。それに自覚的になることが、自分の価値を正しく見出す鍵になるんです。

たとえば、会社という円の中では「慎重すぎる」と評価されることが、家庭という円では「思慮深い」と評価されるかもしれません。「こだわりが強い」という特性が、ある仕事では障害になるけれど、別の仕事では職人気質として高く評価されることもあります。

つまり、自分の特性そのものに良し悪しはないんです。どの円の中で、どんな文脈で発揮するか。それによって、同じ特性が弱みにも強みにもなる。

だからこそ、「今自分がどの円の中にいるか」を客観的に見ることが重要になってくるんです。

そして、それぞれの円において、自分のどの部分を発揮するのが適切かを判断する。これができる人は、人間関係を円滑にするコツを掴んでいる人だとエマソンは言っているんです。

仕事において他者と関わるとき、自分を見失わないことが逆説的に重要だと最初に述べました。それはつまり、こういうことなんです。他者の円と交わるときに、自分の円を消してしまってはいけない。自分という中心を保ちながら、適切な重なりを作っていく。

そのバランスを取るために必要なのが、自己認識なんです。自分の才能は何か。自分の品性はどう形作られているか。そして、自分のどの部分が、どの文脈で価値を発揮するのか。

才能のありかを見出すプロセスとは、まさにこのことです。自分という円をしっかりと認識し、その中にある才能や特性を理解する。そして、それがどの文脈(どの円)で最も輝くのかを見極める。

このプロセスは決して一度で完結するものではありません。人生は実験だとエマソンは言いました。様々な円に身を置き、様々な文脈で自分を試してみる。その中で、自分の才能がどこで最も発揮されるか、自分の品性がどんな価値を生み出すかが見えてくるんです。

そして忘れてはいけないのは、弱さもまた才能の一部だということです。完璧である必要はない。むしろ、自分の弱さを認識し、それがどの文脈では強さになり得るかを理解すること。それこそが、真の自己認識であり、自己信頼の基盤になるんです。

エマソンが説く「自分を信じ抜く」ということは、自分の完璧さを信じることではありません。
自分という円を持ち、その中にある光も影も含めて受け入れること。
そして、それぞれの要素が適切な文脈で価値を発揮できると信じること。

仕事とは何か。

それは、自分という円と他者の円が交わる場所で、互いの価値を高め合う営みなんだと思います。

その営みの中で、自分を見失わず、しかし他者との繋がりも大切にする。そのバランスこそが、エマソンの思想が現代の私たちに示してくれる、仕事における真の価値なのではないでしょうか。

まとめ

  • 円という中心——自分の価値を見出すために――自分が発揮するべき価値に自覚的になり、さらには、その影響の範囲を円として他者との重なりを特定することで、仕事の輪郭が際立ちます。
  • 天職と才能——ひとつの方向へ進む船――べき論だけにとらわれるのではなく、「自分らしさ」を含めて意識し続けることで、天職と才能をクロスさせることができるのです。
  • 円と円が交わるとき——文脈が価値を変える――円と自らの才能を活かしながら、その組み合わせの中で、真の価値が生まれる瞬間を見極めましょう。
中島輝
¥830 (2025/10/06 07:47時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
Rakutenで探す
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!